《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第19話~キリアⅤ~

「殿方の前であんな媚態をさらけ出してしまうとは、このキリア・ユーナ一生の不覚だ」



 キリアはもうメイド服をまとっていた。
 下着姿になっていたときの弱弱しさは消え失せて、凛然とした態度を取り戻していた。



「別に気にすることないですよ。媚態とかじゃないんですから。あれは、仕方のない儀式です」
 厭らしい行為ではない。



 そう思わなければセイとしても、マトモな心境ではいられない。だいたいなんで〝英雄印〟が舌なんかにあるのか。



「怪力魔法は使えるようになったか?」
「ええ」



 腕にチカラを込めると、まるでマグマを流し込んだかのようにたぎるものを感じる。これが怪力魔法の恩恵だろう。



「ならば、さっさと2人で土砂を片付けてしまおう」
「そうですね」



 もうヒザのあたりまで水かさが増している。城へ通ずる側の土砂をどかすことにした。



「ふんっ」
 と、チカラを込めれば大岩すら簡単に運ぶことができる。できるだけ振動がないように、2人で慎重に作業を行った。水かさがいよいよ腹のあたりまで達したとき、道が開いた。



「ここを真っ直ぐ行けば、キュリンジ城へ通じる道がある」



「保護した人たちを先に」
「そうだな」



 33人の女性たちを補助して、全員無事に連れ出すことができた。キュリンジ城の倉庫の中に出たのだが、すでにレフィール伯爵たちが受け入れの準備をしてくれていた。冷えた女性たちを風呂に行かせて、すぐにカラダを温めさせた。セイのほうも風呂に行かせてもらった。



 キュリンジ城には大浴場があった。湯を出す魔法を使える人間を、レフィール伯爵が個人的に雇っているらしい。



(伯爵は風呂好きなのかな?)
 風呂にたいするこだわりが強いように思える。



 風呂から上がってセイは自分の部屋に戻ることにした。戻る道中でばったりと風呂上りのキリアと出くわした。



 キリアはポニーテールの髪を、ストレートに垂らしていた。



「おつかれさまでした」
 と、セイは頭を下げた。



「うむ――」
 と、キリアは気まずそうに目をそらした。



 あんまり気まずそうにされると、セイのほうも気まずい。



「気にすることないですよ」
 と、言っておいた。



「今、考えてみれば、わざわざ貴殿に魔法を授けるよりも、死力を尽くしてひとりで土砂を片付けるべきだった――と思うのだが」



「1人だと難しいって言ってたじゃないですか」



「そうなのだが……」
 キリアの目が泳いでいる。



 あの媚態はキリアの心に深く刻み込まれているようだ。



「結果的に、全員助かった。それで良かったじゃないですか」



「そうだな。もう何も言うまい。救助して33人の女どもも貴殿には感謝していたよ。礼を述べに来たときは、応対してやってくれ」



「わかりました」
 キリアは立ち去ろうとしたようだが、ふと振り向いて言葉を続けた。



「それから貴殿の槍だが」
「なんですか?」



「その槍術はどこで覚えたのだ? あんなに身をかがめて使う槍は、珍しいと思うのだが」
 と、キリアはまっすぐセイのことを見据えた。



「よく言われます。ロイラング王都にいたときの教練で学んだんですけど、どうも身をかがめる癖があるみたいで」
 と、セイは後頭部をかいた。



 癖が強いという自覚はあるのだが、なかなか直るものではない。



「今度、私と稽古をやろう」
「オレごときが相手になるかはわかりませんが」



 ふっ、とキリアは笑みをもらした。



「そう自分を卑下することはない。たしかに貴殿の槍は、戦争で使うような槍ではない。しかし、個人戦――1対1で戦う槍だとして鍛えるなら、きっと化けるぞ。貴殿の槍は身が低いせいで、間合いがわからぬのだ」



 そんなことを言われるのは、はじめてだ。
 自分という存在が認められているようで、うれしかった。



「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」



「うむ」
 と、キリアは立ち去った。
 心なしかその足取りが、軽快に見えた。

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