REMEDY
末期
ゴソッ…ゴソッ
宿、布団の中、体を動かす
指先から腰にかけて動かす
ガサガサッ
体の動かしたところに布団の感触が伝わる
触り心地を感じていないと自分が生きてることを忘れてしまう気がした
何が自分の生きていると感じさせてくれるのか、
何の為に生きているのか、
ぼやけて、
考えられない
ただ何か感じていないと不安だった
…………
陽が昇って、沈む。もう、何回も見た。見飽きた。そんな陽を浴びながら、起き上がる。
街に出る前に依頼を確認しようと思ったが、やる気がなくてしなかった。街に出てからもしなかった。
街を歩いていると今日は全然人を見かけない。さらに進み、いつもの出店の並んだ通りに差し掛かる。いつもの賑わいはなく店主達もいない。しばしば訪れる雑貨屋にいったが、この店の店主もいなかった。
トントン
不意に後ろから肩を叩かれる。振り向いてみるとあの時の少女が立っていた。
ありえない……死んだはずなのに……
「ねぇ、お姉さん、今どんな気持ち?」
!?……確か、あの男はお人形だと言っていた。言われた事をこだまするだけのはずなのに…………
「ねぇてば、どんな気持ち?」
「……わからない」
「私はね、すっごく気持ち悪いよ」
グサッ……
少女の手で隠されていた小刀が僕の腹部を貫く
「殺してくれた時のお返しだよ。ねぇ、痛いでしょ?」
血が刃の合間からチロチロと流れる
体が熱くなるように感じた
刺されたが全く警戒心や恐怖を帯びることは無かった
ただ驚いて、幼子が何かを見つけた時のように瞳を丸くして、少女を見つめた
仕草、表情、瞳の色、どこをとっても生きている人のよう
さらに言えば、自分よりも人間らしく鮮やかに生きているとさえ思えてくる
そして、痛みすら忘れてただ見つめ続けた
「これで私の分は終わり~。後は皆からお返しを貰ってね!」
「……貴方は私を恨んでたんだね?」
「…………」
「ごめん、でも、どうして生きているの?」
「…………」
「……貴方はやはりお人形?」
「…………」
なんだ……、やはり人形か。
ても…………、さっきの活き活きとした様子はどう見ても生きてる人間だった
あんな風に活き活きとしたことなんて僕にあっただろうか
少女のあの様子に比べれば、まるで死んでいるかのような気がする
だが、少女は人形でしかなく、誰かの手によって動き、誰かの手によって止まる
それを担う誰かはけして少女ではない
つまり、少女は自分で考えて行動することがない
しかし、自分で考えて行動することだけで生きているようには思えない
少し違ったか。
何かによって生きていることを善とさせられて、生き続けることを自分の根底に仕組まれた人は本当に生きている人といえるのか
たとえ自分で考えて動くとしても根幹に生きていることという枷をつけられた人は自由に人間らしく生きているといえるのか
確かに、人形は生きている人とはならない
しかし、枷をつけられ何かに自由を奪われた状態はあの少女と大して変わりないはずだ
そうであるならば、あの少女のように鮮やかに振る舞うことすら出来てない僕は生きていると言えるのか
ままは強く生きてと言ったけど、僕は…………私はちゃんと生きているの?
「なぁ、ぼーっとしてどうしたんだ?」
「あんたをなぶるには変わりないがせめて剣を握ってくれ」
意識を外に向け直すと、個々様々な武装である大集団に囲まれていた
「さっさと構えろ」
「こっちとしても胸くそ悪いが……まぁ、頑張れよ」
集団から一斉に攻勢をかけられる。
僕は身構えいなそうとするが払いきれない攻撃から傷が出来ていく。
突出した者を斬り伏せた時に背後からの攻撃で背中に一つ
支援攻撃する魔道士を数人斬り伏せた時に横脇から胴に一つ
集団後方に突貫して数人斬り伏せた時に読み切れなかった方から脚に一つ
………………
…………
……。
体の至る所に深々とした傷ができ、血が噴き出していく
体に力が入らなくなり、意識が絶え絶えになっていく
死んでしまうだろう
ままは悲しむだろう
だけど…………
これが精一杯い生きた結果なら、ままも許してくれるはず!
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