女神と天才の異世界冒険譚

たぬきち

オーグレタ①

「…………」

 オーグレタは一人、古びた小屋で時計を見ていた。

 そろそろか。

 時間を確認したオーグレタは地面に転がっていた四人の人間を外に出す。

 投げ飛ばされた四人は小さな声で呻く。まだ生きてはいるようだ。

「さあ、お前らも見ようじゃないか。あの街の終わりを」

 オーグレタは四人に話しかけると、街の方を見る。

(楽しみだ。こうまで上手くいくとは思わなかったが……馬鹿な女神で助かった)

 そんな事を考えながらその時を待つ。道化を演じてまで見たかったその時を。

(……そう上手くはいかないか)

「オーグレタ! 手紙はここにある。このままではお前も爆発に巻きこまれるぞ? それが嫌ならスイッチを返すんだ」

「のじゃのじゃ返すのじゃ!」

 アリスとあの時の人間の男か。

 声のした方を振り返ったオーグレタは、つまらなそうにため息をつく。

「……最悪だな。無駄な事をしおって……。我は転移が使えるのだぞ?」

 街が爆発する所を間近で見るためにこの場所に留まっていたオーグレタだったが、近づかれては仕方ないと、転移しようとする。

 だが、

「まあ、そうなるよな……」

 男がそう呟くと同時に世界の時間が停止した。

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