世界に復讐を誓った少年
42.約束事
「彼女は僕の所有物だけど、何か用かな?」
僕のフィアの腕を掴む男。この男が誰でフィアとどのような関係にあるのかも知っているけど、僕の物であるフィアに、僕以外の男が触れているのはなんか腹立つね。僕ってこんなに物に対する独占欲強かったっけ?
「所有物だと? 姉上を所有物扱いするのか!」
「ん? 何かおかしな事は言ったか? 奴隷は所有者の物として扱われる筈だ。そうだよね、ミレーヌ?」
「はい、その通りです。羨ましいです」
こら、ミレーヌ。今はそんな事は聞いていない。それに、縛ってなくてもミレーヌはもう僕の物だ。誰にも渡さないから。
「なら、いくら払えばいい? 姉上が奴隷だというのなら私が買おう。君の言い値で良い」
僕は彼の言葉に思わず笑ってしまった。何を言っているんだこいつは。そもそも前提が間違っているよ。
「……何がおかしい?」
「くくっ、おかしいも何も、王太子がこんなに間抜けで良いのかなって思ってさ」
「何?」
「だってそうでしょ? この国は僕たちとの戦争で負けた敗戦国だ。そして彼女は民を殺されないための人質となっているのに……金を払うから解放しろ? そもそも、負けた国の王太子である君に交渉する権利など無い。それに、彼女が頭を下げてまで守った国を潰しても良いの?」
「……何だと?」
王太子はあまり聞かされてないのか、それとも理解が悪いのか。どちらにせよ、そろそろ手を離せよ。僕はフィアの空いている左手を掴んで引き寄せる。
「きゃあっ!」
そして、腰を抱き寄せて自分の物だとアピールする。フィアも今の状況で僕を押し返したりするのはマズイと思っているのか、腕の中で固まったままだ。
はい、ミレーヌ。羨ましいとか言わないの。いつもやってあげてるでしょうが。
「っ! きさ……」
「やめろ、ヘンリル!」
僕の行動に限界が来たのか腰の剣に手を掛けて抜こうとする王太子。でも流石にそれは見過ごせなかったのか怒鳴り声を上げるフィア。おっ、フィアの声で動きが止まった。
「お前は何を考えているのだ! 私たちは負けたのだ! それなのに生かしてもらっているのはハルト……ハルト様の温情のお陰だぞ! それなのにお前はハルト様に刃を向けようとして!」
「し、しかし、姉上。このままでは姉上が」
うーん、このまま兄弟喧嘩を見るのもなー。よし。
「それなら、王太子が今ここで僕に勝ったら彼女を開放してあげるよ」
「本当か!?」
「ああ、勿論約束は守るよ」
僕の言葉を聞いた王太子はやる気満々だ。僕から少し離れて行き剣や防具を確かめている。その隣にいる従者は心配そうにしているけど。
「ハルト、何が目的だ? この戦いはお前にとって何の利も無いのだぞ?」
「ん? それは2つあってね。1つはあいつを黙らせる事が出来る。ああ、殺さないから安心してね。もう1つは刃向かった時の約束を国王に守ってもらうだけだから」
僕の言葉に顔を青ざめさせるフィア。そして王太子を止めようとするが、ミレーヌが後ろから動かないように抱き締める。悪いけどもう手遅れだよ。
「さあ、いつでも来ると良い」
「武器は持たないのか?」
「僕は武器はあまり持たないんだ」
僕がそう言うと、王太子は剣を抜いて構える。うん、中々堂の入った立ち姿だ。だけど、リーシャほどじゃ無いね。
「行くぞ!」
そして走り出す王太子。やっぱりリーシャほどじゃ無いから遅いね。毎日彼女と訓練している僕としては物足りないな。
「はっ!」
袈裟切りに振る王太子の剣をひらりと避けて、襟元を掴む。そしてそのまま掴み上げ廊下の壁へと叩き付ける。ドガァン、と壁を突き破って吹き飛ぶ王太子。瓦礫に埋まってピクリとも動かない。気を失ったようだ。
「さて、彼を連れて国王のところへ行こうか。君が王太子を連れて来てくれる?」
僕は王太子の従者にお願いする。彼は頷き瓦礫の中から助け出した王太子を背負い僕たちの後をついて来る。
「ハルト、どうか私が身代わりになるから民を殺すのはやめてくれないだろうか?」
「それは無理だ。僕は前もって国王や大臣たちには言ってある。その事を王太子に伝えておけばこんな事にはなっていないはずだ。それを怠った国王が悪い」
僕の言葉に今にも泣きそうな顔をするフィア。今回ばかりは僕も引けない。もしここで甘くすると、国王たちは大丈夫だと味を占めて同じような事を繰り返すだろう。そうなったら、それこそ国民全員を殺さなければならなくなる。
流石に、僕たちもそこまでは望んでいない。僕たちが生きる上で必要な食材などはどうしても死霊からは作れないからね。
僕たちは国王がいると言われている執務室へと向かう。辿り着いてノックもせずに入ると、目を見開いてこちらを見て来る国王がいた。僕は気にせず中へと入る。
「やあ、国王」
「……ここへは何の用だ。こちらは要望通りにしているはずだが?」
「そうなんだけどね、彼が僕に剣を向けて来たんだ」
僕がそう言うと、申し訳なさそうに前へと出て行く従者。従者を見て王太子を見た国王は頭を抱えたまま椅子にもたれ込んでしまった。
「約束通り国民を僕の配下の餌にするよ。まあ、初めだからね、国王、君がいなくなっても良い家族を1つ選んで来て。期限は夜までね」
僕はそれだけ言うと、執務室から出て行く。付いて来るのはミレーヌだけ。さてと、今からは予定通り近くの国の事を調べるとしようかな。
僕のフィアの腕を掴む男。この男が誰でフィアとどのような関係にあるのかも知っているけど、僕の物であるフィアに、僕以外の男が触れているのはなんか腹立つね。僕ってこんなに物に対する独占欲強かったっけ?
「所有物だと? 姉上を所有物扱いするのか!」
「ん? 何かおかしな事は言ったか? 奴隷は所有者の物として扱われる筈だ。そうだよね、ミレーヌ?」
「はい、その通りです。羨ましいです」
こら、ミレーヌ。今はそんな事は聞いていない。それに、縛ってなくてもミレーヌはもう僕の物だ。誰にも渡さないから。
「なら、いくら払えばいい? 姉上が奴隷だというのなら私が買おう。君の言い値で良い」
僕は彼の言葉に思わず笑ってしまった。何を言っているんだこいつは。そもそも前提が間違っているよ。
「……何がおかしい?」
「くくっ、おかしいも何も、王太子がこんなに間抜けで良いのかなって思ってさ」
「何?」
「だってそうでしょ? この国は僕たちとの戦争で負けた敗戦国だ。そして彼女は民を殺されないための人質となっているのに……金を払うから解放しろ? そもそも、負けた国の王太子である君に交渉する権利など無い。それに、彼女が頭を下げてまで守った国を潰しても良いの?」
「……何だと?」
王太子はあまり聞かされてないのか、それとも理解が悪いのか。どちらにせよ、そろそろ手を離せよ。僕はフィアの空いている左手を掴んで引き寄せる。
「きゃあっ!」
そして、腰を抱き寄せて自分の物だとアピールする。フィアも今の状況で僕を押し返したりするのはマズイと思っているのか、腕の中で固まったままだ。
はい、ミレーヌ。羨ましいとか言わないの。いつもやってあげてるでしょうが。
「っ! きさ……」
「やめろ、ヘンリル!」
僕の行動に限界が来たのか腰の剣に手を掛けて抜こうとする王太子。でも流石にそれは見過ごせなかったのか怒鳴り声を上げるフィア。おっ、フィアの声で動きが止まった。
「お前は何を考えているのだ! 私たちは負けたのだ! それなのに生かしてもらっているのはハルト……ハルト様の温情のお陰だぞ! それなのにお前はハルト様に刃を向けようとして!」
「し、しかし、姉上。このままでは姉上が」
うーん、このまま兄弟喧嘩を見るのもなー。よし。
「それなら、王太子が今ここで僕に勝ったら彼女を開放してあげるよ」
「本当か!?」
「ああ、勿論約束は守るよ」
僕の言葉を聞いた王太子はやる気満々だ。僕から少し離れて行き剣や防具を確かめている。その隣にいる従者は心配そうにしているけど。
「ハルト、何が目的だ? この戦いはお前にとって何の利も無いのだぞ?」
「ん? それは2つあってね。1つはあいつを黙らせる事が出来る。ああ、殺さないから安心してね。もう1つは刃向かった時の約束を国王に守ってもらうだけだから」
僕の言葉に顔を青ざめさせるフィア。そして王太子を止めようとするが、ミレーヌが後ろから動かないように抱き締める。悪いけどもう手遅れだよ。
「さあ、いつでも来ると良い」
「武器は持たないのか?」
「僕は武器はあまり持たないんだ」
僕がそう言うと、王太子は剣を抜いて構える。うん、中々堂の入った立ち姿だ。だけど、リーシャほどじゃ無いね。
「行くぞ!」
そして走り出す王太子。やっぱりリーシャほどじゃ無いから遅いね。毎日彼女と訓練している僕としては物足りないな。
「はっ!」
袈裟切りに振る王太子の剣をひらりと避けて、襟元を掴む。そしてそのまま掴み上げ廊下の壁へと叩き付ける。ドガァン、と壁を突き破って吹き飛ぶ王太子。瓦礫に埋まってピクリとも動かない。気を失ったようだ。
「さて、彼を連れて国王のところへ行こうか。君が王太子を連れて来てくれる?」
僕は王太子の従者にお願いする。彼は頷き瓦礫の中から助け出した王太子を背負い僕たちの後をついて来る。
「ハルト、どうか私が身代わりになるから民を殺すのはやめてくれないだろうか?」
「それは無理だ。僕は前もって国王や大臣たちには言ってある。その事を王太子に伝えておけばこんな事にはなっていないはずだ。それを怠った国王が悪い」
僕の言葉に今にも泣きそうな顔をするフィア。今回ばかりは僕も引けない。もしここで甘くすると、国王たちは大丈夫だと味を占めて同じような事を繰り返すだろう。そうなったら、それこそ国民全員を殺さなければならなくなる。
流石に、僕たちもそこまでは望んでいない。僕たちが生きる上で必要な食材などはどうしても死霊からは作れないからね。
僕たちは国王がいると言われている執務室へと向かう。辿り着いてノックもせずに入ると、目を見開いてこちらを見て来る国王がいた。僕は気にせず中へと入る。
「やあ、国王」
「……ここへは何の用だ。こちらは要望通りにしているはずだが?」
「そうなんだけどね、彼が僕に剣を向けて来たんだ」
僕がそう言うと、申し訳なさそうに前へと出て行く従者。従者を見て王太子を見た国王は頭を抱えたまま椅子にもたれ込んでしまった。
「約束通り国民を僕の配下の餌にするよ。まあ、初めだからね、国王、君がいなくなっても良い家族を1つ選んで来て。期限は夜までね」
僕はそれだけ言うと、執務室から出て行く。付いて来るのはミレーヌだけ。さてと、今からは予定通り近くの国の事を調べるとしようかな。
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