世界に復讐を誓った少年
58.来客の目的(2)
「……話が見えてこないな。どうして僕が救世主なんだ?」
僕が誰かを助ける姿なんて全く想像がつかない。ましてや、助ける義理もない亜人族だ。現にリーシャは腹を抱えて大笑いしてやがる。後でその頭を使ってボール遊びでもしてやる。
「まずは現在の私たちの国の現状についてお話しします。私たちの国には、女神フィストリア様が創られたと言われる『大神木』と言われるものがあります」
大神木ね。見たらなぎ倒したくなるかも。女神が創ったと言われたら余計に。
「その大神木のおかげで、根元には様々な薬草が育ち、絶えることのない水が湧き出て、沢山の作物が育っています。しかし、問題が数ヶ月前から起き始めました」
「問題?」
「はい。突然大神木が実を付け始めたのです」
……それのどこが問題なんだ? 木なんだから実ぐらいつけるだろう? そう思って周りを見ていたら、亜人国の連中は皆が忌々しそうな表情を浮かべている。メルダも同じような表情を浮かべ話を進める。
「ハルト殿の考えている事はわかります。その実が害がない物であればそう考えるのですが……」
「問題があるんだな?」
「はい。その育った実は果実でも何でもなく……卵だったのです」
……そういう事か。ここまで話されれば誰でも想像がつく。その卵が孵化して中から魔物が現れたのだろう。
「それで、その卵から現れた魔物は?」
「……神獣です」
……これは僕の想像以上の物が現れたな。神獣なんて伝説上の生物が現れるなんて。確実に女神のクソ女が関わっている。
神獣……名前の通り、神の力を持つ獣の事だ。分類的には魔物に属するが、その強さは普通の魔物と比べ物にならない。そいつが暴れるだけで、大地は割れて、大気は揺れて、全てを破壊する。国なんて一瞬で無くなってしまう。
「そんな化け物が現れたのに、よく国は残っているな」
「はい。現在はそれぞれの長たちが押さえ込んで下さっているお陰で、何とか被害は最小限に抑えられています。しかしそれも……」
「時間の問題って訳か」
しかし、僕がそんなところに行ったところで助けられるとは思わないのだが。だけど、神獣か。殺して配下にしたいな。そうすればかなりの戦力アップになる筈なのだが。そんな事を考えていると
「女王陛下より、倒した暁には死体は譲るとのお言葉も頂いております」
……ここまで先を読まれると女王の力とやらは大体予想がつくな。うーん、どうしよっかな。僕が行って倒せるかはわからないけど、ここで考えるよりかは行った方がいいかな。
「その神獣は何なんだ?」
「はい。大神木より生まれた神獣はフェンリルと呼ばれる雷を操る狼です。大きさは体長10メートルほどで、神速の速さで大地を駆け巡ります。鋭い爪は全てを切り刻み、常に纏っている雷は触れただけで全てを焼き尽くします。それが今回現れた神獣です。そして、その神の力を持つ魔物に対抗出来るのが……」
「……同じ力を持つ僕ってわけか」
僕の言葉に頷くメルダ……というよりもそれすらも女王から聞いていたのだろう。確かに僕の力ならそのフェンリルに対抗出来るかもしれない。まあ、確実では無いけど。
「……ただ、問題は神獣だけでは無いのです」
「は?」
神獣に対してどう対抗しようか考えていたら、メルダが突然そんな事を言い出した。流石の僕も間抜けな声を出してしまう。まだ他にも何かあるのか?
「起きたのは1ヶ月ほど前、突然帝国が宣戦布告無しで攻めてきたのです。数は30万ほど。あまりにも突然な事と、神獣にかかりっきりだった我々は動くのがおそく、兵を集め帝国軍を止めた時は、国の3分の1まで攻め込まれていました」
これは偶然では無いだろう。帝国ほどの大国なら亜人国の中に密偵を忍び込ませるぐらいはできる筈だ。亜人国の戦力が殆ど神獣に向けられている間に利を得ようと攻め込んだのか。
しかし、本当に面倒な事になっているなぁ。行く気になっていた気持ちも萎えたぞ。
でも、今回行っておけば、亜人国に対して強気に出られるし、こちらの兵力をさほど消費する事なく帝国の力を削ぐ事が出来るだろう。
それに戦力も増やす事が出来るだろうし。まあ、全部勝たなければ意味が無いのだけど、行かないと、それすらも無い。
「それで、僕たちが行って問題が解決した場合、亜人国は何をしてくれるんだい?」
「はい。神獣につきましては、先ほど述べました通り死体を全て差し上げます。そのほかの事も解決しましたら、ハルト殿の目的に協力させて頂くと、女王陛下のお言葉です」
ここまで知られていたら、僕の目的も知っているのだろう。それを踏まえてその提案をしてくるのか。益々女王とやらに興味が出て来た。
「わかった。少し話し合うから少し待っていてくれ。明日には答えを出すから」
「わかりました」
これで話し合いは終わったけど……さて、誰を連れて行こうか。ネロは僕の代わりに指示を出してもらうから残ってもらうとして、リーシャは最大戦力だ。連れて行かないと。
それから、マルスには戦場を経験してもらうか……そんな事を言っている僕も、全くなのだけどね。
ミレーヌには悪いけど残ってもらおう。彼女を危ないところには連れて行かないし。よし、そうしよう……何か言われるかなぁ。
僕が誰かを助ける姿なんて全く想像がつかない。ましてや、助ける義理もない亜人族だ。現にリーシャは腹を抱えて大笑いしてやがる。後でその頭を使ってボール遊びでもしてやる。
「まずは現在の私たちの国の現状についてお話しします。私たちの国には、女神フィストリア様が創られたと言われる『大神木』と言われるものがあります」
大神木ね。見たらなぎ倒したくなるかも。女神が創ったと言われたら余計に。
「その大神木のおかげで、根元には様々な薬草が育ち、絶えることのない水が湧き出て、沢山の作物が育っています。しかし、問題が数ヶ月前から起き始めました」
「問題?」
「はい。突然大神木が実を付け始めたのです」
……それのどこが問題なんだ? 木なんだから実ぐらいつけるだろう? そう思って周りを見ていたら、亜人国の連中は皆が忌々しそうな表情を浮かべている。メルダも同じような表情を浮かべ話を進める。
「ハルト殿の考えている事はわかります。その実が害がない物であればそう考えるのですが……」
「問題があるんだな?」
「はい。その育った実は果実でも何でもなく……卵だったのです」
……そういう事か。ここまで話されれば誰でも想像がつく。その卵が孵化して中から魔物が現れたのだろう。
「それで、その卵から現れた魔物は?」
「……神獣です」
……これは僕の想像以上の物が現れたな。神獣なんて伝説上の生物が現れるなんて。確実に女神のクソ女が関わっている。
神獣……名前の通り、神の力を持つ獣の事だ。分類的には魔物に属するが、その強さは普通の魔物と比べ物にならない。そいつが暴れるだけで、大地は割れて、大気は揺れて、全てを破壊する。国なんて一瞬で無くなってしまう。
「そんな化け物が現れたのに、よく国は残っているな」
「はい。現在はそれぞれの長たちが押さえ込んで下さっているお陰で、何とか被害は最小限に抑えられています。しかしそれも……」
「時間の問題って訳か」
しかし、僕がそんなところに行ったところで助けられるとは思わないのだが。だけど、神獣か。殺して配下にしたいな。そうすればかなりの戦力アップになる筈なのだが。そんな事を考えていると
「女王陛下より、倒した暁には死体は譲るとのお言葉も頂いております」
……ここまで先を読まれると女王の力とやらは大体予想がつくな。うーん、どうしよっかな。僕が行って倒せるかはわからないけど、ここで考えるよりかは行った方がいいかな。
「その神獣は何なんだ?」
「はい。大神木より生まれた神獣はフェンリルと呼ばれる雷を操る狼です。大きさは体長10メートルほどで、神速の速さで大地を駆け巡ります。鋭い爪は全てを切り刻み、常に纏っている雷は触れただけで全てを焼き尽くします。それが今回現れた神獣です。そして、その神の力を持つ魔物に対抗出来るのが……」
「……同じ力を持つ僕ってわけか」
僕の言葉に頷くメルダ……というよりもそれすらも女王から聞いていたのだろう。確かに僕の力ならそのフェンリルに対抗出来るかもしれない。まあ、確実では無いけど。
「……ただ、問題は神獣だけでは無いのです」
「は?」
神獣に対してどう対抗しようか考えていたら、メルダが突然そんな事を言い出した。流石の僕も間抜けな声を出してしまう。まだ他にも何かあるのか?
「起きたのは1ヶ月ほど前、突然帝国が宣戦布告無しで攻めてきたのです。数は30万ほど。あまりにも突然な事と、神獣にかかりっきりだった我々は動くのがおそく、兵を集め帝国軍を止めた時は、国の3分の1まで攻め込まれていました」
これは偶然では無いだろう。帝国ほどの大国なら亜人国の中に密偵を忍び込ませるぐらいはできる筈だ。亜人国の戦力が殆ど神獣に向けられている間に利を得ようと攻め込んだのか。
しかし、本当に面倒な事になっているなぁ。行く気になっていた気持ちも萎えたぞ。
でも、今回行っておけば、亜人国に対して強気に出られるし、こちらの兵力をさほど消費する事なく帝国の力を削ぐ事が出来るだろう。
それに戦力も増やす事が出来るだろうし。まあ、全部勝たなければ意味が無いのだけど、行かないと、それすらも無い。
「それで、僕たちが行って問題が解決した場合、亜人国は何をしてくれるんだい?」
「はい。神獣につきましては、先ほど述べました通り死体を全て差し上げます。そのほかの事も解決しましたら、ハルト殿の目的に協力させて頂くと、女王陛下のお言葉です」
ここまで知られていたら、僕の目的も知っているのだろう。それを踏まえてその提案をしてくるのか。益々女王とやらに興味が出て来た。
「わかった。少し話し合うから少し待っていてくれ。明日には答えを出すから」
「わかりました」
これで話し合いは終わったけど……さて、誰を連れて行こうか。ネロは僕の代わりに指示を出してもらうから残ってもらうとして、リーシャは最大戦力だ。連れて行かないと。
それから、マルスには戦場を経験してもらうか……そんな事を言っている僕も、全くなのだけどね。
ミレーヌには悪いけど残ってもらおう。彼女を危ないところには連れて行かないし。よし、そうしよう……何か言われるかなぁ。
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