《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第34話~傷ついたエルフ~
馬車が急停止したのは、街道に人が跳びだしてきたからだった。少女だった。全身をケガしていた。気絶していた。「エロエロ……ヘルヘロ……」と妙な言葉をつぶやいている。無視するわけにもいかない。キャリッジの中に運び込むことにした。
「変わったカッコウをしていますね」
動物の皮をなめして作ったような服を着ていた。それに耳が長く垂れていた。木の葉のような髪の色をしていた。雨で汚されたのか、長髪はかなり乱れていた。
「おそらくエルフね」
「はじめて見ました」
エルフは森を住処とする種族だ。セイは王都からあまり出たことがない。多種族といえば、ときおり城下町に出稼ぎにやってくる獣人ぐらいしか見たことがなかった。
「基本的に森に引きこもって生活している種族だからね」
「ケガを治療しましょう」
セイが言った。
「あら、ちょうど良いわ。ちゃんと私の魔法を扱えてるか見てあげるから」
「もう使いこなせてますよ」
フォルモルからもらった治癒魔法だ。念じれば手に白い光がまとわりつく。少女に当てた。傷口が閉じていく。細かい傷が多かったが、それはたいしたケガではない。
イチバン酷いのは、背中の出血だ。
服をめくって確認すると、何かで引っ掻かれたような巨大な切り傷があった。少女のカラダだが、今は恥じらっているような場合ではない。背中に手を入れた。白い光を当て続けるとその傷もふさがっていった。
「これで完治ですかね」
気絶している少女を空いている席に寝かせた。
「〝英雄印〟ってすごいわね。他人の魔法をこうも簡単に使いこなせてしまうんだから」
「今まで、あんまり注目されませんでしたけどね」
セイは自嘲気味にそう言った。
「それは、使い方を知らなかったからでしょう
「まぁ、そうですね」
どんなに切れ味の良い剣でも、刃を使ったことがなかったら、そりゃバカにされるというものだ。
「親から使い方を教えてもらわなかったの?」
「オレは孤児だったんで」
誰が生んだのかもよくわからない。両親がどんな印を持っていたのかも不明だ。こんな雨が降っているんだから、仮に親がいるならイチバンに心配している。
「あら、ごめんなさいね」
とフォルモルはホントウに申し訳のなさそうな表情をした。
「いえ。別に気にしてないんで、大丈夫です」
この3人のメイドたちに比べれば、セイの境遇はまだマシなほうだ。フォルモルの両親はシルベ教に殺されている。キリアの父は雨に降られてモンスターになったそうだ。シラティウスの母もドラゴンキラーに殺されたと聞いている。
「それよりもエルフの娘はどうするのだ?」
と、キリアが口をはさんだ。
「目が覚めるまでは、一緒に連れて行きましょう」
と、セイが提案した。
まさか気絶しているあいだに、外に放り出すわけにもいかない。3人ともセイの意見にうなずいてくれた。
「それにしても不気味な傷だったな。モンスターにでも襲われたのだろうか?」
「かもしれませんね」
かなり大きな傷跡だった。
もしも、モンスターから与えられた傷だとすると、それ相応に大きなモンスターということになる。
「まぁ、どんなモンスターが来ても、貴殿がいれば問題ないだろう」
と、キリアはセイを見て言った。
「あんまり頼りにされても困りますけど」
「レフィーさまから聞いてるぞ。王都では私たちのチカラを使って、見事にミリス・ローネ第一王子とレフィーさまの結婚をぶち壊したそうではないか」
「ええ。まぁ」
そのレフィール伯爵はキュリンジ城に残してきた。
無事にやっているだろうか……。
ミリス・ローネ第一王子からは、あれから何も声をかけられていないと聞いている。念話を使えばいつでも連絡を取れる。なんとなく気恥ずかしくて、いまだ連絡は取っていなかった。用事もないのに連絡をするものでもないだろう。
もし何かあれば、レフィール伯爵のほうからセイに連絡をよこすはずだ。
「変わったカッコウをしていますね」
動物の皮をなめして作ったような服を着ていた。それに耳が長く垂れていた。木の葉のような髪の色をしていた。雨で汚されたのか、長髪はかなり乱れていた。
「おそらくエルフね」
「はじめて見ました」
エルフは森を住処とする種族だ。セイは王都からあまり出たことがない。多種族といえば、ときおり城下町に出稼ぎにやってくる獣人ぐらいしか見たことがなかった。
「基本的に森に引きこもって生活している種族だからね」
「ケガを治療しましょう」
セイが言った。
「あら、ちょうど良いわ。ちゃんと私の魔法を扱えてるか見てあげるから」
「もう使いこなせてますよ」
フォルモルからもらった治癒魔法だ。念じれば手に白い光がまとわりつく。少女に当てた。傷口が閉じていく。細かい傷が多かったが、それはたいしたケガではない。
イチバン酷いのは、背中の出血だ。
服をめくって確認すると、何かで引っ掻かれたような巨大な切り傷があった。少女のカラダだが、今は恥じらっているような場合ではない。背中に手を入れた。白い光を当て続けるとその傷もふさがっていった。
「これで完治ですかね」
気絶している少女を空いている席に寝かせた。
「〝英雄印〟ってすごいわね。他人の魔法をこうも簡単に使いこなせてしまうんだから」
「今まで、あんまり注目されませんでしたけどね」
セイは自嘲気味にそう言った。
「それは、使い方を知らなかったからでしょう
「まぁ、そうですね」
どんなに切れ味の良い剣でも、刃を使ったことがなかったら、そりゃバカにされるというものだ。
「親から使い方を教えてもらわなかったの?」
「オレは孤児だったんで」
誰が生んだのかもよくわからない。両親がどんな印を持っていたのかも不明だ。こんな雨が降っているんだから、仮に親がいるならイチバンに心配している。
「あら、ごめんなさいね」
とフォルモルはホントウに申し訳のなさそうな表情をした。
「いえ。別に気にしてないんで、大丈夫です」
この3人のメイドたちに比べれば、セイの境遇はまだマシなほうだ。フォルモルの両親はシルベ教に殺されている。キリアの父は雨に降られてモンスターになったそうだ。シラティウスの母もドラゴンキラーに殺されたと聞いている。
「それよりもエルフの娘はどうするのだ?」
と、キリアが口をはさんだ。
「目が覚めるまでは、一緒に連れて行きましょう」
と、セイが提案した。
まさか気絶しているあいだに、外に放り出すわけにもいかない。3人ともセイの意見にうなずいてくれた。
「それにしても不気味な傷だったな。モンスターにでも襲われたのだろうか?」
「かもしれませんね」
かなり大きな傷跡だった。
もしも、モンスターから与えられた傷だとすると、それ相応に大きなモンスターということになる。
「まぁ、どんなモンスターが来ても、貴殿がいれば問題ないだろう」
と、キリアはセイを見て言った。
「あんまり頼りにされても困りますけど」
「レフィーさまから聞いてるぞ。王都では私たちのチカラを使って、見事にミリス・ローネ第一王子とレフィーさまの結婚をぶち壊したそうではないか」
「ええ。まぁ」
そのレフィール伯爵はキュリンジ城に残してきた。
無事にやっているだろうか……。
ミリス・ローネ第一王子からは、あれから何も声をかけられていないと聞いている。念話を使えばいつでも連絡を取れる。なんとなく気恥ずかしくて、いまだ連絡は取っていなかった。用事もないのに連絡をするものでもないだろう。
もし何かあれば、レフィール伯爵のほうからセイに連絡をよこすはずだ。
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