クリエイトモンスターズ 〜異世界でモンスター育てて生き延びます!〜

やま

16.誤解

「助けていただきありがとうございます」


 スカートを摘み優雅に礼をする女の子。頭を下げると水色の髪がパサァと落ちる。女の子が頭を下げている相手は、僕たちの現主人であるクラウドさんと、しれっとその隣に並ぶ金髪の美女。


 その金髪の美女の後ろにはチラチラと僕を見てくる黒装束の女性に銀髪の髪をした少女たち。2人の少女は殆ど似た顔をしている。違いといえば緑色の毛並みをした子狼を抱いている方が右目が青く左目が赤い。もう1人の少女はその反対だ。


 ここまで話せばわかると思うけど、金髪の美女はセラさん、黒装束の女性は葵、銀髪の髪をした少女たちはスミカとスミレでスミカに抱かれている子狼がウィルだ。


 どうしてここにいるとか色々と聞きたい事はあるのだけど、奴隷の僕には許可無く話す事は出来ないから黙っている。


「ご無事で何よりです、シルフィオーレ様。お怪我はありませんか?」


「お久しぶりです、クラウド。前に侍女を斡旋して下さった時以来ですね。怪我は足を少し怪我しましたがそれも治療しましたので大丈夫です」


 あのクラウドさんが頭を下げている。話の流れからして貴族のお嬢様のようだけど。昔接点があったようだし。


「それから、冒険者の皆様も助けていただきありがとうございます。私の名前はシルフィオーレ・メルティース、このブリリアント騎士王国の侯爵をしています、バルバロイ・メルティースの娘でございます」


 なんと、思っていた以上に位の高い貴族のお嬢様のようだ。貴族の爵位を殆ど知らない僕でも知っているくらいだし。


 僕以上に爵位に詳しいこの世界の冒険者たちは、かなり恐縮してしまっている。その中で堂々としているのはセラさんたちぐらいだろうか。


 葵たちは僕と同じで爵位についてそこまで知らないからだろうけど、セラさんはどうしてあそこまで堂々と出来るのだろうか? 前から慣れていたっていう雰囲気だ。


「なるほど、王都へと帰還する途中にモンスターに襲われたわけですか」


「ええ。本当に運が悪かったです。皆様がいなければ私たちは皆殺しになっていたでしょう。私やミルなどはそれだけで済まなかったと思います」


 確かオークたちは繁殖するのに相手を選ばないんだっけ。メスだったら人間でも襲ってくるらしいし。その事を想像したのか、シルフィオーレ様は顔を青くさせて自身の体を抱きしめるように腕で抱える。


「大丈夫ですか、お嬢様」


「ええ、大丈夫です、ありがとう、ミル。それで申し訳ないのですが……」


「わかっております、私どもの馬車に同乗して頂ければ。ただ、奴隷を運ぶ用ですので少し窮屈になってしまいますが」


「構いません。乗せていただけるのならそれぐらいは大丈夫です。それに……」


 シルフィオーレ様はそう言うと何故かチラッと僕を見てくる。どうしたんだろう。もしかしてさっき抱き上げた事に怒っている? そ、それは困るなぁ。今の僕はただの奴隷。侯爵家の令嬢の一言で僕の首が飛んでしまうかもしれない。


 僕が1人でガクブルと震えているとこれからの事について話が済んだみたい。どうやらセラさんたちにはこのまま王都まで護衛を頼むそうだ。一瞬、セラさんが僕を見てニヤリと笑っていたけど。き、気のせいかな?


 それから、助かった騎士たちと冒険者のみんなでシルフィオーレ様たちが乗っていた馬車から無事な荷物を運び出して僕たちが乗ってきた馬車へと運び込む。


 僕らが乗っていた馬車は元々奴隷を運ぶために普通の馬車より大きめだ。そのため、少しぐらい荷物が乗っても問題はない。


 荷物を運び終えた後は僕は馬車に戻る。僕たちが元々座っていた場所は半分近くは荷物が占領していたけど、僕たちが座れる場所はあった。


 中にはミランダさんとシルフィオーレ様の侍女をしているミルさんが既に座っていた。2人は親しそうに話しているのでもしかしたら知り合いなのかもしれない。


 僕が入ってきた事に気が付いた2人はそれぞれの反応をする。ミランダさんはホッとした顔を見せてくれて、ミルさんは明らかに嫌そうな顔をしている。


「……もしかして、ミランダ様はこの変態とずっといるのですか?」


「え? ええ、私とテルさんは街を出てからはずっとこの馬車の中で一緒ですよ。どうしたのですか? それから、私は奴隷なので様付けはちょっと」


「申し訳ございません。まだ、慣れなくて。いえ、先ほど彼には助けていただいたのですが、その時どさくさに紛れてお嬢様の胸を触ったので。もしかしたらミランダさ……んも何かされているのでは、と思いまして」


「え?」


 ミルさんの話を聞いたミランダさんはささっと座っていた位置をずらす。ちょっ、た、確かに触ってしまったけどあれは事故だって! だからそんな目で見ないでください!


「それでは出発しますよ」


 クラウドさんの号令で馬車は動き出す。このなんとも言えない中、僕は耐えないといけないのかぁ。王都に着くまで何とか誤解を解きたい。

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