異世界貴族は自由を望む

ノベルバユーザー196771

準決勝第二試合

 レイたちは、控室にいた。そこで次の試合の始まりを待っている。次の試合相手は、テイル・フランペアだ。
 二人は、作戦会議をしていた。


 「今回...は...向こう...が...分断...してくる...だろう...から...連携せずに...各個...撃破...いける...?」
「どうだろう......テイル先輩なら、持ちこたえることくらいなら。フラン先輩はちょっと相性が悪いかな」
「なら...、私...が...フラン...先輩...を...倒す...から...テイル...先輩...は...任せ...たよ」
「ちゃっかりフラン先輩倒すっていってるよこの人......できそうだから怖い」
「目指...す...は...、...優...勝...。なら...勝っ...て...当たり...前」


 レイはそう言い切った。
 しかし、レイがフランに近接戦で勝てる確率は五分五分くらいだ。一つの小さなミスで、敗北が決まる可能性すらある。
 それでも勝つと言い切ったことに、リアはレイが本気であることを感じた気がした。








『さて、いよいよ準決勝第二試合、テイル・フランペア対レイ・リアペアの対戦です!』


 その言葉を合図に、会場が歓声で覆いつくされた。先の試合の余韻もあり、期待が高まっているようだ。
 そしてその歓声の中で、両ペアが対峙する。
 テイルは片手剣を、フランは短剣を二本構えている。それに対しレイは弓を持たず、短剣を一本手に持ち、それとは別に二本の短剣を腰に差している。リアもハルバードを肩に担ぎ、準備万端だ。
 そしてついに、準決勝第二試合が始まった。


 試合開始の合図とともに、四人の姿が掻き消えた。
 そして会場の真ん中で二回、金属音が鳴り響く。それはそれぞれレイとフラン、リアとテイルの得物がぶつかった音だ。リア以外は身体強化を使い、一直線に突っ込んだのだ。
 お互いが弾かれ、元の位置に戻る。立ち止まったことで、硬直が発生した。
 しかし、硬直しない者が一人。そう、リアである。もう一度ハルバードを構えテイルへと突撃した。
 ハルバードがテイルへと振られる直前、テイルの硬直が解除。ぎりぎりでリアの攻撃を受け流す。それでも完全には流せなかったようで、後ろへと吹っ飛んだ。
 それを追おうと足を踏み込もうとした刹那、後ろからマナの放出を感じ、咄嗟に横へ飛ぶ。そこへ無詠唱で放たれた火属性初級魔法の『ファイアボール』が着弾した。それに合わせてリアへ突撃しようとしたフランを、硬直が解除されたレイが間に入り防ぎ、リアは体勢を立て直したテイルと対峙する。
 ついに、一対一の構図が出来上がった。






「ほらほらほら! まだまだ行くよー!」
(は、速い!)


 レイがフランと戦って感じたのは、その一言だった。
 レイは思考と、振るう剣速を神眼で加速している。しかし、手数が多いとはいえそれについてきているフランの実力は、とても高い。攻撃をお互いに弾きあい、ぶつけ合う。そんな光景が続いていた。


 レイは現状を打開するため、いつもより力を込めて剣速を加速。フランの短剣を弾き、体勢を崩す。まさか弾かれると思っていなかったフランは、判断が遅れた。レイが後ろに跳び、無詠唱で水属性派生氷中級魔法『アイスウォール』を、魔法が崩壊しないぎりぎりまでマナを圧縮して放つ。その魔法は見事フランを拘束した。
 火属性魔法を中で放てば、爆風で自身がダメージを負う。そのためフランは、短剣で何度も切りつけ、脱出を図っていた。
 その隙に、レイが誰にも聞こえない日本語・・・で詠唱を始める。


「我が望むは、何者であろうとも生命の存在を許されぬ空間の支配者となること。すべては、我が手中に......『フローズン・サンクチュアリ』」


 その、魔法で起こされた空気の振動による詠唱を完成させたレイは、その魔法を放つ。そこには、レイ以外の存在を蝕み、拒む、まさにレイの聖域が完成していた。






 リアとテイルも、外からレイの魔法を視認していた。それが現れたとき、戦闘中だというのにお互い足を止めてしまったのだ。


「おいおい、なんだありゃ......」
「レイ君......」


 二人ともが言葉を失っている。しかしそれも仕方ないことだろう。ステージの約半分を冷気で覆うなど、普通の魔法使いがやろうと思うと、すぐにマナが枯渇してしまう。維持などもってのほかだ。
 これは最近のレイの戦闘から勘違いされていたのだが、レイに一番適正がある戦い方は、後衛での援護ではない。戦いの場において、前線で複数人を相手にする魔法戦闘。これがレイ本来の戦い方である。そのためレイは広範囲に放つ魔法に、とても高い適正を持っているのだ。
 そんなレイが全力で放った広範囲魔法。それは、災害級といっても差し支えなかった。これが災害級魔法でないのは、覆っているのがただの冷気であり、殺傷能力が低いからだ。ちなみにレイは、この冷気を氷の礫に変えることもできる。人が凍死するレベルまで下げることもできる。知らぬが仏とはまさにこのことなのではないのだろうか。


 しかし、このまま呆けているわけにもいかない。二人は再び得物を構え、対峙した。辺りには緊迫した空気が張り詰める。二人の第二ラウンドが始まった。

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