王国最強の元暗殺者
11.一触触発
「それでデイガス様を呼び戻した理由は何ですか、ガイル。もし大した内容でも無いのに大切な見回りを中止してまで呼んだのであれば、あなたの耳引っこ抜きますよ?」
「か、勘弁して下さいよセシル先輩。ちゃんとって言ったら変ですが重要な話ですから」
「カッカ、許してやれよ、セシル。それよりガイル何があった?」
「はい、以前炭鉱夫からの依頼がありました、炭鉱山に正体不明のモンスターが現れたため討伐して欲しいとの話でしたが、1週間前に出発したのは覚えておりますよね?」
「当たり前だ。あそこの山で取れるものは上質な物ばかりだからな。この街の大切な収入源、実質領主の伯爵と話し合って兵を派遣する事になったじゃねえか」
「ええ、それで兵を派遣したのですが……全滅したそうです」
「なにっ?」
「耳を引っこ抜きますよ?」
「いや、嘘とかじゃ無いですから! 先ほど兵たちが戻って来たのです。幸い死人はいませんでしたが、もう兵として活動出来ない者も出ており……」
「そんな馬鹿な! 送った兵は全員がBランク程の実力がある精鋭ではありませんか! それがやられるなんて!」
「落ち着けセシル。ただモンスターが強かったってだけだ。慌てる事はねえ。それでモンスターの種類は?」
「はい、帰って来た兵の話によると、モンスターは昆虫型のモンスターで4本の大鎌の腕を持っており、その鎌は鉄すらも切り裂くほどらしく、逆にこちらの攻撃は、強固な体に弾かれる様なのです。それから確定では無いのですが……」
「何だ?」
「どうやらそのモンスター……氣道を使う様なのです」
「あ、あり得ません! モンスターにそんな知識があるなんて!」
「よく考えれば別に変じゃねえだろ。魔法を使うモンスターがいるんだから、氣道を使うモンスターだっていてもおかしくねぇ。だが……カッ、こりゃあ面白えじゃねえか。セシル、俺の籠手を持ってこい。俺が出る」
◇◇◇
「師匠、街を歩きましょう!」
にこにこしてぶんぶんと尻尾を振るメルル。第9都市に辿り着いた俺たちは今日は宿をとって明日から行動する事になったので、部屋で持ち物を確認していたら、嬉しそうにやって来たメルル。
窓から外を見るとまだ日が傾き始めたばかりの時間帯だ。まあ、部屋に篭っていても時間の無駄だし、構わないか。
「わかった。行こうか」
「はいっ!」
俺がメルルと伴って宿屋を出ると、宿屋の前にはメルシアさんとどこかへ行こうとするグスタフたちとばったりと会ってしまった。
「……」
「……」
「あらあら」
「……」
メルシアさん以外に沈黙が漂う。何ともまあタイミングが悪い。メルルを見て物凄く気まずそうな表情を浮かべるグスタフ。
さて、どうしたものかと考えていると
「ああっ! グスタフさん! お久しぶりです!」
と、グスタフの名前を呼ぶ声が。声の方を見ると、3人の女性がこちらへと向かって来ていた。黒髪のショートカットの女性と、茶色と白と黒の色が混ざった変わった髪の毛を持つ猫族の少女に緑髪のエルフの女性がやって来た。
皆が皆一様にグスタフにとてもいい笑顔を向けている。メルシアさんの横を通り過ぎグスタフの腕に抱き付く人族の女性とエルフの女性に真正面から抱き付く猫族の少女。
それを見ていたメルシアさんは笑顔のまま表情が固まっていた。こ、これは俺たち以上に気まずいぞ。
「もう、グスタフさんにあの時のお礼がしたかったのに、すぐに別の街に移動しちゃって!」
「そうですよ。どうお礼しようか考えていたのに……い・ろ・い・ろと……ね?」
「おじさんいなくなって寂しかったぁ!」
3人が3人ともグスタフに擦り寄り物凄く甘い声を出している。グスタフも戸惑ってはいるが引き離そうとしない。少し鼻の下が伸びているし。
「グスタフさん」
そんなグスタフを見ていると、氷点下に下がった様な声でグスタフを呼ぶメルシアさん。俺とメルルとグスタフがビクッとして恐る恐るメルルさんの方を見ると、物凄く笑顔の表情を浮かべるメルシアさん。
その表情が逆に恐ろしいと思った俺。メルルも同じ事を思ったのか俺の服を握りぶるぶると震える。尻尾も股の下に挟んで隠している。グスタフは滝の様に汗を流している。
「うふふ、もう知り合いがいらっしゃるなんて言ってくだされば良かったのに。申し訳ありません、私のわがままに付き合わせてしまって」
「い、いや、これ、これはちがっ……」
「いえいえ私の事は気にしないでください。こんなおばさんより若い方と楽しまれた方が良いですよ。メルル、タスクさん申し訳ないのですがご一緒してもよろしいですか?」
「あ、ああ、俺は構わないが……メルルは?」
隣で震えるメルルに尋ねるとぶんぶんぶんぶんと首を縦に勢いよく振るメルル。メルシアさんはそれを見ると再びにこりと微笑みグスタフに会釈してから街の中を歩いて行ってしまった。
俺たちは黙ってメルシアさんの後について行く。後ろでグスタフが何か叫んでいるが、こればかりは俺たちにはどうしようも出来ない。抱きつかれて嬉しそうにしていたのは事実だし。
俺たちは黙ってメルシアさんの後について行くしか出来なかった。
◇◇◇
「クワトロ・デスマンティス、敵兵を退けました。しかし、次は第9師団長が出てくる模様です」
「そうですか。予定通りですね。それでは計画通り街の中に彼らを。彼らの命と引き換えに召喚します。あの方の目的の第1歩の始まりです。失敗は許されませんよ?」
「はっ!」
「か、勘弁して下さいよセシル先輩。ちゃんとって言ったら変ですが重要な話ですから」
「カッカ、許してやれよ、セシル。それよりガイル何があった?」
「はい、以前炭鉱夫からの依頼がありました、炭鉱山に正体不明のモンスターが現れたため討伐して欲しいとの話でしたが、1週間前に出発したのは覚えておりますよね?」
「当たり前だ。あそこの山で取れるものは上質な物ばかりだからな。この街の大切な収入源、実質領主の伯爵と話し合って兵を派遣する事になったじゃねえか」
「ええ、それで兵を派遣したのですが……全滅したそうです」
「なにっ?」
「耳を引っこ抜きますよ?」
「いや、嘘とかじゃ無いですから! 先ほど兵たちが戻って来たのです。幸い死人はいませんでしたが、もう兵として活動出来ない者も出ており……」
「そんな馬鹿な! 送った兵は全員がBランク程の実力がある精鋭ではありませんか! それがやられるなんて!」
「落ち着けセシル。ただモンスターが強かったってだけだ。慌てる事はねえ。それでモンスターの種類は?」
「はい、帰って来た兵の話によると、モンスターは昆虫型のモンスターで4本の大鎌の腕を持っており、その鎌は鉄すらも切り裂くほどらしく、逆にこちらの攻撃は、強固な体に弾かれる様なのです。それから確定では無いのですが……」
「何だ?」
「どうやらそのモンスター……氣道を使う様なのです」
「あ、あり得ません! モンスターにそんな知識があるなんて!」
「よく考えれば別に変じゃねえだろ。魔法を使うモンスターがいるんだから、氣道を使うモンスターだっていてもおかしくねぇ。だが……カッ、こりゃあ面白えじゃねえか。セシル、俺の籠手を持ってこい。俺が出る」
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「師匠、街を歩きましょう!」
にこにこしてぶんぶんと尻尾を振るメルル。第9都市に辿り着いた俺たちは今日は宿をとって明日から行動する事になったので、部屋で持ち物を確認していたら、嬉しそうにやって来たメルル。
窓から外を見るとまだ日が傾き始めたばかりの時間帯だ。まあ、部屋に篭っていても時間の無駄だし、構わないか。
「わかった。行こうか」
「はいっ!」
俺がメルルと伴って宿屋を出ると、宿屋の前にはメルシアさんとどこかへ行こうとするグスタフたちとばったりと会ってしまった。
「……」
「……」
「あらあら」
「……」
メルシアさん以外に沈黙が漂う。何ともまあタイミングが悪い。メルルを見て物凄く気まずそうな表情を浮かべるグスタフ。
さて、どうしたものかと考えていると
「ああっ! グスタフさん! お久しぶりです!」
と、グスタフの名前を呼ぶ声が。声の方を見ると、3人の女性がこちらへと向かって来ていた。黒髪のショートカットの女性と、茶色と白と黒の色が混ざった変わった髪の毛を持つ猫族の少女に緑髪のエルフの女性がやって来た。
皆が皆一様にグスタフにとてもいい笑顔を向けている。メルシアさんの横を通り過ぎグスタフの腕に抱き付く人族の女性とエルフの女性に真正面から抱き付く猫族の少女。
それを見ていたメルシアさんは笑顔のまま表情が固まっていた。こ、これは俺たち以上に気まずいぞ。
「もう、グスタフさんにあの時のお礼がしたかったのに、すぐに別の街に移動しちゃって!」
「そうですよ。どうお礼しようか考えていたのに……い・ろ・い・ろと……ね?」
「おじさんいなくなって寂しかったぁ!」
3人が3人ともグスタフに擦り寄り物凄く甘い声を出している。グスタフも戸惑ってはいるが引き離そうとしない。少し鼻の下が伸びているし。
「グスタフさん」
そんなグスタフを見ていると、氷点下に下がった様な声でグスタフを呼ぶメルシアさん。俺とメルルとグスタフがビクッとして恐る恐るメルルさんの方を見ると、物凄く笑顔の表情を浮かべるメルシアさん。
その表情が逆に恐ろしいと思った俺。メルルも同じ事を思ったのか俺の服を握りぶるぶると震える。尻尾も股の下に挟んで隠している。グスタフは滝の様に汗を流している。
「うふふ、もう知り合いがいらっしゃるなんて言ってくだされば良かったのに。申し訳ありません、私のわがままに付き合わせてしまって」
「い、いや、これ、これはちがっ……」
「いえいえ私の事は気にしないでください。こんなおばさんより若い方と楽しまれた方が良いですよ。メルル、タスクさん申し訳ないのですがご一緒してもよろしいですか?」
「あ、ああ、俺は構わないが……メルルは?」
隣で震えるメルルに尋ねるとぶんぶんぶんぶんと首を縦に勢いよく振るメルル。メルシアさんはそれを見ると再びにこりと微笑みグスタフに会釈してから街の中を歩いて行ってしまった。
俺たちは黙ってメルシアさんの後について行く。後ろでグスタフが何か叫んでいるが、こればかりは俺たちにはどうしようも出来ない。抱きつかれて嬉しそうにしていたのは事実だし。
俺たちは黙ってメルシアさんの後について行くしか出来なかった。
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