《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第7話~3人のメイド~

「レフィーさま」
 頭上から声がした。


 
 大きな影が落ちてきた。見上げる。巨大な生物が空を飛んでいた。白銀のウロコに包まれており、巨大な翼が生えていた。そして、長大な尻尾が生えている。



「まさか……。ド、ドラゴン!」



 あれもモンスターなのかと思って、セイは腰を抜かした。ドラゴンなんて神話でも登場しない、架空のモンスターだと思っていた。しかし、レフィール伯爵は平然としていた。



「案ずることはありません。あれは私の手の者です。どうやら間に合ったようです」



「ドラゴンが――ですか?」
「いいえ。あれは人です」
「ひ、人ぉ?」



 どう見てもドラゴンだ。



 ドラゴンは強大な風圧とともに着地した。レフィール伯爵が吹き飛ばされぬように、セイはレフィール伯爵の華奢なカラダを抱き寄せた。手近な木にしがみついていた。



 ドラゴンは、着地するやいなや周囲のモンスターたちを蹂躙していった。踏みつけ、食いちぎり、尻尾で叩きとばしている。



 ドラゴンの上から2人の女性が跳び下りてきた。2人とも、黒いドレスに白い前掛けをつけていた。



「メイド?」
 と、セイは疑問を口にした。あまりに場違いな感があった。



「レフィーさま。御無事でありますか?」
 と、紫色の髪を真ん中分けにしている女性が言った。背が高くてセイと同じぐらいの身長があった。走ってくるさいに、凶悪なまでに大きな胸が揺れていた。



「ええ。セイに護衛してもらっていましたので、私は無事です」
 レフィール伯爵は両者を紹介した。



 女性はフォルモル・ラレンチェと言うそうだ。フォルモルには大人の女性の色気があった。品定めをするような目を送ってきた。全身を見透かされているような心地だった。



「彼は〝英雄印〟の持ち主です」
 と、レフィール伯爵はセイのことを紹介した。



「では、この殿方が?」
「ええ」



 レフィール伯爵の言葉を受けると、フォルモルの目つきが変わった。面白いものを見つけた。そんな目をしていた。



「なんでしょうか?」



 あまりにブシツケな目を送ってくるので、セイはやや鼻白む思いでそう問うた。



「〝英雄印〟を見せてもらってもよろしいかしら?」



「こんな時にですか?」
 周囲にはモンスターたちがいるのだ。



「心配ないわ。見ての通りよ」
 たしかにドラゴンが暴れまわっているので、モンスターたちは潰走をはじめていた。



「これです」
 セイは舌をベーッと突き出した。



 正直、あまり他人に見せたいものではない。だが、躊躇するとよけいに照れ臭い。平然をよそおって、舌を出した。



「まぁッ。キレイな六芒星。これが〝英雄印〟ね!」



 ビックリした。
 フォルモルは顔を接近させると、セイの舌をつまんできたのだ。



 セイはあわてて顔を離した。



「な、なにするんですか」



「これは失礼したわ。珍しいから興奮しちゃって。ごめんなさいね」



「つっ……」
 セイはワキバラをおさえた。ゴブリンの爪の突き刺さった痛みが、ぶり返してきたのだ。



 フォルモルは、傷を治療できるチカラがあるということだった。フォルモルは手のひらに白い光をまとった。その手が傷口を触れると、たちまち傷口が閉じた。同時に痛みも引いた。



「キシャァァァッ」
 ゴブリンが1匹、跳びかかってきた。
 セイは治療を受けていたので、咄嗟に反応できなかった。



「せやァ」
 と、もう1人いたメイドが、ゴブリンを殴り飛ばしてきた。



 そのコブシを受けたゴブリンは木端微塵に粉砕していた。緑色の肉片が飛散した。



「す、すご……」



「私はキリア・ユーナだ。一時的に筋力を増強する魔法が使える。よろしく。〝英雄印〟を持つ者よ」



 ゴブリンを殴りつけたその手で、握手を求めてきた。緑の血に染まった手と握手するのは抵抗があったが、拒否するのも失礼かと思って握手に応じた。



「どうも」
 キリアは黒い髪をポニーテールにしていた。フォルモルの大人びた色気はなかった。だが、凛然とした美しさがあった。目つきは鋭く、戦場におもむく騎士のような面持ちをしていた。まるで刀剣の切っ先のような横顔だ。



「グラァァァッ」
 と、吠えていたドラゴンが歩み寄ってきた。



 もしや襲ってくるのではないかと身構えた。が、ドラゴンは人の姿になった。やはりメイド服をまとっている。



「ドラゴン――少女?」



「私は、シラティウス・チロ。ドラゴンに変身する魔法を使える」



 純白の髪をロングストレートに伸ばしていた。女性というよりかは、少女と言える風貌をしていた。フォルモルのような妖艶さもなく、キリアのような凛然さもなかった。そのかわり、可憐さがあった。桜色の唇や丸い鼻は、子供のような幼さを残している。



 フォルモル、キリア、シラティウス――3人とも、レフィール伯爵の女騎士兼メイドだということだった。

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