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しょうらいのゆめ

ぐう

しょうらいのゆめ



「しょうらいのゆめ」
                二年三くみ  二ばん 
           いいぐさ なお


   ぼくのしょうらいのゆめは、お話をかく人になることです。
   ぼくは本がすきなので、たくさんのお話をよみます。わくわくするお話、かなしくなるお話、むかむかするお話、いろんなお話をよみました。いえでよんでいても、お外に出ているときみたいにいろんなきもちになって、そんな本を作れる人はすごいとおもいました。
   目がみえない人、こえが出せない人、足がわるい人、耳がきこえない人、どんな人でもたのしくなるようなお話をかきたいです。だから、ぼくはこれからもたくさんの本をよんで、たくさんべんきょうします。そして、すごい本をかけるようになりたいです。
   いつか、このクラスの全いんがよんで、心がぽかぽかするようなすごい本を。




~Prolog〜

   遠くで颯爽と走り去っていく光の粒が、まるで檻の中から臨む光に見えるようになったのはいつからだろうか。光の粒を乗せた箱はガタガタ揺れ動きながら山間に消えた。
   ふと空を仰げば三日月が朧気な雲に隠れていた。すっかり暗くなった空間に光る月は、きっと僕ら人間なんてそっちのけで衛星という肩書きだけ所持して生活しているのだろう。
   ため息が無意識に漏れ、疲れきった足をペダルにかけた。青信号になった横断歩道を重く滑り出す。道行く人は皆疲れきった表情を被っている。
   本当は家に帰ることが心の底から嬉しいはずなのに、何故だろう。僕は、帰り道はいつも笑顔になりそうになるのを必死に堪えるのに。
   家が僕の世界になったのは、小学校高学年に上がった頃。それまでは外の世界の発見に毎日心が踊り、家から一本踏み出した瞬間からが僕の本当の世界だった。
   小さな石ころを見つけて、彼はどこから誰に蹴られて来たのだろうだとか、机の角のささくれには、本当は肉眼では見えないほどの小人がいて、毎日修繕活動をおこなっているけれど、人が一度服を擦らせただけで何百万もの犠牲が出るから、実際修繕活動はままならない状態だとか、全部僕の中では本当の話だった。茂みの中にひっそりとした草の窪みがあれば、あの草を掻き分ければ夢の世界が広がっているのだと、本気で信じていた。両親にその世界の話をすれば、二人は笑って聞いてくれた。
   しかし、その世界を閉ざしてきたある男をリーダーとする四人のグループがいた。僕が高らかに夢の話を書いたあの作文の日から三年後、毎日のいじめが始まっていた。
最初は雑用からだった。学校帰りに彼らが公園で遊ぶ間、ずっとランドセルを持って、耐えた。キーキーと変声期の彼らの無邪気で屈託のない声が耳の奥でこだましていたのを今でも覚えている。もちろんその間僕の存在は無いものとされた。
  僕は、これは何らかの罰であり僕が気がつかない間に彼らの気分を損ねてしまったからしようのないことなのだと思っていた。実際、当初の予定では禊が終われば解放されるはずだったのだ。しかし、いじめは中学に上がってからもなお続いた。
軽い使い走りだったことから、暴力、金銭の要求、思春期になれば自慰の強制もさせられた。
   何故、終わらないのか。僕は不思議でたまらなかった。あの作文を書いた頃から小学校卒業まで毎日欠かさず綴っていた物語は、中学に入学してわずか一ヶ月ほどで途絶えた。
   それから彼ら以外にも僕をいじめる輩が増えた。もうその時には、自分が理不尽にいじめられているのがわかっていた。毎日が苦痛で、校舎を見れば吐き気におそわれた。いっそのこと生涯に幕を閉じてしまった方が楽なのではないか、そう考えたこともある。
   しかし未だそれが達成出来ていないのは僕に勇気がないからか、はたまた未練が足を引っ張っているのか。とうに消え果てていた未練が、夢が。

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