異世界貴族は自由を望む

ノベルバユーザー196771

決闘(前編)

 フランタジア魔法学園では、『決闘』と呼ばれるシステムが存在する。
 学園内で喧嘩などが起こった時に、その場で戦闘されては困る。しかしそこで何もせずにただ騒ぎを止めるだけだと、再び問題が起こる可能性もある。それを防ぐために、初代生徒会が立てたルールが、決闘なのだ。
 そしてとある日の放課後、決闘に使われる第一演習場が、満席となっていた。中には、通路に立っている者もいる。
 普段の決闘では、ここまで集まることもないのだが、今回は注目度が違った。
 何故なら、今学園中の話題の種である一年学年主席のレイと、三年学年次席のガリルが決闘を行うからだ。ちなみに見に来た者の内、三割はレベルの高い戦闘を見に、残りの七割は今話題のレイが戦うからという理由だ。


 そしてそんな話題の中心人物たちは、控室にいた。


「ちょっとレイ君、どうして決闘しようだなんて言ったのよ! 面倒だから無視しようって言ったのはレイ君じゃん!」
「ごめん...だって...リア...の...弁当...楽し...み...だった...のに....」
「え、いや、それは、その......嬉しいけど......そこまで? だって私、レイ君を脅して付き合ってるんだよ? 気持ちは確かにレイ君のこと大好きだし、そういってくれるだけでもう......」


 リアが若干トリップしている。
 リアの言葉に、レイはそっぽを向きながら言い返す。


「別...に...リア...の...こと...嫌い...とは...言って...ない...し...。...確か...に...きっかけ...は...脅迫...だった...けど」


 その言葉に、リアは呆けた顔をする。そのあと、「レイ君大好き!」と言いながらレイに飛びついた。
 ちなみに、ファルがぼそっと「レイ様は好きとも口には出しておりませんが」と言ったのだが、リアには聞こえていない。


『準備が整いました。両者は、入場して下さい』


 無属性魔法である、『拡声』で大きくされた先生の声が、部屋まで届く。
 それを聞いたレイは、リアを引き離す。それに対しリアは物足りなさそうな顔をするものの、状況はわかっているのか、抵抗はしなかった。
 そしてレイは、そばにあった弓を持ち、演習場のフィールドへと足を踏み入れた。


「おお、逃げずに来たんだな」


 レイにこう声を掛けたのは、決闘の対戦相手であるだガリルだ。その手には刃を潰した訓練用の一般的な片手剣が握られている。
 その言葉に、レイは弓を立ててガリルに向け、言い放った。


「弁当...の...恨...み...」
「......なんのことだ?」


 ガリルは、リアの弁当に砂ぼこりが入ったことを知らない。そのため、その言葉がなにを指すのか、理解できなかった。
 だがそれに興味がないのか、レイは無言を貫いた。
 その態度に、ガリルが何かを言い募ろうとしたところで、放送席から声が聞こえてきた。


『それではこれより、三年のガリル君と、一年のレイ君の決闘を始めます。この決闘は、学園長の認可を得て行われるものであり、決闘の一切について、苦情などは受け付けておりません。また、この決闘で負った怪我などについては、一切の責任を本人のものとすること。問題ありませんか?』
「問題ありません」
「意義...なし」


 二人が返事をする。


『それでは、決闘......始め!』


 その声を合図に、決闘が始まった。



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