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第11章 ロッテの初授業

豪華絢爛な一室、今日はロッテ先生の初授業の日!
しかしそんな教室では少女の悲痛な叫びがこだましていた

「違うであります!違うのでありますよ!」
「何が違うというんですか・・・」

そう、昨日雑な城の説明で俺達を混乱させたロッテ先生は俺達三人の詰問により
地面に正座させられ目に涙を浮かべている

そんなロッテ先生は正座したままコホンと咳払いを一つ

「良いでありますか?これから生活するうえで全てを私に頼ってしまっては貴方達の才能を殺してしまうと考えたのであります」
「ふんふんそれで?」

ロッテ先生は全てを悟った顔で立ち上がると俺達三人の頭を撫で始める

「偉い人は言ったであります・・・習うより慣れろであります」

そしてムフーとドヤ顔をかます

何か論破した!って顔してるが・・・
それは多分基礎的な事を教えてもらったうえでの言葉だと思うぞ?

踏ん反り返るバカに白い目を向けるが全く動じていない
恐らくこれ以上何か言っても適当に返されるだけだろう

「はぁ・・・まあいいです・・・ところでなんでローブが焦げてるんですか?」
「そそそんな事よりまずはこの水晶にそれぞれ手を触れるであります!」

慌ててローブを隠したロッテ先生が指パッチンする
すると地面から木の机が生えてきて水晶が落ちてくる

「おお!なんか魔法使いっぽくてカッコいい!」
「ふふ!その言葉を聞く為に水晶を天井にセットしてた甲斐があるでありますね!」

俺の言葉に満足そうに説明をいれるロッテ先生
その解説は無かったほうが夢があったかな

・・・しかしこれは所謂あれでしょう?
俺の期待の眼差しにロッテ先生は首を縦に降る

「これは触れた生物の魔力を測定する魔道具であります!」
「魔力測定アイテムキター!」

異世界鉄板アイテムに鼻息を荒くしているとロッテ先生が俺に手招きをする

これはあれですよ!異世界に迷い込んだ主人公が最強のチート力を持ってるパターンですよ!
それに俺はこのゲームの開発陣営の一人でもある!
これは間違いなくド派手な演出間違いなし!

意気揚々と水晶に手を触れると水晶の中が軽く光を帯びる

「どう?どう?」

満面の笑みを浮かべて皆の方を見ると全員が顔を背けた

「・・・」

俺は口をムニムニさせながら壁の近くの椅子に腰掛ける

「魔法適正C・・・ゴミだな」
「なんだとぅ!!」
「アズ君!落ち着くんだ!Cであれば平均的な魔力値だ!」

ムーたんと取っ組み合いになった所をアレンが止めに入る
その擁護は逆に傷付くんだよ!

「では次にシープ・ムートン君!」

ムーたんはロッテ先生に呼ばれてニヤリと笑みを浮かべる

「まぁ見とけって?」
「フシュー!フシュー!」

威嚇する俺にムーたんがドン引きしながら水晶に触れる

すると水晶の中が軽く揺れる
その様子を見たムーたんが黙って俺の隣の椅子に腰掛ける

「おいあれって・・・」
「うるさい黙れ」

羞恥からきてるのだろう
可哀想に・・・耳まで真っ赤にして・・・
俺はムーたんの肩に手を置く

「構うなって言っ・・・」
「戦闘力たったの5か!ゴミめ!」
「なんだとおおおおお!!!」

再び取っ組み合いになりそうになった俺達の間に目が眩む程の光がほとばしる

「おー魔力適切Aなんてなかなかの逸材でありますね!」

ロッテ先生の言葉にアレンが嬉しそうにしている
そんな様子を見た俺達は無言で向き直る

「流石スニーキー家、どこかの無名貴族とは大違いだな」
「その無名貴族よりランクの低いのは何シープ家なんでしょうねぇ?」

再び睨み合いを開始していると、はいはいとロッテ先生が両手を叩く

「仲が良いのは結構でありますが授業の方に入るですよ」

そう言いながら短杖を振りかざすと目の前に扉が現れる

「おお!魔法使いっぽくてカッコいい!」
「ふふ!そう言ってもらえると演習場の扉を隠しておいた甲斐があるのですよ!」

・・・一言余計なんだよなぁ
若干テンションが下がった俺に構う事無くロッテ先生が扉に手をかける

「国王陛下より一刻も早く君達を鍛え上げて欲しいとの指令が出ているため・・・」

そう言いながら開け放たれた演習場の扉から光が溢れ出す

暗めの部屋から急に明るい場所に出た事により俺達は視界を奪われ
目が眩んだまま直進した俺は何か巨大な影にぶつかる

「うわった!?なんだなん・・・だ?」
「おい?どうしたんだ?間抜け面が更に間抜けになってる・・・ぜ?」

後ろからついてきたムーたんが俺の視線を辿り絶句する

体長3メートルはあろう二足歩行の巨大な体躯は
硬い鱗と隆起した筋肉で覆われ
頭にはねじ曲がった二本の角が猛々しくそそり立っている

目の前の巨大な生き物は侵入者に気づいたようにこちらに視線を向けると威嚇するように雄叫びをあげる

「ぐぐ、ぐ!オイラーーーー!!」

いやちょっと色々まって!?
間近で化け物の雄叫びを聞いた俺とムーたんが耳を塞ぐ中
アレンが目を輝かせながら唐突に語りだす

「わードラゴニュートってやつですねーなんでも龍人種と魔物のハーフで知性に乏しいらしいですよー」
「なんでそんな落ち着いてるんだ!?」
「いやーだって・・・」

ズドンという音と共にアレンが宙を舞う

「これ・・・無理ですから・・・」
「あ!アレンー!!」

急ぎ吹っ飛ばされたアレンを確認する
反応は無いけど・・・死んではない

「あああアレンさんは大丈夫なのか!?」
「気絶してるだけみたいだ」

しかし・・・ドラゴニュートは本来レベル20の冒険者がフルPTで戦う敵だ
それを戦闘経験の無い子供三人にって・・・

これはいくらなんでもムリゲーですよ
ドヤ顔をかましているロッテを睨む

「これ、先生が手配したんですよね?」
「ええ!この国の未来を担う人材の育成の為に飛びっきり強そうな魔物をと!」

強そうっていうかガチで強いのが来ちゃってるんだが?

「アレンが気絶してるんですが?」
「問題無いでありますよ?直撃の瞬間防御魔法を放ったであります!死にゃーしないであります」

それはすごいがお前のせいだからな?
ドヤ顔をかますロッテを再度睨む

「それで?この後どうするんですか?」
「この後・・・でありますか?」

首を傾げるロッテ
俺は炎のブレスを吐くドラゴニュートを指さす

ロッテはなるほど!と手を叩くと明後日の方向を向いて口笛を吹きだす

「おい」

尚も明後日の方向を向くロッテは暫くすると諦めたように神妙な顔でこちらを見る

「・・・良いですか?これはミスではありません、決してそこを間違えないように」

薄々感じていたがこの先生ダメ人間もといダメエルフじゃないか?

このアマどうしてやろうと思考を張り巡らせていた俺は
背後のドラゴニュートを完全に忘れており・・・
危険を感じ振り返ると今まさに俺に殴りかからんとするドラゴニュートと目が合う

「アレンー、俺もそっち行くわー」

諦めの境地を開いた瞬間
ドラゴニュートの腕が金の残像を残し切り裂かれる

苦悶の表情を浮かべるドラゴニュートの前では
大太刀についた血を振り払うルピーが立っている

「いつからいたんだ?」

俺の言葉にルピーは器用に口でペンをくわえてメモを書く

[ずっと]

ずっと!?
そこの所後から詳しく聞く必要がありそうだ・・・
だがおかげで助かった
ドラゴニュートは突然の乱入者に混乱している

「今であります!」

ドラゴニュートが混乱しているのを確認したロッテが暗唱を始めると
色とりどりの弾幕が演習場を飛び交う

「アズ様は今のうちにアレン様を医務室に運ぶであります!」
「いや?なんかかっこつけてるけど全部お前のせいだからな?」

ドラゴニュートの攻撃が届かない所から遠距離魔法を放つロッテに頭痛を抑えながらも
ムーたんと共にアレンを担ぐ

「まぁルピーなら大丈夫だろう・・・」

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