世界に復讐を誓った少年
30.内乱勃発
1ヶ月後
「……私の治世は間違っていたのだろうか?」
力無く椅子に座り込み頭を抱える男性。最近金髪に少し白髪が混じると苦笑いをしていた男性だが、今は疲れにより普段以上に歳をとったように見える。男性の名は、メストア7世。このメストア王国の国王である。そして私、ヘンリル・メストアの父だ。
父上がそのようになった原因は手元にある1つの書状のせいだ。毎日午前にやっている会議中に会議室に慌てた兵士が入って来たのが事の発端だった。
本来は国の事を話し合う会議中には、余程の事がない限り入ってくる事は許されないのだが、国の一大事だという事で入ってもらったのだが、その内容がとんでもないものだった。
簡単な話が南部を治める貴族たちによる内乱だった。しかも、我が国の主要産業である漁業を担っている領地全てがその内乱に加わっているのだ。
内乱に加わった貴族は、その南部を含めて20貴族、中には大貴族である侯爵と含まれている。
「陛下よ。この事を同盟国へ相談するべきでは?」
「……ならぬ。内乱が起きたから助けてくれなど、同盟国とはいえ話せば、奴らは遠慮無く兵士を連れて入ってくる。そして、抑えた功績として無理難題を押し付けてくるのが目に見えている。特に我が国唯一の漁業に対する価格などな」
確かに、この国で取れる魚介類の輸出にはかなりの税がかけられている。理由は、塩漬けなどせずに新鮮なまま運ぼうとすると、かなりのコストがかかってしまうからだ。そのため、どうしても商品の価格を高くしなければ、元が取れずに他国に売る利益が無いのだ。
当然、何度も同盟国とはその事で揉めたりしているため、今回頼めば必ずと言っていいほど、その話が浮上するのは目に見えている。
だが、大臣の言う通り、この現状を打破するには同盟国に頼らないと厳しい部分もある。
「……とにかく、同盟国の件は一旦保留だ。将軍よ。直ぐに動かすことの出来る兵士はどのくらいだ?」
「はっ、王都の兵士や周りの貴族の方の兵士を合わせれば1万2千ほどでしょう。1週間もあれば倍近くにはなるとは思います」
「ふむ、将軍は万が一に備えて軍の準備を。宰相よ、首謀者に使者を送るのだ。今ならまだ間に合うと」
「わかりました、陛下」
父上の言葉を最後に大臣たちは対策の為に部屋を出て行く。部屋に残ったのは椅子に深く腰をかけて疲れた表情を浮かべる父上と私だけだ。
「……ヘンリル、お前も準備をするのだ。最悪の場合は戦わなければならぬからな」
「わかっております。ただ、これだけは言っておきたかったのです。父上の治世が間違っていたとは思いません」
私はそれだけ言って部屋を出る。今まで父上が間違った政治をしていたとは全く思えない。民からも人気があり、慕われている父上だ。間違っていればそんな事にはならない。
問題なのはこの意味の無い内乱を引き起こした貴族たちだ。書状にはただ父上が王とは認められない、という事しか書かれていなかった。そんな意味のわからない理由でこのような内乱を引き起こしたのだ。許せるはずが無い。
私はこれからの事を考えながら自室へと戻る。そこには従者であり、幼馴染のユネスが立っていた。
「ヘンリル殿下、お話は聞かれましたか?」
「当然だ。その事で王宮の中は大騒ぎだ。それで状況は?」
「よくはありませんね。内乱を起こした貴族たちの兵士の数が7千ほど。雇われた冒険者を合わせても9千ほどと言われています」
「……勝っても負けても国的には良くはないか」
だが、このまま負けるわけにはいかない。たとえ国力が落ちたとしても、負けるよりは遥かにマシだ。負ければ国そのものがなくなってしまうのに比べれば。
しばらく私とユネスが内乱の事で話し合っていると、扉を叩く音が聞こえる。ユネスが私を見てくるので頷くと、扉を開ける。そして入って来たのは
「聞いたぞ、ヘンリル。今南部の貴族たちが兵を集めていると」
「そうですが、姉上はここで待機ですよ」
「何だと!? なぜ私がここで待機なのだ!?」
私の執務用の机をバンッ! と叩くと女性。赤髪のポニーテールをした女性で私の姉でありこの国第1王女であるアークフィア・メストアだ。
職業は魔法剣士という珍しい職業を持っており、その中でも炎を使った剣術が得意な事から、兵士たちや同盟国からは畏怖を込めて『炎姫』と呼ばれている。
ただ、勉強よりも剣術が大好き、刺繍をするよりも魔法が大好きという男勝りな性格のせいで、私より2歳上の23歳だが、未だに結婚相手が見つからない。ちなみに私はすでに結婚している。
「この国で1番の戦力である姉上をそう簡単に王都から離すわけにはいかないのです。わかるでしょう? それに、今回は魔物などを相手にした殲滅ではありません。的とはいえ同国の民です。そんな彼らを皆燃やし尽くすつもりですか?」
「……むぅ、確かにそうだが」
「姉上はこの王都を守ってください。私は出る事になると思いますが、王都には父上に母上、私の妻もいるのです。そんな中、姉上がいるからこそ私たちは前を向いて戦えるのですから」
私の言葉に渋々だが納得してくれた姉上。出来れば姉上に出てもらう事なくこの戦いが終われば良いのだが。なぜか、そうはならないと何故か考えてしまうのだった。
◇◇◇
「……アークフィア・メストアねぇ」
「はい。この国第1王女で、他国からも『炎姫』と恐れられる方です」
目元にかける眼鏡をくいっと上げるミレーヌ。この国の事についてミレーヌから教えてもらっていると、そんな女性の名前が出て来た。炎が得意か。アンデッドの弱点は火か聖属性だからなぁ。その女性が出て来た際は気を付けないと。
「その女性にはリーシャをぶつけるかもしれない。その時は大丈夫だよね?」
「勿論だとも。ふふっ、今からでもワクワクするな」
んー、不安だがリーシャなら大丈夫だろう。今回初めの方は僕たちはずっと見ているだけ。操っている貴族たちに頑張ってもらわないと。貴族たちを集めて洗脳した意味が無いからね。
今回の戦争は、地盤となる土地を手に入れるのと同時に、一気に手下となるアンデッドの配下を手に入れるのが目的だ。こちらの数を減らさずに逆に死体を増やすために。
上手い事同士討ちしてくれるのが理想だな。まあ、殺すのは兵士だけにしておこう。住民を殺すと、国が回らないからね。そうなったら生活も面倒になるし、何より、美味しい食べ物がないとリーシャがうるさい。
クロノの作品も試して見たいけど、それは余裕があればにしようかな。余裕を持ち過ぎて負けるのが1番嫌だからね。
こっちの兵士がぶつかるのは2日後だ。それまではもう少しミレーヌ先生から周辺諸国について聞こう。僕が知っているのは聖王国と住んでいたところぐらいだからね。
「……私の治世は間違っていたのだろうか?」
力無く椅子に座り込み頭を抱える男性。最近金髪に少し白髪が混じると苦笑いをしていた男性だが、今は疲れにより普段以上に歳をとったように見える。男性の名は、メストア7世。このメストア王国の国王である。そして私、ヘンリル・メストアの父だ。
父上がそのようになった原因は手元にある1つの書状のせいだ。毎日午前にやっている会議中に会議室に慌てた兵士が入って来たのが事の発端だった。
本来は国の事を話し合う会議中には、余程の事がない限り入ってくる事は許されないのだが、国の一大事だという事で入ってもらったのだが、その内容がとんでもないものだった。
簡単な話が南部を治める貴族たちによる内乱だった。しかも、我が国の主要産業である漁業を担っている領地全てがその内乱に加わっているのだ。
内乱に加わった貴族は、その南部を含めて20貴族、中には大貴族である侯爵と含まれている。
「陛下よ。この事を同盟国へ相談するべきでは?」
「……ならぬ。内乱が起きたから助けてくれなど、同盟国とはいえ話せば、奴らは遠慮無く兵士を連れて入ってくる。そして、抑えた功績として無理難題を押し付けてくるのが目に見えている。特に我が国唯一の漁業に対する価格などな」
確かに、この国で取れる魚介類の輸出にはかなりの税がかけられている。理由は、塩漬けなどせずに新鮮なまま運ぼうとすると、かなりのコストがかかってしまうからだ。そのため、どうしても商品の価格を高くしなければ、元が取れずに他国に売る利益が無いのだ。
当然、何度も同盟国とはその事で揉めたりしているため、今回頼めば必ずと言っていいほど、その話が浮上するのは目に見えている。
だが、大臣の言う通り、この現状を打破するには同盟国に頼らないと厳しい部分もある。
「……とにかく、同盟国の件は一旦保留だ。将軍よ。直ぐに動かすことの出来る兵士はどのくらいだ?」
「はっ、王都の兵士や周りの貴族の方の兵士を合わせれば1万2千ほどでしょう。1週間もあれば倍近くにはなるとは思います」
「ふむ、将軍は万が一に備えて軍の準備を。宰相よ、首謀者に使者を送るのだ。今ならまだ間に合うと」
「わかりました、陛下」
父上の言葉を最後に大臣たちは対策の為に部屋を出て行く。部屋に残ったのは椅子に深く腰をかけて疲れた表情を浮かべる父上と私だけだ。
「……ヘンリル、お前も準備をするのだ。最悪の場合は戦わなければならぬからな」
「わかっております。ただ、これだけは言っておきたかったのです。父上の治世が間違っていたとは思いません」
私はそれだけ言って部屋を出る。今まで父上が間違った政治をしていたとは全く思えない。民からも人気があり、慕われている父上だ。間違っていればそんな事にはならない。
問題なのはこの意味の無い内乱を引き起こした貴族たちだ。書状にはただ父上が王とは認められない、という事しか書かれていなかった。そんな意味のわからない理由でこのような内乱を引き起こしたのだ。許せるはずが無い。
私はこれからの事を考えながら自室へと戻る。そこには従者であり、幼馴染のユネスが立っていた。
「ヘンリル殿下、お話は聞かれましたか?」
「当然だ。その事で王宮の中は大騒ぎだ。それで状況は?」
「よくはありませんね。内乱を起こした貴族たちの兵士の数が7千ほど。雇われた冒険者を合わせても9千ほどと言われています」
「……勝っても負けても国的には良くはないか」
だが、このまま負けるわけにはいかない。たとえ国力が落ちたとしても、負けるよりは遥かにマシだ。負ければ国そのものがなくなってしまうのに比べれば。
しばらく私とユネスが内乱の事で話し合っていると、扉を叩く音が聞こえる。ユネスが私を見てくるので頷くと、扉を開ける。そして入って来たのは
「聞いたぞ、ヘンリル。今南部の貴族たちが兵を集めていると」
「そうですが、姉上はここで待機ですよ」
「何だと!? なぜ私がここで待機なのだ!?」
私の執務用の机をバンッ! と叩くと女性。赤髪のポニーテールをした女性で私の姉でありこの国第1王女であるアークフィア・メストアだ。
職業は魔法剣士という珍しい職業を持っており、その中でも炎を使った剣術が得意な事から、兵士たちや同盟国からは畏怖を込めて『炎姫』と呼ばれている。
ただ、勉強よりも剣術が大好き、刺繍をするよりも魔法が大好きという男勝りな性格のせいで、私より2歳上の23歳だが、未だに結婚相手が見つからない。ちなみに私はすでに結婚している。
「この国で1番の戦力である姉上をそう簡単に王都から離すわけにはいかないのです。わかるでしょう? それに、今回は魔物などを相手にした殲滅ではありません。的とはいえ同国の民です。そんな彼らを皆燃やし尽くすつもりですか?」
「……むぅ、確かにそうだが」
「姉上はこの王都を守ってください。私は出る事になると思いますが、王都には父上に母上、私の妻もいるのです。そんな中、姉上がいるからこそ私たちは前を向いて戦えるのですから」
私の言葉に渋々だが納得してくれた姉上。出来れば姉上に出てもらう事なくこの戦いが終われば良いのだが。なぜか、そうはならないと何故か考えてしまうのだった。
◇◇◇
「……アークフィア・メストアねぇ」
「はい。この国第1王女で、他国からも『炎姫』と恐れられる方です」
目元にかける眼鏡をくいっと上げるミレーヌ。この国の事についてミレーヌから教えてもらっていると、そんな女性の名前が出て来た。炎が得意か。アンデッドの弱点は火か聖属性だからなぁ。その女性が出て来た際は気を付けないと。
「その女性にはリーシャをぶつけるかもしれない。その時は大丈夫だよね?」
「勿論だとも。ふふっ、今からでもワクワクするな」
んー、不安だがリーシャなら大丈夫だろう。今回初めの方は僕たちはずっと見ているだけ。操っている貴族たちに頑張ってもらわないと。貴族たちを集めて洗脳した意味が無いからね。
今回の戦争は、地盤となる土地を手に入れるのと同時に、一気に手下となるアンデッドの配下を手に入れるのが目的だ。こちらの数を減らさずに逆に死体を増やすために。
上手い事同士討ちしてくれるのが理想だな。まあ、殺すのは兵士だけにしておこう。住民を殺すと、国が回らないからね。そうなったら生活も面倒になるし、何より、美味しい食べ物がないとリーシャがうるさい。
クロノの作品も試して見たいけど、それは余裕があればにしようかな。余裕を持ち過ぎて負けるのが1番嫌だからね。
こっちの兵士がぶつかるのは2日後だ。それまではもう少しミレーヌ先生から周辺諸国について聞こう。僕が知っているのは聖王国と住んでいたところぐらいだからね。
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