世界に復讐を誓った少年
10.出て行った後の村の現状
ハルトが行方不明になって1ヶ月が経った頃
「レグル! そっちに行ったぞ!」
「わかってるよ! クソが!」
「危ないっ! ホーリーショット!」
スケルトンと鍔迫り合いをしているレグルの後ろに迫るレイス。レイスは物理攻撃は効かないので、魔法で倒さないといけない。
私が放った光の弾がレイスに当たるとレイスは苦しそうな雄叫びをあげながら霧散して行った。これでレイスは全部倒した。後はゾンビとスケルトンだけ。
レグルは鍔迫り合いをしていたスケルトンを盾で殴り、スケルトンが隙を見せたところを剣で首を切り落とす。
「ふんっ、聖光斬!」
ドオゥン! と、大きな音が鳴り響く。音のする方を見るとリーグが剣を振り下ろした格好で止まっていた。剣の振り下ろした先の地面は吹き飛んでいて、地面にはゾンビが何体も倒れていた。範囲攻撃でゾンビたちを吹き飛ばしたのね。
「ふぅ、これで全部か。ステラ、怪我はないか?」
「え、ええ、私は大丈夫よ。それよりも、他のみんなを治療しないと」
私はリーグの言葉を軽く流して周りを見ると、疲れ果ててその場に座り込む村人たち。それも仕方ないわね。こんな事が毎日続くのだから。
死霊系の魔物が村を襲い始めたのは、ハルトが謎の骸骨に連れていなくなった次の日からだった。私はハルトに自分がした事を後悔して部屋から出る気力も無かったのだけど、村人の子供が行方不明になる事件が起きたのだ。
その子供を探しに行った母親もその日に戻って来ずに、魔物にやられたと判断した村長は、村の中で実力がある者10人ほど集めて、捜索隊を編成した。
その時は大人だけだったんだけど、3日後に捜索隊として出ていた内の2人が大怪我して帰って来たのだ。村の近くには森があり、その中が怪しいと考えた捜索隊は、森の中へと入ったそうだ。そして、そこで見つけたのが、ゾンビだったらしい。
それも、普通のゾンビより強い個体らしく、それが何体もいて、捜索隊はゾンビに囲まれて、殆どが死亡、2人は命かながらに逃げてきたという。
この事を重く見た村長は、村人を村から出る事を禁じて、自分は近くの町に救援をお願いしに行く事になった。
みんなも森に近づかなければ危険ではないと考えていたのだけど、その考えが甘いとわかったのは、2日経ったある日の事だった。
村から出れずに、暇をしていた村人たちの1人が村に近づいてくる人影を見つけたのだ。それも1人や2人ではない数を。
その時は、村長が助けを呼んでくれたのか、と、喜んでいたのだが、よく見れば体中が傷だらけなのがわかる。そう、村に向かって走って来たのはゾンビの集団だった。中には骨だけの魔物スケルトンや、物理攻撃の効かない死霊レイスなど、様々な魔物が村へと向かって来たのだ。
村の中で戦える人たちは、皆武器を持ち総出で立ち向かった。その頃には大人や子供なんて言っている暇はなく、リーグやレグル、私も戦いに参加していた。
死霊系の魔物相手では私やリーグが使える光魔法が良く効くため、率先して戦って来た。それが今日で20日ぐらい経つ。
村人たちも、毎日毎日どこから湧いてくるのかわからない魔物たちに警戒して心身ともに疲れ切ってしまっている。村長は1回目のゾンビが向かって来た時の仲間となっていた。だから、未だに救援が来ない。
誰も助けを呼びに行かないのは、皆村長のようになりたくないからだ。皆村から出たら死ぬと思っているので、出る人はめっきりと減ってしまった。
それなら、リーグたちのように戦える人が助けを呼びに行ったらどうだ? という話になったのだけど、村人たちはその間に攻めて来たらどうするのだと、誰もその意見に受け入れてくれなかった。
このままだと、村の食料は尽きて、彼らの仲間入りしてしまう事を入念に話しても、その間に攻めて来て殺されるより、他の村や町から救援を待った方が良いと、かなり消極的な意見しか出なかった。その事も、私たちの精神を疲れさせているのでしょう。
終わりがわからない戦いほど疲れるものは無いと、本にも書いてあったし。
それから、ゾンビたち魔物に村が襲われるようになってから、村のみんながある噂をするようになった。それは、この現象は『ハルトの呪い』だというものだ。
この現象が起き始めたのは、ハルトが骸骨に連れ去られた次の日からだ。これは死者を操る事が出来る力を持つハルトの復讐ではないのか? と、皆が口を揃えて言うようになったのだ。
その噂自体も不快なものだったけど、それよりも、こんな危険な現状になってから、手のひらを返したように、今からでも謝れば許してくれないか、とか、母親の葬式をちゃんとしてやれば許してくれる、とか、自分の妄想の域を出ない考え、ハルトに対して物凄く失礼な考えをし始めたのだ。
そんな事をしたところで、ハルトが許してくれるはずがない。私たちが彼にした仕打ちだけでも許せないのに、目の前で母親が殺される光景を見せられてたりもしたんだ。私だったら、絶対に許さない。
そんな事があったりして、村の中の雰囲気は最悪で、あまりに酷い奴は、他の家に盗みを入ったりして。
「お、おい、またなんか来たぞ!」
私が前に盗みに入ってみんなに見つかっていた男性の事を思い出していると、戦っていた1人が叫ぶ。
皆が声の方を見ると、そこには全身が赤くなっており、より爪は鋭く、動きが早い危険なゾンビが、村へとやって来たのだった。見ただけでわかる。あのゾンビが物凄く強くて危険な事が……。
「レグル! そっちに行ったぞ!」
「わかってるよ! クソが!」
「危ないっ! ホーリーショット!」
スケルトンと鍔迫り合いをしているレグルの後ろに迫るレイス。レイスは物理攻撃は効かないので、魔法で倒さないといけない。
私が放った光の弾がレイスに当たるとレイスは苦しそうな雄叫びをあげながら霧散して行った。これでレイスは全部倒した。後はゾンビとスケルトンだけ。
レグルは鍔迫り合いをしていたスケルトンを盾で殴り、スケルトンが隙を見せたところを剣で首を切り落とす。
「ふんっ、聖光斬!」
ドオゥン! と、大きな音が鳴り響く。音のする方を見るとリーグが剣を振り下ろした格好で止まっていた。剣の振り下ろした先の地面は吹き飛んでいて、地面にはゾンビが何体も倒れていた。範囲攻撃でゾンビたちを吹き飛ばしたのね。
「ふぅ、これで全部か。ステラ、怪我はないか?」
「え、ええ、私は大丈夫よ。それよりも、他のみんなを治療しないと」
私はリーグの言葉を軽く流して周りを見ると、疲れ果ててその場に座り込む村人たち。それも仕方ないわね。こんな事が毎日続くのだから。
死霊系の魔物が村を襲い始めたのは、ハルトが謎の骸骨に連れていなくなった次の日からだった。私はハルトに自分がした事を後悔して部屋から出る気力も無かったのだけど、村人の子供が行方不明になる事件が起きたのだ。
その子供を探しに行った母親もその日に戻って来ずに、魔物にやられたと判断した村長は、村の中で実力がある者10人ほど集めて、捜索隊を編成した。
その時は大人だけだったんだけど、3日後に捜索隊として出ていた内の2人が大怪我して帰って来たのだ。村の近くには森があり、その中が怪しいと考えた捜索隊は、森の中へと入ったそうだ。そして、そこで見つけたのが、ゾンビだったらしい。
それも、普通のゾンビより強い個体らしく、それが何体もいて、捜索隊はゾンビに囲まれて、殆どが死亡、2人は命かながらに逃げてきたという。
この事を重く見た村長は、村人を村から出る事を禁じて、自分は近くの町に救援をお願いしに行く事になった。
みんなも森に近づかなければ危険ではないと考えていたのだけど、その考えが甘いとわかったのは、2日経ったある日の事だった。
村から出れずに、暇をしていた村人たちの1人が村に近づいてくる人影を見つけたのだ。それも1人や2人ではない数を。
その時は、村長が助けを呼んでくれたのか、と、喜んでいたのだが、よく見れば体中が傷だらけなのがわかる。そう、村に向かって走って来たのはゾンビの集団だった。中には骨だけの魔物スケルトンや、物理攻撃の効かない死霊レイスなど、様々な魔物が村へと向かって来たのだ。
村の中で戦える人たちは、皆武器を持ち総出で立ち向かった。その頃には大人や子供なんて言っている暇はなく、リーグやレグル、私も戦いに参加していた。
死霊系の魔物相手では私やリーグが使える光魔法が良く効くため、率先して戦って来た。それが今日で20日ぐらい経つ。
村人たちも、毎日毎日どこから湧いてくるのかわからない魔物たちに警戒して心身ともに疲れ切ってしまっている。村長は1回目のゾンビが向かって来た時の仲間となっていた。だから、未だに救援が来ない。
誰も助けを呼びに行かないのは、皆村長のようになりたくないからだ。皆村から出たら死ぬと思っているので、出る人はめっきりと減ってしまった。
それなら、リーグたちのように戦える人が助けを呼びに行ったらどうだ? という話になったのだけど、村人たちはその間に攻めて来たらどうするのだと、誰もその意見に受け入れてくれなかった。
このままだと、村の食料は尽きて、彼らの仲間入りしてしまう事を入念に話しても、その間に攻めて来て殺されるより、他の村や町から救援を待った方が良いと、かなり消極的な意見しか出なかった。その事も、私たちの精神を疲れさせているのでしょう。
終わりがわからない戦いほど疲れるものは無いと、本にも書いてあったし。
それから、ゾンビたち魔物に村が襲われるようになってから、村のみんながある噂をするようになった。それは、この現象は『ハルトの呪い』だというものだ。
この現象が起き始めたのは、ハルトが骸骨に連れ去られた次の日からだ。これは死者を操る事が出来る力を持つハルトの復讐ではないのか? と、皆が口を揃えて言うようになったのだ。
その噂自体も不快なものだったけど、それよりも、こんな危険な現状になってから、手のひらを返したように、今からでも謝れば許してくれないか、とか、母親の葬式をちゃんとしてやれば許してくれる、とか、自分の妄想の域を出ない考え、ハルトに対して物凄く失礼な考えをし始めたのだ。
そんな事をしたところで、ハルトが許してくれるはずがない。私たちが彼にした仕打ちだけでも許せないのに、目の前で母親が殺される光景を見せられてたりもしたんだ。私だったら、絶対に許さない。
そんな事があったりして、村の中の雰囲気は最悪で、あまりに酷い奴は、他の家に盗みを入ったりして。
「お、おい、またなんか来たぞ!」
私が前に盗みに入ってみんなに見つかっていた男性の事を思い出していると、戦っていた1人が叫ぶ。
皆が声の方を見ると、そこには全身が赤くなっており、より爪は鋭く、動きが早い危険なゾンビが、村へとやって来たのだった。見ただけでわかる。あのゾンビが物凄く強くて危険な事が……。
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