王国最強の元暗殺者
15.因縁の相手
「いや〜、まさかこんなところで出会えるなんて! やっぱり僕たちは運命の赤い糸で繋がっているんですね!」
頰を赤く染めてくねくねと気持ちの悪い動きをする男。こいつを見るだけで吐き気がしてくる。俺が殺したはずの男。俺の大切な人を殺した男。気が付けば俺は男に攻撃をしていた。
「はぁっ!」
「うわっ! もう! 先輩ったら情熱的なんだから!」
「黙れぇ!」
俺は身体強化を発動して再び目は前の男、ルイスへと迫る。ルイスは俺を近づかせないために短剣を投げてくるが、クロスリッパーで弾く。そのまま近づき首を切ろうと横振りを放つが、両手で右手を掴まれる。
そして、そのまま体を回転させながら右肩に俺の腕を乗せて投げられる。これはワノクニのジュードーってやつか! 体を捻り何とか地面に立つが、そこを狙って短剣を投げてくる。
短剣を弾こうと思ったが、短剣に刻まれている術式。これは刃に衝撃が加わると爆発するタイプか。俺は弾くのをやめ、数本は避けてそのうちの1本だけ柄を握り投げ返す。
当然ルイスは避けるが、短剣を投げ返した時に既に走り出していた俺は、ルイスの左側に移動していた。ルイスは短剣を逆手持ちにして左手を振り下ろしてくるが、左手で手首を掴んで止め、脇下からクロスリッパーを突き刺す。
ヘラヘラとしていたルイスの表情は痛みに歪み俺を睨んでくるが、俺はそのままクロスリッパーを上に振り上げた。脇下から肩まで切られ、半ば切れかけの左肩を右手で押さえるルイス。
俺は追い打ちをかける様に右足でルイスを蹴り飛ばす。左腕がまともに動かずに痛みで防御もままならないルイスは、モロにくらい地面を何度も跳ねながら吹き飛ぶ。
建物にぶつかりようやく動きを止めたルイス。俺はそのままルイスへと近づき左腕で掴み上げる。血や土埃でドロドロになったルイスの表情は、気持ちの悪いほど恍惚とした表情を浮かべていた。
「……本当に気持ちの悪い奴だ」
「ふふっ、先輩の愛が気持ち良いんですよ。せっかくあの売女から先輩を救ったのに、会えない日々が続いて、1人で慰める日々が続いたんですから」
「もう死ね」
息を荒げて俺を見てくるルイス。これ以上こいつの顔や声を聞いても殺意しか湧いて来ない。俺はクロスリッパーを掴み上げているルイスの喉元を搔き切る様に振る。
しかし、ルイスの喉を切り裂く事は無かった。ルイスの影から突然魔法が飛んできたからだ。俺はルイスを離して咄嗟に避けたが、少し掠ってしまった。全く気配が無かったのに。そして影から現れる黒い人物。
「遊び過ぎですよ。今日の目的は運用実験に来ただけなのですから」
「ごめんごめん。愛しの人に会ったから興奮しちゃって」
「まあ、良いでしょう。目的は果たせました。これ以上は危険です」
黒い影がそう言うのと同時にルイスたちに向かって矢が放たれた。だが、ルイスは避けるそぶりを見せずに黒い影がルイスを覆う幕のように守り矢を防ぐ。矢はそのままずぶずぶと黒い影へと飲み込まれていってしまった。
「奇怪な技を使いやがる。だが、逃がさねえぞ」
そして現れたのが黒い籠手を付けた狼の獣人、デイガスが部下を連れて現れた。しまった、ルイスに集中し過ぎてデイガスが帰って来ているのに気が付かなかった。
「あらら、覚えてないかも知れませんがお久しぶりですね、デイガスさん!」
「あん? お前なんか知らねえよ。てめぇら! 奴らを捕らえろ!」
「はっ!」
デイガスの指示でルイスと黒い影へと迫る兵士たち。しかし、黒い影が影の中から1人の男を出す。そして男は自分の胸元にナイフを突き刺した。何をやっているんだあいつ?
兵士たちも突然の凶行に立ち止まってしまう。その間に男の体は輝き出す。体中に書いてある魔法陣に術者の血が触れて反応したのだ。
「ちっ! てめぇら離れろ!」
デイガスが叫ぶのと同時に男が消えて、替わりに巨大なモンスターが現れた。全身が黒い鎧に覆われたような黒いモンスターだ。かなりでかい。体長が10メートルほど。見るからに凶悪な鎌が両手についており、片方だけでも2メートルほどの大きさがある。
「さあ、私たちの逃げる時間を稼ぎなさい、ギガンティックアント」
黒い影の言葉に反応したギガンティックアントは巨大な鎌になっている前足を振り下ろしてくる。デイガスたちの部隊も左右に分かれて避け俺も避ける。
振り下ろされたギガンティックアントの鎌は建物を切り裂き、衝撃波だけでその先にある建物や地面をも切り裂いていく。
「ちっ、このデカブツが人のシマで暴れてんじゃねえよ!」
反対側の鎌を振り下ろしてくるギガンティックアントに向かって左の拳を放つデイガス。デイガスの拳とギガンティックアントの鎌がぶつかり、衝撃が周りを吹き飛ばす。
競り勝ったのはデイガスだ。ギガンティックアントは威力に負けぶつけた鎌がへし折れた。折れた鎌はくるくると回転しながら近くの建物へと突き刺さる。
「けっ、でかいだけの野郎が調子に乗ってんじゃね……ちっ、面倒な」
しかし、折れた鎌は折れたところから少しずつ再生していく。あれはデイガス出なくても悪態を吐く。でかくて力もあり、再生能力も持つモンスター。かなり厄介だな。
「それでは我々はこれで失礼いたします」
「それじゃあ、先輩。今度はもっと楽しい事をしよう!」
「待て!」
俺は影の中へと消えようとするルイスに迫りクロスリッパーを振るが、ルイスが消える方が早かった。くそっ! あいつの仇も取れずに逃げられるなんて!
「おい、クソマント」
俺がルイスの消えた場所を睨んでいると、後ろから不機嫌そうな声が聞こえて来た。俺も睨むように振り返ると、じっと俺を見るデイガスがいた。
「……何だよ」
「何でてめぇがここにいるか知らねえし、ぶっ飛ばしてえが、今は目の前のこのデカブツだ……手伝いやがれ」
何でそんな上からなんだよこいつは。くそ、ルイスを追いかけたいが手がかりが何も無い今、闇雲に動いても厳しいな。それに、デイガスの言う通り今は目の前のこいつだ。
「足引っ張るなよ、犬っころ」
「ぬかせ、クソマント」
頰を赤く染めてくねくねと気持ちの悪い動きをする男。こいつを見るだけで吐き気がしてくる。俺が殺したはずの男。俺の大切な人を殺した男。気が付けば俺は男に攻撃をしていた。
「はぁっ!」
「うわっ! もう! 先輩ったら情熱的なんだから!」
「黙れぇ!」
俺は身体強化を発動して再び目は前の男、ルイスへと迫る。ルイスは俺を近づかせないために短剣を投げてくるが、クロスリッパーで弾く。そのまま近づき首を切ろうと横振りを放つが、両手で右手を掴まれる。
そして、そのまま体を回転させながら右肩に俺の腕を乗せて投げられる。これはワノクニのジュードーってやつか! 体を捻り何とか地面に立つが、そこを狙って短剣を投げてくる。
短剣を弾こうと思ったが、短剣に刻まれている術式。これは刃に衝撃が加わると爆発するタイプか。俺は弾くのをやめ、数本は避けてそのうちの1本だけ柄を握り投げ返す。
当然ルイスは避けるが、短剣を投げ返した時に既に走り出していた俺は、ルイスの左側に移動していた。ルイスは短剣を逆手持ちにして左手を振り下ろしてくるが、左手で手首を掴んで止め、脇下からクロスリッパーを突き刺す。
ヘラヘラとしていたルイスの表情は痛みに歪み俺を睨んでくるが、俺はそのままクロスリッパーを上に振り上げた。脇下から肩まで切られ、半ば切れかけの左肩を右手で押さえるルイス。
俺は追い打ちをかける様に右足でルイスを蹴り飛ばす。左腕がまともに動かずに痛みで防御もままならないルイスは、モロにくらい地面を何度も跳ねながら吹き飛ぶ。
建物にぶつかりようやく動きを止めたルイス。俺はそのままルイスへと近づき左腕で掴み上げる。血や土埃でドロドロになったルイスの表情は、気持ちの悪いほど恍惚とした表情を浮かべていた。
「……本当に気持ちの悪い奴だ」
「ふふっ、先輩の愛が気持ち良いんですよ。せっかくあの売女から先輩を救ったのに、会えない日々が続いて、1人で慰める日々が続いたんですから」
「もう死ね」
息を荒げて俺を見てくるルイス。これ以上こいつの顔や声を聞いても殺意しか湧いて来ない。俺はクロスリッパーを掴み上げているルイスの喉元を搔き切る様に振る。
しかし、ルイスの喉を切り裂く事は無かった。ルイスの影から突然魔法が飛んできたからだ。俺はルイスを離して咄嗟に避けたが、少し掠ってしまった。全く気配が無かったのに。そして影から現れる黒い人物。
「遊び過ぎですよ。今日の目的は運用実験に来ただけなのですから」
「ごめんごめん。愛しの人に会ったから興奮しちゃって」
「まあ、良いでしょう。目的は果たせました。これ以上は危険です」
黒い影がそう言うのと同時にルイスたちに向かって矢が放たれた。だが、ルイスは避けるそぶりを見せずに黒い影がルイスを覆う幕のように守り矢を防ぐ。矢はそのままずぶずぶと黒い影へと飲み込まれていってしまった。
「奇怪な技を使いやがる。だが、逃がさねえぞ」
そして現れたのが黒い籠手を付けた狼の獣人、デイガスが部下を連れて現れた。しまった、ルイスに集中し過ぎてデイガスが帰って来ているのに気が付かなかった。
「あらら、覚えてないかも知れませんがお久しぶりですね、デイガスさん!」
「あん? お前なんか知らねえよ。てめぇら! 奴らを捕らえろ!」
「はっ!」
デイガスの指示でルイスと黒い影へと迫る兵士たち。しかし、黒い影が影の中から1人の男を出す。そして男は自分の胸元にナイフを突き刺した。何をやっているんだあいつ?
兵士たちも突然の凶行に立ち止まってしまう。その間に男の体は輝き出す。体中に書いてある魔法陣に術者の血が触れて反応したのだ。
「ちっ! てめぇら離れろ!」
デイガスが叫ぶのと同時に男が消えて、替わりに巨大なモンスターが現れた。全身が黒い鎧に覆われたような黒いモンスターだ。かなりでかい。体長が10メートルほど。見るからに凶悪な鎌が両手についており、片方だけでも2メートルほどの大きさがある。
「さあ、私たちの逃げる時間を稼ぎなさい、ギガンティックアント」
黒い影の言葉に反応したギガンティックアントは巨大な鎌になっている前足を振り下ろしてくる。デイガスたちの部隊も左右に分かれて避け俺も避ける。
振り下ろされたギガンティックアントの鎌は建物を切り裂き、衝撃波だけでその先にある建物や地面をも切り裂いていく。
「ちっ、このデカブツが人のシマで暴れてんじゃねえよ!」
反対側の鎌を振り下ろしてくるギガンティックアントに向かって左の拳を放つデイガス。デイガスの拳とギガンティックアントの鎌がぶつかり、衝撃が周りを吹き飛ばす。
競り勝ったのはデイガスだ。ギガンティックアントは威力に負けぶつけた鎌がへし折れた。折れた鎌はくるくると回転しながら近くの建物へと突き刺さる。
「けっ、でかいだけの野郎が調子に乗ってんじゃね……ちっ、面倒な」
しかし、折れた鎌は折れたところから少しずつ再生していく。あれはデイガス出なくても悪態を吐く。でかくて力もあり、再生能力も持つモンスター。かなり厄介だな。
「それでは我々はこれで失礼いたします」
「それじゃあ、先輩。今度はもっと楽しい事をしよう!」
「待て!」
俺は影の中へと消えようとするルイスに迫りクロスリッパーを振るが、ルイスが消える方が早かった。くそっ! あいつの仇も取れずに逃げられるなんて!
「おい、クソマント」
俺がルイスの消えた場所を睨んでいると、後ろから不機嫌そうな声が聞こえて来た。俺も睨むように振り返ると、じっと俺を見るデイガスがいた。
「……何だよ」
「何でてめぇがここにいるか知らねえし、ぶっ飛ばしてえが、今は目の前のこのデカブツだ……手伝いやがれ」
何でそんな上からなんだよこいつは。くそ、ルイスを追いかけたいが手がかりが何も無い今、闇雲に動いても厳しいな。それに、デイガスの言う通り今は目の前のこいつだ。
「足引っ張るなよ、犬っころ」
「ぬかせ、クソマント」
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