REMEDY

形の無い悪魔

進行

…………

食事を終え、宿に戻ろうと店を出る。
横に並んで友達と街中を歩いて行く。
街中の様子は薄明るくてどこか妖しさのある幻想的な景色であった。
人通りに関しては夜は真昼に比べれば少ないがそれなりにある。

 「あ、あっちに行ってみない?ほら、あそこ風当たりよさそうだし。風に吹かれたかったんでしょww」


そう言って、指で指した方向に目を向ける。
家と家の間の小道の先に大きな河が流れているのが見えた。

 「あそこの土手は開けてて絶対、風通しいいよ!!」

    「うん…!?」

突然、手を掴まれ土手の方へと走り連れられる。
いつの日だったろうか。
確か、中学の時もこうやって彼女に強引に連れられて走ったことがあった気がする。

 「なんか、前もこんな風に走った気がするw」

    「そう…だねww

土手につくと互いに見合って笑いあった。
なんだか、中学生に戻ったみたいで楽しかった。

    「前はなんでこんな風に走ったけw

 「えっと……あ、確か!あんたが作ってきたお弁当を忘れた時じゃなかったっけ!?」

    「あー、あったねw


……………………………………………………

 『弁当どうしたの?』

    『………ない。』

 『購買行ったの?』

    『行かない。』

 『え!なんで?』

    『お金ないし…。』

 『じゃあ、私が貸したげるから購買行こ!!』

    『いや…いいよ、気にしないで。』

 『いやいや、あんた飯抜く気なの?』

    『うん。』

 『あんた、めちゃくちゃ細いのに飯抜いたら倒れんで!!』

    『いや、よくあることだから。』

 『じゃあ!今、飯なしはなおさら駄目!!ほら、購買行くよ!』

グイッ

………

 『ほら、折角買ってきたんだから、早く食べて!!授業まであんまし時間もないし!』

    『でも、これ…私が買ったんじゃないし…。』

 『いいから!!私の奢り!とっととくっちゃって~!』

ムグッ

口に放り込まれ、咽せながら見た彼女の笑顔は輝いて見えた

……………………………………………………

 「懐かしいわ~ww」

    「強引だったねww

 「別に悪いことした訳でもないし、いいでしょww」

    「うん!w」

なんだか、普段はならないくらい気持ちが高揚していた。
楽しかった。
いつ以来か分からないくらい気分が上がってた。
本当に、楽しかった。


 「ひゃー、この川、本当に大っきいよね~。一体何処まで続いているんだろ~wwねぇ、川が何処まで続いているか見てみない?降ってみよ!?ww」

    「いいよ、行こ!w」

川に沿って降って行くと水門に差し掛かった。そこをくぐって街の外に出た。

 「海まで通じてるかな?w」

    「さぁ?わかんないよw」

 「じゃあ、行けるとこまで行こ!!」

……

しばらく歩いたが全く終わりが見えない。
先は結構長そうでこの川の流れに沿って行っても終わりがなさそうに思える。海までは遠いようだ。そもそも海まで通じているのか分からないが。そろそろ戻ろうと言おうとした時……

「そやつが、調査対象か?」

急に茂みから一人の男が出てくる。そして、男が彼女に話しかけた。

 「あ…………、いえ違います。」

「ふむ、随分と似ているが?」

 「そうですか?ほら、よく見ると違うんじゃないですか??」

「うーむ、分からん。ところで、仲良さげだが、知り合いなのか?」

 「はい。中学の時からの友達です。」

「……そうか、まぁ、これから方針を話し合う手はずだ。先押しにはなるが、お前以外全員揃っている。行くぞ」

 「……はい。」

2人が僕を置いて、歩いていく。
……いやだ、また一人は。やっと、友達にあえたのに……。
寂しいのはいや…………

    「……行かないで。」

「おっと、一つやり忘れがある。」

急に男が立ち止まり、こちらを振り返った。それにつられ、彼女も止まる。

「一つお前にやってもらはねばならないことがあってな。」

  「……はい、なんでしょうか?」


1拍置いて、男はじっくりと僕を見つめて言う。


「後ろの中性的な奴を……殺せ。」


僕はその男の見つめる瞳がまるで虎が獲物を狙うかのように、じっくりとただ僕を見つめていることに恐怖をかんじた。

 「え!なんでですか!?一体、私の友達に何かあるのですか!?」

仕事・・は対象を特定してここから出すことだ。故に、お前を疑っているわけではないが、こいつを対象であると仮定しよう。すると、今ここでこいつを殺せば、後は対象についてお前から聞き出せば良いだけとなる。違っていたとしても、また探せば良い。何も問題ない。それに今の話しが聞かれてしまったのだから、より深く探られる前にさっさとここから出さなくてはならない。」

 「え!……でも、しかし……。」

「私情を挟むな!!仕事に集中しろ。従わなくば、解雇だけではすまないぞ」

男は言い終わった後に杖のような槍のような武器を彼女に渡した。

 「………………、ごめん。」

彼女もこちらを振り向いた。
涙目だった。

    「……どういうこと?……友達だよね?殺すの?出すってどういうこと??……ねぇ、裏切りなの!?」

 「ごめん、何も言えないの……」

「早く、やれ!」

彼女は涙を頬に垂らし、充血した目で苦しそうな顔をしていた。その姿のまま、ぶつぶつと何かを唱え出した。恐らく、魔法。だから、唱え終わる前に懐に飛びつこうとする。すると詠唱をやめ、槍先のようなので、突いてくる。魔導士は攻撃系統の魔法しか使えない。そのため、手で止めようとする。しかし、篭手と手は貫かれた。唐突に手を貫かれて、驚愕しながらも、槍が手の次に胴を貫かんと伸びてきたため、とっさに距離をとる。その時、強引に引き抜いた手が痛々しくなっていた。
彼女が連れ走る時に握った僕の手……はこの貫かれた手であった。


    「どうして……」

「この武器が気になるのか?」

    「…………」

「この武器は全武装能力を持っていてな、回復すらも使用することができ、各能力も高い。まさに万能武器だ。勿論、これは我々しか所有してないが……まぁ、悪く思うな」

そう言って、男は若干、嘲笑気味に薄く笑った。

理不尽だった。


………

彼女を斬りふせるのはそこまで難しくなかった。

手数は多くあったが、戸惑い戸惑いでぎこちない動きであったため、以外と簡単であった。最後に

『これがあなたにとっても1番よかったのに……』

って言っていたが、方便もほどほどにして欲しかった。彼女を斬った後すぐ、目の前が急に曇った。手で目元に触れると涙が出ていた。なんでだろうか……分からなかった。
色々な感情が混ざったのだろうか。考えてもやっぱり、分からなかった。

男の方はというと

「お前は本当に人間か?化け物ではないのか?」

    「人間」

男は四肢に重度の傷を負って立ってるのがやっとだった。

    「手強かったけど、さよなら」

「まて、最後に、聞きたいことがある。」

    「なに?」

「この前、倉庫後で男を殺したのはお前か?」

    「……ええ・・


男がにやりと笑ったのが気味が悪くて即座に首を切り落とした。

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