異世界貴族は自由を望む

ノベルバユーザー196771

変わった二人の関係

 女子とは、総じて噂話が好きなものだ。それも恋のことならなおさら。
 つまりなにを言いたいかというと、レイとリアの関係が、既に噂になっている。それも学年問わずに。事実故に、否定することもできない。


 何故こうなったかというと、それは二人の注意不足が原因だ。
 リアがレイに告白した瞬間を、他生徒に見られただけのことである。しかしその影響は計り知れない。
 何せリアは控えめに言って美少女である。しかも親しみやすい性格であること
もあり、その人気は学年を超える。
 そんなリアを独り占め(彼女)にしたレイには、当然の如く嫉妬の視線が突き刺さった。その視線に反応したファルが裾からナイフを取り出そうとしていたのをレイが見つけれなかったら、今頃学園は真っ赤に染まることになっていたであろう。


 しかし視線が集まったところで、レイが動じることはない。さらっと無視して、お昼休みにはリアと中庭に向かった。






 ここは中庭。一流の庭師が手入れした木々は、良し悪しも分からない素人が見ても綺麗と言えるくらいだ。
 そんな中庭のとある木陰に、レイとリア、そしてファルの姿があった。そしてリアの手には小包がある。
 そう、これは彼女の手作り弁当という、男の憧れである。ちなみに、いつもはファルが弁当を作っているのだが、今日は三人分リアが作ってきた。


「どうぞ、レイ君。ファルさんも」
「あり...が...とう」
「恐れいります」


 弁当を受け取った二人の表情は、それぞれはっきりとしていた。
 レイは、表情こそほとんど変わらないものの、初彼女の手作り弁当にテンションが上がっているのか、全身から幸せオーラ的なものが滲み出ている。今にも鼻歌を歌いそうなくらいだ。
 対照的にファルは、「お手並み拝見」といった挑発的な表情を隠そうともしない。もしかしたらこれから自身の狂信する主が毎日食すかもしれない料理なのだから。レイに恋するリアにとって、ファルという存在は一種の試練なのかもしれない。
 一名例外がいるものの、普段のレイやファルの周りと比べれば、それは一つの小さな平和空間だった。


 しかしそんな時間に、水を差す愚か者もいる。
 その男は、いきなりレイの前に現れ、リアを差し出せと迫ってきたのだ。
 その少年は、名をガリルといい、三年の次席だ。ちなみに主席は生徒会長である。
 この手のことは、既に何回もあった。だから事前にレイとリア、ファルは、無視するに決めていた。ほっておけばいなくなるだろうと考えたのだ。
 しばらくは、やれ決闘しろなど、しないなんて臆病者だの言っていたのだが、案の定しばらくすれば、ガリルは去ろうとしたのか、踵を返した。しかしそれが運悪くレイの逆鱗に触れてしまった。
 踵を返したときに舞い上がった砂が、弁当へと入ったのだ。
 リアの手作り弁当を味わっていたレイは、それを見た瞬間、固まった。そして数秒後に再起動すると、貼り付けた笑みで、ガリルに話しかけた。


「先輩...私...と...決闘...しま...しょう」


 勿論その言葉は、放課後には学園全体へと広がった。



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