世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜
25.貰ったものは
「……ふう、何とか説得が出来ましたね」
私はるんるんと自分の部屋へと戻ります。まさか、あそこまで渋られるとは思いませんでしたが、それでも最終的には認めて下さいました。特例付きではありますが。
「あっ、シルエット様、お帰りなさい!」
部屋に戻るとセーラが出迎えてくれました。ベッドにはお風呂に入ったのか、少し濡れた髪に温まったお陰で頬を赤く染め眠っている子供たちがいました。
「ただいま戻りました、セーラ。子供たちを任せてすみません」
「いえいえ。私も楽しくお話しできましたから! あっ、そういえば、リカルド様が先程来られていましたよ。シルエット様が陛下のところへ行っていると伝えたら、戻り次第部屋に来て欲しいと」
ふむ。リカルド様が今呼ぶ理由はやはりこの子たちの事でしょう。私が宮廷魔術師をやめた事はまだ聞いていないでしょうし。
「わかりました。今から行ってきます」
私はそう言って転移で移動します。移動先はリカルド様の私室の前。誰も扉の前にはいなかったのですが、部屋の中からは気配がしましたので扉を叩くと、中から声が聞こえてきます。
私が来た事を伝えると、中へ入るように促されましたので、扉を開けて中へと入ると、部屋の中ではリカルド様が書類を見ていました。
机の上に置かれた山のような書類。半年前の戦いの鎮圧から陛下に色々と仕事を任されているようで忙しそうでしたものね。
「よく来てくれたな、シルエット殿」
「いえ。それから申し訳ございませんでした。せっかく誘って下さったのに私の勝手で」
「ははは。構わないよ。それよりも子供たちのために動く美しいシルエット殿を見る事が出来て、それだけで十分さ」
そんな事を言いながらニコニコと笑みを浮かべて私を見てくるリカルド様。むぅぅ、なんだか恥ずかしいですね。
「……それで、私を呼ばれたのは?」
「ああ、そうだ。君にこれを渡しておこうと思ってね」
「これは……鍵ですね」
「ああ。これはとある男爵家の屋敷の鍵でな。いわゆる曰く付きの屋敷で不動産屋も持ちたくないと言って国で管理しているのだ。
これからあの子たちを育てるのに王宮は厳しいからどこか屋敷と思って探したのだが、あまり大きな屋敷だと貴族街になってしまって不便だろう? そう思って治安の良い警備兵舎の近くで探すとここしか残ってなくてな。
大臣もここなら安い金額で貸してくれると言ってくれたのだ」
「なるほど。なら、私が住めるようにしたら良いのですね」
「すまない。本当はシルエット殿の手を煩わせる事なく屋敷を渡したかったのだが……」
本当に申し訳なさそうにそう言ってくださるリカルド様。
「ふふっ、そんな事は無いですよ、リカルド様。こんな風に私のわがままに付き合ってくださるだけで私は嬉しいです」
私が微笑みながらお礼を言うと、何故か私を見たまま固まってしまったリカルド様。どうかしたのでしょうか?
「リカルド様?」
「……あ、ああ、その屋敷はもう今日から使っても大丈夫だ。私も時間が空けば行くよ」
「わかりました。リカルド様、本当にありがとうございます」
「構わないよ。孤児の事は私たちがどうにかしないといけない問題だ。喜んで手伝うからなんでも言ってくれ」
私はリカルド様のその言葉に再度お礼を言って部屋を出ます。部屋に戻るとせっせと部屋の掃除をしているセーラ。そういえば途中で子供たちを任せてしまいましたからね。申し訳ないです。子供たちはまだぐっすりとですね。
「あっ、シルエット様、お帰りなさい。リカルド様のご用事は終わったのですか?」
「ええ、屋敷を下さいました」
そして、渡された男爵の屋敷の話をします。初めはワクワクと話を聞いていたセーラですが、次第に顔色を青くします。
「セーラは知っているのですか?」
「し、知っているも何もかなり有名な話です。その屋敷に住んでいた男爵には溺愛していた娘がいたようなのですが、病気で亡くなってしまい、男爵はその娘を生きかえらそうと、同い年くらいの子供を攫っては……男爵は国に捕らえられ処刑されたのですが、残った屋敷からは子供たちの笑い声や、歩く音、実際には子供を見たって言う人もいるくらいです」
ふむ。子供たちが姿を現わす屋敷ですか。この子たちの友達には……なってはくれなさそうですね。取り敢えずその屋敷に向かって見ますか。
◇◇◇
「それでは失礼します」
綺麗な礼をしながら部屋を出て行くシルエット殿。私は完全に扉が閉まるのを待って、閉まったのを確認してから……1人で悶える。
な、なんだよ、あの笑顔! 女神のように輝かんばかりの美しい笑顔。あの笑顔を見た瞬間、息をするのも忘れていたぞ!
「失礼しま……どうされたのですか、その緩みきった顔は?」
私が先ほどのシルエット殿の笑顔を思い出していると、レインズが部屋に入って来た。
「レ、レインズ、ノックもせずに部屋へ入るとは!」
「ノックはしましたぞ。それにリカルド様が、ああ、と返事をしたのでは無いですか。まあ、今の姿を見るに勘違いのようですが」
そう言い苦笑いするレインズ。ぐっ、私が悪い分何も言えない。
「……それで、何かあったのか?」
「いえ、明後日の陛下の誕生会の準備は順調です。それから、ウィルカス様も王都に着きました。ただ、どこで雇ったのか2人護衛を連れていました。兵士では無い者で、見た限り中々の手練れでした」
「ふむ……わかった。ウィルカス兄上には注意していてくれ。ただの護衛ならそれで良いのだが……」
「はい」
私はるんるんと自分の部屋へと戻ります。まさか、あそこまで渋られるとは思いませんでしたが、それでも最終的には認めて下さいました。特例付きではありますが。
「あっ、シルエット様、お帰りなさい!」
部屋に戻るとセーラが出迎えてくれました。ベッドにはお風呂に入ったのか、少し濡れた髪に温まったお陰で頬を赤く染め眠っている子供たちがいました。
「ただいま戻りました、セーラ。子供たちを任せてすみません」
「いえいえ。私も楽しくお話しできましたから! あっ、そういえば、リカルド様が先程来られていましたよ。シルエット様が陛下のところへ行っていると伝えたら、戻り次第部屋に来て欲しいと」
ふむ。リカルド様が今呼ぶ理由はやはりこの子たちの事でしょう。私が宮廷魔術師をやめた事はまだ聞いていないでしょうし。
「わかりました。今から行ってきます」
私はそう言って転移で移動します。移動先はリカルド様の私室の前。誰も扉の前にはいなかったのですが、部屋の中からは気配がしましたので扉を叩くと、中から声が聞こえてきます。
私が来た事を伝えると、中へ入るように促されましたので、扉を開けて中へと入ると、部屋の中ではリカルド様が書類を見ていました。
机の上に置かれた山のような書類。半年前の戦いの鎮圧から陛下に色々と仕事を任されているようで忙しそうでしたものね。
「よく来てくれたな、シルエット殿」
「いえ。それから申し訳ございませんでした。せっかく誘って下さったのに私の勝手で」
「ははは。構わないよ。それよりも子供たちのために動く美しいシルエット殿を見る事が出来て、それだけで十分さ」
そんな事を言いながらニコニコと笑みを浮かべて私を見てくるリカルド様。むぅぅ、なんだか恥ずかしいですね。
「……それで、私を呼ばれたのは?」
「ああ、そうだ。君にこれを渡しておこうと思ってね」
「これは……鍵ですね」
「ああ。これはとある男爵家の屋敷の鍵でな。いわゆる曰く付きの屋敷で不動産屋も持ちたくないと言って国で管理しているのだ。
これからあの子たちを育てるのに王宮は厳しいからどこか屋敷と思って探したのだが、あまり大きな屋敷だと貴族街になってしまって不便だろう? そう思って治安の良い警備兵舎の近くで探すとここしか残ってなくてな。
大臣もここなら安い金額で貸してくれると言ってくれたのだ」
「なるほど。なら、私が住めるようにしたら良いのですね」
「すまない。本当はシルエット殿の手を煩わせる事なく屋敷を渡したかったのだが……」
本当に申し訳なさそうにそう言ってくださるリカルド様。
「ふふっ、そんな事は無いですよ、リカルド様。こんな風に私のわがままに付き合ってくださるだけで私は嬉しいです」
私が微笑みながらお礼を言うと、何故か私を見たまま固まってしまったリカルド様。どうかしたのでしょうか?
「リカルド様?」
「……あ、ああ、その屋敷はもう今日から使っても大丈夫だ。私も時間が空けば行くよ」
「わかりました。リカルド様、本当にありがとうございます」
「構わないよ。孤児の事は私たちがどうにかしないといけない問題だ。喜んで手伝うからなんでも言ってくれ」
私はリカルド様のその言葉に再度お礼を言って部屋を出ます。部屋に戻るとせっせと部屋の掃除をしているセーラ。そういえば途中で子供たちを任せてしまいましたからね。申し訳ないです。子供たちはまだぐっすりとですね。
「あっ、シルエット様、お帰りなさい。リカルド様のご用事は終わったのですか?」
「ええ、屋敷を下さいました」
そして、渡された男爵の屋敷の話をします。初めはワクワクと話を聞いていたセーラですが、次第に顔色を青くします。
「セーラは知っているのですか?」
「し、知っているも何もかなり有名な話です。その屋敷に住んでいた男爵には溺愛していた娘がいたようなのですが、病気で亡くなってしまい、男爵はその娘を生きかえらそうと、同い年くらいの子供を攫っては……男爵は国に捕らえられ処刑されたのですが、残った屋敷からは子供たちの笑い声や、歩く音、実際には子供を見たって言う人もいるくらいです」
ふむ。子供たちが姿を現わす屋敷ですか。この子たちの友達には……なってはくれなさそうですね。取り敢えずその屋敷に向かって見ますか。
◇◇◇
「それでは失礼します」
綺麗な礼をしながら部屋を出て行くシルエット殿。私は完全に扉が閉まるのを待って、閉まったのを確認してから……1人で悶える。
な、なんだよ、あの笑顔! 女神のように輝かんばかりの美しい笑顔。あの笑顔を見た瞬間、息をするのも忘れていたぞ!
「失礼しま……どうされたのですか、その緩みきった顔は?」
私が先ほどのシルエット殿の笑顔を思い出していると、レインズが部屋に入って来た。
「レ、レインズ、ノックもせずに部屋へ入るとは!」
「ノックはしましたぞ。それにリカルド様が、ああ、と返事をしたのでは無いですか。まあ、今の姿を見るに勘違いのようですが」
そう言い苦笑いするレインズ。ぐっ、私が悪い分何も言えない。
「……それで、何かあったのか?」
「いえ、明後日の陛下の誕生会の準備は順調です。それから、ウィルカス様も王都に着きました。ただ、どこで雇ったのか2人護衛を連れていました。兵士では無い者で、見た限り中々の手練れでした」
「ふむ……わかった。ウィルカス兄上には注意していてくれ。ただの護衛ならそれで良いのだが……」
「はい」
コメント
RAI
続き楽しみにしています
これからも頑張ってください!