《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

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第16話~キリアⅡ~

 城門は他の女騎士たちにまかせて、セイとキリアは外郭の外に出た。キュリンジ城の内部の構造は、他の城と大差はなかったので、だいたいの構図がわかっていた。ただ、城下町に関しては不案内だ。キリアについて行くしかなかった。



「こっちだ」
 と、石畳のストリートを駆けて行く。だが、一直線に走っているわけにはいかなかった。モンスターたちから身を隠しながら進む必要があったのだ。



 裏路地にもぐり、木箱の影に身をひそめる。



 キリアはジッとセイのことを凝視していた。フォルモルのような色気はないが、その目にはまた違った魅力があった。潔いというか、死地に赴く騎士のようなチカラ強さがある。目つきが鋭いのだ。



「どうかしましたか?」
 見られていることに気まずくなって、セイはそう問うた。



「いや。これは失礼。貴殿はホントウに不思議だな――と思ってな」



「不思議ですか?」
「この雨に降られてもなんともないのだな」



「それが〝英雄印〟の強みみたいですから」



「私の知ってる男は、みんなモンスターになったよ。私の父は傭兵団をやっていてね。傭兵団ごとレフィーさまに雇われていたんだ」



「じゃあ、キリアさんも傭兵だったんですか?」



 キリアで良いと言って、キリアは続けた。



「私ももともと傭兵だ。しかし、女が傭兵をやるのは反対だって父に言われてね。それで私だけレフィーさま御付きのメイド兼騎士になった。今では、メイド長の1人をやらせてもらっているがな」



 傭兵は、金さえもらえば何でもやる集団だ。金さえもらえれば昨日の雇い主に、平気で剣を向ける。もちろんその分、危険も多い。戦いの中に身を投じて生きていかなければいけない。キリアの性格は、そんな過去に由来しているのかもしれない。



「私の父が率いていた傭兵団は、この雨で全滅だ。男ばかりの傭兵団だったからね。私ひとりだけ残されてしまった」



 キリアはそう言って、己が手に視線を落としていた。



「――」
 セイは黙って耳を傾けていた。




「おっと、失礼。この雨で不幸になった者も多い。貴殿に話すようなことではなかったな」



 キリアの口調には湿り気など、まるでなかった。まるで気にしていない、というふうに装っている。



 しかし、ずっと一緒にいた仲間たちを失ったのは辛いに違いない。



「なんでも言ってください。オレで良いのなら聞きますよ」



「優しいのだな」



「フォルモルさんが言ってました。オレには何でも話たくなるそうです。話すとすごく気分が楽になる――って」



 ふっ、とキリアは笑った。



「それは〝英雄印〟のチカラではなく、貴殿自身の体質なのであろうな」



「そう――なんですかね」
 ホめられているのか、けなされているのか、よくわからなかった。



「無駄話が過ぎた。行こう。逃げ遅れた者たちはすぐそこだ」
 と、キリアは立ち上がった。

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