《完結》男が絶滅していく世界で、英雄は女の子たちをペロペロする

執筆用bot E-021番 

第1話~解雇~

「よし、次ッ」
 騎士団長がそう叫んだ。



 練兵場には、騎士たちが並ばされている。城の内郭に囲まれた練兵場は、緑の芝におおわれている。地の鮮やかな緑とは反して、空は灰色ににごっている。空気も湿り気を帯びている。雨の臭いがする。いまにも降り出しそうだった。



「おい次ッ。クロカミ・セイッ」
「あ、はい!」



 名前を呼ばれたセイは、あわてて前に出た。



「ッたく、チンタラしてるんじゃない。そんなんだから、いつまでたっても一兵卒なんだろう」



 他の騎士たちから、クスクス、笑い声がさざめく。



「申し訳ありませんッ」



 セイは今年で16歳になる。14歳のときに見習い騎士になり、それ以来ずっと雑用をさせられている。実戦に駆り出されたことはない。戦争後の武具回収のさいに盗賊とやり合った程度だ。



 でもいつか、戦場に出て武功をあげてやると夢を抱いている。



「今日は国王はじめ、貴族の方々が見学しておられる。気を引き締めろッ」



「はッ」



 すこし離れたところ――城壁の上から貴族連中が見守っていた。華美なドレスをまとい、きらびやかな装飾品で着飾っている。まるで見世物でも見るかのように、騎士たちを見下ろしていた。



 こちらを指差して笑う者や、談笑している者の姿が見えた。まだ雨は降っていないが、付き人連中が貴族の頭上に傘をさしだしていた。



「今日は、お前の名誉挽回の日でもあるのだからな」



「承知しております」



 武芸の優れた者を残して、逆に劣った者を解雇することになっていた。今、行われているのは、それを見定めるためのテストだった。普段は評価されない者でも、こういう日を利用していっきに昇進することがある。



 貴族の方々に見られていると意識すると、緊張をおぼえる。落ちつけ、落ちつけ――とセイは胸裏でつぶやいた。



「よし、来いッ」
「はっ」



 槍を構える。
 石突き側を右手でつかみ、穂先側を左手でつかんだ。穂先といっても、これは訓練なので、先端は布を丸めたものになっている。腰を低く落として、地を蹴った。



 いっきに間合いを詰める。
 槍を突き出した。



 騎士団長はヒラリと身をかわすと、足払いをかけてきた。足払いをマトモに受けたセイは、シリモチをつくことになった。



 急いで起き上がろうとしたのだが、眼前に木刀の先端を突き付けられた。



「ひっ……」



 眼前ギリギリだった。
 あわや突かれるどころだった。



「槍は突いた後にすぐ引くことだ。だいたいお前の構えは腰が低すぎる。間合いを誤魔化すにしても、もう少し腰を高くするものだ」



「はい」
「もう良い。下がれ」



 騎士団長はそう言うと、貴族たちのいる城壁へと目をやった。採点が行われる。貴族の方々は点数の書かれた紙をあげた。



「0点」「0点」「0点「1点」「0点」。



 20点以下の者は、解雇されることになっている。



「決まりだな」
 騎士団長が軽んじるような目を、セイに向けてきた。



「ま、待ってください。もう一度だけ……」



「チャンスは1度きりだ。これはみんな平等に行われていることだ。残念だったな」



 一緒にいる騎士たちが、クスクス。



 城壁から見下ろしている貴族の方々も、セイのことを指差して笑っていた。ブザマな結果だったからだろう。



 あまりに不甲斐ない結果に、顔の火照りを覚えた。今すぐにでも逃げ出したい気分だった。



(終わった……)



 いつかは武功を上げるのだと夢見て2年間。ひたすら雑務をこなしてきたが、無駄な努力に終わったようだ。



 大の字になって寝転がった。
 曇天が見えた。

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