世界に復讐を誓った少年

やま

57.来客の目的

 玉座の間にいる亜人国からの来客は全員で7人。


 耳が長くて金髪の男が2人に、女が1人。


 身長が僕の胸元ぐらいしか無い髭面の男が2人。


 人間のような姿をしているが、所々に鱗があり、大きな尻尾を持つ男が1人。


 髭面の男たちよりはるかに小さく、身長が40センチほどしか無く、背に羽が生えている女が1人の計7人だ。


 上からエルフ族、ドワーフ族、ドラゴニュート族、フェアリー族といった亜人族だ。


 エルフ族は森の狩人と呼ばれるほどで、魔法と弓術が得意な者が多い。耳が長いくて美男美女が多いのが特徴である。


 ドワーフ族は力自慢が多い。身長は全員が子供程の大きさで止まってしまうが、子供から大人までとんでもない力を持っている。人間など片手で軽々と持ち上げる事が出来るらしい。


 ドラゴニュート族は竜族と人間の間に生まれた竜族の子孫だと言われている。全体的な能力が高く、魔法耐性も竜顔負けに高いため、彼らの中には傭兵として大陸を歩く者もいるみたい。


 最後にフェアリー族だが、魔法がエルフ以上に得意だ。その気になれば10人ほどで国なんか普通に落とせるほどに。それをしないのは、体に合わせて魔力の量が少ないからだ。そのかわり普通の人間に比べて魔力の回復量が早いため、普通に放つ分には問題が無いらしい。


 そんな集団が突然入って来た僕たちをジロジロと見てくる。僕は歩きながら被っていたローブを下ろしてフィアの元まで行く。


 フィアは僕が玉座まで近づくと席を立ち横へとずれる。僕が玉座に座るまで頭を下げている。これが彼女なりの忠誠なのだろう。


 普通の時は、僕が隠れてここに来てもこんな風に玉座に来たりはしないのだが、今はもう僕の事がバレている。わざわざ隠す必要もないだろう。


 彼女は女王になってからは、前ほど僕に強く当たる事も無くなった。名前の呼び方は変わらないけど、それでも、かなり角が取れたって言うのかな。優しくなった。


 夜はまだやっていないけど、偶に一緒に寝ることはある。シテないのは彼女が僕と一緒に寝る時はいつも夢で魘される時だからだ。


 どうも、彼女は夢の中で殺した父親や大臣たちに責め立てられる夢を見ているらしい。これは精神的なものだろう。自身の手で父親を殺した事に対する罪悪感が彼女を悩ませている。


 その事を彼女についている影に聞いてからは、彼女が魘されている時は僕を呼ぶようにしている。そして彼女の手を握りながら眠るのがこの半年の間の日課になった。


 初めは朝起きたら僕がいたので、驚いて蹴り飛ばされた事もあったが、最近は慣れて来たのか驚く事はなくなったが。


 勿論ミレーヌの事は忘れていない。フィアが魘された次の日は、僕が一緒に眠ったおかげか魘される事はほとんど無いので、その日はミレーヌとの日にしている。


 自然と2日に1回の交互になったのは偶然だ。その分1日を濃くしているので、ミレーヌもそれで満足してくれている。


 そんな事を考えながら僕は玉座に座る。うわぁ、硬い。見栄えを良くするためか金銀を多く使われているため、かなり硬く座りにくい。よくこんな硬い椅子にフィアは座れるなぁ。今度背中のマッサージをしてあげよう。


 ……よし、そろそろ本題に入るか。突然玉座に座った僕を見て訝しげに見てくる亜人たち。中には敵意を向けて来る者、まあ。エルフの男2人なのだが。何故か敵意の込めた目で僕を見て来る。腹が立つので殺してやろうか? だけどその前に


「「がっ!?」」


 エルフの男2人がドラゴニュート族の男に頭を掴まれ床に叩きつけられた。その行動に驚いたのは1番前に立っていたエルフな女と、そのエルフの女の肩に乗るフェアリー族の女だけだった。


 ドワーフ族の男2人も直ぐに動ける体勢を取っていたので、ドラゴニュート族の男が動かなければ、代わりに動いていただろう。


 それと反対にエルフ族の女やフェアリー族の女は、戦闘面ではあまり良くないらしい。あの2人の殺気に気がつかないのだから。


「ど、どうしたのですか、アルーグ。2人を叩きつけるなんて!」


「メルダ。この2人は我々がここに来た理由であるハルト殿に殺気を放っていた。下手すれば我々全員が殺されるところだったのだ。ハルト殿、どうかお許しを」


 エルフ族の女、メルダと呼ばれた女はドラゴニュート族の男、アルーグの言葉に驚いていたが、アルーグとドワーフ族の男2人が頭を下げるのを見て、慌ててメルダも頭を下げる。


「別に構わないよ、君たちの方でしっかりとやってくれるのなら。ただ、次は無いから」


 僕の言葉に頷くメルダたち。軽く殺気を放っているのも効いているのかもしれない。


「それで君たちがここに来た理由は? それからどうして僕の事を知っているのかも教えて貰いたい」


 僕の言葉に反応したのが、やはり1番前にいるエルフの女や、メルダだった。彼女がこのメンバーの中のリーダーのような役割をやっているようだ。


「はい。まずは自己紹介をさせていただきます。私は亜人国であるメルキューア王国の第2王女になります、メルダ・メルキューアと申します。肩に乗るフェアリー族はスノ、ドラゴニュート族の男はアルーグ、ドワーフ族の2人は、セイゲンとタルドルです。そして、ハルト殿にご無礼を働きました2人は……」


「ああ、その2人は良いよ。覚える気は無いから」


「か、かしこまりました。それで、今回我々がこの国にやって来た理由は、ハルト殿、あなたに助けを求めてなのです」


 僕に助けをねぇ。どうしてそういう話になったのかは知らないけどまずは


「それで僕を知っている理由は?」


「あ、はい。私たちがこの国に来た理由とハルト殿を知っている理由は、母にあるのです。私の母はメルキューア王国の女王であります、エレフレール・メルキューア女王陛下の命で我々は来たのですが、女王陛下にはとある力があります。その力でハルト殿の事を知る事が出来ました」


「とある力? それは?」


「……申し訳ありません。今ここで話す事は出来ません。ただ、ハルト殿に害を及ぼすような事は絶対にない事は誓えます」


 ふむ、嘘を言っているようには見えないから何か言わないように縛られているのかな? 僕の事を知っている理由について聞こうと思ったら直接女王とやらに会わないといけないのか。


 うーん、会わないわけにはいかないよな。どのような力なのかはわからないけど、隠れている僕を見つけ出す事が出来る能力だ。何かしら対策を立てないと多分後々面倒になると思う。


 それに丁度別の国に行こうと思っていたところだ。亜人が住む国も少し興味があるし。取り敢えず、彼女らがここに来た理由を聞くか。


「それでここに来た理由は?」


「はい、ここに来た理由は、我が国の救世主であります、ハルト殿をお迎えに来たのです! どうか我が国をお助け下さい!」


 ……救世主ねぇ。意味がわからないよ。

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