世界に復讐を誓った少年
69.衝突
「これより、亜人国の王都へと攻める! 奴らも本気でくるが、我々の敵ではない! 帝国軍の勇者たちよ! 臆せず進むのだ!」
総大将の号令で平原を歩き始める兵士たち。今回私たちの隊は後方支援。前衛の雑用を任されていた。理由は、もしかしたら他にも内通者がいるかもしれないからという理由で。
私たちが拠点としている街を襲って来た化け物が、セルを襲わなかっただけで、セルは内通者扱いされ、捕らえられた。ただでさえ呪いを解かないといけないというのに、私たちは前に出る事が出来ない。呪いをかけた本人は出てくるだろうに。
「隊長。副隊長の様子を見て来たのですが、かなり苦しそうでしたぜ」
「ええ、わかっているわ。だからなんとしても呪いを解呪出来る人を探さないといけないわ。それか、術者を探さないと」
でも、私たちはここから動く事が出来ない。もし動けば、セルは殺されるだろう。どうすればいいのか考えていると、爆発する音が聞こえてくる。どうやら、戦闘が始まったみたい。
そう思った瞬間、離れた後陣からも見える、空高く登る火柱。私たちは皆声を出す事が出来なかった。更には巻き起こる竜巻に、雨のように降る氷柱。
まるで世界の終わりかのような光景がこの場からでも見る事が出来た。明らかにおかしい。これは帝国軍が行なっているのではないのは明らかだった。
「隊長、これは……」
「私たちも行くわ! 全体準備を!」
私は近くにつないでいた自身の馬に乗って走らせる。その後を直近の部下たちがついて来て、他の者は出る準備をしていた。
馬を走らせて少し、ようやく攻めている軍の後ろに着く事が出来たけど、前の方は地獄のようだった。
燃え盛る大地に降り注ぐ氷柱。地面から棘のように変わった土が飛び出し、兵士たちを串刺しにして行く。これだけの魔法、亜人国は何十人と魔法師を出して来たのか、と思ったけど、いたのは1人だけだった。
宙に浮かんでいるエルフの男。その男がまるで指揮棒を振るかのように両手を動かすと、それぞれ種類の違う魔法が放たれて行く。
こちらがいくら魔法で防ごうとも簡単に貫き、逆に攻撃しようとも届かない。
「ふむ、今はこの程度でダメなのですか。昔は普通に防がれたのですがね。まあ、あとは彼女に任せましょうか」
エルフの男は何かを呟くと、魔法をやめて後ろに下がってしまった。理由はわからないけど、今は兵たちを引かせて立て直さないと。だけど、私が支持する前に、総大将が
「今だ! 魔法をやめたという事は限界が来たという事だ。あのような魔法を何度も撃てる訳がない! 全軍進めぇ!」
という、明らかに間違った指示を出してしまった。あの様子を見てまだ魔法が撃てるのはわかりきっているというのに。
本当は下がりたいはずの兵士たちも、命令が出れば進むしかない。私はその間に総大将の下へと向かう。
「総大将! ここは一旦引いて立て直すべきです! 崩れたままでは勝てません!」
「なぜ貴様がここにいる! 後方へと置いていたはずだぞ!」
「今はそんな事を言っている場合ではありません! そんな事よりも、今は前にいる兵士たちです! 数では勝っているのですから、無事な兵士たちと入れ替えるべきです!」
「えぇい、黙れ! これ以上邪魔をするというなら……」
ドオォン!
私と総大将が言い合っている間に、前方の方に何かが降って来た。その衝撃だけで、兵士たちは吹き飛ばされていく。立ち込める砂煙の中
「ははっ! 楽しもうぜ!」
と、高笑いする女性の声が聞こえて来た。言い終えると同時に飛び出してくる赤髪の女性。大きな胸をサラシで抑えているだけ、下は短パンと、褐色の肌を惜しみもなく晒し出す女性だけど、何よりも、頭に伸びる角や腰から伸びる尻尾が目に入る。
見た目からして彼女はドラゴニュート族でしょう。細い見た目からは想像がつかないほどのパワーがその事を物語っている。
兵士たちは突然現れた女性を倒そうと迫るけど、剣や槍は彼女に触れると木の枝かと思うほど簡単に折れて、逆に彼女の拳を受けようと盾を構えると、盾はひしゃげて触れた体の一部が爆散する。
「オラオラどうしたどうした! 本気出せよ!」
笑いながら迫るその姿を見た兵士たちは一様に怯えてしまった。どうにかして止めないと。私は弓を構えて矢を放とうとすると、彼女に向かって振り下ろされる巨大な斧。普通の人間だと簡単に真っ二つに出来るほどの大きさの斧が、彼女に向かって振り下ろされた。
あれば隊長の1人。巨斧で敵を吹き飛ばすのでのし上がった隊長だ。あの斧は魔斧のため、普通の武器より丈夫だ。現に、ドラゴニュート族の女性に何度振り下ろしても壊れない。
ドラゴニュート族の女性が一方的に受ける姿を見た兵士たちの士気が少し戻るけど、あの女性はまだ本気を出していない。
その考えは当たっていたようで、次に斧が振り下ろされた瞬間、彼女は斧の刃を手で掴んだ。彼女は余裕の笑みを浮かべているけど、隊長の顔は次第に赤黒く染まって行く。
掴まれた斧が微動だにしないのだ。それを引き抜こうと隊長が力を入れるが、全く動かない。そして砕け散る斧と体が散らばる隊長。殴られた衝撃で体がバラバラになったのだ。
直視出来ない光景に目を逸らしてしまいそうになるが、敵は待ってくれない。
女性より後ろの方からは亜人国の兵士が姿を現し、更にその先頭には数日前に街を襲った化け物がいた。先ほどのエルフの男性も隣におり、何よりも、セルに呪いをかけた男が化け物の背に乗っていたのだ。
総大将の号令で平原を歩き始める兵士たち。今回私たちの隊は後方支援。前衛の雑用を任されていた。理由は、もしかしたら他にも内通者がいるかもしれないからという理由で。
私たちが拠点としている街を襲って来た化け物が、セルを襲わなかっただけで、セルは内通者扱いされ、捕らえられた。ただでさえ呪いを解かないといけないというのに、私たちは前に出る事が出来ない。呪いをかけた本人は出てくるだろうに。
「隊長。副隊長の様子を見て来たのですが、かなり苦しそうでしたぜ」
「ええ、わかっているわ。だからなんとしても呪いを解呪出来る人を探さないといけないわ。それか、術者を探さないと」
でも、私たちはここから動く事が出来ない。もし動けば、セルは殺されるだろう。どうすればいいのか考えていると、爆発する音が聞こえてくる。どうやら、戦闘が始まったみたい。
そう思った瞬間、離れた後陣からも見える、空高く登る火柱。私たちは皆声を出す事が出来なかった。更には巻き起こる竜巻に、雨のように降る氷柱。
まるで世界の終わりかのような光景がこの場からでも見る事が出来た。明らかにおかしい。これは帝国軍が行なっているのではないのは明らかだった。
「隊長、これは……」
「私たちも行くわ! 全体準備を!」
私は近くにつないでいた自身の馬に乗って走らせる。その後を直近の部下たちがついて来て、他の者は出る準備をしていた。
馬を走らせて少し、ようやく攻めている軍の後ろに着く事が出来たけど、前の方は地獄のようだった。
燃え盛る大地に降り注ぐ氷柱。地面から棘のように変わった土が飛び出し、兵士たちを串刺しにして行く。これだけの魔法、亜人国は何十人と魔法師を出して来たのか、と思ったけど、いたのは1人だけだった。
宙に浮かんでいるエルフの男。その男がまるで指揮棒を振るかのように両手を動かすと、それぞれ種類の違う魔法が放たれて行く。
こちらがいくら魔法で防ごうとも簡単に貫き、逆に攻撃しようとも届かない。
「ふむ、今はこの程度でダメなのですか。昔は普通に防がれたのですがね。まあ、あとは彼女に任せましょうか」
エルフの男は何かを呟くと、魔法をやめて後ろに下がってしまった。理由はわからないけど、今は兵たちを引かせて立て直さないと。だけど、私が支持する前に、総大将が
「今だ! 魔法をやめたという事は限界が来たという事だ。あのような魔法を何度も撃てる訳がない! 全軍進めぇ!」
という、明らかに間違った指示を出してしまった。あの様子を見てまだ魔法が撃てるのはわかりきっているというのに。
本当は下がりたいはずの兵士たちも、命令が出れば進むしかない。私はその間に総大将の下へと向かう。
「総大将! ここは一旦引いて立て直すべきです! 崩れたままでは勝てません!」
「なぜ貴様がここにいる! 後方へと置いていたはずだぞ!」
「今はそんな事を言っている場合ではありません! そんな事よりも、今は前にいる兵士たちです! 数では勝っているのですから、無事な兵士たちと入れ替えるべきです!」
「えぇい、黙れ! これ以上邪魔をするというなら……」
ドオォン!
私と総大将が言い合っている間に、前方の方に何かが降って来た。その衝撃だけで、兵士たちは吹き飛ばされていく。立ち込める砂煙の中
「ははっ! 楽しもうぜ!」
と、高笑いする女性の声が聞こえて来た。言い終えると同時に飛び出してくる赤髪の女性。大きな胸をサラシで抑えているだけ、下は短パンと、褐色の肌を惜しみもなく晒し出す女性だけど、何よりも、頭に伸びる角や腰から伸びる尻尾が目に入る。
見た目からして彼女はドラゴニュート族でしょう。細い見た目からは想像がつかないほどのパワーがその事を物語っている。
兵士たちは突然現れた女性を倒そうと迫るけど、剣や槍は彼女に触れると木の枝かと思うほど簡単に折れて、逆に彼女の拳を受けようと盾を構えると、盾はひしゃげて触れた体の一部が爆散する。
「オラオラどうしたどうした! 本気出せよ!」
笑いながら迫るその姿を見た兵士たちは一様に怯えてしまった。どうにかして止めないと。私は弓を構えて矢を放とうとすると、彼女に向かって振り下ろされる巨大な斧。普通の人間だと簡単に真っ二つに出来るほどの大きさの斧が、彼女に向かって振り下ろされた。
あれば隊長の1人。巨斧で敵を吹き飛ばすのでのし上がった隊長だ。あの斧は魔斧のため、普通の武器より丈夫だ。現に、ドラゴニュート族の女性に何度振り下ろしても壊れない。
ドラゴニュート族の女性が一方的に受ける姿を見た兵士たちの士気が少し戻るけど、あの女性はまだ本気を出していない。
その考えは当たっていたようで、次に斧が振り下ろされた瞬間、彼女は斧の刃を手で掴んだ。彼女は余裕の笑みを浮かべているけど、隊長の顔は次第に赤黒く染まって行く。
掴まれた斧が微動だにしないのだ。それを引き抜こうと隊長が力を入れるが、全く動かない。そして砕け散る斧と体が散らばる隊長。殴られた衝撃で体がバラバラになったのだ。
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