異世界貴族は自由を望む
婚約へ向けて
とある休日。リアはレイの家にいた。
それは、レイの父親に婚約を認めさせるためだ。
挨拶は普通男がするものでは? と思うかもしれない。それはレイもそう考えていた。
しかしこのレイアにおいては、基本身分が低い者の方が挨拶に行くのが常識である。同じ身分なら、男から行くことが多いものの、女性側からというのも、珍しくはないのだ。レイとファルが地球との差を感じた一幕でもある。リアは元王族ではあるものの今は平民なので、リアが挨拶に来たのだ。
ちなみに二人には貴族と平民という大きな身分差があるのだが、正直ここ(フランタジア王国)を出てしまえば身分など無くなるので、当人たちはさほど問題視していない。
そして今二人は応接間でレイの父親であるダンと対面していた。
「......つまり、二人は本気で、別れる気もないから、婚約したいと」
「はい」
そう答えるリアの顔はこわばっている。しかしそれも無理はない。恋人の父親に挨拶。それは本人にとって一世一代の行事なのだ。
ダンはレイにも目を向ける。
「お前もか? レイ」
レイは頷いて返した。しかしその目には今までにないほどに力が籠っている。
それを見てダンはため息をついた。
「もう何を言っても無駄なのだろうな。......いいだろう、婚約を認める。元王族ならば、問題視もされまい。国王様に報告して、すぐに発表しよう。今から報告してくるから、しばらく待っていなさい」
そういってダンは、部屋を出ていく。これから王城へ向かうのだろう。
レイたちも、レイの自室へと向かった。
「ああ! 緊張した......」
部屋に入った途端、リアがそういった。それにレイも肯定の意を返す。
おそらく、ダンが返ってくるのは夕方になるだろう。それまで三人はこの部屋で過ごすことになる。
「それ...じゃ...いこ」
レイが、本棚へと向かう。その内の一つを押し込めば、いつもの隠し扉が現れた。何度か行ったリアも、もう驚くことはない。
一同は、地下室へと向かった。
今回リアがレイの家に来たのは、挨拶だけが目的というわけではない。もう一つ目的が、この地下室にある。
「...はい...これ...」
そういってレイが渡したのは、銃擬きの一つだった。
それは今までの銃擬きとは違い、側面に三つのスイッチが存在する。
これは、レイが試作した、属性付与の切り替えスイッチだ。押したスイッチに対応した魔法陣を展開することで、弾丸に属性を付与するというもの。
今レイはさまざまな銃擬きを試作しており、その一つがこれなのだ。ちなみにレイとファルの二人の銃擬きも、新しい試作型となっている。
「ありがと、レイ君。練習したいんだけど、これ外では使えないよね? どうすればいいの?」
「それなら、この屋敷の中に、レイ様専用の訓練部屋がございます。そこなら、誰にも見られる心配はありません」
「そうなの? ねえレイ君、今から行ってもいい?」
「ん...大丈...夫」
「やった!」
その後三人は、訓練部屋に行ったのだが、レイ、ファルの命中率は九割、リアの命中率は三割だった。
後日レイの日記には、拗ねたリアも可愛いという一文が記されていた。
「レイ、婚約の発表について、段取りが決まった」
ダンの書斎にて、レイはダンからその言葉を聞かされた。
その言葉にレイは、表には喜びをほとんど出さず、内容に耳を傾ける。
「まず、リア......いや、フローリア嬢の王家離縁から発表する必要がある。そしてその時同時に、私がレイとフローリア嬢の婚約を発表する。そしてその一週間後に、婚約披露パーティーというのが大まかな流れだ」
その言葉に、レイが頷く。
「それと申し訳ないが、お前たちの婚約発表から披露パーティーまでの流れに、もう一つの目的が追加されることになった」
「勇者...召喚...です...ね...」
「そうだ。婚約発表の際に同時に勇者召喚について正式に発表し、召喚した勇者も披露パーティーに出席する。表向きは社交の場に慣れるためという目的だが、勇者を他貴族に披露することが目的だ」
「問題...あり...ま...せん。...予想...は...して...いまし...た」
それはレイもリアも考えていたことだった。むしろ、披露パーティーがつぶれなかっただけましというものだ。
「それと、レイはしばらく学園を休んでもらう」
「学園...を、...休...む、...です...か...?」
「そうだ。レイ、お前は、魔法の勇者育成者の一人に選ばれた」
これも、レイは考えていた。三家とは、とても王家に近い存在だ。そのため、王家の依頼、というのも珍しくない。ましてレイは、悪魔との交戦経験がある。今回の勇者召喚で、中心に近いところまで呼ばれるのは、簡単に予想できた。
「明日より、王城へと向かえ。フローリア嬢も既に向かっている」
「了...解...しま...した」
そういってレイは自室へと戻った。
レイの部屋には、レイとファルが二人でいた。しばらく帰ってこないため、必要最小限の私物を持っていくためだ。服などを詰めた鞄を、二人は入り口近くに纏める。しばらくすれば、他の使用人が持って行ってくれる手筈になっている。
作業も粗方終わり、二人は一息ついていた。
「レイ様、あとは地下の物のみですね」
「うん...必要...なもの...は...もって...おか...ない...と。特...に...、銃...擬...き...の...設計...図...は...必要。改...良...が...もう...す...ぐ...で...終わ...る...から」
「あと、計画書も持ち歩いておきたいです。見つかるわけにもいきませんから」
「じゃ、...行こ...う」
二人は準備のために、地下室へと降りて行った。
それは、レイの父親に婚約を認めさせるためだ。
挨拶は普通男がするものでは? と思うかもしれない。それはレイもそう考えていた。
しかしこのレイアにおいては、基本身分が低い者の方が挨拶に行くのが常識である。同じ身分なら、男から行くことが多いものの、女性側からというのも、珍しくはないのだ。レイとファルが地球との差を感じた一幕でもある。リアは元王族ではあるものの今は平民なので、リアが挨拶に来たのだ。
ちなみに二人には貴族と平民という大きな身分差があるのだが、正直ここ(フランタジア王国)を出てしまえば身分など無くなるので、当人たちはさほど問題視していない。
そして今二人は応接間でレイの父親であるダンと対面していた。
「......つまり、二人は本気で、別れる気もないから、婚約したいと」
「はい」
そう答えるリアの顔はこわばっている。しかしそれも無理はない。恋人の父親に挨拶。それは本人にとって一世一代の行事なのだ。
ダンはレイにも目を向ける。
「お前もか? レイ」
レイは頷いて返した。しかしその目には今までにないほどに力が籠っている。
それを見てダンはため息をついた。
「もう何を言っても無駄なのだろうな。......いいだろう、婚約を認める。元王族ならば、問題視もされまい。国王様に報告して、すぐに発表しよう。今から報告してくるから、しばらく待っていなさい」
そういってダンは、部屋を出ていく。これから王城へ向かうのだろう。
レイたちも、レイの自室へと向かった。
「ああ! 緊張した......」
部屋に入った途端、リアがそういった。それにレイも肯定の意を返す。
おそらく、ダンが返ってくるのは夕方になるだろう。それまで三人はこの部屋で過ごすことになる。
「それ...じゃ...いこ」
レイが、本棚へと向かう。その内の一つを押し込めば、いつもの隠し扉が現れた。何度か行ったリアも、もう驚くことはない。
一同は、地下室へと向かった。
今回リアがレイの家に来たのは、挨拶だけが目的というわけではない。もう一つ目的が、この地下室にある。
「...はい...これ...」
そういってレイが渡したのは、銃擬きの一つだった。
それは今までの銃擬きとは違い、側面に三つのスイッチが存在する。
これは、レイが試作した、属性付与の切り替えスイッチだ。押したスイッチに対応した魔法陣を展開することで、弾丸に属性を付与するというもの。
今レイはさまざまな銃擬きを試作しており、その一つがこれなのだ。ちなみにレイとファルの二人の銃擬きも、新しい試作型となっている。
「ありがと、レイ君。練習したいんだけど、これ外では使えないよね? どうすればいいの?」
「それなら、この屋敷の中に、レイ様専用の訓練部屋がございます。そこなら、誰にも見られる心配はありません」
「そうなの? ねえレイ君、今から行ってもいい?」
「ん...大丈...夫」
「やった!」
その後三人は、訓練部屋に行ったのだが、レイ、ファルの命中率は九割、リアの命中率は三割だった。
後日レイの日記には、拗ねたリアも可愛いという一文が記されていた。
「レイ、婚約の発表について、段取りが決まった」
ダンの書斎にて、レイはダンからその言葉を聞かされた。
その言葉にレイは、表には喜びをほとんど出さず、内容に耳を傾ける。
「まず、リア......いや、フローリア嬢の王家離縁から発表する必要がある。そしてその時同時に、私がレイとフローリア嬢の婚約を発表する。そしてその一週間後に、婚約披露パーティーというのが大まかな流れだ」
その言葉に、レイが頷く。
「それと申し訳ないが、お前たちの婚約発表から披露パーティーまでの流れに、もう一つの目的が追加されることになった」
「勇者...召喚...です...ね...」
「そうだ。婚約発表の際に同時に勇者召喚について正式に発表し、召喚した勇者も披露パーティーに出席する。表向きは社交の場に慣れるためという目的だが、勇者を他貴族に披露することが目的だ」
「問題...あり...ま...せん。...予想...は...して...いまし...た」
それはレイもリアも考えていたことだった。むしろ、披露パーティーがつぶれなかっただけましというものだ。
「それと、レイはしばらく学園を休んでもらう」
「学園...を、...休...む、...です...か...?」
「そうだ。レイ、お前は、魔法の勇者育成者の一人に選ばれた」
これも、レイは考えていた。三家とは、とても王家に近い存在だ。そのため、王家の依頼、というのも珍しくない。ましてレイは、悪魔との交戦経験がある。今回の勇者召喚で、中心に近いところまで呼ばれるのは、簡単に予想できた。
「明日より、王城へと向かえ。フローリア嬢も既に向かっている」
「了...解...しま...した」
そういってレイは自室へと戻った。
レイの部屋には、レイとファルが二人でいた。しばらく帰ってこないため、必要最小限の私物を持っていくためだ。服などを詰めた鞄を、二人は入り口近くに纏める。しばらくすれば、他の使用人が持って行ってくれる手筈になっている。
作業も粗方終わり、二人は一息ついていた。
「レイ様、あとは地下の物のみですね」
「うん...必要...なもの...は...もって...おか...ない...と。特...に...、銃...擬...き...の...設計...図...は...必要。改...良...が...もう...す...ぐ...で...終わ...る...から」
「あと、計画書も持ち歩いておきたいです。見つかるわけにもいきませんから」
「じゃ、...行こ...う」
二人は準備のために、地下室へと降りて行った。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
63
-
-
26950
-
-
104
-
-
1978
-
-
2813
-
-
37
-
-
3
-
-
125
コメント