王国最強の元暗殺者
28.いないはずの種族
「ここからだと行けそうか」
俺は町を囲むゾンビたちに気が付かれないように気配を殺して、町の壁へと近づく事が出来た。そのまま足に魔力を集めて壁に迫る。
壁ギリギリまで迫って一気に跳んで、壁を駆け上がる。壁がまだ石を積み上げた物のお陰で足が引っかかりやすいのが助かったな。まあ、引っかかりやすいと言っても、殆ど隙間なく固められているから、普通では登る事は出来ないのだが。
壁を登り切った俺はそのまま町の中へと入る。町の中はまだゾンビは入ってきていないが、あの数だと門を壊されるのも時間の問題だろう。
そう思っていた矢先、町の中心地から悲鳴が聞こえて来た。そして、溢れ出てくる気配。俺は建物の屋根の上を走って中心地へと向かう。
中心地に辿り着いて見た光景は、地面から次々と生えてくる手。その手が近くにいた人の足を掴んでいるのだ。中心地には避難していた住民が集まっていたため、そこは安息地から阿鼻叫喚の地へと変わっていた。
町の外のゾンビたちは囮か。町を囲むゾンビたちと違って、中心地に現れたゾンビたちは、全て何かしらの武装をしていたのだ。
しかも、その中には見知った顔もあった。あいつ、逃げたと思ったら既に殺されていたのか。俺の視線の先で剣を振り回すゾンビ。あれは、メリィが殺す予定だったレイルの成れの果てだった。
ゾンビとなった奴は目の前にいる子供を守るように抱き締める夫婦に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
生きている間の問題はあいつの責任だが、死んでからの問題まで背負わせる必要は無いな。俺は仮面を付けてクロスリッバーを引き抜く。屋根から飛び降り、レイルの元へと向かう。
降りた足下で小石を拾い、レイルの剣に向けて小石を投げる。魔力を込めた石だ。少しの衝撃で破裂するようにしてある。それが剣に当たると、パァン! と小石が弾けた。
レイルは音と衝撃に驚き、弾かれた剣を両手で持って辺りを警戒する。まあ、その隙に懐まで入っているんだけどな。
「じゃあな」
そのまま下からクロスリッバーをレイルの首目掛けて振るう。俺に気が付いていないレイルは、切られた事に気がつく事なく首が飛んでいく。メリィには伝えておいてやるよ。
レイルの体が倒れた音に周りのゾンビたちが反応した。近くのゾンビ全ての視線がこちらへ向いたため、俺の後ろにいる家族は悲鳴をあげる。
「あんたら、今の内に逃げろ」
「あ、あんたはどうするんだ? こんな数相手に」
「俺は他の住民たちが逃げ切ったら勝手に逃げるから大丈夫だ。それよりも、あんたらがいた方がやりづらい。さっさと逃げろ」
俺はそう話しながら魔力を込めた小石をいくつも地面に叩きつける。地面に叩きつける度に大きな音を鳴らす小石。その音に反応して住民を襲おうとしていたゾンビたちが全て俺を見てくる。
気がつけば俺の後ろにいた家族は逃げていた。まあ、この大量のゾンビの視線に晒されたら逃げたくもなるだろう。
「アァァァ!」
声にならない叫びを上げながら武器を構えて走ってくるゾンビたち。死してなお操られる可哀想な奴らだ。はやく助けて上げないとな。
俺は足に氣道を集めて脚力を強化する瞬道を発動する。そして一気にかける!
「千切り!」
暗殺者時代には使う事のなかった技だ。気配を最小限までころし全てのゾンビの元に駆けて、察知される前に全ての首を切り落とす。
まあ、今回のように100体もいかない程度の数だから出来るのだが。これが倍近くなると流石に俺の体力が持たない。
首を切り落とすと、殆ど同時に倒れるゾンビたち。さて、これで出てくるかな。そう思っていたらドスンッ! と、思っていた以上に重たい音が広場に広がる。
現れたのは人の死体を集めただけの塊だった。しかも、死体は女ばかりで中には見知った顔もあった。レイルに付いていた女性たちだ。彼女たちの死体も体の一部のように混ざっていて、なかなかエグいものだった。
そして、その肉塊の隣に降り立つ男。神経質そうな顔をしており、メガネをかけている。周りのゾンビたちを見てから、俺を視線だけで殺せるのでは? と、思わせるほど睨んでくる。
「貴様ぁ! 私の配下を殺すとは!」
うるさい奴だ。お前こそ沢山の人を殺しているだろうに。自分の事を棚に上げて怒鳴ってくるとは。
ただ、そんな事はどうでもいいように思えるほど、気になるものが男にはあった。それは、背中に映える翼と怒りに合わせて地面を叩く尻尾だ。
この大陸には様々な種族が住んでいるが、目の前の男のような種族、魔人族はこの大陸にはいない。海を挟んだ向かいの大陸に存在すると昔の本には書かれてはいるが、まさか実在したとは。
それに、海を挟んだ向かい大陸からこの大陸に来ようとすると、必ずあの国を通らないといけない。俺が目指している国、テオラド王国を。他の国を通る可能性もない事はないが、この大陸に入りやすいのはあの国のはずだ。
もしかしたら魔人族のこいつがこの大陸にいるのと、昆虫型のモンスターが現れたのも関係しているのかもしれない。捕らえさせてもらおうか。
俺は町を囲むゾンビたちに気が付かれないように気配を殺して、町の壁へと近づく事が出来た。そのまま足に魔力を集めて壁に迫る。
壁ギリギリまで迫って一気に跳んで、壁を駆け上がる。壁がまだ石を積み上げた物のお陰で足が引っかかりやすいのが助かったな。まあ、引っかかりやすいと言っても、殆ど隙間なく固められているから、普通では登る事は出来ないのだが。
壁を登り切った俺はそのまま町の中へと入る。町の中はまだゾンビは入ってきていないが、あの数だと門を壊されるのも時間の問題だろう。
そう思っていた矢先、町の中心地から悲鳴が聞こえて来た。そして、溢れ出てくる気配。俺は建物の屋根の上を走って中心地へと向かう。
中心地に辿り着いて見た光景は、地面から次々と生えてくる手。その手が近くにいた人の足を掴んでいるのだ。中心地には避難していた住民が集まっていたため、そこは安息地から阿鼻叫喚の地へと変わっていた。
町の外のゾンビたちは囮か。町を囲むゾンビたちと違って、中心地に現れたゾンビたちは、全て何かしらの武装をしていたのだ。
しかも、その中には見知った顔もあった。あいつ、逃げたと思ったら既に殺されていたのか。俺の視線の先で剣を振り回すゾンビ。あれは、メリィが殺す予定だったレイルの成れの果てだった。
ゾンビとなった奴は目の前にいる子供を守るように抱き締める夫婦に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
生きている間の問題はあいつの責任だが、死んでからの問題まで背負わせる必要は無いな。俺は仮面を付けてクロスリッバーを引き抜く。屋根から飛び降り、レイルの元へと向かう。
降りた足下で小石を拾い、レイルの剣に向けて小石を投げる。魔力を込めた石だ。少しの衝撃で破裂するようにしてある。それが剣に当たると、パァン! と小石が弾けた。
レイルは音と衝撃に驚き、弾かれた剣を両手で持って辺りを警戒する。まあ、その隙に懐まで入っているんだけどな。
「じゃあな」
そのまま下からクロスリッバーをレイルの首目掛けて振るう。俺に気が付いていないレイルは、切られた事に気がつく事なく首が飛んでいく。メリィには伝えておいてやるよ。
レイルの体が倒れた音に周りのゾンビたちが反応した。近くのゾンビ全ての視線がこちらへ向いたため、俺の後ろにいる家族は悲鳴をあげる。
「あんたら、今の内に逃げろ」
「あ、あんたはどうするんだ? こんな数相手に」
「俺は他の住民たちが逃げ切ったら勝手に逃げるから大丈夫だ。それよりも、あんたらがいた方がやりづらい。さっさと逃げろ」
俺はそう話しながら魔力を込めた小石をいくつも地面に叩きつける。地面に叩きつける度に大きな音を鳴らす小石。その音に反応して住民を襲おうとしていたゾンビたちが全て俺を見てくる。
気がつけば俺の後ろにいた家族は逃げていた。まあ、この大量のゾンビの視線に晒されたら逃げたくもなるだろう。
「アァァァ!」
声にならない叫びを上げながら武器を構えて走ってくるゾンビたち。死してなお操られる可哀想な奴らだ。はやく助けて上げないとな。
俺は足に氣道を集めて脚力を強化する瞬道を発動する。そして一気にかける!
「千切り!」
暗殺者時代には使う事のなかった技だ。気配を最小限までころし全てのゾンビの元に駆けて、察知される前に全ての首を切り落とす。
まあ、今回のように100体もいかない程度の数だから出来るのだが。これが倍近くなると流石に俺の体力が持たない。
首を切り落とすと、殆ど同時に倒れるゾンビたち。さて、これで出てくるかな。そう思っていたらドスンッ! と、思っていた以上に重たい音が広場に広がる。
現れたのは人の死体を集めただけの塊だった。しかも、死体は女ばかりで中には見知った顔もあった。レイルに付いていた女性たちだ。彼女たちの死体も体の一部のように混ざっていて、なかなかエグいものだった。
そして、その肉塊の隣に降り立つ男。神経質そうな顔をしており、メガネをかけている。周りのゾンビたちを見てから、俺を視線だけで殺せるのでは? と、思わせるほど睨んでくる。
「貴様ぁ! 私の配下を殺すとは!」
うるさい奴だ。お前こそ沢山の人を殺しているだろうに。自分の事を棚に上げて怒鳴ってくるとは。
ただ、そんな事はどうでもいいように思えるほど、気になるものが男にはあった。それは、背中に映える翼と怒りに合わせて地面を叩く尻尾だ。
この大陸には様々な種族が住んでいるが、目の前の男のような種族、魔人族はこの大陸にはいない。海を挟んだ向かいの大陸に存在すると昔の本には書かれてはいるが、まさか実在したとは。
それに、海を挟んだ向かい大陸からこの大陸に来ようとすると、必ずあの国を通らないといけない。俺が目指している国、テオラド王国を。他の国を通る可能性もない事はないが、この大陸に入りやすいのはあの国のはずだ。
もしかしたら魔人族のこいつがこの大陸にいるのと、昆虫型のモンスターが現れたのも関係しているのかもしれない。捕らえさせてもらおうか。
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