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第4章 最近私の夢がおかしい件

鉄のコンクリート立ち並ぶオフィス街の一角
今日も一日仕事を終えたサラリーマン達が帰路につくなか
紅川玉樹も例にもれず
クタクタになりながら帰路についていた


帰り道のスーパー
割引商品を買っていると見知った顔を見つけて思わず大声を出してしまう

「あ!あー!!古川さん!」
「あれ?紅川さん」

いそいそと古川さんの傍に駆け寄る
カゴの中には大量のカップ麺やアンパンが入っている

「・・・カプ麺ばかり食べてると体に悪いですよ?」
「そうなんやけど・・・料理とかする気がわかないんよねぇ・・・」

そう言いながら古川さんが溜息を吐く
ここはチャンスですね!

「なら!今度私が栄養たっぷりな料理を作ってあげます!」
「ほんと!?それは助かるんよ」

嬉しそうな古川さん
しかし食べ専の私はこれから料理の勉強もしなくてはならなくなってしまった

料理といえば・・・

「青葉・・・さんはまだ見つかっていないんでしょうか?」

数か月前に行方不明になった私の職場の同僚、青葉大和
古川さんとは幼馴染だったらしく
とても料理が上手い人で
よく私のお弁当も一緒に作ってきてもらったものだ・・・おっとよだれが・・・

そんな私の様子に気づくこと無く古川さんが肩を落とす

「そうやね・・・残念ながら未だ見つかっていないんよ」
「そうですか・・・」

警察の古川さんなら何か知ってそうだったけど・・・
流石に見つかってないのかな・・・

その後たわいない会話をしながら会計を済ませ
家まで送ってもらう私はどこにでもいる普通の乙女

最近そんな私にも悩みが出来た
それは仕事の残業で古川さんに会う時間が少なくなった・・・とかそういうわけではない

「今日もあの夢を見るのかなぁ・・・」

最近毎日のように見る夢

一人の冒険者として世界を歩き回り・・・
昨日はとある屋敷にお子さんの護衛任務に就く為、馬車に揺られている所だった
大体寝ている時にも夢は進んでいるようなので・・・

「今日はお屋敷に着いた頃かな?」

そんな事を考えながら私はベッドに潜り込む

瞼を閉じ・・・意識が暗く染まっていく



「・・さん!」
「・・・?」

どこからか誰かに呼ばれたような気がする・・・
まだ目を閉じて数分・・・
真夜中のはずなのに日の光が瞼に当たる

つられるように目を開けるとユラユラ揺れる馬車のカーテンから光が漏れ
御者とおぼしきおじさんが私の肩を揺らしている

「お客さん!目的地に着きましたよ!」

寝起きにおじさんの顔をドアップに見て若干気分が悪くなっている私は
カーテンの隙間から見える綺麗な建物を見て顔を輝かせる

こちらの世界ではなぜか声が発せられない私は御者のおじさんに硬貨と紙を渡す
御者のおじさんが紙を見て「おお!?」と叫んだが、メモと知って少し肩を落としている

少し悪い事をしてしまっただろうか?
しかしそこはプロなのだろう
御者のおじさんは親指を立てると
笑顔を浮かべ馬車を走らせていった

馬車が走り去っていったのを確認した私は両頬を叩いて気合を入れ直す
さて・・・どんな人が依頼人なのだろう?

建物の規模はそこまで大きくない
2F建て、6人くらいが住めそうな間取り、1Fには大きなホールが見える
期待と不安に胸を高鳴らせながら扉の鐘を鳴らすと、中から女性の声が聞こえて扉が開く

「は~い!あら~?どうかなさいました~?」

のほほんとした雰囲気に水色の髪
金色の眼はとても透き通っていて
少し日本人っぽい顔をした綺麗な女性

あれ?見覚えがある?

ポカンとした私を心配するように見る女性に我に返る
私は急いで紙束を取り出して紙を渡す

[私はルピーと申します、護衛の依頼を受けここに参りました]

目の前の女性は首を傾けながらメモの内容を確認すると、溢れんばかりの笑顔で私を抱きしめてくる

「あらー!こんな可愛い子が護衛だなんて!ちょっとあなた~!護衛の子が来たわよー!」

女性が建物に向かって叫ぶと中から慌てたように短髪の男の人が現れる

「貴方がルピーさんですね、よく来てくれました!」

女性から解放された私は衣服を正すと
頭を下げてメモを渡す

[ルピーと申します、今日からよろしくお願いいたします]

メモを受け取った男性は笑顔で礼をする

「私はクラウス、よろしくお願いします、そして・・・」

クラウスさんがどたどたと音を立てて建物に戻る女性に苦笑いをする

「あれは妻のアイスと申します」

貴族と聞いて緊張して来たが・・・もしかしてすごく砕けた所なのかもしれない・・・
そんな感想を抱きながらしばらくすると
アイスさんが一人の子供を連れてくる

この子が護衛対象・・・

目の前の子を見た瞬間に既視感に襲われる
どこかで・・・見た事があるような・・・?

「ほら!挨拶なさい!」

ふらふらしていた私はアイスさんの一言で我に返る
目の前では可愛らしい女の子がキラキラした目でこちらを見ている
ん?あれ?男の子だっけ?
どっちだったかと頭を捻っていると目の前の子が髪を掻きながら挨拶を始める

「えーと、俺はアズ・・・よろしく」

アズちゃん?かー・・・んんー?

「俺じゃないでしょ!あと名前!偽名なんて使わない!」

流れるように頭を叩かれてアズちゃんが不貞腐れている
なんだろう、少し話しただけだが
アズちゃんの姿がもーれつに知り合いとだぶる

私の沈黙を不思議に思ったのかアズちゃんが怪訝な表情を浮かべている

「えっと・・・なんか変な事言いましたか?」
[いえ・・・私の知り合いにそっくりで・・・偽名も一緒だったので]
「言うて俺はまだ1歳ちょっとだから似てるって言われても・・・それにアズなんて結構いるでしょうに」

いや・・・アズなんて名前こっちの世界でも滅多に聞いた事無い筈なんだけど・・・
というか本当の1歳児はコンナニペラペラシャベラナイ
クラウスさんが隣で「いや、そんなヘンテコな名前いないね」って言ってるし

「これから沢山話す事になるだろうからとりあえず先に手続きのほうを済ませておいても良いかな?」

そんなクラウスさんの言葉に再び我に返った私はコクコクと首を縦に振る

どちらにせよ、今日からここが私のホームとなるようだ

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