世界に復讐を誓った少年
83.攻めて来たのは
「……へぇ、器用なものね」
「そうなのですよ! クロノさんは本当1時間もしないうちに、このローブや短剣なんか作ってくれたのですよ!」
「うわっ、これ魔剣じゃないの! しかも同じのが3本も! はぁ、私もいくつも魔道具を見てきたけど、ここまで素晴らしい作品を見るのは久し振りだわ!」
作業をする僕の後ろできゃあきゃあと話すシーシャとエリーゼ皇女。僕の作った魔道具を眺めてエリーゼ皇女は驚き、シーシャは僕がシーシャに作ったものを見せて自慢していた。片手間でぱぱっと作ったやつなのだけどね。
「うーん、あの方の配下でなかったら、私がスカウトしていたのに!」
「ははっ、そこまで認めてくれて嬉しいよ。はい、完成したよ」
2人の話を聞きながらも完成した魔道具を2人へ渡す。シーシャには青のブレスレットを。エリーゼ皇女に白銀のイヤリングをそれぞれ渡した。
「シーシャのブレスレットは強魔のブレスレットで、1日3回だけだけど、魔法を10倍近くの威力に強化してくれるものだ。使い切れば、空気中の魔力を吸収して魔力を回復するようになっているから。
エリーゼ皇女には、察知のイヤリング。それは常時発動型で、音と魔力に反応して、発信源がわかるようになる。ただ、範囲はエリーゼ皇女を中心として、ここだと精々廊下ぐらい、下と上の階がわかるくらいかな」
「それでも充分過ぎるわよ! あなた、本当に何者よ? これほどの技術を持った魔道具師なら名前が轟いても良いのだけど」
知られてないのは当然だよ。発表する前に殺されたのだから。
「これを付けて……魔力を流して……あっ、凄いわねこれ!」
早速イヤリングを付けて使って見るエリーゼ皇女。しばらく部屋の中を歩き回って試していたけど、次第に顔が険しくなる。そして
「2人とも、こちらに来なさい!」
焦ったような声が響く。シーシャはきょとんとしているが、理由が何となく予想付いた僕はシーシャを抱きかかえてエリーゼ皇女の元へと走る。次の瞬間、エリーゼ皇女が外に聞こえないようにと張ってくれた闇の空間が音を立てて割れた。
そして、気が付けば部屋の中には武器を構えた男たちが立っていた……全部で10人ってところかな。数は多くないけど、それぞれが結構な実力だろうね。僕にはあまりわからないけど。
「……どうしてここに?」
周りを警戒していると、僕の腕の中から驚きの声が聞こえてくる。下を見るとシーシャが驚いて入って来た男たちの方を見ている。僕もつられてシーシャが向ける視線の方を見ると、そこにはシーシャと同じ銀色の髪を持った男が立っていた。
「愚妹が。お前のせいで私は……まあいい。今日こそその青龍の涙を貰うぞ」
そう言いながら手に持つ魔槍だろうものを構える銀髪の男。話の流れからしてこいつがシーシャの兄で、シーシャの両親、自分の親を嵌めたクズか。
「どっちがクズなのか」
「……なに?」
僕は抱きかかえていたシーシャを下ろして、庇うように立つ。側でシーシャが不安そうに見上げてくるけど、僕は真っ直ぐとシーシャの兄、セルシグを見る。
「妹を……家族を大切に出来ないような奴はクズだって言ってんだよ!」
僕はそう言いながらローブの中に隠してある魔結晶を取り出す。そしてそれを地面に叩きつける。地面に叩きつけた瞬間、ボンッと音が鳴り僕たちを煙が包む。万が一のために作っておいて煙玉だ。
「やるわね! 今のうちに……っ! 危ない!」
煙玉で視界を遮ったけど、気配を感知できるエリーゼ皇女は僕たちの居場所がわかるため来てくれて、手を引いてくれる。しかし、何かを感じたのか叫ぶエリーゼ皇女。僕も少し遅れて殺気を感じた。
僕は咄嗟に2人の前に立って魔結晶を宙に放る。僕が流した魔力に反応して僕たちの前には障壁が現れた。これで大抵の攻撃は防げるのだけど
「おらっ!」
煙の向こうから現れた白髪の男の攻撃には一撃も持たなかった。障壁が割れる衝撃で吹き飛ばされる僕たち。
エリーゼ皇女は何とか受け身を取り体勢を立て直して、シーシャも僕が抱き締めて庇ったので無事だったけど、さっきの白髪の男だけ、他の奴らに比べたら覇気が違う。
「おっと、あぶねえあぶねえ。皇女様は確保するんだった。巻き込んじまうところだったぜ」
全く悪いと思っていない風に話す男。飄々とした雰囲気だけど、こいつはヤバい。
「……ビャク、あなたもお兄様の命令で来たの?」
「そうっすよ、皇女様。悪いっすけどその女と男は殺させてもらうぜ? 女が持っている青龍の涙も手に入れねえといけねえし。ほら、何ボサッとしたんだよ、青龍の。てめえのためなんだからちゃっちゃと動けよ」
「……わかっている」
……うん。とても不味い。この状況をどう切り抜けようか。
「そうなのですよ! クロノさんは本当1時間もしないうちに、このローブや短剣なんか作ってくれたのですよ!」
「うわっ、これ魔剣じゃないの! しかも同じのが3本も! はぁ、私もいくつも魔道具を見てきたけど、ここまで素晴らしい作品を見るのは久し振りだわ!」
作業をする僕の後ろできゃあきゃあと話すシーシャとエリーゼ皇女。僕の作った魔道具を眺めてエリーゼ皇女は驚き、シーシャは僕がシーシャに作ったものを見せて自慢していた。片手間でぱぱっと作ったやつなのだけどね。
「うーん、あの方の配下でなかったら、私がスカウトしていたのに!」
「ははっ、そこまで認めてくれて嬉しいよ。はい、完成したよ」
2人の話を聞きながらも完成した魔道具を2人へ渡す。シーシャには青のブレスレットを。エリーゼ皇女に白銀のイヤリングをそれぞれ渡した。
「シーシャのブレスレットは強魔のブレスレットで、1日3回だけだけど、魔法を10倍近くの威力に強化してくれるものだ。使い切れば、空気中の魔力を吸収して魔力を回復するようになっているから。
エリーゼ皇女には、察知のイヤリング。それは常時発動型で、音と魔力に反応して、発信源がわかるようになる。ただ、範囲はエリーゼ皇女を中心として、ここだと精々廊下ぐらい、下と上の階がわかるくらいかな」
「それでも充分過ぎるわよ! あなた、本当に何者よ? これほどの技術を持った魔道具師なら名前が轟いても良いのだけど」
知られてないのは当然だよ。発表する前に殺されたのだから。
「これを付けて……魔力を流して……あっ、凄いわねこれ!」
早速イヤリングを付けて使って見るエリーゼ皇女。しばらく部屋の中を歩き回って試していたけど、次第に顔が険しくなる。そして
「2人とも、こちらに来なさい!」
焦ったような声が響く。シーシャはきょとんとしているが、理由が何となく予想付いた僕はシーシャを抱きかかえてエリーゼ皇女の元へと走る。次の瞬間、エリーゼ皇女が外に聞こえないようにと張ってくれた闇の空間が音を立てて割れた。
そして、気が付けば部屋の中には武器を構えた男たちが立っていた……全部で10人ってところかな。数は多くないけど、それぞれが結構な実力だろうね。僕にはあまりわからないけど。
「……どうしてここに?」
周りを警戒していると、僕の腕の中から驚きの声が聞こえてくる。下を見るとシーシャが驚いて入って来た男たちの方を見ている。僕もつられてシーシャが向ける視線の方を見ると、そこにはシーシャと同じ銀色の髪を持った男が立っていた。
「愚妹が。お前のせいで私は……まあいい。今日こそその青龍の涙を貰うぞ」
そう言いながら手に持つ魔槍だろうものを構える銀髪の男。話の流れからしてこいつがシーシャの兄で、シーシャの両親、自分の親を嵌めたクズか。
「どっちがクズなのか」
「……なに?」
僕は抱きかかえていたシーシャを下ろして、庇うように立つ。側でシーシャが不安そうに見上げてくるけど、僕は真っ直ぐとシーシャの兄、セルシグを見る。
「妹を……家族を大切に出来ないような奴はクズだって言ってんだよ!」
僕はそう言いながらローブの中に隠してある魔結晶を取り出す。そしてそれを地面に叩きつける。地面に叩きつけた瞬間、ボンッと音が鳴り僕たちを煙が包む。万が一のために作っておいて煙玉だ。
「やるわね! 今のうちに……っ! 危ない!」
煙玉で視界を遮ったけど、気配を感知できるエリーゼ皇女は僕たちの居場所がわかるため来てくれて、手を引いてくれる。しかし、何かを感じたのか叫ぶエリーゼ皇女。僕も少し遅れて殺気を感じた。
僕は咄嗟に2人の前に立って魔結晶を宙に放る。僕が流した魔力に反応して僕たちの前には障壁が現れた。これで大抵の攻撃は防げるのだけど
「おらっ!」
煙の向こうから現れた白髪の男の攻撃には一撃も持たなかった。障壁が割れる衝撃で吹き飛ばされる僕たち。
エリーゼ皇女は何とか受け身を取り体勢を立て直して、シーシャも僕が抱き締めて庇ったので無事だったけど、さっきの白髪の男だけ、他の奴らに比べたら覇気が違う。
「おっと、あぶねえあぶねえ。皇女様は確保するんだった。巻き込んじまうところだったぜ」
全く悪いと思っていない風に話す男。飄々とした雰囲気だけど、こいつはヤバい。
「……ビャク、あなたもお兄様の命令で来たの?」
「そうっすよ、皇女様。悪いっすけどその女と男は殺させてもらうぜ? 女が持っている青龍の涙も手に入れねえといけねえし。ほら、何ボサッとしたんだよ、青龍の。てめえのためなんだからちゃっちゃと動けよ」
「……わかっている」
……うん。とても不味い。この状況をどう切り抜けようか。
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