世界に復讐を誓った少年
76.助ける理由
「こんなところに住んでいるのか」
少女と別れた後、少女の後を隠れてついて来た僕は、現在、彼女が住んでいると思われる空き家を見下ろしていた。気が付けば空は暗くなり、夜となっていた。
そんな中辿り着いた家は、何年も使われてないのか、所々穴が空いており、天井も崩れている箇所がある。外から見ただけでも蜘蛛の巣が張っており、ネズミが走り回る。中々愉快なところだ。
そんな空き家に少女は入り込んで、隅っこに座りこんだ。僕も気がつかれないように壁をすり抜けて中へと入る。
気配を殺して近づくと、蹲ってい少女からすすり泣く声が聞こえて来た。それも仕方ない。見た目からして9歳か10歳。まだ、親が恋しい年頃だら、僕は物心がつく前に両親が死んで、おじさんに育てて貰っていたけど、妹は両親がいない事に何度か泣く事があったし。
「……ううっ……お父様ぁ……お母様ぁ」
……駄目だ。どうしても妹と重なってしまう。年も丁度このくらいだったし。似てないのになぁ。
しばらく離れたところで少女を見ていると、壁を突き破る音が聞こえてくる。少女は慌てて顔を上げて音の方へと走って行くと、そこには昼間の男たちの仲間と思われる男たちが立っていた。
「おい、てめえら。捕まえろ!」
「くっ、アクアショット!」
近づこうとする男たちに少女は水の球を放つ。この歳で素早く魔法が放てるのは凄いけど、相手が悪い。男たちは魔法師相手にも慣れているのだろう。飛んでくる水の球を素早く避ける。
そして、両側から少女の手を掴む男たち。少女は暴れるが大人の男の力に微動だにしない。リーダーっぽい男が少女の体に触れる。少女に欲情したとかではなく、何かを探しているようだ。そういえば、裏道で会った時も何かを守るようにしていたね。
「くっ、は、離せ! 私に触れるな!」
「煩いガキだ」
「きゃっ!」
少女が暴れるのに苛立ったのか、男は少女の頰を叩く。少女は口の中を切ったらしく、唇の端から血がすーと流れる。痛みで涙目になっているが、強気に男を睨んでいた。しかし、次の瞬間、その表情が崩れる事になる。
「兄貴、これですぜ」
「ああっ!」
少女の右手を掴んでいた男が少女の懐から何かを取り出したのだ。それを見た少女は悲壮な声を上げる。あれが狙われているものか。
「これで目的は達した。そのガキは殺せ」
「か、返して! お父様の大切なものを返して!」
「今から死ぬガキには必要ねぇ!」
少女の左腕を掴んでいた男が腰からナイフを抜くと、少女へ向けて突き出す。流石にそれは見過ごせないな。僕も懐から魔結晶を取り出し、男たちの足元へと投げる。
男たちは音に反応した瞬間、魔結晶が落ちたところには全身を赤く染める化け物が立っていた。
「やれ、クリムゾンリーパー!」
僕の声に反応してナイフを持っていた男へと切りかかる。男は反応する暇もなく首を刎ねられた。首から溢れる血飛沫が少女へとかかるが、それどころじゃない。
僕は反対側の右腕を掴んでいる男へと近づきドレインをする。男はあっという間に干からびて手元には魔結晶が残る。
「な、なんだおま……へぇ……?」
リーダーっぽい男が僕に気が付いた瞬間、男の首には鋭い爪が突き刺さっていた。クリムゾンリーパーはそのまま突き刺した爪を振り下ろした。
千切れかけた男の死体は背中から倒れ込み、握られた手から青く輝くものがこぼれ落ちる。遠目からはあまりわからなかったけど、これを狙っていたのか。
青く輝く宝石のようなものが付いたネックレス。魔結晶とは比べ物にならないほど、途轍もない魔力を内包されている。これは確かに狙われるだけある。持っているだけで効果があるこの魔道具。いや、人間の手で作れる魔道具とは一緒には出来ないか。
魔道具作成者としてはとても気になる代物だけど、今は先にやる事をやってしまおう。まずは残っている男たちを殺さなければ。
クリムゾンリーパーに指示を出し、男たちへと襲わせる。男たちは逃げ惑うけど、次々とクリムゾンリーパーの鋭い爪で切り落とされていった。
後ろから聞こえてくる悲鳴や叫び声を無視して振り返ると、そこには顔を青くさせる少女が立っていた。いくら男たちと敵対していたとしても、死ぬところを見るのは初めてなのだろう。体を震わせて固まっていた。
「ほら」
そんな少女の前に先ほど拾ったネックレスを渡す。少女はビクッと震えるけど、目の前にある大切なものを見て恐る恐る顔を上げてきた。そこで初めて僕の顔を見た。
「あ、あなたは昼間の……」
「ほら、大切なものなのでしょ?」
「……ありがとうございます」
恐る恐る僕の手から大切なものを取る少女。そんなに恐れなくても、と思うけど、今も後ろで起こっている事を考えれば恐ろしくもなるか。
「取り敢えず、ここを離れよう。また、奴らが来ないとも限らないし」
というよりか絶対に来るだろう。ここに来た奴らが帰って来ないとなれば。
「……あの、どうして、私を助けてくれるのですか?」 
少女の手を昼間と同じように引っ張ろうとした時、後ろからそんな声が聞こえて来た。どうして助かるか、か。やっぱり
「必死な姿が妹に似ているからかな?」
僕もはっきりと言えないけど。
少女と別れた後、少女の後を隠れてついて来た僕は、現在、彼女が住んでいると思われる空き家を見下ろしていた。気が付けば空は暗くなり、夜となっていた。
そんな中辿り着いた家は、何年も使われてないのか、所々穴が空いており、天井も崩れている箇所がある。外から見ただけでも蜘蛛の巣が張っており、ネズミが走り回る。中々愉快なところだ。
そんな空き家に少女は入り込んで、隅っこに座りこんだ。僕も気がつかれないように壁をすり抜けて中へと入る。
気配を殺して近づくと、蹲ってい少女からすすり泣く声が聞こえて来た。それも仕方ない。見た目からして9歳か10歳。まだ、親が恋しい年頃だら、僕は物心がつく前に両親が死んで、おじさんに育てて貰っていたけど、妹は両親がいない事に何度か泣く事があったし。
「……ううっ……お父様ぁ……お母様ぁ」
……駄目だ。どうしても妹と重なってしまう。年も丁度このくらいだったし。似てないのになぁ。
しばらく離れたところで少女を見ていると、壁を突き破る音が聞こえてくる。少女は慌てて顔を上げて音の方へと走って行くと、そこには昼間の男たちの仲間と思われる男たちが立っていた。
「おい、てめえら。捕まえろ!」
「くっ、アクアショット!」
近づこうとする男たちに少女は水の球を放つ。この歳で素早く魔法が放てるのは凄いけど、相手が悪い。男たちは魔法師相手にも慣れているのだろう。飛んでくる水の球を素早く避ける。
そして、両側から少女の手を掴む男たち。少女は暴れるが大人の男の力に微動だにしない。リーダーっぽい男が少女の体に触れる。少女に欲情したとかではなく、何かを探しているようだ。そういえば、裏道で会った時も何かを守るようにしていたね。
「くっ、は、離せ! 私に触れるな!」
「煩いガキだ」
「きゃっ!」
少女が暴れるのに苛立ったのか、男は少女の頰を叩く。少女は口の中を切ったらしく、唇の端から血がすーと流れる。痛みで涙目になっているが、強気に男を睨んでいた。しかし、次の瞬間、その表情が崩れる事になる。
「兄貴、これですぜ」
「ああっ!」
少女の右手を掴んでいた男が少女の懐から何かを取り出したのだ。それを見た少女は悲壮な声を上げる。あれが狙われているものか。
「これで目的は達した。そのガキは殺せ」
「か、返して! お父様の大切なものを返して!」
「今から死ぬガキには必要ねぇ!」
少女の左腕を掴んでいた男が腰からナイフを抜くと、少女へ向けて突き出す。流石にそれは見過ごせないな。僕も懐から魔結晶を取り出し、男たちの足元へと投げる。
男たちは音に反応した瞬間、魔結晶が落ちたところには全身を赤く染める化け物が立っていた。
「やれ、クリムゾンリーパー!」
僕の声に反応してナイフを持っていた男へと切りかかる。男は反応する暇もなく首を刎ねられた。首から溢れる血飛沫が少女へとかかるが、それどころじゃない。
僕は反対側の右腕を掴んでいる男へと近づきドレインをする。男はあっという間に干からびて手元には魔結晶が残る。
「な、なんだおま……へぇ……?」
リーダーっぽい男が僕に気が付いた瞬間、男の首には鋭い爪が突き刺さっていた。クリムゾンリーパーはそのまま突き刺した爪を振り下ろした。
千切れかけた男の死体は背中から倒れ込み、握られた手から青く輝くものがこぼれ落ちる。遠目からはあまりわからなかったけど、これを狙っていたのか。
青く輝く宝石のようなものが付いたネックレス。魔結晶とは比べ物にならないほど、途轍もない魔力を内包されている。これは確かに狙われるだけある。持っているだけで効果があるこの魔道具。いや、人間の手で作れる魔道具とは一緒には出来ないか。
魔道具作成者としてはとても気になる代物だけど、今は先にやる事をやってしまおう。まずは残っている男たちを殺さなければ。
クリムゾンリーパーに指示を出し、男たちへと襲わせる。男たちは逃げ惑うけど、次々とクリムゾンリーパーの鋭い爪で切り落とされていった。
後ろから聞こえてくる悲鳴や叫び声を無視して振り返ると、そこには顔を青くさせる少女が立っていた。いくら男たちと敵対していたとしても、死ぬところを見るのは初めてなのだろう。体を震わせて固まっていた。
「ほら」
そんな少女の前に先ほど拾ったネックレスを渡す。少女はビクッと震えるけど、目の前にある大切なものを見て恐る恐る顔を上げてきた。そこで初めて僕の顔を見た。
「あ、あなたは昼間の……」
「ほら、大切なものなのでしょ?」
「……ありがとうございます」
恐る恐る僕の手から大切なものを取る少女。そんなに恐れなくても、と思うけど、今も後ろで起こっている事を考えれば恐ろしくもなるか。
「取り敢えず、ここを離れよう。また、奴らが来ないとも限らないし」
というよりか絶対に来るだろう。ここに来た奴らが帰って来ないとなれば。
「……あの、どうして、私を助けてくれるのですか?」 
少女の手を昼間と同じように引っ張ろうとした時、後ろからそんな声が聞こえて来た。どうして助かるか、か。やっぱり
「必死な姿が妹に似ているからかな?」
僕もはっきりと言えないけど。
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