王国最強の元暗殺者
13.召喚
「……色々と疲れた」
第9都市にやって来た夜。夕食も食べ終わった俺は宿の自分の部屋のベッドに寝転び1人で呟く。女性の買い物があんなに長いとは、甘く見ていた。
メルシアさんとメルルはこれはどうかと色々服を見せてくるのだが、服装には全く無頓着な俺にはわからず、適当に答えていたのだ。
曖昧に答えていると、気が付けば何故か俺の服を選ぶ事になっていて、これを着ろ、あれを着ろと色々と渡されていたら、気が付けば夕方。
何回も何回も服を着せ替えさせられて、1日中薬草採取をしてもここまで疲れた事が無かったのに、精神的に疲れてしまった。
更に疲れたのが夕食の時だ。宿屋の食堂で食事を取ろうとしたのだが、当然同じ宿屋に泊まっているグスタフたちも食堂で食事を取るのだが……メルシアさんは完全に無視。
グスタフがいくら話しかけようとも無視して俺やメルルへと話しかけてくる。食事が終わるまで終始その状態だったため、余り食事を美味しく頂けなかった。
まあ、昼の事を謝る事なく色々と言い訳し始めたグスタフが悪いんだけどな。そういう話に疎い俺でもあれは不味いと思う。今後の関係をどうするかはグスタフ次第だな。
俺がいくら考えたところでグスタフがどうにかしなければ結局はどうにも出来ないのだから。
「さっさと寝……ん?」
特にやることも無いので寝ようかと思った時、外から変わった気配を感じる。なんだこの気配は? 突然現れたぞ。
この感覚は前にも何度か……確か召喚系の魔法だ。サモンかテレポートはわからないが、明らかに人では無いものが街の中に転移して来た。
しかも、アルフレイド王国のすべての街には転移防止の為の結界が張られている。街の領主の許可無しに魔法士が召喚系の魔法を使う事は出来ない事になっている。
その結界を抜けてくるとすればかなり上位、それも術者の命に関わる様な危険な魔法を発動して。
そんな魔法が使えるものは限られてくるのだが、使い捨てにまでしてこの街にモンスターを召喚するという事は。それもデイガスのいない間を狙って。
「デイガスがこの街から出て行った事と関係しているのか、それとも偶々なのか。わからないがこのまま放って置くわけにはいかなさそうだ」
召喚されて少ししてから建物が崩れる音と、悲鳴が聞こえて来た。既に暴れている様だ。数は全部で8体か。窓からだと見えないが、住民の叫び声が聞こえてくる。
窓から外を見ていると、宿屋の中も騒がしくなって来た。そしてノックもせずに入ってくる気配。
「し、師匠、外が大変な事に!」
慌てて入って来たのはパジャマ姿のメルル。今日購入したピンク色の可愛らしいパジャマを着ている。その後ろには追いかけて来たメルシアさんの姿も。
「ああ、気配からしてモンスターが街の中に入り込んだ様だ。それもかなり強いのが」
「そ、そんな! 早く避難しないと!」
「そうだな。メルシアさんはメルルを連れてグスタフのところへ行ってくれ」
「師匠はどうするのです?」
「俺は少し見てくる」
俺はマントと仮面をつけて窓から飛び出す。後ろからメルルの声が聞こえるが隣の屋根へと飛び移り、走り出す。
気配を消して音も無く屋根の上を走る。気配からは既に街の兵士たちはモンスターたちと戦闘を行なっている様だ。デイガスの副官の指揮のお陰だな。
しかし、直ぐに気配が薄れていく者が多い。この街の兵士も弱くは無いが、モンスターが強過ぎるのか。ランク的にはAぐらいと見て間違いないだろう。
そして俺の目の前に入って来たのは3本角の昆虫型モンスターだった。確かアトラスオオカブトだったか。そんな虫をそのまま大きくした様なモンスターだ。
全長5メートル程の巨大なモンスターが、巨大な角を振り回して暴れていた。兵士や冒険者がその角のせいで近づけずに魔法を放っても、強固な体に弾かれてしまう。
近づけても魔法と同じ様に弾かれて、巨大な足に蹴り飛ばされる。巨大なモンスターが暴れる度に周りの建物に被害が出る。
このモンスターが召喚された場所自体がそんな広い道では無いので、兵士たちも戦いにくそうだ。
カブト型のモンスターもその狭い道が煩わしく感じたのか羽を広げ震わせる。羽から感じるのは風属性の魔力。
それに気が付いた兵士たちは防御魔法を発動するが、カブト型のモンスターの羽から放たれた風の刃は、防御魔法を切り裂き、兵士たちへと降り注ぐ。
運がいい者でも傷だらけ、酷い者だと手足の何処かが切断されてしまっていた。それでも死人が出ていないのは、この兵士たちの実力が伺える。
咄嗟に武器などを盾にして少しでも威力を落とす事に成功しているのだ。しかし、これでここにいた兵士たちはかなりの数が戦闘不能になってしまった。
何人か残った兵士が攻撃を加えるがあまり効果が無い。このままでは兵士が逃げる暇もなく蹂躙されてしまう。
俺は腰のクロスリッパーを抜く。見る限りカブト型のモンスターの甲殻は生半可な攻撃では通らない。それかなり分厚いだろう。20センチほどあるクロスリッパーでも深く刺さらなければ効果は薄い。
「久し振りに使うか。氣道発動」
俺は体を纏う身体強化だけでなく、内側から強化する氣道を発動。普段の生活では決して使う事が無いから使うのは本当に久し振りだ。
俺は更に魔力をクロスリッパーに流して刃渡りを伸ばす。既にナイフの長さではなくなってはいるが、人間相手では無くモンスター相手ならこれぐらいは必要になってくる。
他のモンスターのところも兵士たちがいるが押しているところは少ない。これ以上被害が大きくなる前に倒させて貰う。
第9都市にやって来た夜。夕食も食べ終わった俺は宿の自分の部屋のベッドに寝転び1人で呟く。女性の買い物があんなに長いとは、甘く見ていた。
メルシアさんとメルルはこれはどうかと色々服を見せてくるのだが、服装には全く無頓着な俺にはわからず、適当に答えていたのだ。
曖昧に答えていると、気が付けば何故か俺の服を選ぶ事になっていて、これを着ろ、あれを着ろと色々と渡されていたら、気が付けば夕方。
何回も何回も服を着せ替えさせられて、1日中薬草採取をしてもここまで疲れた事が無かったのに、精神的に疲れてしまった。
更に疲れたのが夕食の時だ。宿屋の食堂で食事を取ろうとしたのだが、当然同じ宿屋に泊まっているグスタフたちも食堂で食事を取るのだが……メルシアさんは完全に無視。
グスタフがいくら話しかけようとも無視して俺やメルルへと話しかけてくる。食事が終わるまで終始その状態だったため、余り食事を美味しく頂けなかった。
まあ、昼の事を謝る事なく色々と言い訳し始めたグスタフが悪いんだけどな。そういう話に疎い俺でもあれは不味いと思う。今後の関係をどうするかはグスタフ次第だな。
俺がいくら考えたところでグスタフがどうにかしなければ結局はどうにも出来ないのだから。
「さっさと寝……ん?」
特にやることも無いので寝ようかと思った時、外から変わった気配を感じる。なんだこの気配は? 突然現れたぞ。
この感覚は前にも何度か……確か召喚系の魔法だ。サモンかテレポートはわからないが、明らかに人では無いものが街の中に転移して来た。
しかも、アルフレイド王国のすべての街には転移防止の為の結界が張られている。街の領主の許可無しに魔法士が召喚系の魔法を使う事は出来ない事になっている。
その結界を抜けてくるとすればかなり上位、それも術者の命に関わる様な危険な魔法を発動して。
そんな魔法が使えるものは限られてくるのだが、使い捨てにまでしてこの街にモンスターを召喚するという事は。それもデイガスのいない間を狙って。
「デイガスがこの街から出て行った事と関係しているのか、それとも偶々なのか。わからないがこのまま放って置くわけにはいかなさそうだ」
召喚されて少ししてから建物が崩れる音と、悲鳴が聞こえて来た。既に暴れている様だ。数は全部で8体か。窓からだと見えないが、住民の叫び声が聞こえてくる。
窓から外を見ていると、宿屋の中も騒がしくなって来た。そしてノックもせずに入ってくる気配。
「し、師匠、外が大変な事に!」
慌てて入って来たのはパジャマ姿のメルル。今日購入したピンク色の可愛らしいパジャマを着ている。その後ろには追いかけて来たメルシアさんの姿も。
「ああ、気配からしてモンスターが街の中に入り込んだ様だ。それもかなり強いのが」
「そ、そんな! 早く避難しないと!」
「そうだな。メルシアさんはメルルを連れてグスタフのところへ行ってくれ」
「師匠はどうするのです?」
「俺は少し見てくる」
俺はマントと仮面をつけて窓から飛び出す。後ろからメルルの声が聞こえるが隣の屋根へと飛び移り、走り出す。
気配を消して音も無く屋根の上を走る。気配からは既に街の兵士たちはモンスターたちと戦闘を行なっている様だ。デイガスの副官の指揮のお陰だな。
しかし、直ぐに気配が薄れていく者が多い。この街の兵士も弱くは無いが、モンスターが強過ぎるのか。ランク的にはAぐらいと見て間違いないだろう。
そして俺の目の前に入って来たのは3本角の昆虫型モンスターだった。確かアトラスオオカブトだったか。そんな虫をそのまま大きくした様なモンスターだ。
全長5メートル程の巨大なモンスターが、巨大な角を振り回して暴れていた。兵士や冒険者がその角のせいで近づけずに魔法を放っても、強固な体に弾かれてしまう。
近づけても魔法と同じ様に弾かれて、巨大な足に蹴り飛ばされる。巨大なモンスターが暴れる度に周りの建物に被害が出る。
このモンスターが召喚された場所自体がそんな広い道では無いので、兵士たちも戦いにくそうだ。
カブト型のモンスターもその狭い道が煩わしく感じたのか羽を広げ震わせる。羽から感じるのは風属性の魔力。
それに気が付いた兵士たちは防御魔法を発動するが、カブト型のモンスターの羽から放たれた風の刃は、防御魔法を切り裂き、兵士たちへと降り注ぐ。
運がいい者でも傷だらけ、酷い者だと手足の何処かが切断されてしまっていた。それでも死人が出ていないのは、この兵士たちの実力が伺える。
咄嗟に武器などを盾にして少しでも威力を落とす事に成功しているのだ。しかし、これでここにいた兵士たちはかなりの数が戦闘不能になってしまった。
何人か残った兵士が攻撃を加えるがあまり効果が無い。このままでは兵士が逃げる暇もなく蹂躙されてしまう。
俺は腰のクロスリッパーを抜く。見る限りカブト型のモンスターの甲殻は生半可な攻撃では通らない。それかなり分厚いだろう。20センチほどあるクロスリッパーでも深く刺さらなければ効果は薄い。
「久し振りに使うか。氣道発動」
俺は体を纏う身体強化だけでなく、内側から強化する氣道を発動。普段の生活では決して使う事が無いから使うのは本当に久し振りだ。
俺は更に魔力をクロスリッパーに流して刃渡りを伸ばす。既にナイフの長さではなくなってはいるが、人間相手では無くモンスター相手ならこれぐらいは必要になってくる。
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