異世界貴族は自由を望む

ノベルバユーザー196771

パートナーとの相性

 レイとファル、そしてリアは、第三演習場に来ていた。
 放課後になり、早速ペア申請を済ませたあと、連携の練習のため、ここに来たのだ。
 レイの手には弓、そして腰に短剣を吊り、リアは、自身の身長を大きく越える、ハルバードを携えていた。どちらも、学園からの貸し出し品だ。
 結論から言うと、二人の相性は抜群だった。リアが前衛で、レイは後衛だ。
 リアは、一対多を得意とする。ハルバードを、棒のように軽々と振り回し、時折詠唱破棄の魔法も不意討ちで飛ばす。なにより恐ろしいのは、リアが戦う際、無属性魔法である、『身体強化』を使っていないことだ。
 魔法使いが、武器を使って近接戦闘する際、必ずといっていいほど、身体強化の魔法を使う。それは、その魔法に、攻撃力の増加、身体強度の上昇など、さまざまな恩恵があるからだ。身体強化有りと無しなら、普通は相当な差が出来る。
 勿論欠点もある。この魔法を使うと、動きが固くなる、つまりは、大振りな動きしか出来なくなるのだ。また、この魔法使用時に、動きを止めると、動いた時間に応じて、体が硬直する。欠点はこの2つだ。
 つまりは、身体強化を魔法を使用した戦闘の際は、どちらが先に動きを止めてしまうかが、勝負の鍵となる。
 しかし、リアは身体強化を使ってないためそれに当てはまらない。そして、圧倒的質量の塊であるハルバードを軽々振り回すことから分かるように、リアは力が強い。それは、身体強化使用者とまともに打ち合えるほど。
 と言うことは、リアは身体強化と互角に戦え、技術的な動きができ、そして硬直もない。正に悪夢である。
 そしてレイは、後衛戦闘に、とても高い適性があった。弓での的確な援護ができ、視野も広い。
 更に短剣を使った自衛もでき、前衛がレイを心配する必要もない。
 そしてこの二人は、学年主席と学年次席だ。その二人が組んでいると言うだけでも、脅威なのだ。教師組もこの組み合わせを見たとき、どうすべきか悩んだくらいだ。


 しかしリアは、この組み合わせに不満はなくとも、満足はしていなかった。
 このペアは、リアがレイを誘って、作ったもの。それに不満はないのは当たり前。
 なら何故満足していないのか。それは二人の実力差だった。
 二人は学年主席と次席。順位で言ったら、差は1つだけだ。しかしその1つは、大きな1つだった。
 彼女は理解していた。周りから連携と見れるこれは、連携じゃない。ただ、レイが彼女に合わせているだけだと。
 今の彼女では、レイのお荷物にしかならないのだ。
 それを理解したリアは、その内に焦りの感情を溜めていく。それを察したレイは、どこか心配そうに、そしてどこか寂しそうに、リアのことをを見ていた。
 リアがその視線に気付くことは無かった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品