世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜

やま

18.終わった後

「流石お姉様です! ペテロはあのような風貌でですが、魔術師の中でもかなりの実力と持っていると言われているのに、手も足も出させずに圧倒するなんて!」


 ペテロとの模擬戦が終わり控え室に戻ると、パタパタと走って私に抱き付いてくるシリカ様。ふふ、とても可愛いですね、なでなで。


 シリカ様の後ろからはニコニコ笑顔のリカルド様にセリルさんにセーラもやってきました。


「まあ、私はシルエット殿が勝つ事は分かっていたからね。あの超級の魔獣に比べたらペテロなんて」


 そう言い苦笑いをするリカルド様。まあ、超級と比べたらそうなりますね。そう思っていたら


「よく言いますよ〜、リカルド様。ペテロ様が魔術を発動する度にシルエット様を心配する声を上げていたのに」


 リカルド様の後ろに立っているセーラがそんな事を言います。その言葉を聞いたセシルさんは額に手を当てて溜息を吐き、私に抱き付くシリカ様は苦笑い。私は何事かとわからなかったのですが、リカルド様は笑顔のまま振り向きセーラの頭を鷲掴みします。


「いっ!? いだだ! いだいいだいです! リカルド様、痛いです!」


 どうやら、リカルド様はセーラの頭を鷲掴みにして握っているようです。あれは痛いですね。セーラが涙目で頭を鷲掴みするリカルド様の手を叩きますが、ピクリともしません。


 そして数分ぐらいしてリカルド様がようやく手を離します。解放されたセーラは頭を押さえながらその場に座り込んでしまいました。よほど痛かったのでしょう。


「それじゃあシルエット殿、父上のところへ向かおう。皆、待っているはずだ」


 セーラの頭を鷲掴みしていた様子を微塵も感じさせないような笑顔で見てきます。その表情を見たシリカ様は先ほど以上に力強く抱き付いてきます。体も少し震えていますね。よしよし。


 それから私たちは、初めに集まった玉座の間へと戻ります。玉座の間には既に皆様も戻っていました。どうやらペテロはいないようです。魔力を使い果たしてしまったようで。


 その代わりにですが、第1王子であるウィルカス様が物凄く悔しそうな表情を浮かべて睨んでくる。それを無視して私たちは陛下の前まで行き膝をつきます。


「うむ、面をあげよ」


 私たちは陛下の言葉通り顔を上げると、目の前にはニコニコとした陛下がどっしりと座っていた。物凄く嬉しそうな顔をしていますね。


「シルエットよ、見事な実力、私の想像以上であった。素晴らしかったぞ」


「ありがとうございます、陛下」


 陛下がニコニコとしながら話すので私もニコニコとしながら頭を下げます。


「それでは勝負の前の通りシルエットには宮廷魔術師へとなってもらう。もう異論は認めんぞ」


 陛下の言葉に周りの人たちは何も言わないまま頷きます。これで、私も周りを気にする事なくここにいれますね。


「それからウィルカスよ」


「は、はい、父上」


 先ほどまでのニコニコはなく、鋭い視線をウィルカス様へと向ける陛下。その視線を一身に受けたウィルカス様はビクリと震えます。


「やる前に話した通り、罰を受けてもらう。ウィルカス、お前には自腹を切って彼女の執務室を作ってもらう。何、金が無いとは言わせないぞ。そなたが隠れて数人の貴族と組んで商売をしておる事は知っておる。非合法では無いから黙って見ておったが、中々ギリギリのラインで商売をやっておるようだな。何軒かの商会も潰れたようだし」


「うっ!」


「先ほども言った通り非合法では無いから構わぬが、限度を考えよ。ウィルカス、もしそなたがそのラインを越えれば、そなたは王子では無く犯罪者として私と会う事になるだろう。肝に命じておくのだ」


「……わかりました父上」


 先ほど以上に悔しそうな表情をするウィルカス様。そして、再び私たちの方へと向く陛下。その表情はもう先ほどのような射抜くような視線ではなかった。


「それでは今宵は宴を開こうでは無いか。今まで空席であった宮廷魔術師の就任に、リカルドの無事の帰還、シリカの回復祝いを!」


 陛下の言葉を受けて周りの人たちは一斉に頭を下げます。宴ですか。本ではよく見た事があるのですが、当然参加するのは初めてです。どんなお料理が出て来るのでしょうか? わくわく!

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