世界に復讐を誓った少年
104.とある冒険者の話 その2(1)
「おい、聞いたかよ?」
「何がだよ?」
「決まってんだろ? 帝国の話だよ」
「あ〜、内乱の事か。そんなの冒険者で知らねえ方が少ねえだろ。で、それが何だよ?」
「それがよぉ、新しく即位した女帝様が、募兵しているんだってよ。なんでも、内乱で減った兵士を補充したいとかで。その中で魔物相手の隊も作るんだとよ」
「それって……」
「ああ、俺たち冒険者もチャンスがあるらしい! どうだ、行かねえか?」
冒険者ギルドに併設されている酒場。その中で周りの冒険者たちの話を聞いていると、そんな声が聞こえて来た。
「帝国に仕官かぁ。夢があって良いねぇ〜」
その周りの声を聞いて俺の前に座る神官服を来た男性がそんな事を言う。無精髭を生やした金髪の30代の男は、右手に酒瓶を持ちながら話をしている冒険者を見ていた。
「何だ、レギンス。仕官したいのか?」
「ははっ、毎日自由にお酒が飲めるのなら考えても良いかもねぇ」
俺の言葉に笑いながら答える神官の男、レギンス。確かに酒好きのレギンスなら、その内容だったら行きそうだな。教会でも酒好きが祟って問題を起こして追い出されている程だからな。
「ミルト君は興味は無いのかい? 仕官?」
「俺か? 俺は夢が冒険者で名を挙げる事だからな。そこまで興味が無いな」
俺は立て掛けてある槍を握る。親父の形見である槍。冒険者として道半ばで死んだ親父の代わりに俺が名を挙げる。それが、俺の夢だからな。
レギンスはそんな俺を優しい目で見ていた。こういうところは神官っぽいな。そんな風にたわいの無い話をしていると
「あっ、また、レギンスさん、お酒飲んでる! 私たちが情報を集めていたっていうのに!」
背に弓を背負ったエルフの少女、シルフェがレギンスに戻ってくるなり怒り始めた。少女と言っても、エルフの年齢では少女で、人間に換算すると70歳ぐらいだ。
その後ろにはローブを羽織り手には杖を握って帽子の被った女性、エイラと、盾を背負った巨体の男、レグンが立っていた。
「ふふっ、レギンスさん、これからダンジョンに入るというのに、どういう事かしら?」
「まあまあ、落ち着くであるよ、エイラ。レギンス殿もやる気を出すために……」
少しお酒を飲んだレギンスを問い詰めようとするエイラを宥めようとするレグンだが、次の瞬間には顔を歪めていた。よく見れば、足を踏まれていた。因みに2人は夫婦である。
「ははっ、ダンジョンに入る前の景気付けに少し飲んだだけだよ。だから、そう怒らないで欲しいな。ちゃんとリーダーには許可を貰っている」
そして、レギンスは罪を逃れるためにそんな事を言い、俺の方を見てきた。それにつられてみんなも俺を見てくる。
「……少しだけだぞ? 本当に一杯程度ならかまわないと言っただけだ。どうせ今日は様子見の予定だったからな」
じとーっと見てくるシルフェとエイラだが、俺がそう言うとはぁ、と溜息を吐く。それを見てレギンスも溜息を吐いた。
「もう、甘いんだからミルトは! レギンスさん、明日からは自重してくださいね!」
「もちろんさ。僕も死にたく無いからね」
そう言って笑うレギンスを見て呆れるシルフェとエイラだったが、諦めて席に座る。
「それじゃあ、ダンジョンの事を教えてくれるか?」
「……わかったわ。この村……今は町かしらね。この町のダンジョンは死霊系しか出ないみたい。なんでも、ある呪われた子を殺した事によって、死霊系の魔物が溢れかえったそうで、それを封印すると、行き場の失った魔力がダンジョンを作ったそうよ。研究者の間では、歴史的な事みたい」
「へぇ、まあ、今あるダンジョンは何世紀も前からあるものばかりで、どのようにダンジョンが出来るかなんてわからないもんな」
「後、面白い話聞いたんだけど、この町の元となった村って、今勇者様と共に旅している聖女様と聖騎士様の出身の村なんだって!」
それは驚いた。噂では勇者と聖女の事は聞いた事があったが、まさかこの町の元となった村が故郷だったとは。
しかし、何の因果かわからないが、ダンジョンを作る事が出来る程の呪われた子供と聖女に聖騎士が一緒の村の生まれだとは。そんな事があるんだな。
「このダンジョンは死霊系が多いから剥ぎ取りとかはあまり出来ないみたいだけど、魔石の純度が高いみたい。それから、リビングアーマーとかの鎧とかは高値で買い取ってくれるみたいよ」
「鎧かぁ。結構嵩張るからあまり選びたくは無いが……まあ、取り敢えずダンジョンに入ってみるか。何か注意する事はあるか?」
「ダンジョンの中は薄暗いため灯となる物が必要である。それから、毒を持つものもいるようであるから解毒薬もであるな」
「後、瘴気の濃いところだと、ダメージを受けるみたいだから、レギンスには頑張って貰わないといけないわ。私たちに光魔法をかけて貰わないといけない」
「お安い御用ですよ」
話を聞く限りは中々難しそうなダンジョンだが、そこまで無理をしなければある程度までは進めそうだな。出てくる敵も深くまで行かなければ、十分倒せる相手だ。
「まあ、今日はさっきも言った通り様子見だからな。無理せずに進もうか。1時間ぐらいで必要な物を買い揃えてダンジョンに向かおう」
このダンジョンで栄え始めた町でどのくらい稼げるかな。出来れば装備を整えて少し深く潜りたいところだ。
「何がだよ?」
「決まってんだろ? 帝国の話だよ」
「あ〜、内乱の事か。そんなの冒険者で知らねえ方が少ねえだろ。で、それが何だよ?」
「それがよぉ、新しく即位した女帝様が、募兵しているんだってよ。なんでも、内乱で減った兵士を補充したいとかで。その中で魔物相手の隊も作るんだとよ」
「それって……」
「ああ、俺たち冒険者もチャンスがあるらしい! どうだ、行かねえか?」
冒険者ギルドに併設されている酒場。その中で周りの冒険者たちの話を聞いていると、そんな声が聞こえて来た。
「帝国に仕官かぁ。夢があって良いねぇ〜」
その周りの声を聞いて俺の前に座る神官服を来た男性がそんな事を言う。無精髭を生やした金髪の30代の男は、右手に酒瓶を持ちながら話をしている冒険者を見ていた。
「何だ、レギンス。仕官したいのか?」
「ははっ、毎日自由にお酒が飲めるのなら考えても良いかもねぇ」
俺の言葉に笑いながら答える神官の男、レギンス。確かに酒好きのレギンスなら、その内容だったら行きそうだな。教会でも酒好きが祟って問題を起こして追い出されている程だからな。
「ミルト君は興味は無いのかい? 仕官?」
「俺か? 俺は夢が冒険者で名を挙げる事だからな。そこまで興味が無いな」
俺は立て掛けてある槍を握る。親父の形見である槍。冒険者として道半ばで死んだ親父の代わりに俺が名を挙げる。それが、俺の夢だからな。
レギンスはそんな俺を優しい目で見ていた。こういうところは神官っぽいな。そんな風にたわいの無い話をしていると
「あっ、また、レギンスさん、お酒飲んでる! 私たちが情報を集めていたっていうのに!」
背に弓を背負ったエルフの少女、シルフェがレギンスに戻ってくるなり怒り始めた。少女と言っても、エルフの年齢では少女で、人間に換算すると70歳ぐらいだ。
その後ろにはローブを羽織り手には杖を握って帽子の被った女性、エイラと、盾を背負った巨体の男、レグンが立っていた。
「ふふっ、レギンスさん、これからダンジョンに入るというのに、どういう事かしら?」
「まあまあ、落ち着くであるよ、エイラ。レギンス殿もやる気を出すために……」
少しお酒を飲んだレギンスを問い詰めようとするエイラを宥めようとするレグンだが、次の瞬間には顔を歪めていた。よく見れば、足を踏まれていた。因みに2人は夫婦である。
「ははっ、ダンジョンに入る前の景気付けに少し飲んだだけだよ。だから、そう怒らないで欲しいな。ちゃんとリーダーには許可を貰っている」
そして、レギンスは罪を逃れるためにそんな事を言い、俺の方を見てきた。それにつられてみんなも俺を見てくる。
「……少しだけだぞ? 本当に一杯程度ならかまわないと言っただけだ。どうせ今日は様子見の予定だったからな」
じとーっと見てくるシルフェとエイラだが、俺がそう言うとはぁ、と溜息を吐く。それを見てレギンスも溜息を吐いた。
「もう、甘いんだからミルトは! レギンスさん、明日からは自重してくださいね!」
「もちろんさ。僕も死にたく無いからね」
そう言って笑うレギンスを見て呆れるシルフェとエイラだったが、諦めて席に座る。
「それじゃあ、ダンジョンの事を教えてくれるか?」
「……わかったわ。この村……今は町かしらね。この町のダンジョンは死霊系しか出ないみたい。なんでも、ある呪われた子を殺した事によって、死霊系の魔物が溢れかえったそうで、それを封印すると、行き場の失った魔力がダンジョンを作ったそうよ。研究者の間では、歴史的な事みたい」
「へぇ、まあ、今あるダンジョンは何世紀も前からあるものばかりで、どのようにダンジョンが出来るかなんてわからないもんな」
「後、面白い話聞いたんだけど、この町の元となった村って、今勇者様と共に旅している聖女様と聖騎士様の出身の村なんだって!」
それは驚いた。噂では勇者と聖女の事は聞いた事があったが、まさかこの町の元となった村が故郷だったとは。
しかし、何の因果かわからないが、ダンジョンを作る事が出来る程の呪われた子供と聖女に聖騎士が一緒の村の生まれだとは。そんな事があるんだな。
「このダンジョンは死霊系が多いから剥ぎ取りとかはあまり出来ないみたいだけど、魔石の純度が高いみたい。それから、リビングアーマーとかの鎧とかは高値で買い取ってくれるみたいよ」
「鎧かぁ。結構嵩張るからあまり選びたくは無いが……まあ、取り敢えずダンジョンに入ってみるか。何か注意する事はあるか?」
「ダンジョンの中は薄暗いため灯となる物が必要である。それから、毒を持つものもいるようであるから解毒薬もであるな」
「後、瘴気の濃いところだと、ダメージを受けるみたいだから、レギンスには頑張って貰わないといけないわ。私たちに光魔法をかけて貰わないといけない」
「お安い御用ですよ」
話を聞く限りは中々難しそうなダンジョンだが、そこまで無理をしなければある程度までは進めそうだな。出てくる敵も深くまで行かなければ、十分倒せる相手だ。
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