世界に復讐を誓った少年
43.とある家族の話(1)
「はっ、はっ、はっ」
「ちっ、クソガキが! 待ちやがれ!」
誰が待つかよ! そんな事をすれば殺されるじゃねえか! 俺は約束のところまで走る。後ろから棍棒を持った八百屋の親父が追いかけて来るが、絶対に止まらねえ!
俺は予定していた場所を右に曲がる。頭を下げながら通り抜けて後ろを振り向くと、八百屋の親父が曲がって来た。だけど
「がぁっ!?」
親父の喉元ぐらいの高さでつけられた縄に思いっきり引っかかりやがった。よし! 上手くいったぜ! 勢いよく背中から倒れる親父。そこに
「おらっ! 食らいやがれ!」
「うおっ!? く、臭えっ!! おぇぇええ!」
俺の仲間のダルとピルクが親父の顔めがけて、集めた動物のクソをぶっかけた。八百屋の親父は余りの臭さに悶え苦しんでいる。
「おら、逃げるぞ、マルス!」
「おうっ!」
俺はダルに呼ばれて走り出す。俺は両手に持つ野菜を落とさないように走る。そしてしばらく走ると、ダルが止まる。それに合わせて俺やピルクも止まる。
「かっか、上手くいったじゃねえか、マルス」
「ああ、こんなに持って来れたぜ!」
「すげぇ、マルス兄!」
俺の腕の中にある野菜を見て喜ぶダルとピルク。本当は肉を持って来たかったんだけど、肉屋のババアはずっと包丁を持って立ってやがるからな。無理だった。
「早くみんなのところへ戻ろうぜ!」
ピルクはそう言いながら俺たちの前を走る。さっきまでの場所は表通りから少し外れた道だったが、今は太陽が上手く当たらず、影が出来てジメジメとしている裏道だ。
その道を進むと、1つのボロ屋が姿を現わす。そこが俺たちの家だ。家の前には11歳の俺たちより年の低いガキどもが楽しそうに遊んでやがる。全く気楽な奴らだぜ。
「あっ、ダル兄ちゃんたちだ!」
「お帰り!」
「おかりー!」
それぞれ俺たちに抱きついてくる子供たち。俺たちは全員血が繋がっていない。所謂捨て子って奴だ。俺も何年か前にこの家の前に捨てられていたらしい。理由はわからねえ。親なんて見た事ないし。
その中で俺と同年代なのがダルとピルクともう1人家にいる奴だ。気が付いたら一緒にいた。俺の大切な家族だ。
この家族の中では俺たちが1番年上だ。なぜかというと、俺たちより上の年の奴らはみんな、天啓を貰いに行ってからそのままどこかで雇われて戻って来ないからだ。
俺たちもあと少ししたら天啓があるけど、多分出る事は無いな。理由はあいつがいるからだ。俺はそのあいつに会うために家へと入る。
今にも壊れそうな扉を開けて中へと入ると、中には俺より1つ、2つ下の子供であるミントとティグル、エマがいた。そして奥で椅子に座って編み物をしている紺色をした髪を持つ女子。彼女が俺たちと同じ同年代の奴だ。
「ただいま、ティエラ」
「あら、今日は早かったのね」
俺はそのまま真っ直ぐティエラの元に向かい隣に椅子を並べる。彼女は昔から歩く事が出来ない。理由はわからないが足が動かないらしい。そのせいで親から捨てられたんじゃないかって彼女は言う。
「ああ、早くティエラに会いたかったからな」
俺がそう言うと思いっきり頭を叩いてくるティエラ。痛えじゃねえか。
「もう、馬鹿な事言っていないで、その野菜置いて来なさいな。あなたたちが買って来てくれたのでしょ?」
そう尋ねてくるティエラ。ここにいるみんなは俺たちがどのようにして食べ物を取って来ているかは知らない。いや、一生知らなくていい。こんな汚れ仕事をするのは俺たちだけでいいからな。だから、俺は曖昧に頷く。ティエラがじーっと見てくるが、気にせず小さな台所へと運ぶ。
料理が出来るミントたちに野菜を渡していると、ダルたちも家へと入って来た。
「ただいま、みんな、ティエラ」
「ただいまっ!」
「ふふっ、お帰りなさい、みんな」
外で遊んでいたガキたちが一斉に中に入って来て、家の中が一気に賑やかになる。家の中でも賑やかなガキたちを見て、楽しそうに微笑むティエラ。俺はそのティエラの横顔に見惚れてぼーっとしていると
「あら、どうしたの? 私の顔をそんなに見て」
「……なんでもねえよ」
俺は少し恥ずかしくなってそっぽを向くと、くすくすと笑ってくるティエラ。なんか腹立つ。
「ほら、みんな〜、お外で遊んで来たんだから手を洗って〜」
俺たちの中で唯一魔法が使えるエマが桶に水を入れてくれる。ガキどもは楽しそうに水をバチャバチャと……あいつら、床がビショビショじゃねえか。
仕方なく俺がびしょ濡れの床を片付けていると、いつの間にか夕食が出来ていた。夕食といっても俺たちがとって来た野菜が入った味の薄いスープとカビた黒パンだけだ。まあ、それでも十分なのだが。
俺はティエラの椅子を押してあげる。椅子には大きな車輪が2つと小さな車輪が椅子の脚についており、魔力を流すと車輪が回るようになっている魔道具だ。
これは、この裏街で悪どく商売やっている魔道具屋のババアに作ってもらった。金は……内緒だ。
みんなでワイワイと喋りながら夕食は終えていく。天啓までは後半年、少しでもマシな職業を手に入れてこいつらをもう少しマシな暮らしをさせてやりたいな。
何より、ティエラをもっと明るいところで生活してほしい。彼女のためなら俺は頑張れるし。
だけど、この暮らしが崩れるが近づいているのに俺は気付かなかった。
「ちっ、クソガキが! 待ちやがれ!」
誰が待つかよ! そんな事をすれば殺されるじゃねえか! 俺は約束のところまで走る。後ろから棍棒を持った八百屋の親父が追いかけて来るが、絶対に止まらねえ!
俺は予定していた場所を右に曲がる。頭を下げながら通り抜けて後ろを振り向くと、八百屋の親父が曲がって来た。だけど
「がぁっ!?」
親父の喉元ぐらいの高さでつけられた縄に思いっきり引っかかりやがった。よし! 上手くいったぜ! 勢いよく背中から倒れる親父。そこに
「おらっ! 食らいやがれ!」
「うおっ!? く、臭えっ!! おぇぇええ!」
俺の仲間のダルとピルクが親父の顔めがけて、集めた動物のクソをぶっかけた。八百屋の親父は余りの臭さに悶え苦しんでいる。
「おら、逃げるぞ、マルス!」
「おうっ!」
俺はダルに呼ばれて走り出す。俺は両手に持つ野菜を落とさないように走る。そしてしばらく走ると、ダルが止まる。それに合わせて俺やピルクも止まる。
「かっか、上手くいったじゃねえか、マルス」
「ああ、こんなに持って来れたぜ!」
「すげぇ、マルス兄!」
俺の腕の中にある野菜を見て喜ぶダルとピルク。本当は肉を持って来たかったんだけど、肉屋のババアはずっと包丁を持って立ってやがるからな。無理だった。
「早くみんなのところへ戻ろうぜ!」
ピルクはそう言いながら俺たちの前を走る。さっきまでの場所は表通りから少し外れた道だったが、今は太陽が上手く当たらず、影が出来てジメジメとしている裏道だ。
その道を進むと、1つのボロ屋が姿を現わす。そこが俺たちの家だ。家の前には11歳の俺たちより年の低いガキどもが楽しそうに遊んでやがる。全く気楽な奴らだぜ。
「あっ、ダル兄ちゃんたちだ!」
「お帰り!」
「おかりー!」
それぞれ俺たちに抱きついてくる子供たち。俺たちは全員血が繋がっていない。所謂捨て子って奴だ。俺も何年か前にこの家の前に捨てられていたらしい。理由はわからねえ。親なんて見た事ないし。
その中で俺と同年代なのがダルとピルクともう1人家にいる奴だ。気が付いたら一緒にいた。俺の大切な家族だ。
この家族の中では俺たちが1番年上だ。なぜかというと、俺たちより上の年の奴らはみんな、天啓を貰いに行ってからそのままどこかで雇われて戻って来ないからだ。
俺たちもあと少ししたら天啓があるけど、多分出る事は無いな。理由はあいつがいるからだ。俺はそのあいつに会うために家へと入る。
今にも壊れそうな扉を開けて中へと入ると、中には俺より1つ、2つ下の子供であるミントとティグル、エマがいた。そして奥で椅子に座って編み物をしている紺色をした髪を持つ女子。彼女が俺たちと同じ同年代の奴だ。
「ただいま、ティエラ」
「あら、今日は早かったのね」
俺はそのまま真っ直ぐティエラの元に向かい隣に椅子を並べる。彼女は昔から歩く事が出来ない。理由はわからないが足が動かないらしい。そのせいで親から捨てられたんじゃないかって彼女は言う。
「ああ、早くティエラに会いたかったからな」
俺がそう言うと思いっきり頭を叩いてくるティエラ。痛えじゃねえか。
「もう、馬鹿な事言っていないで、その野菜置いて来なさいな。あなたたちが買って来てくれたのでしょ?」
そう尋ねてくるティエラ。ここにいるみんなは俺たちがどのようにして食べ物を取って来ているかは知らない。いや、一生知らなくていい。こんな汚れ仕事をするのは俺たちだけでいいからな。だから、俺は曖昧に頷く。ティエラがじーっと見てくるが、気にせず小さな台所へと運ぶ。
料理が出来るミントたちに野菜を渡していると、ダルたちも家へと入って来た。
「ただいま、みんな、ティエラ」
「ただいまっ!」
「ふふっ、お帰りなさい、みんな」
外で遊んでいたガキたちが一斉に中に入って来て、家の中が一気に賑やかになる。家の中でも賑やかなガキたちを見て、楽しそうに微笑むティエラ。俺はそのティエラの横顔に見惚れてぼーっとしていると
「あら、どうしたの? 私の顔をそんなに見て」
「……なんでもねえよ」
俺は少し恥ずかしくなってそっぽを向くと、くすくすと笑ってくるティエラ。なんか腹立つ。
「ほら、みんな〜、お外で遊んで来たんだから手を洗って〜」
俺たちの中で唯一魔法が使えるエマが桶に水を入れてくれる。ガキどもは楽しそうに水をバチャバチャと……あいつら、床がビショビショじゃねえか。
仕方なく俺がびしょ濡れの床を片付けていると、いつの間にか夕食が出来ていた。夕食といっても俺たちがとって来た野菜が入った味の薄いスープとカビた黒パンだけだ。まあ、それでも十分なのだが。
俺はティエラの椅子を押してあげる。椅子には大きな車輪が2つと小さな車輪が椅子の脚についており、魔力を流すと車輪が回るようになっている魔道具だ。
これは、この裏街で悪どく商売やっている魔道具屋のババアに作ってもらった。金は……内緒だ。
みんなでワイワイと喋りながら夕食は終えていく。天啓までは後半年、少しでもマシな職業を手に入れてこいつらをもう少しマシな暮らしをさせてやりたいな。
何より、ティエラをもっと明るいところで生活してほしい。彼女のためなら俺は頑張れるし。
だけど、この暮らしが崩れるが近づいているのに俺は気付かなかった。
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コメント
ノベルバユーザー240181
話を一つにして欲しいごちゃごちゃでよくわからない