世界に復讐を誓った少年
47.とある家族の話(5)
「ななな、何だお前は!?」
汚い声で叫ぶ男。ベッドの上で今にも服を脱ごうとしていた男は、俺の大切なティエラに馬乗りになっていた。あいつはあの時教会にいた野郎じゃねえか。
ティエラは俺を見て驚いていたが、次第に泣きそうな表情を浮かべる。よかった。まだ、何もされていないようだ。
「どうしてお前がここに」
そして、剣に手をかけるダル。自分の主人である貴族の野郎を守ろうと剣を抜く。貴族の野郎は歩けないティエラを無理矢理引っ張ってベッドから引きづり落とした。あの野郎、今すぐにでも殺してやりたい。だけど、それよりもダルをどうにかしないと。
「あっ、マルス君、こんなところにいましたか。あまり先に行かないでください」
そうダルを睨んでいると、俺が開けた扉の方から散歩するかのように金髪の女性、ミレーヌさんが部屋へと入って来た。そして怒られた。そのミレーヌさんの隣には俺の主人となったローブを着た同年代くらいの男、ハルト様もいる。
そんな急いだつもりは無いんだが。それに、どうしてそんな睨んでくるんだよ、ティエラ。怖いよ。
突然現れた金髪の美女に俺たちと同年代くらいの男にダルや貴族の野郎はポカーンと固まってしまう。しかし、次第に現れたのが女性という事で空気が緩むのがわかった。
「ふん、誰かと思えば小僧が2人に女か。しかもその女はかなりの美女だ。ダル、男は殺せ。女はこいつと一緒に遊んでやる!」
貴族の野郎がミレーヌさんを見て醜く笑う。普通に気持ちが悪い。ティエラ、こんな奴と数日も一緒にいたのか。
しかし、俺以上に気持ちの悪い貴族の野郎に対して怒っている人がいた。それは
「おい、豚。気持ちの悪い視線をミレーヌに向けるんじゃねえ! 僕の大切なミレーヌが穢れるだろうが!」
ハルト様がキレてた。一気に押し潰されるんじゃないかと思うほどの圧迫感が押し寄せて来る。直接当てられていない俺でもこうなのだから、貴族の野郎は……うわぁ、気を失う事も出来ずにガタガタと震えていた。
ダルの奴も全く動かずに呼吸すら怪しくなっていた。ハルト様はその2人を無視して固まるティエラの方への歩いて行く。そして、ティエラを優しく抱き抱えてベッドへと座らせる。
「ティエラだったな。君に選択肢をやる。これはあそこにいるマルスにも言った事で彼は受け入れた。僕の配下となって世界に喧嘩を売るか。それとも、このままこの豚と共に生きるか。どちらかを選べ」
この状況でそんな事を尋ねられたら、もう言う言葉は決まって来るだろう。ティエラはベッドの上で佇まいを正してハルト様に頭を下げる。
「私ティエラは主人様に忠誠を誓います」
「うん、僕の配下にいる限りはもうマルスと君を別れさせたりしないから。それから僕の名前はハルトだからよろしく。ほら、マルス、彼女をエスコートしなきゃ」
「あ、はい!」
……いやー、びっくりした。さっきまで物凄い覇気を出していたハルト様があんな優しい顔をするなんて。俺はハルト様に言われるままティエラの元まで向かう。なんか恥ずかしいけど、俺はティエラをお姫様抱っこする。
ティエラは恥ずかしそうな表情を浮かべながらも俺の首に手を回して来る。
「ティエラ、もう、お前に辛い思いはさせない。絶対にお前の手を離さないから」
「ええ、もう離さないでね。私もしっかりと握るから」
普段なら恥ずかしくなりそうな言葉も、一度離れ離れになって、彼女の大切さを再度確認した俺には、もうそんな事は感じない。俺はティエラと見つめ合いながらそのまま……
「お、お前たち、わ、私の奴隷に何をしている!!」
……こいつの事忘れていた。いくら、ティエラを助けられたからと言ってもまだ終わってなかった。
「ダル! 何を見ている! さっさとこやつらを殺せ! それに兵士たちは何をしているのだ! 何故これほど騒いでいるのに誰も来ないのだ!」
「ん? 兵士に来て欲しいのか?」
喚く貴族の言葉に反応するハルト様。そして、ハルト様が指を鳴らすと、廊下を走る足音が屋敷中に響く。その音は次第にこの部屋へと近づいて来た。不安そうに腕に力を入れてくるティエラ。
そして部屋に入って来たのは
「アアァァアァァッ!」
「ウウゥアアアア!」
姿が変わった兵士たちだった。俺たちは……というよりハルト様がこの屋敷に真正面から入って行ったため、当然兵士たちに襲われた。だけど、襲って来た兵士たち全てをハルト様とミレーヌさんが倒してしまって、ハルト様の力でゾンビにしてしまったのだ。
そして、ハルト様はそのまま貴族の野郎の元へと行く。貴族の野郎は動く事が出来ずにハルト様を見上げるだけ。ハルト様はそいつの頭に手を置き、魔法……いや、魔術を唱えた。
「……な、何を」
「何をされたか自分の身で体験するといい」
ハルト様はそう言うと貴族の野郎をゾンビたちの方へと放り投げる。床に叩きつけられた貴族の野郎は、体を起こす前にゾンビたちに押さえつけられる。そして
貴族の野郎の右腕をゾンビが掴んでそのまま
「あぁ……あぁあああ!! 手がぁぁぁぁああ!! 私の手がぁぁぁあ!」
俺は咄嗟にティエラの目を隠す。だけど、ティエラに手を押し退けられた。自分の目で最後まで見るそうだ。
少しずつだけど、身体中を齧られて行く貴族の野郎。その光景を見て叫んでいたが、次第に表情が変わっていく。
「なな、何故痛くない!? これだけ齧られているのどうして!?」
「それは、僕の魔術で君の痛覚を一時的に鈍くしたんだ。僕の配下に手を出した罰だ。死ぬまで自分の体が食べられていくのを見ているといいよ。あ、因みにそう簡単に死なないように、重要な器官は食べないように指示を出しているから」
ハルト様はそう言いながら、俺たちの方へとやって来た。もう、貴族の野郎には興味が無いようだ。
「それじゃあ、マルス。お前は自分の決着をつけるんだ。さっき話した通り、適正があるのなら使えるはずだ」
「……わかりました」
俺はここに来る前にハルト様から貰った剣を抜く。そしてダルを見る。
「……何のつもりだ、マルス」
「決まっているだろ? お前だけは俺が……殺す!」
これが、俺とティエラを配下にしてもらう条件。だけど、それだけじゃ無い。俺の大切な家族を傷付けたお前を絶対に許さない!
汚い声で叫ぶ男。ベッドの上で今にも服を脱ごうとしていた男は、俺の大切なティエラに馬乗りになっていた。あいつはあの時教会にいた野郎じゃねえか。
ティエラは俺を見て驚いていたが、次第に泣きそうな表情を浮かべる。よかった。まだ、何もされていないようだ。
「どうしてお前がここに」
そして、剣に手をかけるダル。自分の主人である貴族の野郎を守ろうと剣を抜く。貴族の野郎は歩けないティエラを無理矢理引っ張ってベッドから引きづり落とした。あの野郎、今すぐにでも殺してやりたい。だけど、それよりもダルをどうにかしないと。
「あっ、マルス君、こんなところにいましたか。あまり先に行かないでください」
そうダルを睨んでいると、俺が開けた扉の方から散歩するかのように金髪の女性、ミレーヌさんが部屋へと入って来た。そして怒られた。そのミレーヌさんの隣には俺の主人となったローブを着た同年代くらいの男、ハルト様もいる。
そんな急いだつもりは無いんだが。それに、どうしてそんな睨んでくるんだよ、ティエラ。怖いよ。
突然現れた金髪の美女に俺たちと同年代くらいの男にダルや貴族の野郎はポカーンと固まってしまう。しかし、次第に現れたのが女性という事で空気が緩むのがわかった。
「ふん、誰かと思えば小僧が2人に女か。しかもその女はかなりの美女だ。ダル、男は殺せ。女はこいつと一緒に遊んでやる!」
貴族の野郎がミレーヌさんを見て醜く笑う。普通に気持ちが悪い。ティエラ、こんな奴と数日も一緒にいたのか。
しかし、俺以上に気持ちの悪い貴族の野郎に対して怒っている人がいた。それは
「おい、豚。気持ちの悪い視線をミレーヌに向けるんじゃねえ! 僕の大切なミレーヌが穢れるだろうが!」
ハルト様がキレてた。一気に押し潰されるんじゃないかと思うほどの圧迫感が押し寄せて来る。直接当てられていない俺でもこうなのだから、貴族の野郎は……うわぁ、気を失う事も出来ずにガタガタと震えていた。
ダルの奴も全く動かずに呼吸すら怪しくなっていた。ハルト様はその2人を無視して固まるティエラの方への歩いて行く。そして、ティエラを優しく抱き抱えてベッドへと座らせる。
「ティエラだったな。君に選択肢をやる。これはあそこにいるマルスにも言った事で彼は受け入れた。僕の配下となって世界に喧嘩を売るか。それとも、このままこの豚と共に生きるか。どちらかを選べ」
この状況でそんな事を尋ねられたら、もう言う言葉は決まって来るだろう。ティエラはベッドの上で佇まいを正してハルト様に頭を下げる。
「私ティエラは主人様に忠誠を誓います」
「うん、僕の配下にいる限りはもうマルスと君を別れさせたりしないから。それから僕の名前はハルトだからよろしく。ほら、マルス、彼女をエスコートしなきゃ」
「あ、はい!」
……いやー、びっくりした。さっきまで物凄い覇気を出していたハルト様があんな優しい顔をするなんて。俺はハルト様に言われるままティエラの元まで向かう。なんか恥ずかしいけど、俺はティエラをお姫様抱っこする。
ティエラは恥ずかしそうな表情を浮かべながらも俺の首に手を回して来る。
「ティエラ、もう、お前に辛い思いはさせない。絶対にお前の手を離さないから」
「ええ、もう離さないでね。私もしっかりと握るから」
普段なら恥ずかしくなりそうな言葉も、一度離れ離れになって、彼女の大切さを再度確認した俺には、もうそんな事は感じない。俺はティエラと見つめ合いながらそのまま……
「お、お前たち、わ、私の奴隷に何をしている!!」
……こいつの事忘れていた。いくら、ティエラを助けられたからと言ってもまだ終わってなかった。
「ダル! 何を見ている! さっさとこやつらを殺せ! それに兵士たちは何をしているのだ! 何故これほど騒いでいるのに誰も来ないのだ!」
「ん? 兵士に来て欲しいのか?」
喚く貴族の言葉に反応するハルト様。そして、ハルト様が指を鳴らすと、廊下を走る足音が屋敷中に響く。その音は次第にこの部屋へと近づいて来た。不安そうに腕に力を入れてくるティエラ。
そして部屋に入って来たのは
「アアァァアァァッ!」
「ウウゥアアアア!」
姿が変わった兵士たちだった。俺たちは……というよりハルト様がこの屋敷に真正面から入って行ったため、当然兵士たちに襲われた。だけど、襲って来た兵士たち全てをハルト様とミレーヌさんが倒してしまって、ハルト様の力でゾンビにしてしまったのだ。
そして、ハルト様はそのまま貴族の野郎の元へと行く。貴族の野郎は動く事が出来ずにハルト様を見上げるだけ。ハルト様はそいつの頭に手を置き、魔法……いや、魔術を唱えた。
「……な、何を」
「何をされたか自分の身で体験するといい」
ハルト様はそう言うと貴族の野郎をゾンビたちの方へと放り投げる。床に叩きつけられた貴族の野郎は、体を起こす前にゾンビたちに押さえつけられる。そして
貴族の野郎の右腕をゾンビが掴んでそのまま
「あぁ……あぁあああ!! 手がぁぁぁぁああ!! 私の手がぁぁぁあ!」
俺は咄嗟にティエラの目を隠す。だけど、ティエラに手を押し退けられた。自分の目で最後まで見るそうだ。
少しずつだけど、身体中を齧られて行く貴族の野郎。その光景を見て叫んでいたが、次第に表情が変わっていく。
「なな、何故痛くない!? これだけ齧られているのどうして!?」
「それは、僕の魔術で君の痛覚を一時的に鈍くしたんだ。僕の配下に手を出した罰だ。死ぬまで自分の体が食べられていくのを見ているといいよ。あ、因みにそう簡単に死なないように、重要な器官は食べないように指示を出しているから」
ハルト様はそう言いながら、俺たちの方へとやって来た。もう、貴族の野郎には興味が無いようだ。
「それじゃあ、マルス。お前は自分の決着をつけるんだ。さっき話した通り、適正があるのなら使えるはずだ」
「……わかりました」
俺はここに来る前にハルト様から貰った剣を抜く。そしてダルを見る。
「……何のつもりだ、マルス」
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