REMEDY

形の無い悪魔

副作用

僕は一人
だから、何も気にしなくていい
 こどく
であることは文字のみが頭の中を横切るだけで、 なにもかんじない


原則“なかま”とお互いが設定した時、一つの“依頼”を共有してこなすことが出来る。つまり、“なかま”がいれば“みんな”で一つ行えばよいのだ。

 故に、僕は一人だから負担が大きい
いつも朝から夜にかけてひたすら“依頼”をこなすだけで一日が過ぎていく。体を洗うこともしないまま眠ってしまう日がしばしばある。さらに、ここ最近は普段より時間のかかるものが多くて、寝不足気味であった。それでも休むことはできない(死ぬのは嫌)ので
ただ生きるのに精一杯であった


……今日も“依頼”が届いた
“廃墟に小ぶりの地龍が出たから退治してきて欲しい

なお、今回は共闘の依頼ですので組める方がいらっしゃれば、その方と仲間になって下さい。もし、近くにいらっしゃらない場合はこちらで任意の相手と仲間にすることが可能です。その場合、貴方の右腕を今から2分以内に30秒間挙げて下さい。”


 “仲間?”いないけど組まないといけないのか? でも、死にたくはない

考えに耽る内に“依頼”が届いてから1分ぐらい経つまで手を挙げ忘れていた


“依頼”された場所の廃墟は林の中にあった。道中、林にさす陽射しが暖かく寝不足と蓄積された疲労により、足を止めて、ここでこのまま眠れば気持ち良いだろうと思った。


廃墟には先客が一人いた。その人はすらっと
した細身で僕と同じ剣士のようだ。よく整った顔でお人形さんみたいだ。向こうもこっちに気づいたみたいで語りかけてきた。

「こんにちは、初めまして。貴方が今回、仲間にならせて頂く相手でしょうか?」
「はい、恐らくは」
「そうですか、では宜しくお願いします。」
「よろしくお願いします」
「どうやら、あれが今日の依頼内容ですよ」

廃墟は(建造物と言っては正しくないのでは?)原型をとどめておらず、敷地のみとなってあり、その中央に成人くらいの大きさの地龍がいた。無理難題では無さそうだった。

「今日、会ったばかりですので複雑な連携みたいなものはとれないと思いますが、お互いに邪魔にならないよう配慮して一緒に依頼を成し遂げましょう」
 
そう言って、
見せた柔和な笑顔が印象に残った

地龍は案外、近付いて見ると高さが成人男性の2倍くらい大きかった。交戦に入ると、地龍が激しい勢いで引っかいてきたり、咬もうとしてきた。それに、こちらが攻撃を加えようと怯むことなく、寧ろより激しく攻めてくる。なるほど、もし一人で相手にするなら、それは自殺行為だ。

順調に息を合わせ、後少しで倒せそうという時に突然、体に力が入らなくなった。地龍が強力な顎でまさに咬まんとする時である。僕は必死に退けようとするも、疲労のためであろうか、一度抜けた力が元にもどらず、地龍の咬みを退けること、躱すことも出来なかった。もう、死ぬしか無かった。だがその時、

「どうかしましたか?!」

なかま が地龍の体の反対側から急遽、僕の方にやって来て、咬もうとする地龍の顎を剣で反らし、僕を抱えて一旦、距離を取った。

「大丈夫?」
「分からない、体に力が入らない」
「取りあえず、君は休んでおいて  後は僕が一人でやりますから」
「えっ、でも…一人では厳しいのでは?」
「大丈夫ですよ、もう慣れましたので」

そう言って飛び出して行くと、再び暴れだす地龍の攻撃を鮮やかにいなして、鋭く、隙の出来た所に剣筋を入れていく。狂いなく、美しい動きで攻撃する姿は思わず、
見とれてしまった

ドッタン

地龍が力尽き、体の緊張が解け、動かなくなった。
「……これで終わりか。中々、しんどい相手だった。  ねぇ、君、もしかして、女性かい?男みたいな恰好しているけど、どことなく女性のように見えるんだよ。」

「?!…いえ、です。」
「そうですか、すいません。ところで、もし宜しければですが、このまま一緒に仲間のままでいませんか?僕も君も独り身のようだし、折角の機会ですので、どうですか?」

僕は悩んだ、悩んだが、今回のことを考慮すると“なかま”のままでいることが一番であることは明確であった

そうして、
「ありがとう、改めて宜しくお願いします。 そうだ、自己紹介まだですよね。本名はお互い言いにくいかもしれませんので、簡単に、ケイ・・と呼んで下さい」


その夜、夕食を共にし、僕はケイをいつもの宿屋へ招いた。
どうやら、ケイは今まで野宿していたらしい。そこで僕がケイに
   それでは体に悪いよ
と諭すとケイは喜んで付いてきてくれた。

その日から少しの間で仲がとても良くなって、

「あの、部屋が別々だと面倒くさいことが多いだろうし、お金も余分にかかるだろうし、一緒に過ごさないか?」

「うん、ケイ」

今日から僕はケイの部屋で過ごす

 ケイと受け付けで部屋を同じにして貰うよう頼みに行った。返事をしてから、受け付けまでの道中も何となく、胸の奥がわずかに揺れるように感じた。

カチャ

ケイが自分の部屋の扉を開けて、一緒に中に入り、一緒に寝台の上に腰掛けた。そしてあの日、出会ってからあったことやどうでもいいことを話して盛り上がった。
そして、

「あのね、聞いて欲しいんだけど。僕はケイに嘘をついたんだ。」
「どういった嘘?」
「実は、本当は、じゃなくて女の子なんだ。」
「あ、ああ。やっぱり、そうだったんだ。」
「ごめんなさい」
「いいよ、最初からそう思って君に接してきたから」
「え、なんで?」
「君は容姿や立ち振る舞いも女性らしく、とても可愛いから」

言われ慣れない言葉だからか、
ケイに言われたからか、
わからなかったけれど、
 
照れくさかった

「…そうだ、結構話し込んでしまったから、喉が渇いたね?お水を酌んで来るよ」

そう言って、ケイが出て行くのを見送ると、
さっき、話してしまったことについて、
思い耽ってしまった。



『ごめんなさい、お母さん』

『 貴方は男よ。
  男として生きなさい。
  もう二度と、女として振る舞うのは
  辞めなさい。 』



……つい、懐かしい・・・・記憶を思いだしてしまった。嫌な思い出だ。なぜ、あんな母親の言うことを聞いていたのだろうか?

…そうするしか、無かったんだろうな

コンコン

「ごめん、手が塞がってるから、開けてくれないか」

 そう聞くと立って、扉を開き、ケイが入って来るのを確認すると、また、一緒に寝台の上に座った。

「はい、お水だよ」
「ありがとう」

ゴクッゴクッゴクッ

僕はケイから貰った水を一気に飲み干す
「飲んで何とも無いかい?!」
「え、ただのお水だけど?」
「そうだよね…ははっ、何聞いてんだろうね」

クスッ

何とも可笑しなことを言う、ケイ

僕は貴方が好きなのかもしれない

「まだまだ、話し足りないや。そういえば、俺にも最初の頃は仲間がいたんだ。こっからはそいつらについて話そうと思う」

「うん、聞かせて」

「…………、そろそろ時間だ」

ドサッ

ケイが僕を寝台に押し倒した

僕はケイの急な行動にどぎまぎした

「…はぁー、はぁー、やった。やっとだ、やっと、君をこの手にできる!どうだい、体が痺れて、動かないだろう?あ、でも君に奴らについて話すんだった」

  ケイがいったい なんて いっているのか  わからない

「そうだな、奴ら、無骨で無学な俺の最も嫌いなもん達だった。 すぐ、互いに慣れると喧しく騒ぎたて、街でも周りの目を気にすることもしない。仕舞いには、夜更けに 『皆で外に出て、夜の街を探検しようぜ!』『『さんせーい!!』』…と言いだし、その時は辟易した。だから、二回目の“依頼”の時、討伐対象の巣穴の中で奴らの腱を一斉に切って、足腰立てなくしてやった。そして、遠くからどんな風に絶望して、断末魔を上げて、死んで逝くか、鑑賞したんだ!!  …まぁ、あんまり素敵で無かったのが非常に残念だったけど。」

怖い こいつは本当にケイ?
僕の良く知っているケイじゃない
こいつは化け物かなんかじゃないか

「ああ、今から君のような素敵な女性を、ゆっくり、じっくり、味わって、嬲るように殺せると思うと興奮冷めやらないよ」

こいつは化け物だ バケモノだ

殺さないと コロさないと

コロサナイト

僕はとっさに、近くに立て掛けてあった剣をとって、バケモノ の首元に叩きつけた

「なっ、どうして……」
僕はその首が落ちると、首と体が光に包まれて消えるのを見た。

しばらく、放心状態だったけど、ふと、何故体が動いたのか疑問に思った

そうして、しばらく考え込むと、あることを思い出した。

「よっしゃ!初依頼、達成!!」
「やりましたね~」
「お?なんか急にお守りみたいなのが出て来たぞ!」
「お、おおそらく、4人…皆の分、あ、あると思います。」
「効果は…5%の麻痺回避 ですねー」
「あちゃー、やっぱ、ただのお守りか!」
「ほら、お前の分だぞ」

そうして、僕は服の内側でぶら下げていた、お守りを獲た時のことを思い出した。

僕は不思議な気分になって、
そのまま眠った

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