女神と天才の異世界冒険譚
ともだちひゃくにん―アリス編―④
「全く……しょうが無い奴らなのじゃ!」
アリスはそういうとドカッと乱暴に椅子に座る。
サオリは意気消沈した様子でエリーとマリーと話している。何故、あの状況で負けてしまったのかを相談しているようだ。
「悪いが、ワシは負けるつもりはないぞ? 例え頼まれてもな」
アリスはラックを睨みつけると、自信満々に言い放つ。
「あはは。急に凄い自信だね?」
「もうわかったのじゃ! お主の能力は……」
溜めを作るアリス。ラックは笑みを浮かべたままだが、じんわりと額には汗が浮かんでいる。
「……確率操作、じゃろ?」
ドヤ顔で告げるアリス。しかし、
「へ?」
その一方で、ラックは間の抜けた表情を浮かべる。考えていた事と違ったようだ。
「まず最初のポーカーじゃが、これは単純にファイブカードが出来る確率を上げたのじゃろう? お陰でデッキの並びがおかしくなりエリーも揃っておったが」
「いや、普通に考えてそんな能力持ってたらAのファイブカード作ると思うんだけど……」
「更に! ブラックジャックでは積み込みと確率操作が混ざった結果、あんなデッキになったんじゃろう?」
「積み込み?」
「更に! 更に! 最後の丁半博打では、サオリが振る前に半や丁の確率を上げて答えていただけじゃろ? 最後に狼狽えたのはワシにお主の確率操作が効いていなかったからじゃないか? 確かにあの瞬間、無意識のうちに出目を半にしそうになったのじゃ。だがしかし、気合いでなんとか丁に変えたのじゃ!」
「気合いって……」
呆れたようにアリスを見るラック。間違っていると言いたいが、勘違いはプラス要素だ。黙るしか無い。
「そこでワシが行うゲームは……数取りゲームじゃ!」
「……? それは知らないなぁ」
「1から順に数字を言っていき、30を言った方が負けなのじゃ! 一度に言える数は三つまでじゃ」
「……ふーん。なるほど。良いよ、それにしようか」
ラックは少し考えると、頷いた。
「ワシが先行じゃ! 1」
無理やりに先行を取るアリス。
何故なら……このゲームは先手必勝だからだ。
「……2、3、4」
数取りゲームでの必勝法は負けの数字の一つ前を取ることだ。
今回で言うなら29。そして、一度にいえるのは3つまでなので、そこからマイナス4していった数字を取っていけば必ず勝てる。
つまり。
「5」
「6」
「7、8、9」
「……なるほど。そういうことか」
ラックもここで気付いたようで苦笑いを浮かべる。
「ずいぶんと卑怯だね」
「何とでも言うのじゃ。勝ちは勝ちなのじゃ!」
まだ勝ってはいないが、それも時間の問題だろう。
「でも、君が30と言う確率を上げれば僕は勝てるんじゃないのか?」
「はっ! 起こりえない事まで操作できるなら、勝てる方法なんて無いのじゃ! その時は素直に負けを認めるのじゃ」
アリスの推測では起こりえる事の確率を操作できる能力だと睨んでいる。
つまり、アリスが自分で決めた数字以外を言うことはありえないので、操作できないということだ。
「ふーん……10」
「11、12、13」
「14、15」
「16、17」
「18、19」
「20、21」
「ところで掛け詞ってどんな意味か知ってるかい?」
それまで坦々と数字をあげてきたラックが急にアリスに質問する。
「ん? あれじゃろ? ダブルミーニングと同じで一つの言葉に二重に意味を持たせる事じゃろ? お主、よくそんな言葉を知っておるの」
異世界の住人が。アリスはそう付け加えたかったが、それをすると話が長くなりそうだったので自重した。
そして、アリスの答えを受けてラックは笑みを深くする。
「ありがとう。……23、24、25」
「なっ!? ……おいおい、か、数を間違っておるぞ?」
アリスの目が驚愕に見開かれ、そして落ち着き無く視線が泳ぎだす。
「間違ってないよ? もう君も気付いてるでしょ? さっき自分が言った言葉に」
そう。アリスはラックが数字を言う前に言ってしまったのだ。二重に、と。そう、22と。
「じゃが、あれは……くそっ! やられたのじゃ!」
アリスはテーブルに拳を思い切り叩きつける。
アリスの小さな手がテーブルを貫き、地割れのようなひび割れがラックの方へと広がる。
「ちょっ……君、何者?」
壊れたテーブルの残骸を見ながらラックが思わず尋ねる。
ラックが準備していたテーブルはレアメタルを使用した特注の物であり、対衝撃に優れた一点ものの机だ。
とてもじゃないが、女学生に壊せるものじゃない。
「あーーー! くそ! もうどうでもいいのじゃ! 26!」
アリスはふて腐れたように数字を告げる。ラックの質問には答えるつもりは無いようだ。
ラックはそのアリスの態度に肩をすくめつつもゲームを進める。
「……まあ、いいか。27、28――「29!」
一瞬の油断。
ラックはふて腐れたアリスの態度に勝利を確信してしまった。
唖然とするラックの前には満面の笑みのアリスが居る。
人一倍、いや人の十倍は負けず嫌いのアリスが諦めるなんてありえないのだ。
「さあ、おぬしの番じゃぞ」
ラックが29と告げる前に29と答えたアリスがラックを追い詰める。
「いや、だって今のは……」
ラックは反論しようとするが、そもそも細かいルールが無いゲームだ。まさに言ったもん勝ちといったところだ。
彼自身も似たような事をした以上、文句は言えない。苦悶の表情を浮かべ、そして口を開こうとしたその時、
「さあ! 早く言うのじゃ! 30と!」
「え?」
「あ」
「「え?」」
「し、し、しまったああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
アリスがゴロゴロと転がり、絶叫が響く部屋。
エリーもマリーもサオリも、そしてラックすらもただ呆然とするしかなかった。
アリスはそういうとドカッと乱暴に椅子に座る。
サオリは意気消沈した様子でエリーとマリーと話している。何故、あの状況で負けてしまったのかを相談しているようだ。
「悪いが、ワシは負けるつもりはないぞ? 例え頼まれてもな」
アリスはラックを睨みつけると、自信満々に言い放つ。
「あはは。急に凄い自信だね?」
「もうわかったのじゃ! お主の能力は……」
溜めを作るアリス。ラックは笑みを浮かべたままだが、じんわりと額には汗が浮かんでいる。
「……確率操作、じゃろ?」
ドヤ顔で告げるアリス。しかし、
「へ?」
その一方で、ラックは間の抜けた表情を浮かべる。考えていた事と違ったようだ。
「まず最初のポーカーじゃが、これは単純にファイブカードが出来る確率を上げたのじゃろう? お陰でデッキの並びがおかしくなりエリーも揃っておったが」
「いや、普通に考えてそんな能力持ってたらAのファイブカード作ると思うんだけど……」
「更に! ブラックジャックでは積み込みと確率操作が混ざった結果、あんなデッキになったんじゃろう?」
「積み込み?」
「更に! 更に! 最後の丁半博打では、サオリが振る前に半や丁の確率を上げて答えていただけじゃろ? 最後に狼狽えたのはワシにお主の確率操作が効いていなかったからじゃないか? 確かにあの瞬間、無意識のうちに出目を半にしそうになったのじゃ。だがしかし、気合いでなんとか丁に変えたのじゃ!」
「気合いって……」
呆れたようにアリスを見るラック。間違っていると言いたいが、勘違いはプラス要素だ。黙るしか無い。
「そこでワシが行うゲームは……数取りゲームじゃ!」
「……? それは知らないなぁ」
「1から順に数字を言っていき、30を言った方が負けなのじゃ! 一度に言える数は三つまでじゃ」
「……ふーん。なるほど。良いよ、それにしようか」
ラックは少し考えると、頷いた。
「ワシが先行じゃ! 1」
無理やりに先行を取るアリス。
何故なら……このゲームは先手必勝だからだ。
「……2、3、4」
数取りゲームでの必勝法は負けの数字の一つ前を取ることだ。
今回で言うなら29。そして、一度にいえるのは3つまでなので、そこからマイナス4していった数字を取っていけば必ず勝てる。
つまり。
「5」
「6」
「7、8、9」
「……なるほど。そういうことか」
ラックもここで気付いたようで苦笑いを浮かべる。
「ずいぶんと卑怯だね」
「何とでも言うのじゃ。勝ちは勝ちなのじゃ!」
まだ勝ってはいないが、それも時間の問題だろう。
「でも、君が30と言う確率を上げれば僕は勝てるんじゃないのか?」
「はっ! 起こりえない事まで操作できるなら、勝てる方法なんて無いのじゃ! その時は素直に負けを認めるのじゃ」
アリスの推測では起こりえる事の確率を操作できる能力だと睨んでいる。
つまり、アリスが自分で決めた数字以外を言うことはありえないので、操作できないということだ。
「ふーん……10」
「11、12、13」
「14、15」
「16、17」
「18、19」
「20、21」
「ところで掛け詞ってどんな意味か知ってるかい?」
それまで坦々と数字をあげてきたラックが急にアリスに質問する。
「ん? あれじゃろ? ダブルミーニングと同じで一つの言葉に二重に意味を持たせる事じゃろ? お主、よくそんな言葉を知っておるの」
異世界の住人が。アリスはそう付け加えたかったが、それをすると話が長くなりそうだったので自重した。
そして、アリスの答えを受けてラックは笑みを深くする。
「ありがとう。……23、24、25」
「なっ!? ……おいおい、か、数を間違っておるぞ?」
アリスの目が驚愕に見開かれ、そして落ち着き無く視線が泳ぎだす。
「間違ってないよ? もう君も気付いてるでしょ? さっき自分が言った言葉に」
そう。アリスはラックが数字を言う前に言ってしまったのだ。二重に、と。そう、22と。
「じゃが、あれは……くそっ! やられたのじゃ!」
アリスはテーブルに拳を思い切り叩きつける。
アリスの小さな手がテーブルを貫き、地割れのようなひび割れがラックの方へと広がる。
「ちょっ……君、何者?」
壊れたテーブルの残骸を見ながらラックが思わず尋ねる。
ラックが準備していたテーブルはレアメタルを使用した特注の物であり、対衝撃に優れた一点ものの机だ。
とてもじゃないが、女学生に壊せるものじゃない。
「あーーー! くそ! もうどうでもいいのじゃ! 26!」
アリスはふて腐れたように数字を告げる。ラックの質問には答えるつもりは無いようだ。
ラックはそのアリスの態度に肩をすくめつつもゲームを進める。
「……まあ、いいか。27、28――「29!」
一瞬の油断。
ラックはふて腐れたアリスの態度に勝利を確信してしまった。
唖然とするラックの前には満面の笑みのアリスが居る。
人一倍、いや人の十倍は負けず嫌いのアリスが諦めるなんてありえないのだ。
「さあ、おぬしの番じゃぞ」
ラックが29と告げる前に29と答えたアリスがラックを追い詰める。
「いや、だって今のは……」
ラックは反論しようとするが、そもそも細かいルールが無いゲームだ。まさに言ったもん勝ちといったところだ。
彼自身も似たような事をした以上、文句は言えない。苦悶の表情を浮かべ、そして口を開こうとしたその時、
「さあ! 早く言うのじゃ! 30と!」
「え?」
「あ」
「「え?」」
「し、し、しまったああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
アリスがゴロゴロと転がり、絶叫が響く部屋。
エリーもマリーもサオリも、そしてラックすらもただ呆然とするしかなかった。
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