クリエイトモンスターズ 〜異世界でモンスター育てて生き延びます!〜

やま

15.救出

 馬車の周りにはオークが5体。この数なら森でも対処する事が出来た。兵士や冒険者たちがオークの群れを相手にして、手を出さない今、はぐれぐらいは倒さないと。


 僕は馬車に向かいながら魔法を放つ。放つ魔法は雷魔法のエレキショットという魔法だ。相手に電気の弾を撃ち、相手を痺れさせるという基本的な魔法だ。


 他の人より魔力の消費が多い僕は、あまり連発で魔法を撃つ事は出来ないので、確実に倒せるように相手の動きを止めるようにセラさんから習ったのだ。


 僕のエレキショットを食らったオークは、その場で膝をつく。動けない間にオークへと近づき、至近距離でウィンドカッターを放つ。


 さっきは体を少し切るだけだったけだ、この距離ならオークの首を落とす事が出来る。仲間がやられた事で、馬車の近くにいたオークたちは皆僕に向かって来る。


 良し、まだ距離はあるから発動出来るはず。セラさんに教えてもらった魔法を試してみよう。


「空間魔法、ディメンジョンカット」


 魔法を発動すると目の前のオークは喉元を押さえる。オークの手の中から溢れる血。オークはそのまま倒れて動かなくなった。


 おおっ、実戦でやるのは少し緊張したけど、上手いこと出来た! 僕が使った魔法は、使える人の少ない空間魔法で、今の魔法は僕の指定した場所の空間を切ったのだ。


 僕程度の魔力だとあまり大きく切り過ぎると一瞬で魔力がなくなってしまうため、喉元に少しの切り傷を作るのが精一杯なのだ。まあ、オークぐらいの魔物ならこれでも倒せるのだけど。


 仲間を倒されてこちらへと向かって来る3体のオークにも同じようにディメンジョンカットを発動。喉以外にも足の腱を切って歩けなくしたりや、首の後ろを切ったりするなど色々とやり方があるのだろうけど、僕はこのやり方が1番楽だ。


 僕の魔法で倒れたオークはもうピクリとも動かずただの骸となってしまった。兵士たちはまだ戦ってはいるけど、ここは先に馬車の中の人を助けないと。


 横転している車に寄り、扉を開けるため馬車の扉の取っ手を掴む……うん? 固すぎて開かない。オークが無理矢理馬車を壊そうとしたせいで、馬車が歪んで開かないようだ。


 僕は扉を何度か叩くと、馬車の中から「ひっ!」と声がする。あっ、ビックリさせちゃったね。あまり驚かせないように扉を開けないと。


 扉の固定されている箇所をディメンジョンカットで壊す。そして、身体強化のフィジカルアップを発動。扉を引っ張ると、ようやく外れてくれた。


 馬車の中を覗こうとした瞬間、僕の顔めがけてナイフが飛んできた。フィジカルアップをしていたおかげか、何とか飛んで来るのが見えた僕は、慌てて後ろに下がってナイフを避けたけど、バランスを崩して馬車から落ちてしまった……馬車の中へと。


 僕が馬車へと落ちると「きゃっ!」と声がすると共に誰かを下敷きにしてしまった。イタタタ、早く退かないと。


「ご、ごめんなさい、直ぐに退きま……」


 むにゅ


 ……むにゅ? 何か物凄く柔らかい物が手に張り付いて離れない。何度かにぎにぎとしていると、下から「あんっ!」と声が聞こえてきた。


 とても柔らかい至福な感触を楽しんでいたけど、その声を聞いて顔を蒼ざめる。恐る恐る下を見ると、下には頬を紅潮させ、涙目で僕を見て来る女の子がいた。


「え、えっちぃです……」


「ごごご、ごめんなさい!」
  
 やや、やばいやばい! ぼぼぼ、僕、女の子の胸を揉んでしまった! 僕はその場で土下座をしようとした瞬間、喉元に突きつけられるナイフ。


「死ね、下衆男」


 背後から背筋を震えさす程氷点下まで下がったような声が耳に入って来る。とても綺麗な声なのに怖すぎて耳に入ってこない。そしてナイフが……


「や、やめなさい、ミル!」


 喉に刺さろうとした時に、先ほどまで下敷きにしていた女の子が止めてくれた。そして喉元寸前でピタッと止まるナイフ。た、助かった。


 目の前の女の子は僕と同い年ぐらいだろうか、水色の髪を頭の後ろの上の方でくくり、両肩辺りまであるふわふわな髪。簡素ながらもとても良いとわかるドレスを着ている。


「今はそれよりも馬車を出ましょう。まだ、この馬車が危険なのには変わりないのですから……っ!」


 そう言って何とか立ち上がろうとした女の子だけど、突然足を押さえる。よく見れば青く腫れ上がっていた。も、もしかして僕の……


「あなたのせいではありませんよ。馬車が横転した時に足を捻ったのです。それよりも早くここから動きませんと」


 そう言い無理に立とうとするけど、やっぱり痛むらしく足を庇うように立っている。仕方ない。状況が状況だから許してほしい。


「すみません!」


「えっ? きゃあ!」


 僕はフィジカルアップを使い、女の子を抱き上げる。超貧弱な僕でもフィジカルアップをかければ人1人は担げる。フィジカルアップ万歳! まあ、女の子が物凄く軽いのもあるけど。


「嫌だと思いますが少しだけ我慢していてください。直ぐに下ろしますので」


「は、はぃ」


 僕は女の子を担いだまま振り向くと、そこには絶対零度の視線で僕を見て来る女性が立っていた。ボブカットにした茶髪で、侍女服を着たスレンダーな体型の女性。僕より身長が大きい。さっきナイフを向けて来た人だ。


 今にも僕を殺しそうな目をしているけど、状況が状況なだけに我慢しているみたい。そのまま我慢しておいて欲しいです。ナイフをぷるぷると震わせているのは怖いです。


 僕は気が付いていない振りをしながら馬車を上っていく。フィジカルアップのおかげで馬車を軽く登り切る。その後を軽く跳んで来る侍女服の女性。


 さて、兵士の人たちはどうなったか。状況によってはこのままら担いで逃げないと。そう思ってオークの群れの方を見ると、そこには呆然と立ち尽くす兵士と冒険者の姿。そして、ハイオークたちを圧倒する黒い影があった。


 ハイオークたちの周りを素早く周り、ハイオークを追い詰めていく。そしてそこに水と火の魔法がかなりの量撃ち込まれる。逃げる事の出来ないハイオークたちは、全弾モロに当たってその場に崩れた。


 ……何だか見覚えがあるような。

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