復讐の魔王
81.飲み込まれた勇者
「……これは」
氷帝をマリアに、炎帝をカグヤとミミに、剣帝をルイーザ、マリーシャ、クラリスに任せて、城の中へと入った僕の目の前に映る光景は、剣を振り回すマコトの姿だった。
「死ねっ!」
こちらも強欲に飲み込まれているのか、姿が変わっているマコトが兵士たちへと剣を振り回している。ただ、兵士たちは切られた瞬間、霧のように消える。まるで大墳墓の中で見せられた幻覚のようだ。
「ちっ、お前には効かなかったか」
「クロヴィス」
そんな僕を見てかクロヴィスが現れる。手には傲慢の光心剣を握りしめて。
「よく見ておけよ。これが力に飲み込まれた魔王の姿だ。こればかりは本当に醜い姿を見ない事には納得しないからな。お前は怒りに飲み込まれる事は無かったようだが」
これが力に飲み込まれた魔王の姿か。強欲の名の通り、何もかもを欲する姿は確かに醜い。これが自分の努力で手に入れようとしているのならまた違っただろうけど、あいつがしているのは力づくで人から奪う行為だ。
僕も憤怒に飲み込まれていたらああなっていたのかな。怒りに身を任せて暴れる化け物に。その時マリアの顔が浮かんだ。今思えば彼女が止めてくれたからだろう。怒りに染まる顔が気持ち悪いと言ってくれた彼女のお陰で僕は飲み込まれずに済んでいるんだと思う。
「まあ、これから死ぬお前には関係無い話ではあるがな」
クロヴィスがそれだけ言うと姿を消し、天井を突き破って光の雨が降り注いでくる。まとめて殺そうという算段か。
マコトは降り注ぐ光を避けようとはせずに全て身に受けて、僕は炎の盾を頭上に作り、光の雨を焼いていく。
マコトは血塗れになるけど、グチュグチュと肉が蠢き傷を治していく。あいつはもう人間じゃ無いな。完璧に飲み込まれている。
そして膨れ上がる魔力。爆発するように魔力が放たれると、マコトの体が膨れ上がる。マコトの体からボコボコと足が生えてきて、姿を変える。
もう既にマコトの面影は無く、現れたのは8本の足を持つ蜘蛛のような化け物だった。
マコトだったものは僕に気がつくと、8本の足を動かしてこちらへと向かってくる。かなりでかいね。足の長さだけで3メートル近くはある。
そいつはこちらへ向かいながらも足に力をいれて跳んで来た。僕は転移を使いマコトから距離を取る。その前に僕がいたところに罠を仕掛けておいたけど。
気にする事なく僕がいた場所へと着地したマコトは、僕の方へと向かうとするが、地面から火柱が立つ。マコトの全身を焼くが、マコトに効いた様子が見られない。再び迫ってきた。
一瞬で僕の目の前に迫ると太い足を振り下ろしてきた。僕は迫る足に炎心剣をぶつけ弾き、炎を纏わせて下から切り上げる。
振り下ろしてきた足を切り飛ばす事に成功したけど、切り飛ばされた足は形を変えて異形へと変わり、足は再び生えてきた。これは、切らない方がいいね。
しかも、マコトの体から出来た異形は今までのに比べて能力が高い。腕を鋭い刃物に変えて切りかかってきた。
刃物に変えた右腕を振り下ろしてくる異形。僕は炎心剣で逸らして、刃物に変わっていない肩の部分を掴む。足を払い地面へと叩きつけ、炎心剣を顔へと突き刺す。それでも暴れる異形。
トドメを刺そうとするけど、そこに本体が足を振ってきた。異形ごと潰すような重たい一撃を。僕はすぐさま飛び退いて避けたけど、異形はその暇もなく押し潰された。体の一部とか関係無く、自分以外は敵のようだ。
「コロスコロスコロスコロス……」
ブツブツと聞こえる声の元を見てみれば、マコトの顔だけ残っていたけど、意識が残っているわけではなさそうだ。
「コロスッ!」
そして目が開いたと思った瞬間、足とは別に背から大量の腕が僕を掴もうと伸びてきた。気持ちの悪いくらい伸びてくる手。
僕は走りながら手を避け、マコトへと近づく。近づくにつれて攻撃を繰り出す速度が早まっていくけど、この程度まだまだだね!
伸びてくる数本の手を切り裂き、マコトの本体へと炎心剣を突き刺す。そして、体内から焼き尽くそうとするが、突き刺した箇所から手が飛び出してきた。
伸びてきた手はそのまま僕の体に巻きつき締めつけようとしてくる。ぎりぎりと締まる手に空気が漏れるけど、炎心剣に魔力を流す。
すると、炎心剣から炎が燃え上がり、僕の体を燃やす。持ち主である僕には効かないけど、体に巻き付く手は焼いていく。焼き切れていく手を払いのけ、蜘蛛の体を真っ二つに切り裂く。
マコトの体は落ちるけど、真っ二つになった蜘蛛の体は何かを求めるように空いた天井を登っていった。もう既に、本体はマコトでは無いようだ。
何とも言えない気持ちになってしまったけど、蜘蛛の体の方をマコトだと思って殺すか。
氷帝をマリアに、炎帝をカグヤとミミに、剣帝をルイーザ、マリーシャ、クラリスに任せて、城の中へと入った僕の目の前に映る光景は、剣を振り回すマコトの姿だった。
「死ねっ!」
こちらも強欲に飲み込まれているのか、姿が変わっているマコトが兵士たちへと剣を振り回している。ただ、兵士たちは切られた瞬間、霧のように消える。まるで大墳墓の中で見せられた幻覚のようだ。
「ちっ、お前には効かなかったか」
「クロヴィス」
そんな僕を見てかクロヴィスが現れる。手には傲慢の光心剣を握りしめて。
「よく見ておけよ。これが力に飲み込まれた魔王の姿だ。こればかりは本当に醜い姿を見ない事には納得しないからな。お前は怒りに飲み込まれる事は無かったようだが」
これが力に飲み込まれた魔王の姿か。強欲の名の通り、何もかもを欲する姿は確かに醜い。これが自分の努力で手に入れようとしているのならまた違っただろうけど、あいつがしているのは力づくで人から奪う行為だ。
僕も憤怒に飲み込まれていたらああなっていたのかな。怒りに身を任せて暴れる化け物に。その時マリアの顔が浮かんだ。今思えば彼女が止めてくれたからだろう。怒りに染まる顔が気持ち悪いと言ってくれた彼女のお陰で僕は飲み込まれずに済んでいるんだと思う。
「まあ、これから死ぬお前には関係無い話ではあるがな」
クロヴィスがそれだけ言うと姿を消し、天井を突き破って光の雨が降り注いでくる。まとめて殺そうという算段か。
マコトは降り注ぐ光を避けようとはせずに全て身に受けて、僕は炎の盾を頭上に作り、光の雨を焼いていく。
マコトは血塗れになるけど、グチュグチュと肉が蠢き傷を治していく。あいつはもう人間じゃ無いな。完璧に飲み込まれている。
そして膨れ上がる魔力。爆発するように魔力が放たれると、マコトの体が膨れ上がる。マコトの体からボコボコと足が生えてきて、姿を変える。
もう既にマコトの面影は無く、現れたのは8本の足を持つ蜘蛛のような化け物だった。
マコトだったものは僕に気がつくと、8本の足を動かしてこちらへと向かってくる。かなりでかいね。足の長さだけで3メートル近くはある。
そいつはこちらへ向かいながらも足に力をいれて跳んで来た。僕は転移を使いマコトから距離を取る。その前に僕がいたところに罠を仕掛けておいたけど。
気にする事なく僕がいた場所へと着地したマコトは、僕の方へと向かうとするが、地面から火柱が立つ。マコトの全身を焼くが、マコトに効いた様子が見られない。再び迫ってきた。
一瞬で僕の目の前に迫ると太い足を振り下ろしてきた。僕は迫る足に炎心剣をぶつけ弾き、炎を纏わせて下から切り上げる。
振り下ろしてきた足を切り飛ばす事に成功したけど、切り飛ばされた足は形を変えて異形へと変わり、足は再び生えてきた。これは、切らない方がいいね。
しかも、マコトの体から出来た異形は今までのに比べて能力が高い。腕を鋭い刃物に変えて切りかかってきた。
刃物に変えた右腕を振り下ろしてくる異形。僕は炎心剣で逸らして、刃物に変わっていない肩の部分を掴む。足を払い地面へと叩きつけ、炎心剣を顔へと突き刺す。それでも暴れる異形。
トドメを刺そうとするけど、そこに本体が足を振ってきた。異形ごと潰すような重たい一撃を。僕はすぐさま飛び退いて避けたけど、異形はその暇もなく押し潰された。体の一部とか関係無く、自分以外は敵のようだ。
「コロスコロスコロスコロス……」
ブツブツと聞こえる声の元を見てみれば、マコトの顔だけ残っていたけど、意識が残っているわけではなさそうだ。
「コロスッ!」
そして目が開いたと思った瞬間、足とは別に背から大量の腕が僕を掴もうと伸びてきた。気持ちの悪いくらい伸びてくる手。
僕は走りながら手を避け、マコトへと近づく。近づくにつれて攻撃を繰り出す速度が早まっていくけど、この程度まだまだだね!
伸びてくる数本の手を切り裂き、マコトの本体へと炎心剣を突き刺す。そして、体内から焼き尽くそうとするが、突き刺した箇所から手が飛び出してきた。
伸びてきた手はそのまま僕の体に巻きつき締めつけようとしてくる。ぎりぎりと締まる手に空気が漏れるけど、炎心剣に魔力を流す。
すると、炎心剣から炎が燃え上がり、僕の体を燃やす。持ち主である僕には効かないけど、体に巻き付く手は焼いていく。焼き切れていく手を払いのけ、蜘蛛の体を真っ二つに切り裂く。
マコトの体は落ちるけど、真っ二つになった蜘蛛の体は何かを求めるように空いた天井を登っていった。もう既に、本体はマコトでは無いようだ。
何とも言えない気持ちになってしまったけど、蜘蛛の体の方をマコトだと思って殺すか。
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