《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする
第19話~キリアⅤ~
「殿方の前であんな媚態をさらけ出してしまうとは、このキリア・ユーナ一生の不覚だ」
キリアはもうメイド服をまとっていた。
下着姿になっていたときの弱弱しさは消え失せて、凛然とした態度を取り戻していた。
「別に気にすることないですよ。媚態とかじゃないんですから。あれは、仕方のない儀式です」
厭らしい行為ではない。
そう思わなければセイとしても、マトモな心境ではいられない。だいたいなんで〝英雄印〟が舌なんかにあるのか。
「怪力魔法は使えるようになったか?」
「ええ」
腕にチカラを込めると、まるでマグマを流し込んだかのようにたぎるものを感じる。これが怪力魔法の恩恵だろう。
「ならば、さっさと2人で土砂を片付けてしまおう」
「そうですね」
もうヒザのあたりまで水かさが増している。城へ通ずる側の土砂をどかすことにした。
「ふんっ」
と、チカラを込めれば大岩すら簡単に運ぶことができる。できるだけ振動がないように、2人で慎重に作業を行った。水かさがいよいよ腹のあたりまで達したとき、道が開いた。
「ここを真っ直ぐ行けば、キュリンジ城へ通じる道がある」
「保護した人たちを先に」
「そうだな」
33人の女性たちを補助して、全員無事に連れ出すことができた。キュリンジ城の倉庫の中に出たのだが、すでにレフィール伯爵たちが受け入れの準備をしてくれていた。冷えた女性たちを風呂に行かせて、すぐにカラダを温めさせた。セイのほうも風呂に行かせてもらった。
キュリンジ城には大浴場があった。湯を出す魔法を使える人間を、レフィール伯爵が個人的に雇っているらしい。
(伯爵は風呂好きなのかな?)
風呂にたいするこだわりが強いように思える。
風呂から上がってセイは自分の部屋に戻ることにした。戻る道中でばったりと風呂上りのキリアと出くわした。
キリアはポニーテールの髪を、ストレートに垂らしていた。
「おつかれさまでした」
と、セイは頭を下げた。
「うむ――」
と、キリアは気まずそうに目をそらした。
あんまり気まずそうにされると、セイのほうも気まずい。
「気にすることないですよ」
と、言っておいた。
「今、考えてみれば、わざわざ貴殿に魔法を授けるよりも、死力を尽くしてひとりで土砂を片付けるべきだった――と思うのだが」
「1人だと難しいって言ってたじゃないですか」
「そうなのだが……」
キリアの目が泳いでいる。
あの媚態はキリアの心に深く刻み込まれているようだ。
「結果的に、全員助かった。それで良かったじゃないですか」
「そうだな。もう何も言うまい。救助して33人の女どもも貴殿には感謝していたよ。礼を述べに来たときは、応対してやってくれ」
「わかりました」
キリアは立ち去ろうとしたようだが、ふと振り向いて言葉を続けた。
「それから貴殿の槍だが」
「なんですか?」
「その槍術はどこで覚えたのだ? あんなに身をかがめて使う槍は、珍しいと思うのだが」
と、キリアはまっすぐセイのことを見据えた。
「よく言われます。ロイラング王都にいたときの教練で学んだんですけど、どうも身をかがめる癖があるみたいで」
と、セイは後頭部をかいた。
癖が強いという自覚はあるのだが、なかなか直るものではない。
「今度、私と稽古をやろう」
「オレごときが相手になるかはわかりませんが」
ふっ、とキリアは笑みをもらした。
「そう自分を卑下することはない。たしかに貴殿の槍は、戦争で使うような槍ではない。しかし、個人戦――1対1で戦う槍だとして鍛えるなら、きっと化けるぞ。貴殿の槍は身が低いせいで、間合いがわからぬのだ」
そんなことを言われるのは、はじめてだ。
自分という存在が認められているようで、うれしかった。
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」
「うむ」
と、キリアは立ち去った。
心なしかその足取りが、軽快に見えた。
キリアはもうメイド服をまとっていた。
下着姿になっていたときの弱弱しさは消え失せて、凛然とした態度を取り戻していた。
「別に気にすることないですよ。媚態とかじゃないんですから。あれは、仕方のない儀式です」
厭らしい行為ではない。
そう思わなければセイとしても、マトモな心境ではいられない。だいたいなんで〝英雄印〟が舌なんかにあるのか。
「怪力魔法は使えるようになったか?」
「ええ」
腕にチカラを込めると、まるでマグマを流し込んだかのようにたぎるものを感じる。これが怪力魔法の恩恵だろう。
「ならば、さっさと2人で土砂を片付けてしまおう」
「そうですね」
もうヒザのあたりまで水かさが増している。城へ通ずる側の土砂をどかすことにした。
「ふんっ」
と、チカラを込めれば大岩すら簡単に運ぶことができる。できるだけ振動がないように、2人で慎重に作業を行った。水かさがいよいよ腹のあたりまで達したとき、道が開いた。
「ここを真っ直ぐ行けば、キュリンジ城へ通じる道がある」
「保護した人たちを先に」
「そうだな」
33人の女性たちを補助して、全員無事に連れ出すことができた。キュリンジ城の倉庫の中に出たのだが、すでにレフィール伯爵たちが受け入れの準備をしてくれていた。冷えた女性たちを風呂に行かせて、すぐにカラダを温めさせた。セイのほうも風呂に行かせてもらった。
キュリンジ城には大浴場があった。湯を出す魔法を使える人間を、レフィール伯爵が個人的に雇っているらしい。
(伯爵は風呂好きなのかな?)
風呂にたいするこだわりが強いように思える。
風呂から上がってセイは自分の部屋に戻ることにした。戻る道中でばったりと風呂上りのキリアと出くわした。
キリアはポニーテールの髪を、ストレートに垂らしていた。
「おつかれさまでした」
と、セイは頭を下げた。
「うむ――」
と、キリアは気まずそうに目をそらした。
あんまり気まずそうにされると、セイのほうも気まずい。
「気にすることないですよ」
と、言っておいた。
「今、考えてみれば、わざわざ貴殿に魔法を授けるよりも、死力を尽くしてひとりで土砂を片付けるべきだった――と思うのだが」
「1人だと難しいって言ってたじゃないですか」
「そうなのだが……」
キリアの目が泳いでいる。
あの媚態はキリアの心に深く刻み込まれているようだ。
「結果的に、全員助かった。それで良かったじゃないですか」
「そうだな。もう何も言うまい。救助して33人の女どもも貴殿には感謝していたよ。礼を述べに来たときは、応対してやってくれ」
「わかりました」
キリアは立ち去ろうとしたようだが、ふと振り向いて言葉を続けた。
「それから貴殿の槍だが」
「なんですか?」
「その槍術はどこで覚えたのだ? あんなに身をかがめて使う槍は、珍しいと思うのだが」
と、キリアはまっすぐセイのことを見据えた。
「よく言われます。ロイラング王都にいたときの教練で学んだんですけど、どうも身をかがめる癖があるみたいで」
と、セイは後頭部をかいた。
癖が強いという自覚はあるのだが、なかなか直るものではない。
「今度、私と稽古をやろう」
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