世界に復讐を誓った少年
24.とある冒険者の話(6)
「少し喋りすぎだぞ、ネロ」
気分が高揚しているのか話さなくていい事まで話しているネロ。僕の言葉にネロの奴も喋り過ぎたと思ったのか頭を下げて来る。まあ、僕やリーシャの名前を出しただけだから特に問題は無いのだが。これがダルクスやクロノの事だったら、少し問題だったけどな。
「申シ訳ナイ。コイツノ絶望シタ表情を見テ気分ガ高昂ブッテシマッタ」
「まあ、そこまで重要な事を話していないからいいが。さて、初めまして、シスター。僕の名前はハルト。そこにいるネクロマンサーを創り、町を襲った暗黒魔術師だ」
僕は自分の自己紹介をしながら、魔力を放出しシスターに当てる。シスターは魔力に含まれる瘴気に当てられてか、顔を青ざめさせ、体をガクガクと震わせる。強調するように出された大きな胸がその都度震えている。
額から汗が流れて呼吸も乱れていく。裏から見ている限りは、ネロとの話し合いである程度は折れているが、これで折きったかな。僕はシスターの側に近付き目線を合わせるためしゃがむ。
シスターは顔を俯かせて表情が伺えないため、右手で顎をクイッとあげる。女の子が憧れるらしい顎クイだ。昔村でもリーグの奴が女の子にやっていてワーキャーと叫んでいたのを覚えている。
それを何となくやってみたが、まあ、想像通り見れたのは、頰を赤く染め恥じらう顔ではなく、涙を流し顔を青ざめ絶望する顔だった。
それを見てやっぱりなーと思う反面、ネロじゃないが少し興奮する僕がいた。なんだかもっとこの表情が見たくなる。こう嗜虐心がくすぐるというか。
……ふむ、もう少し虐めてみるか……なんか、好きな子に意地悪するガキ大将みたいな考え方だが、もう少しこの性格がどうか考えるのには検討材料が必要だからな、うん。
「死にたくないか?」
「……はい」
僕の言葉にゆっくりとだけど頷くシスター。死んだ魚のような目をしていたが、僕の言葉に少し光が戻る。まあ、もう一度死んだ目を浮かべる事になるのだろうけど。
「それなら、君が生き残る道を示してやろう」
「……私が生きる道ですか?」
「ああ。君が選べばいい。ただ、それだけで君を生かしてあげるよ。どうする?」
僕が問いかけると、シスターは再び下を向こうとしたけど、顎クイで下を向かせない。僕の目を見て答えさせる。自分が敵に魂を売るのを自覚させるために。
「……わかりました」
僕の言葉に悔しそうにしながらも、少し安堵の表情が見える。その顔は僕の言葉を聞いた後にも同じ顔が出来るかな? 僕は笑みを浮かべながらシスターを見る。そして
「君が唯一生き残る道は……僕の配下になって仲間を殺す事だけだ」
僕の悪魔の囁きにシスターはどうするかな? ちなみに後でリーシャに聞いた話だが、この時の僕の顔は邪悪な笑みを浮かべていたそうだ。どんな笑みだよ、それ……。
◇◇◇
「ちくしょう! どうして町の人たちが!?」
俺は町で起きた事が訳が分からなすぎて近くにあった木箱を蹴り飛ばす。何とか命かながらに町から逃げる事が出来たが、どうして町の人が俺たちを襲ってくるんだよ! しかも、ゾンビどもと一緒に!
「落ち着きなさいよ、リンク。そんなイライラとしたって解決しないでしょ?」
そんな俺を呆れたように見てくるマリエ。その姿が、余計に俺をイライラさせた。
「何でお前はそんな冷静にいられるんだよ! もしかしたらミレーヌが殺されてるかもしれねえんだぞ!」
「そんな事はわかっているわよ。でも、今私たちが焦ったところで何も出来ないじゃないの! こっちはたった数人、向こうは町の人たちとゾンビたちを合わせても何百といるのよ。今の私たちに勝ち目があると思っているの?」
「けどっ! だけどよぉっ!」
「落ち着け、リンク。マリエの言う通りだ。俺たちが焦ってまた町に行ったとしても返り討ちに遭うだけだ」
ガルドまで……くそっ! 俺は何も出来ねえのかよ! 大切な仲間1人すら助けられねえのかよ……。
「リンク。あなたの気持ちはわかるわ。私もガルドもミレーヌを助けたい気持ちは一緒。だけど、悔しいけど私たちだけじゃあ助けられないのよ」
気がつけば、目の前には涙を流しているマリエが俺の手を握っていた。その側にはガルドも……そうだよな、俺だけが悔しい訳無いよな。マリエだって、ガルドだって、一緒に今までやって来た大切な仲間だ。こいつらだって、ミレーヌの事が大事なはずだ。それなのに、俺だけ先走って、勝手にキレて……
「すまねえ、マリエ、ガルド。少し言い過ぎた」
「別に構わねえよ。お前の気持ちは痛い程わかるからな」
「そうね。それに、そんな事今更って感じだしね」
そう言って笑うガルドとマリエ。ったく、こいつらは。
「それで、これからどうするよ? このままにはしておけねえだろ?」
「ああ。取り敢えず、領主様のところまで戻ろう。ここから1日と少しで着くだろう。そこで事情を話して、兵を送ってもらわないと」
「そうね。町1つ乗っ取られたとなれば、領主様も黙ってはいないはずだわ」
「よし、それじゃあ、領主様がいる街へ向かおう!」
俺は、遠くに見える町、フリンクを見る。待っていてくれよな、ミレーヌ。絶対に助けるからな!
気分が高揚しているのか話さなくていい事まで話しているネロ。僕の言葉にネロの奴も喋り過ぎたと思ったのか頭を下げて来る。まあ、僕やリーシャの名前を出しただけだから特に問題は無いのだが。これがダルクスやクロノの事だったら、少し問題だったけどな。
「申シ訳ナイ。コイツノ絶望シタ表情を見テ気分ガ高昂ブッテシマッタ」
「まあ、そこまで重要な事を話していないからいいが。さて、初めまして、シスター。僕の名前はハルト。そこにいるネクロマンサーを創り、町を襲った暗黒魔術師だ」
僕は自分の自己紹介をしながら、魔力を放出しシスターに当てる。シスターは魔力に含まれる瘴気に当てられてか、顔を青ざめさせ、体をガクガクと震わせる。強調するように出された大きな胸がその都度震えている。
額から汗が流れて呼吸も乱れていく。裏から見ている限りは、ネロとの話し合いである程度は折れているが、これで折きったかな。僕はシスターの側に近付き目線を合わせるためしゃがむ。
シスターは顔を俯かせて表情が伺えないため、右手で顎をクイッとあげる。女の子が憧れるらしい顎クイだ。昔村でもリーグの奴が女の子にやっていてワーキャーと叫んでいたのを覚えている。
それを何となくやってみたが、まあ、想像通り見れたのは、頰を赤く染め恥じらう顔ではなく、涙を流し顔を青ざめ絶望する顔だった。
それを見てやっぱりなーと思う反面、ネロじゃないが少し興奮する僕がいた。なんだかもっとこの表情が見たくなる。こう嗜虐心がくすぐるというか。
……ふむ、もう少し虐めてみるか……なんか、好きな子に意地悪するガキ大将みたいな考え方だが、もう少しこの性格がどうか考えるのには検討材料が必要だからな、うん。
「死にたくないか?」
「……はい」
僕の言葉にゆっくりとだけど頷くシスター。死んだ魚のような目をしていたが、僕の言葉に少し光が戻る。まあ、もう一度死んだ目を浮かべる事になるのだろうけど。
「それなら、君が生き残る道を示してやろう」
「……私が生きる道ですか?」
「ああ。君が選べばいい。ただ、それだけで君を生かしてあげるよ。どうする?」
僕が問いかけると、シスターは再び下を向こうとしたけど、顎クイで下を向かせない。僕の目を見て答えさせる。自分が敵に魂を売るのを自覚させるために。
「……わかりました」
僕の言葉に悔しそうにしながらも、少し安堵の表情が見える。その顔は僕の言葉を聞いた後にも同じ顔が出来るかな? 僕は笑みを浮かべながらシスターを見る。そして
「君が唯一生き残る道は……僕の配下になって仲間を殺す事だけだ」
僕の悪魔の囁きにシスターはどうするかな? ちなみに後でリーシャに聞いた話だが、この時の僕の顔は邪悪な笑みを浮かべていたそうだ。どんな笑みだよ、それ……。
◇◇◇
「ちくしょう! どうして町の人たちが!?」
俺は町で起きた事が訳が分からなすぎて近くにあった木箱を蹴り飛ばす。何とか命かながらに町から逃げる事が出来たが、どうして町の人が俺たちを襲ってくるんだよ! しかも、ゾンビどもと一緒に!
「落ち着きなさいよ、リンク。そんなイライラとしたって解決しないでしょ?」
そんな俺を呆れたように見てくるマリエ。その姿が、余計に俺をイライラさせた。
「何でお前はそんな冷静にいられるんだよ! もしかしたらミレーヌが殺されてるかもしれねえんだぞ!」
「そんな事はわかっているわよ。でも、今私たちが焦ったところで何も出来ないじゃないの! こっちはたった数人、向こうは町の人たちとゾンビたちを合わせても何百といるのよ。今の私たちに勝ち目があると思っているの?」
「けどっ! だけどよぉっ!」
「落ち着け、リンク。マリエの言う通りだ。俺たちが焦ってまた町に行ったとしても返り討ちに遭うだけだ」
ガルドまで……くそっ! 俺は何も出来ねえのかよ! 大切な仲間1人すら助けられねえのかよ……。
「リンク。あなたの気持ちはわかるわ。私もガルドもミレーヌを助けたい気持ちは一緒。だけど、悔しいけど私たちだけじゃあ助けられないのよ」
気がつけば、目の前には涙を流しているマリエが俺の手を握っていた。その側にはガルドも……そうだよな、俺だけが悔しい訳無いよな。マリエだって、ガルドだって、一緒に今までやって来た大切な仲間だ。こいつらだって、ミレーヌの事が大事なはずだ。それなのに、俺だけ先走って、勝手にキレて……
「すまねえ、マリエ、ガルド。少し言い過ぎた」
「別に構わねえよ。お前の気持ちは痛い程わかるからな」
「そうね。それに、そんな事今更って感じだしね」
そう言って笑うガルドとマリエ。ったく、こいつらは。
「それで、これからどうするよ? このままにはしておけねえだろ?」
「ああ。取り敢えず、領主様のところまで戻ろう。ここから1日と少しで着くだろう。そこで事情を話して、兵を送ってもらわないと」
「そうね。町1つ乗っ取られたとなれば、領主様も黙ってはいないはずだわ」
「よし、それじゃあ、領主様がいる街へ向かおう!」
俺は、遠くに見える町、フリンクを見る。待っていてくれよな、ミレーヌ。絶対に助けるからな!
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