《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第21話~シラティウスⅠ~
シラティウスはレフィール伯爵の邸宅ではなく、本城の地下にいるということだった。本城地下までメイドが案内してくれた。
なにゆえ本城地下なんかにいるのか? 「私から言うと先入観を与えるかもしれませんので、本人から聞いてください」というのが、レフィール伯爵の弁だった。
石段をおりて行くと、頑丈そうな鉄のトビラがあった。トビラの前にも布の鎧をまとった女騎士がいた。
地下に入る許可証は、レフィール伯爵からもらっていた。それを見せると中に入れてもらえた。
鉄のトビラが開く。
地下なので暗闇だったが、カンテラが明かりを保っていた。鉄檻があった。中に少女が入っていた。シラティウスだ。
メイド服を着ているのは、フォルモルやキリアと同じだが、腕や足には枷がつけられていた。まるで罪人だ。この場面だけ見ればシラティウスに同情するが、レフィール伯爵が好んでこんなことをしているとも思えなかった。
「えっと……。やあ」
と、我ながら間の抜けた切り出し方だった。どう話しかければ良いのかわからなかったのだ。
「どうしたの?」
と、尋ねてくるシラティウスは、無表情だった。悲しんでいる様子も、怒っている様子も見受けられない。
「レフィール伯爵に言われて来たんだ。君のチカラになってやって欲しい――って言われたんだけど」
「レフィール伯爵から聞いてる。私の印が欲しいんでしょ?」
清らかな声をしていた。
フォルモルの大人びた色気もなければ、キリアのような粛然としたものもなかった。表情がとぼしく、無色透明な感を受けた。
「知ってるなら話は早い」
「ダメだよ。私の印はあげれない」
「もらうって言っても、別に奪うわけじゃないぜ。オレは他人の印をナめると、その相手の魔法を学習できるんだ」
「知ってる」
「じゃあ、どうしてダメなんだ?」
「私の姿を見ればわかると思うけど」
シラティウスはそう言うと、枷のつけられた腕を持ち上げて見せた。つながっている鎖がジャラリと音をたてた。
「捕まってる――な」
「勘違いしないで欲しいけど、別にレフィーさまに捕まえられてるわけじゃない。これは、私から頼んでやってもらってる」
「自分から捕まったのか?」
「そう」
理由を教えてくれるのかと思ったが、シラティウスはそこで言葉を切った。「どうして?」とうながす必要があった。
「私は無自覚のうちにドラゴンになってしまうことがある。暴れてしまうことがあるんだよ」
「それで暴れないために、自分から捕まったのか?」
「そう」
こくりとうなずく。
真っ白い髪が暗闇のなかで揺れた。
「レフィール伯爵は了承したのか」
「レフィーさまはそんな扱いをするのは厭だって言ってた」
「だろうな」
あの女伯爵は、優しい娘だ。
他人を閉じ込めたり、痛めつけたりするような人ではない。あの女伯爵の何を知ってるのかと問われると答えかねる。なんとなくの印象だ。
「私も暴走してみんなに迷惑をかけるのは厭だから、頼んでこうしてつないでもらってる」
シラティウスは淡々と述べる。
まるで他人の話をしているかのようだ。
「厭じゃないのか?」
「厭だけど、仕方ない。みんなに迷惑をかけるほうが厭だから」
「それで、オレに能力をあげれないっていうのは、どういう事情なんだ?」
「あなたも、こうなりたくはないでしょ?」
シラティウスは、あどけない顔をセイに向けた。
チカラになってやれとレフィール伯爵から言われている。しかし、どうチカラになれと言うのか。印だって、重ねてくれそうにはない。
セイは頭を抱えた。
なにゆえ本城地下なんかにいるのか? 「私から言うと先入観を与えるかもしれませんので、本人から聞いてください」というのが、レフィール伯爵の弁だった。
石段をおりて行くと、頑丈そうな鉄のトビラがあった。トビラの前にも布の鎧をまとった女騎士がいた。
地下に入る許可証は、レフィール伯爵からもらっていた。それを見せると中に入れてもらえた。
鉄のトビラが開く。
地下なので暗闇だったが、カンテラが明かりを保っていた。鉄檻があった。中に少女が入っていた。シラティウスだ。
メイド服を着ているのは、フォルモルやキリアと同じだが、腕や足には枷がつけられていた。まるで罪人だ。この場面だけ見ればシラティウスに同情するが、レフィール伯爵が好んでこんなことをしているとも思えなかった。
「えっと……。やあ」
と、我ながら間の抜けた切り出し方だった。どう話しかければ良いのかわからなかったのだ。
「どうしたの?」
と、尋ねてくるシラティウスは、無表情だった。悲しんでいる様子も、怒っている様子も見受けられない。
「レフィール伯爵に言われて来たんだ。君のチカラになってやって欲しい――って言われたんだけど」
「レフィール伯爵から聞いてる。私の印が欲しいんでしょ?」
清らかな声をしていた。
フォルモルの大人びた色気もなければ、キリアのような粛然としたものもなかった。表情がとぼしく、無色透明な感を受けた。
「知ってるなら話は早い」
「ダメだよ。私の印はあげれない」
「もらうって言っても、別に奪うわけじゃないぜ。オレは他人の印をナめると、その相手の魔法を学習できるんだ」
「知ってる」
「じゃあ、どうしてダメなんだ?」
「私の姿を見ればわかると思うけど」
シラティウスはそう言うと、枷のつけられた腕を持ち上げて見せた。つながっている鎖がジャラリと音をたてた。
「捕まってる――な」
「勘違いしないで欲しいけど、別にレフィーさまに捕まえられてるわけじゃない。これは、私から頼んでやってもらってる」
「自分から捕まったのか?」
「そう」
理由を教えてくれるのかと思ったが、シラティウスはそこで言葉を切った。「どうして?」とうながす必要があった。
「私は無自覚のうちにドラゴンになってしまうことがある。暴れてしまうことがあるんだよ」
「それで暴れないために、自分から捕まったのか?」
「そう」
こくりとうなずく。
真っ白い髪が暗闇のなかで揺れた。
「レフィール伯爵は了承したのか」
「レフィーさまはそんな扱いをするのは厭だって言ってた」
「だろうな」
あの女伯爵は、優しい娘だ。
他人を閉じ込めたり、痛めつけたりするような人ではない。あの女伯爵の何を知ってるのかと問われると答えかねる。なんとなくの印象だ。
「私も暴走してみんなに迷惑をかけるのは厭だから、頼んでこうしてつないでもらってる」
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