世界に復讐を誓った少年

やま

82.闇の中での話

「ブラックルーム……これで私たちの話が外に漏れる事は無いわ。これで心置きなく話せるでしょ?」


 先ほどのような闇に囲まれる僕たち。その中心にあるテーブルと椅子に座るエリーゼ皇女。視線で前にある椅子に座るように促して来るので、僕とシーシャは椅子に座る。


 僕たちが座ったのを確認すると、エリーゼ皇女は指をパチンと鳴らす。すると、地面の影から1体のスケルトンが姿を現した。突然姿を現したスケルトンを見て、シーシャがひぃっ! と、悲鳴を上げる。


「もう、人の侍女を見てそんな驚く事ないじゃ無い。ねぇ、アリッサ?」


 エリーゼ皇女の言葉に反応するようにカタカタと音を鳴らすスケルトン。へぇ、思考は持っているようだ。僕がそんなスケルトンを見ていると、何を思ったのか、恥ずかしそうに体をくねらせる。いや、そんなつもりでは見ていないからね。


「まさかアリッサが気にいるなんてね。同じ死霊同士惹かれるかもしれないわね」


 心なしさっきより僕に距離が近づいているスケルトンを見ていると、そんな事を言うエリーゼ皇女。ありえない事も無いのかもしれないけど。


「まあ、アリッサとあなたとは後で話をしてもらうとして、あの方の事を教えて頂戴! あ、私を殺そうなんて考えないでね。何も対処せずに部屋に入れたりはしないわ。その少女、シーシャを死なせたくなかったらね」


「気付いていたのかい?」


「勿論よ。私の派閥に入ってくれたところの特徴は覚えているし、ましてや四獣家。会った事のある人なら覚えているわよ。
 貴族の皆があの男を疑っているわよ。あの2人が強盗ごときに負けるはずがないと」


 なるほど。それほどシーシャの両親の死は不自然だったってところだろう。


「それであの方の配下を持つあなたがシーシャと私の元へとやって来た理由は何かしら? 私はこの城の中に影を張り巡らせいるからどこから入ってきたとかわかるのよ。地下食料庫の掘られた穴には気が付かなかったけど。あなたがあの方の事について話してくれるのなら、私も便宜を図るわ」


 ……どうするべきか。ボスの事を話して協力を促してもいいけど、この皇女が話さないとも限らない。ただ、既にボスの事は帝国に知られているのは確実だ。スザクとやらがボスに負けて帰ってきたからね。遅かれ早かれ知られる事にはなるけど……


「あまり深いところは話さないよ。これは僕が拒んでいるんじゃなくて、そういう縛りがかけられているからだ。そこは承知しておいて欲しい」


「勿論いいわよ。少しでも知る事が出来れば会った時にどう行動すればいいかわかるもの」


 そこからはエリーゼ皇女、シーシャに自分の話せる範囲の事を話していく。僕は既に死んでいて、ボスに蘇らせてもらった事や、僕の正体。ボスの事は闇魔法師って事で話を進めて行く。暗黒魔術師の事は流石に話せないからね。


「やっぱり、あなたはあのお方が蘇らせた死霊なのですね! 天才と言われた私ですらアリッサを意思疎通が出来るまでしか出来なかったのに、外見だけではなく、生前の力を発揮出来るなんて!」


 キラキラとした目で僕を見て来るエリーゼ皇女。実際に触れるのかどうか確認するために触っても来る。怖いもの知らずだなぁ。今ここでドレインとかしたら面白そうだけど、後々話が進まなくなるからやめておこう。


「僕が怖くなった? シーシャ?」


 キラキラとした視線とは別に不安そうな視線が左から突き刺さる。僕が尋ねるとビクッと体を震わせるシーシャだけど、僕から目を逸らす事はなかった。


「……正直に言うと怖いです。今も震えそうです。でも、それ以上にクロノさんと一緒にいたいです。私の話を聞いても、私のためにと助けてくれるクロノさんと一緒にいたいです!」


 気が付けば怯えたような視線も力強く決意のこもった視線へと変わっていた。僕は思わず頭を撫でてしまった。


「あらあら、お熱いわね。イチャイチャするのはいいけど、それよりも話す事があるでしょ?」


 にやにやと僕たちを見て来るエリーゼ皇女。それもそうだね。僕やボスの事は話したから、それを含めてこの皇女様が手伝ってくれるかだ。


「うーん、シーシャの願いを叶えてあげたいのは山々なのだけど、今は無理ね。もう私の派閥じゃないし」


「……それってもしかして」


「ええ、あなたが想像している通り、青龍家の現当主、セルシグは私の派閥から第1皇子であるお兄様の方へ移したもの。これによって勢力図は大幅に変わってお兄様一強になっているの。
 シーシャを助けるどころか、自分の命も危ないところだもの。皇帝であるお父様は謎の病で寝込んで、お母様たちは後宮に追いやられているわ。私が殺されていないのは、利用価値があるからでしょうね。政略結婚として」


 私自身貴族からは嫌われているからね、と苦笑いするエリーゼ皇女。うん? そういえば


「皇女には婚約者がいたはずだけど?」


「そんなの、お兄様の一声でどうにでもなるわよ。今帝国でお兄様に逆らえる者なんていないのだから」


 ……これは思っていた以上に手強いかもしれないよ、ボス。まあ、僕がそんな事を尋ねたら返される言葉は決まっている。『それがどうした?』ってね。あの人ならこの程度の逆境、覆しそうだ。


「とにかく、シーシャとエリーゼ皇女の身の安全を考えないとね。何か上質な魔結晶無い? 今の手持ちの人口の魔結晶じゃあ心許ないからね」


「上質な魔結晶? あるにはあるけど、何に使うの?」


 そんなの決まっているよ。


「魔道具作りさ」


 僕の持てる力を全て注ぎ込んだ物を作ってみせるよ。


 ◇◇◇


「今、エリーゼの元にシーシャがいるようだぞ、セルシグよ」


「ぷぷっ、ここまで逃げられて、ダッセェの!」


「……申し訳ございません、レルヴィス殿下。直ちにシーシャを捕らえて、青龍の涙を……」


「その言葉は聞き飽きた。ビャク、お前も一緒に行ってやれ。スザクは完治するまで待機だ」


「あいよー」


「わかりました」

コメント

  • リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!

    ボスー!来てくださいよぉ〜!

    1
  • 蘆屋紫黒

    人工が人口になってますよ

    2
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