世界に復讐を誓った少年
84.助け
僕たちを囲む男たち。どうしたものかと考えていると、僕たちの前に立つエリーゼ皇女。そして小声で
「……あなたたちは逃げなさい。私が彼らを抑えているから」
と、言ってくれる。しかし
「エリーゼ皇女、あなたは確実に捕まってしまう」
いくらエリーゼ皇女が魔法が使えて強かったとしても、この人数、しかも、確実にエリーゼ皇女より強い白髪の男がいる。彼らはエリーゼ皇女の事を捕らえるとは言っていたけど、そのための手段、捕らえた後は何をされるかわからない。
シーシャもその事に気が付いているのか、エリーゼ皇女の袖を掴んだまま離そうとしない。今ここで彼女を置いて行くという選択肢は僕の中には無かった。
僕は懐から魔結晶を取り出して男たちへと投げる。それに合わせて反対側の壁にも。その魔結晶が地面や壁にぶつかった瞬間、ドォン! と爆発。
男たちは倒す事は出来なかったけど怯ませる事は出来、壁には穴が空いた。そして2人をその穴の向こうに進ませて、僕は別の魔結晶を取り出す。あまり、肉弾戦って得意じゃないんだけどね!
魔結晶に封じ込めていた魔法は身体強化だ。これで多少は動けるはずだ。
「こんなもので止められると思うなよ!」
やはり、爆発から初めに出て来たのは、エリーゼ皇女からビャクと呼ばれていた男だ。男は魔力を纏わせて殴りかかってくる。
僕は穴の前に立ちビャクの拳を受け止める。くっ、生前だと確実に耐えきれなかった。レイスとなって能力的に向上している今だから耐えられる。
ビャクは拳を戻すと、すぐに右足で回し蹴りを放ってくる。しゃがんで避けると、すかさず右足を振り下ろして来た。くそ、足が地面へと叩きつけると、その足を軸にして再び左足で回し蹴りが迫る。腕を交差させて防ぐが、ぐっ!
「クロノさん!」
耐え切れずに吹き飛ばされた僕は、2人の下まで吹き飛ばされてしまった。心配して近寄って来るシーシャだけど、既にビャクは迫っていた。
エリーゼ皇女が牽制して魔法を放ってくれるけど、強化してあるビャクの拳には効かなかった。でも、その少しの時間で僕は立ち上がる事が出来たし、魔結晶を取りだす事が出来た。
取り出した魔結晶の効果は障壁だ。さっきも同じように地面に叩きつけて障壁を張る。ビャクには1発で破られるけど、ほんの少しだけなら時間を作れる。今の内にシーシャとエリーゼ皇女を抱えて僕は
「ちょ、ちょっと待ちなさい! そっちは……」
「ままま、窓、窓しか無いです!!」
ガラスを突き破って窓から飛び降りた。皇女がいた部屋は3階。そこから飛び降りるのは結構な高さだった。両腕に抱えた2人は初めての体験なのか叫んでいるけど、僕は冷静に魔結晶を取りだす。そして使おうとした瞬間
「斬脚!」
後ろから迫る魔力を感知する。2人を自分より前に出した時に僕の背中にぶつかる。背中が斜めに切られる感覚。
何とか痛みを歯を食いしばって我慢して、2人に魔結晶を使う。2人が地面に衝突しないように空気の塊が地面との間に出来て、2人は跳ねた。
僕は自分の分を使う暇が無かったため、そのまま地面に落ちる。レイスじゃ無かったら死んでいたよ。
「クロノ!」
「クロノさん!」
2人が僕の元へとやってこようとした時に既にビャクが降りて来て僕の側にいた。そして腹に来る衝撃。吹き飛ばされてようやく蹴られた事に気が付いた。ただの蹴りなら効かないのだけど、奴のは魔力を纏わせているため、レイスである僕にもダメージが入る。
前世でも経験した事のない痛みで叫ぶ事すら出来ない。掠れる視界の中で見えたのは、首元を掴まれたシーシャの姿に、助けようとするエリーゼ皇女の姿だった。
……なんて様だよ、僕は。シーシャを守ると言ったのに。また繰り返すのか? 妹の時と同じように、何も出来ないまま死ぬ姿を眺めているだけなのか、僕は!
「……させるか」
……そんな事は絶対にさせない。自分の身が滅んだとしても、守ると決めたものは守り抜く。
僕の気持ちに呼応するように辺りの生あるものから、ドレインで生気を吸い取る。その生気が僕の魔力と力となって体を巡る。
今までは魔道具師として戦って来たけど、ここからは魔物として戦う。足下の雑草などは生気を失い僕を中心に枯れて行く。
その吸い取った力を魔法に変え、ビャクへと放つ。このレイスとして蘇ってからは闇魔法が得意になっていた。闇魔法の1つのシャドーボールをビャクへと放つ。
ビャクはシーシャを離すとシャドーボールを両手で撃ち落とすけど、その間に近付き、ビャクの腕を掴む。そしてドレインを発動。ビャクの生気を吸い取って行く。
ビャクもこのまま触れられるのは危険だと感じたのか、何とか離そうとするけど、生気を吸い取って強化している僕の力を中々振りほどけないでいる。僕が強化するにつれて、ビャクは弱体化しているからね。
何度も何度も殴られるけど、それより早く吸い取った生気で回復する。このまま続ければ倒す事も……そう思ったけど、四獣家を舐めていた。
「離しやがれ! 切り裂け! 白虎!」
ビャクが何かを発動した瞬間、僕の体は切り刻まれた。体中から吹き出る生気。レイスの僕は、血の代わりに吸い取った生気や魔力が僕の生命線のようだ。こんな時に初めて知るなんて。
体全身に魔力を纏わせて、まるで大きな虎のように威嚇して来るビャク。両手両足の鋭い爪が武器で、それに切り裂かれたのか?
そして、気が付けば再び囲まれていた僕たち。何とかして2人だけでも逃さないだろうか? 何とか2人を庇うようにして立つけど、じりじりと迫る男たちにビャク。
ビャクが一気に僕たちは迫ろうとした瞬間、ヒュンッ! と1本の矢が僕たちとビャクの間に降って来た。その後に僕たちの間に立つ全身鎧で仮面を付けた男。だ、誰だ?
「セルじゃないの! あなた達も戻って来たのね!」
「遅くなり申し訳ございません、エリーゼ様。しかし、まさか、このような事になっているとは……」
剣を構えて僕たちを守るように立つセルと呼ばれた男。そして更に降ってくる矢。男たちはじりじりと僕たちから距離を開けて行く。
「エリーゼ様! こちらです!」
どうしようかと迷っている時に女性のそんな声が聞こえて来た。エリーゼ皇女はその声の主を知っているようで、シーシャの手を握って走り出す。
「君も来るんだ」
セルと呼ばれた男に僕も来るように促される。ここは彼らに頼るしか無いか。僕の持てる魔力を注ぎに注いだ障壁を発動する。これで少しは保つはずだ。
シーシャの兄であるセルシグが何かを叫んでいるけど、そのまま無視して、エリーゼ皇女とシーシャの後を追う。
突然の助けがあったけど、そのおかげで僕たちは皇城から何とか逃げ出す事が出来たのだった。
「……あなたたちは逃げなさい。私が彼らを抑えているから」
と、言ってくれる。しかし
「エリーゼ皇女、あなたは確実に捕まってしまう」
いくらエリーゼ皇女が魔法が使えて強かったとしても、この人数、しかも、確実にエリーゼ皇女より強い白髪の男がいる。彼らはエリーゼ皇女の事を捕らえるとは言っていたけど、そのための手段、捕らえた後は何をされるかわからない。
シーシャもその事に気が付いているのか、エリーゼ皇女の袖を掴んだまま離そうとしない。今ここで彼女を置いて行くという選択肢は僕の中には無かった。
僕は懐から魔結晶を取り出して男たちへと投げる。それに合わせて反対側の壁にも。その魔結晶が地面や壁にぶつかった瞬間、ドォン! と爆発。
男たちは倒す事は出来なかったけど怯ませる事は出来、壁には穴が空いた。そして2人をその穴の向こうに進ませて、僕は別の魔結晶を取り出す。あまり、肉弾戦って得意じゃないんだけどね!
魔結晶に封じ込めていた魔法は身体強化だ。これで多少は動けるはずだ。
「こんなもので止められると思うなよ!」
やはり、爆発から初めに出て来たのは、エリーゼ皇女からビャクと呼ばれていた男だ。男は魔力を纏わせて殴りかかってくる。
僕は穴の前に立ちビャクの拳を受け止める。くっ、生前だと確実に耐えきれなかった。レイスとなって能力的に向上している今だから耐えられる。
ビャクは拳を戻すと、すぐに右足で回し蹴りを放ってくる。しゃがんで避けると、すかさず右足を振り下ろして来た。くそ、足が地面へと叩きつけると、その足を軸にして再び左足で回し蹴りが迫る。腕を交差させて防ぐが、ぐっ!
「クロノさん!」
耐え切れずに吹き飛ばされた僕は、2人の下まで吹き飛ばされてしまった。心配して近寄って来るシーシャだけど、既にビャクは迫っていた。
エリーゼ皇女が牽制して魔法を放ってくれるけど、強化してあるビャクの拳には効かなかった。でも、その少しの時間で僕は立ち上がる事が出来たし、魔結晶を取りだす事が出来た。
取り出した魔結晶の効果は障壁だ。さっきも同じように地面に叩きつけて障壁を張る。ビャクには1発で破られるけど、ほんの少しだけなら時間を作れる。今の内にシーシャとエリーゼ皇女を抱えて僕は
「ちょ、ちょっと待ちなさい! そっちは……」
「ままま、窓、窓しか無いです!!」
ガラスを突き破って窓から飛び降りた。皇女がいた部屋は3階。そこから飛び降りるのは結構な高さだった。両腕に抱えた2人は初めての体験なのか叫んでいるけど、僕は冷静に魔結晶を取りだす。そして使おうとした瞬間
「斬脚!」
後ろから迫る魔力を感知する。2人を自分より前に出した時に僕の背中にぶつかる。背中が斜めに切られる感覚。
何とか痛みを歯を食いしばって我慢して、2人に魔結晶を使う。2人が地面に衝突しないように空気の塊が地面との間に出来て、2人は跳ねた。
僕は自分の分を使う暇が無かったため、そのまま地面に落ちる。レイスじゃ無かったら死んでいたよ。
「クロノ!」
「クロノさん!」
2人が僕の元へとやってこようとした時に既にビャクが降りて来て僕の側にいた。そして腹に来る衝撃。吹き飛ばされてようやく蹴られた事に気が付いた。ただの蹴りなら効かないのだけど、奴のは魔力を纏わせているため、レイスである僕にもダメージが入る。
前世でも経験した事のない痛みで叫ぶ事すら出来ない。掠れる視界の中で見えたのは、首元を掴まれたシーシャの姿に、助けようとするエリーゼ皇女の姿だった。
……なんて様だよ、僕は。シーシャを守ると言ったのに。また繰り返すのか? 妹の時と同じように、何も出来ないまま死ぬ姿を眺めているだけなのか、僕は!
「……させるか」
……そんな事は絶対にさせない。自分の身が滅んだとしても、守ると決めたものは守り抜く。
僕の気持ちに呼応するように辺りの生あるものから、ドレインで生気を吸い取る。その生気が僕の魔力と力となって体を巡る。
今までは魔道具師として戦って来たけど、ここからは魔物として戦う。足下の雑草などは生気を失い僕を中心に枯れて行く。
その吸い取った力を魔法に変え、ビャクへと放つ。このレイスとして蘇ってからは闇魔法が得意になっていた。闇魔法の1つのシャドーボールをビャクへと放つ。
ビャクはシーシャを離すとシャドーボールを両手で撃ち落とすけど、その間に近付き、ビャクの腕を掴む。そしてドレインを発動。ビャクの生気を吸い取って行く。
ビャクもこのまま触れられるのは危険だと感じたのか、何とか離そうとするけど、生気を吸い取って強化している僕の力を中々振りほどけないでいる。僕が強化するにつれて、ビャクは弱体化しているからね。
何度も何度も殴られるけど、それより早く吸い取った生気で回復する。このまま続ければ倒す事も……そう思ったけど、四獣家を舐めていた。
「離しやがれ! 切り裂け! 白虎!」
ビャクが何かを発動した瞬間、僕の体は切り刻まれた。体中から吹き出る生気。レイスの僕は、血の代わりに吸い取った生気や魔力が僕の生命線のようだ。こんな時に初めて知るなんて。
体全身に魔力を纏わせて、まるで大きな虎のように威嚇して来るビャク。両手両足の鋭い爪が武器で、それに切り裂かれたのか?
そして、気が付けば再び囲まれていた僕たち。何とかして2人だけでも逃さないだろうか? 何とか2人を庇うようにして立つけど、じりじりと迫る男たちにビャク。
ビャクが一気に僕たちは迫ろうとした瞬間、ヒュンッ! と1本の矢が僕たちとビャクの間に降って来た。その後に僕たちの間に立つ全身鎧で仮面を付けた男。だ、誰だ?
「セルじゃないの! あなた達も戻って来たのね!」
「遅くなり申し訳ございません、エリーゼ様。しかし、まさか、このような事になっているとは……」
剣を構えて僕たちを守るように立つセルと呼ばれた男。そして更に降ってくる矢。男たちはじりじりと僕たちから距離を開けて行く。
「エリーゼ様! こちらです!」
どうしようかと迷っている時に女性のそんな声が聞こえて来た。エリーゼ皇女はその声の主を知っているようで、シーシャの手を握って走り出す。
「君も来るんだ」
セルと呼ばれた男に僕も来るように促される。ここは彼らに頼るしか無いか。僕の持てる魔力を注ぎに注いだ障壁を発動する。これで少しは保つはずだ。
シーシャの兄であるセルシグが何かを叫んでいるけど、そのまま無視して、エリーゼ皇女とシーシャの後を追う。
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