復讐の魔王
79.全てを燃やす炎
「はぁっ!」
進めば進むほど溢れてくる異形たち。メディスをマリアに任せてからしばらく走って来た皇城を目指しているけど、やはり、皇城へと近づくにつれて戦いが激しくなる。
ゼルテア兵にグランディーク兵が入り乱れて、更にそこへと異形が乱入するという三つ巴の争いが起きている。
「はぁ……はぁ……凄く多い、ね」
「大丈夫、ミミ」
後ろでミミとカグヤの話す声が聞こえてくる。振り向けば、少し疲れた表情を浮かべるミミとクラリスが何とか僕たちについて来ていた。
「大丈夫かい、2人とも」
僕が尋ねると2人とも頷く。けど、あまり無理はさせられないな。ここから先は更に戦いが激しくなる。そこに疲れた状態の彼女たちを連れて行くのは自殺行為だ。
いざとなれば、転移で無理矢理帰らせる事も頭に入れておかないと。そう考えながら先を目指して走っていると、少し離れたところに突然現れた異形の化け物。
ただ現れただけなら焼き殺すのだけど、驚くべきはその大きさだ。周りにある建物などは優に超えており、前見た魔賢樹と同じぐらいの大きさだ。それが皇城を囲むように何体も現れた。
巨大な異形が現れてから少しすると、かなりの数の魔法がそれぞれの異形たちへと放たれていくけど、少し焦げたり、削れたりするだけで、異形はダメージを負った様子もなく歩き続ける。
そして、異形が巨大な腕を振るうと、建物は容易く押し潰し、その衝撃で地面が爆ぜる。その衝撃で更に建物は崩れ吹き飛んで行く。近くにいた兵士たちもまるで塵のように宙を舞う。
「ひぃっ!」
その衝撃に吹き飛ばされた兵士が、僕たちの近くに落ちて目の前で潰れたため、その光景を目の前で見てしまったミミは悲鳴をあげる。
建物や足下にいる兵士たちのことなんか気にしないで、真っ直ぐと皇城へと歩き続ける異形たち。目障りだな。焼き尽くしてしまうか。
しかし、僕が手を下すまでもなかった。一気に燃やしてしまおうかと考えていたら、巨大な異形を飲み込むほど大きな火柱が異形を包み込んだのだ。
ルイーザたちはみんな僕を見てくるけど、僕じゃないよ。別の人だよ。その証拠に
「あの方が治めるこの地を汚す汚物たちよ。私の炎で燃やし尽くしてあげますわ!」
炎の翼を背に生やした女性が両腕を炎に変えて、異形へと放つ。20センチにも満たない小さな球体だが、異形に触れた瞬間、一瞬にして燃え上がる。
あの女性は、前来た時にクロヴィスの側にいた四帝の1人だ。確か炎帝だったっけ。次々と焼かれて行く異形たち。
巨大な異形たちが跡形もなく焼かれた後、こちらを見てくる炎帝。明らかに狙っているのがわかる。指先をこちらへと向けてくる炎帝。そして放つのは先程異形たちを焼き尽くした炎の球体。僕が憤怒の炎心剣で防ごうとしたら
「聖域!」
と、辺りを覆い尽くし輝く光の空間があらわれた。そして、迫る炎の球体を防ぐ。何発ぶつかっても防ぎきる空間。これを発動したのは、先程まで弱っていたミミだった。
「え、エルさんたちは先へ行ってください! こ、ここは私が防ぎます!」
今まで聞いたことがない程力強い声。そして決意に満ちた目は、あれほどおどおどとしていたミミから想像がつかない程綺麗だった。そして
「大切な妹を1人には出来ないわね」
と言い、弓を構えるカグヤ。僕たちが見ていると
「べ、別にあんたたちのためじゃないんだからね。こらはミミのために残るんだから、か、勘違いしないでよね!」
と、何も言っていないのに、怒鳴ってくる。その姿を見てマリーシャやルイーザたちは笑っていた。まあ、何というか、照れ隠しってやつかな。でも、そんな彼女でも僕が伝えるのは1つ。
「死んじゃダメだからね」
「……わかっているわよ。私もミミもようやくこの世界で慣れて来たんだもの」
僕の言葉に頷く2人。更に炎の球体の数が増える中、僕たちは2人に背を向けて皇城へと走り出す。死ぬんじゃないよ。
◇◇◇
「……はぁ、なんであいつのために命かけてるのよ、私」
「ふふ、お姉ちゃん、エルさんの前だと猫被らないよね?」
私が少し後悔していると、両手を前にかざしながら迫る攻撃を防いでいるミミがそんな事を言ってくる。私がいつ猫を被ったのよ?
「だって、学校の時も、ここに来た時もそんな文句を言う相手いなかったでしょ? マコトさんたちに対してもどこか距離を置いていたし」
……確かにそうかもしれないけど、だけど、認めるのはなんか嫌だから、私は黙ってこちらに向かってくる赤髪の女の方を見る。炎帝レストア。皇帝の側にいる炎帝が出て来ているなんて。
「あら、これは裏切り者の勇者じゃないですか。今更戻って来たので?」
「まさか。私はあなたたちとマコトを倒しに来たのよ」
「……ふふ……ふふふふふっ、面白い事を言うではありませんか。いいでしょう。その言葉、後悔させてあげますよ」
一気に温度が上がり、建物が燃え出す中、私は弓をミミは杖を構える。あいつのためじゃないけど、私もミミも必ず生き残るわよ。
進めば進むほど溢れてくる異形たち。メディスをマリアに任せてからしばらく走って来た皇城を目指しているけど、やはり、皇城へと近づくにつれて戦いが激しくなる。
ゼルテア兵にグランディーク兵が入り乱れて、更にそこへと異形が乱入するという三つ巴の争いが起きている。
「はぁ……はぁ……凄く多い、ね」
「大丈夫、ミミ」
後ろでミミとカグヤの話す声が聞こえてくる。振り向けば、少し疲れた表情を浮かべるミミとクラリスが何とか僕たちについて来ていた。
「大丈夫かい、2人とも」
僕が尋ねると2人とも頷く。けど、あまり無理はさせられないな。ここから先は更に戦いが激しくなる。そこに疲れた状態の彼女たちを連れて行くのは自殺行為だ。
いざとなれば、転移で無理矢理帰らせる事も頭に入れておかないと。そう考えながら先を目指して走っていると、少し離れたところに突然現れた異形の化け物。
ただ現れただけなら焼き殺すのだけど、驚くべきはその大きさだ。周りにある建物などは優に超えており、前見た魔賢樹と同じぐらいの大きさだ。それが皇城を囲むように何体も現れた。
巨大な異形が現れてから少しすると、かなりの数の魔法がそれぞれの異形たちへと放たれていくけど、少し焦げたり、削れたりするだけで、異形はダメージを負った様子もなく歩き続ける。
そして、異形が巨大な腕を振るうと、建物は容易く押し潰し、その衝撃で地面が爆ぜる。その衝撃で更に建物は崩れ吹き飛んで行く。近くにいた兵士たちもまるで塵のように宙を舞う。
「ひぃっ!」
その衝撃に吹き飛ばされた兵士が、僕たちの近くに落ちて目の前で潰れたため、その光景を目の前で見てしまったミミは悲鳴をあげる。
建物や足下にいる兵士たちのことなんか気にしないで、真っ直ぐと皇城へと歩き続ける異形たち。目障りだな。焼き尽くしてしまうか。
しかし、僕が手を下すまでもなかった。一気に燃やしてしまおうかと考えていたら、巨大な異形を飲み込むほど大きな火柱が異形を包み込んだのだ。
ルイーザたちはみんな僕を見てくるけど、僕じゃないよ。別の人だよ。その証拠に
「あの方が治めるこの地を汚す汚物たちよ。私の炎で燃やし尽くしてあげますわ!」
炎の翼を背に生やした女性が両腕を炎に変えて、異形へと放つ。20センチにも満たない小さな球体だが、異形に触れた瞬間、一瞬にして燃え上がる。
あの女性は、前来た時にクロヴィスの側にいた四帝の1人だ。確か炎帝だったっけ。次々と焼かれて行く異形たち。
巨大な異形たちが跡形もなく焼かれた後、こちらを見てくる炎帝。明らかに狙っているのがわかる。指先をこちらへと向けてくる炎帝。そして放つのは先程異形たちを焼き尽くした炎の球体。僕が憤怒の炎心剣で防ごうとしたら
「聖域!」
と、辺りを覆い尽くし輝く光の空間があらわれた。そして、迫る炎の球体を防ぐ。何発ぶつかっても防ぎきる空間。これを発動したのは、先程まで弱っていたミミだった。
「え、エルさんたちは先へ行ってください! こ、ここは私が防ぎます!」
今まで聞いたことがない程力強い声。そして決意に満ちた目は、あれほどおどおどとしていたミミから想像がつかない程綺麗だった。そして
「大切な妹を1人には出来ないわね」
と言い、弓を構えるカグヤ。僕たちが見ていると
「べ、別にあんたたちのためじゃないんだからね。こらはミミのために残るんだから、か、勘違いしないでよね!」
と、何も言っていないのに、怒鳴ってくる。その姿を見てマリーシャやルイーザたちは笑っていた。まあ、何というか、照れ隠しってやつかな。でも、そんな彼女でも僕が伝えるのは1つ。
「死んじゃダメだからね」
「……わかっているわよ。私もミミもようやくこの世界で慣れて来たんだもの」
僕の言葉に頷く2人。更に炎の球体の数が増える中、僕たちは2人に背を向けて皇城へと走り出す。死ぬんじゃないよ。
◇◇◇
「……はぁ、なんであいつのために命かけてるのよ、私」
「ふふ、お姉ちゃん、エルさんの前だと猫被らないよね?」
私が少し後悔していると、両手を前にかざしながら迫る攻撃を防いでいるミミがそんな事を言ってくる。私がいつ猫を被ったのよ?
「だって、学校の時も、ここに来た時もそんな文句を言う相手いなかったでしょ? マコトさんたちに対してもどこか距離を置いていたし」
……確かにそうかもしれないけど、だけど、認めるのはなんか嫌だから、私は黙ってこちらに向かってくる赤髪の女の方を見る。炎帝レストア。皇帝の側にいる炎帝が出て来ているなんて。
「あら、これは裏切り者の勇者じゃないですか。今更戻って来たので?」
「まさか。私はあなたたちとマコトを倒しに来たのよ」
「……ふふ……ふふふふふっ、面白い事を言うではありませんか。いいでしょう。その言葉、後悔させてあげますよ」
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