世間知らずの魔女 〜私、やり過ぎましたか?〜
15.正装です!
「これはいいですね」
私は目の前にある姿見を見て呟きます。シュッとした感じではありますが、中々着やすい服です。自分の姿を姿見で確認していると
「……どうして侍女服なんだ、シルエット殿?」
と、後ろからそんな声が聞こえてきました。振り返るとそこには、軽く頭を抱えているリカルド様に、黄色の可憐なドレスを着ているシリカ様がいらっしゃいました。
「あれ、私の格好変ですか? 本では侍女服は最強だと書いてあったのですが」
現在私が着ているのは侍女服です。とある本を昔読んで、一度着てみたいと思っていたのですが、これは中々いい服です。動きやすくてポケットが多くて、華美になり過ぎない。セーラにお願いしていて良かったです!
「……ちなみにその本の名前は?」
「えっ? 確か『異世界最強の装備は侍女服! 戦闘から家事までこれ一着で世界最強!』だったと思いますが」
私が昔読んだ小説の題名を答えると、先ほどまで片手で頭を押さえていたリカルド様ですが、何故か両手で頭を押さえます。何故ですか。
「うわぁ! お姉様は何を着てもお似合いです!」
「ふふ、ありがとうございます、シリカ様」
私の服装を褒めてくださるシリカ様。やはり褒められるのは嬉しいものです。さらにその後ろでは、何故か打ちひしがれているセーラの姿が。どうかしたのでしょうかね?
「……100歩譲って普段はそれで良いとしても、流石に今日は。今から父上への謁見がある。流石にその格好は」
「どうしても、駄目ですか?」
私は手を合わせて下から見上げると、リカルド様は口元を手で押さえてそっぽを向きます。そして小さな声で「今回だけだよ」と言ってくださいました。やりました! これでこの服を着て行けます!
私が1人で喜んでいると、リカルド様の後ろでは「甘いですねぇ〜」「甘いです」「本当に甘いです」とシリカ様、セリルさん、セーラが口々に言います。その言葉を聞いたリカルド様はギロリと3人を睨みますが、ふぅ、と息を吐くだけです。どうしたのでしょうか?
「……それよりそろそろ時間だ。行こうか」
おっと、もうそんな時間ですか。浮かれ過ぎて時間を忘れていました。先頭で部屋を出て行くリカルド様に私とシリカ様はついて行きます。セシルさんとセーラは待機のようです。
まだ完璧に覚えきれていない王城の廊下を歩く事10分。かなりの兵士が立ち並ぶ扉の前に辿り着きました。ここが王座の間というところなのでしょう。
周りの兵士さんたちが物凄く見てきますね。なんだかこそばゆい。ぶるぶる。
「国王陛下へお目通しを」
「少しお待ちください」
しかし、リカルド様は堂々とされていますね。兵士さんたちの視線の中には敵意が含まれているものもあるというのに。
「ん? どうしたんだいシルエット殿? 緊張しているのか? はは、森の中では負け無しのシルエット殿でも、緊張する事があるんだな」
周りの視線を気にしていると、リカルド様が私の事を心配してくれます。リカルド様はこの視線を気にしていない様子。シリカ様は少し居心地が悪そうですが。心配されるのは嬉しいのですが、今はリカルド様の方が心配ですね。
私はただ人間の視線に慣れていないだけですので。森の中の魔獣の視線や敵意には慣れているのですが、人間のこのねっとりとした視線はまだ慣れませんね。
「国王陛下より許可が出ましたのでお入り下さい」
周りの視線を気にしているといつの間にか入場の許可が出たようですね。リカルド様を先頭にシリカ様に私と続いて入っていきます。
部屋に入った瞬間、先ほど以上に値踏みされる視線。左右に立ち並ぶ豪華な服を着た人たちがじろりと私達を見てきます。あっ、列の中にはレインズ様もいらっしゃいます。手をふりふり。
私の視線に気が付いたレインズ様は、私の方をギョッとして見ますがそのまま視線を外されます。むぅ、少し反応してくださっても良いと思いますが。
そのままリカルド様は玉座に登る階段の手前で立ち止まり、その場で片膝をつき頭を下げます。私もそれに倣って真似をします。あまりこういう作法は知らないものですから。少しずつ覚えていきましょう。
「陛下、陛下の命を受け、リカルド、シリカ、そして私の命の恩人、シルエットを連れて参りました」
「うむ、面を上げよリカルドよ。よくぞ参った」
頭の上から聞こえてくる声。言葉の通り頭を上げて良いのかどうか迷いましたが、雰囲気からして上げているようなので私も上げます。
階段を上った先にいる50代ぐらいの男性。かなり鍛えられた肉体をしていて、下手するとレインズ様たちのような将軍でも相手にならないかもしれませんね。この方がこのデストライト王国の国王、ジャーマニック・セル・デストライトですね。
「シリカも良くなって良かった」
「はい、お父様。毎日お父様が送って下さるお花が私の楽しみでした!」
「おお、そうかそうか。それならこれからも送るとしよう!」
にこやかに笑い合う家族。うん、良い光景ですね。こういう光景は小説以外では伺う事が出来なかったので、とても心温まります。そして
「お主が、リカルドを救ってくれたという女性か。それでいきなりの質問で悪いのだが……何故侍女服を?」
「私の正装です!」
これだけは譲りませんよ!
私は目の前にある姿見を見て呟きます。シュッとした感じではありますが、中々着やすい服です。自分の姿を姿見で確認していると
「……どうして侍女服なんだ、シルエット殿?」
と、後ろからそんな声が聞こえてきました。振り返るとそこには、軽く頭を抱えているリカルド様に、黄色の可憐なドレスを着ているシリカ様がいらっしゃいました。
「あれ、私の格好変ですか? 本では侍女服は最強だと書いてあったのですが」
現在私が着ているのは侍女服です。とある本を昔読んで、一度着てみたいと思っていたのですが、これは中々いい服です。動きやすくてポケットが多くて、華美になり過ぎない。セーラにお願いしていて良かったです!
「……ちなみにその本の名前は?」
「えっ? 確か『異世界最強の装備は侍女服! 戦闘から家事までこれ一着で世界最強!』だったと思いますが」
私が昔読んだ小説の題名を答えると、先ほどまで片手で頭を押さえていたリカルド様ですが、何故か両手で頭を押さえます。何故ですか。
「うわぁ! お姉様は何を着てもお似合いです!」
「ふふ、ありがとうございます、シリカ様」
私の服装を褒めてくださるシリカ様。やはり褒められるのは嬉しいものです。さらにその後ろでは、何故か打ちひしがれているセーラの姿が。どうかしたのでしょうかね?
「……100歩譲って普段はそれで良いとしても、流石に今日は。今から父上への謁見がある。流石にその格好は」
「どうしても、駄目ですか?」
私は手を合わせて下から見上げると、リカルド様は口元を手で押さえてそっぽを向きます。そして小さな声で「今回だけだよ」と言ってくださいました。やりました! これでこの服を着て行けます!
私が1人で喜んでいると、リカルド様の後ろでは「甘いですねぇ〜」「甘いです」「本当に甘いです」とシリカ様、セリルさん、セーラが口々に言います。その言葉を聞いたリカルド様はギロリと3人を睨みますが、ふぅ、と息を吐くだけです。どうしたのでしょうか?
「……それよりそろそろ時間だ。行こうか」
おっと、もうそんな時間ですか。浮かれ過ぎて時間を忘れていました。先頭で部屋を出て行くリカルド様に私とシリカ様はついて行きます。セシルさんとセーラは待機のようです。
まだ完璧に覚えきれていない王城の廊下を歩く事10分。かなりの兵士が立ち並ぶ扉の前に辿り着きました。ここが王座の間というところなのでしょう。
周りの兵士さんたちが物凄く見てきますね。なんだかこそばゆい。ぶるぶる。
「国王陛下へお目通しを」
「少しお待ちください」
しかし、リカルド様は堂々とされていますね。兵士さんたちの視線の中には敵意が含まれているものもあるというのに。
「ん? どうしたんだいシルエット殿? 緊張しているのか? はは、森の中では負け無しのシルエット殿でも、緊張する事があるんだな」
周りの視線を気にしていると、リカルド様が私の事を心配してくれます。リカルド様はこの視線を気にしていない様子。シリカ様は少し居心地が悪そうですが。心配されるのは嬉しいのですが、今はリカルド様の方が心配ですね。
私はただ人間の視線に慣れていないだけですので。森の中の魔獣の視線や敵意には慣れているのですが、人間のこのねっとりとした視線はまだ慣れませんね。
「国王陛下より許可が出ましたのでお入り下さい」
周りの視線を気にしているといつの間にか入場の許可が出たようですね。リカルド様を先頭にシリカ様に私と続いて入っていきます。
部屋に入った瞬間、先ほど以上に値踏みされる視線。左右に立ち並ぶ豪華な服を着た人たちがじろりと私達を見てきます。あっ、列の中にはレインズ様もいらっしゃいます。手をふりふり。
私の視線に気が付いたレインズ様は、私の方をギョッとして見ますがそのまま視線を外されます。むぅ、少し反応してくださっても良いと思いますが。
そのままリカルド様は玉座に登る階段の手前で立ち止まり、その場で片膝をつき頭を下げます。私もそれに倣って真似をします。あまりこういう作法は知らないものですから。少しずつ覚えていきましょう。
「陛下、陛下の命を受け、リカルド、シリカ、そして私の命の恩人、シルエットを連れて参りました」
「うむ、面を上げよリカルドよ。よくぞ参った」
頭の上から聞こえてくる声。言葉の通り頭を上げて良いのかどうか迷いましたが、雰囲気からして上げているようなので私も上げます。
階段を上った先にいる50代ぐらいの男性。かなり鍛えられた肉体をしていて、下手するとレインズ様たちのような将軍でも相手にならないかもしれませんね。この方がこのデストライト王国の国王、ジャーマニック・セル・デストライトですね。
「シリカも良くなって良かった」
「はい、お父様。毎日お父様が送って下さるお花が私の楽しみでした!」
「おお、そうかそうか。それならこれからも送るとしよう!」
にこやかに笑い合う家族。うん、良い光景ですね。こういう光景は小説以外では伺う事が出来なかったので、とても心温まります。そして
「お主が、リカルドを救ってくれたという女性か。それでいきなりの質問で悪いのだが……何故侍女服を?」
「私の正装です!」
これだけは譲りませんよ!
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