世界に復讐を誓った少年
4.踏み絵
僕を見てくる沢山の視線。八百屋のおばちゃんも、狩人のおじさんも、隣の家のお姉さんも、みんなが僕を見て来る。
それも、いつものような親しみのあるものではなく、僕を蔑むような視線。人に対して向けるような視線では無かった。
僕は呆然と村人を見ていると、後ろから髪の毛を引っ張られ、無理矢理顔を上げさせられる。そして、僕の横に立つ男性。何処かで見覚えがあると思ったら、僕に天啓を与えてくれた神官だった。
「皆の者は既に話を聞いていると思うが、こやつは悪魔の力を持っている! 『暗黒魔術師』という、古に聖王国に牙を剥いた忌々しき人物と同じ力を!」
神官の言葉に村の人々は騒つく。古に聖王国に牙を剥いた人物? 一体誰の事を言っているんだ? 歴史でもそんな話を聞いた事がない。
「当時の大神官が何とか倒したが、聖王国は多大な被害を受けた。それほど、暗黒魔術師の力は絶大だった。死霊を操り、遺体を操り、暗黒魔術師は死者の軍勢で攻めて来る。こちらは倒されれば、倒された者は暗黒魔術師の手下となり襲って来るという、残忍極まり無い方法で攻めて来たそうだ」
訳のわからないまま話を進める神官。だけど、村のみんなは本当かどうかわからない神官の話を信じて、敵意の視線を僕に向けて来る。
「その悪魔を早めに根絶やすために、我々は女神フィストリア様より、天啓の力を授かったのだ。その結果この通り見つける事が出来た」
仰々しく叫ぶ神官。天啓をするのにそんな理由があったなんて。村人達も驚きの声を上げている。だけどそれ以上に彼らが驚いたのは
「当然この悪魔は生かしては置けぬが、この者を匿っていたこの村にも同罪の容疑がかけられている!」
と言う神官の言葉だった。その言葉を聞いた村人たちは、自分は関係ないと叫び始める。だけど、村人たちが叫ぶと同時に神官について来た兵士たちが皆剣を抜き始めた。
「ま、待ってくだされ! 私どもはそいつがそんな悪魔だとは知らなかったんだ! 信じてくれ!」
その事に恐れた村長は神官に地面に頭をつけるようにして命乞いを始めた。周りの村人たちも同じようにする。神官はその光景を見て、ニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、腰のナイフを地面に放った。
「では、こやつと仲間では無い証拠を見せろ! 1人1回こやつのどこでもいい。このナイフを刺せば命は助けてやる!」
……な、何を言っているんだこの人は? 僕は信じられなかった。ただ、それ以上に信じられない事が起きた。それは、村長が地面に落ちているナイフを拾ったのだ。
そして、ぶつぶつと言いながらふらふらと僕の方へと向かって来る。
「……う、嘘だよね。そ、村長、ま、まさか、刺したりしないよね!?」
「悪いな、ハルト。俺たちは死にたく無いんだ。だからお前が犠牲になってくれ。別に良いだろ? お前は死んでも良い悪魔なのだから」
……僕には何を言っているのかわからなかった。いや、言葉はしっかりと聞こえていたのだけど、心が、脳が理解してくれなかった。
自分は悪くない。悪魔だから刺しても大丈夫だとぶつぶつと呟く村長。僕からすれば村長たちの方が悪魔に見えた。
そして、振り下ろされるナイフ。戸惑う事なく振り下ろされたナイフは僕の左足へと突き刺さる。脳まで一気に激痛が走り、声にならない叫びが口から出る。本当に自分の声なのか疑うほどだ。
僕の叫び声に驚いた村長は慌ててナイフを抜く。ナイフが抜かれた瞬間、神官について来た1人が刺さった箇所を治療していく。
ああ、また、死なないように治されるのか。どうせなら一思いに殺してくれたら良いのに。
村長が刺すと、村人たちも次第に躊躇いがなくなっていく。大人や子供なんて関係無い。この村に住んでいる人全員が僕にナイフを突きつけてくる。
もう何回刺されたかもわからない。刺される度に僕は叫び、閉じ込められた時と同じようにいくら叫んで助けを呼んでも誰もやめてくれないし、助けてくれない。
指は切り落とされ、耳は削がれ、何度も同じ場所を刺されたり、もう切られていない場所といえば目と舌ぐらいだろう。
目を潰さなかったのは己の罪を自覚させるためだそうだ。ただ、天啓を受けて職業を受けただけで、一体僕に何の罪があるというんだ。
地面は僕の血で赤く染まり、血溜まりが出来るほどだった。何百人と刺されると、もう痛みも感じない。よくこれで死なないなと考える余裕が出来るほどだ。
それに、もう目の前の奴らは人間には見えなかった。悪魔より悪魔に見えた。
「これで、大方は終わりましたかな? それではあなた達もです」
神官が何かを言うと、誰かを連れて来る。当然見覚えのある顔。僕の幼馴染だった顔だ。片方は僕を指差して何か叫んでいるけど、両耳を削がれた僕には何も聞こえない。
その間に落ちていたナイフを拾った男、リーグは僕の前に立つ。そして、僕と目が合うと今までのリーグからは想像が出来ないほど気色の悪い笑みを浮かべていた。まるで、この時を待ち望んでいたかのように。
リーグはその笑みを浮かべたままナイフを振り下ろしてくる。振り下ろされたナイフは、僕の右目に突き刺さった。
今までの比ではないほどの痛みが顔全体に走る。だけど、それよりもリーグに対する怒りの方が、憎しみの方が強かった。そんなに僕が死ぬのが嬉しいのか! そんなに、そんなにも!
僕のそんな怒りや憎しみが伝わったのか、リーグはビクッと震えて勢いよくナイフを抜いた。右目から血が溢れるけど、気にならないぐらい僕はリーグを睨む。
村人たちから刺された時も怒りが湧いて来たけど、それとは比にならないぐらいの怒りと憎しみがリーグに対して湧いて来た。
やっぱり心の奥底では幼馴染だからと、期待していた部分があったからだろうか。今では少しでも期待した自分に腹が立つ。
そして、リーグから次にナイフを手渡されたのは、ステラだった。
それも、いつものような親しみのあるものではなく、僕を蔑むような視線。人に対して向けるような視線では無かった。
僕は呆然と村人を見ていると、後ろから髪の毛を引っ張られ、無理矢理顔を上げさせられる。そして、僕の横に立つ男性。何処かで見覚えがあると思ったら、僕に天啓を与えてくれた神官だった。
「皆の者は既に話を聞いていると思うが、こやつは悪魔の力を持っている! 『暗黒魔術師』という、古に聖王国に牙を剥いた忌々しき人物と同じ力を!」
神官の言葉に村の人々は騒つく。古に聖王国に牙を剥いた人物? 一体誰の事を言っているんだ? 歴史でもそんな話を聞いた事がない。
「当時の大神官が何とか倒したが、聖王国は多大な被害を受けた。それほど、暗黒魔術師の力は絶大だった。死霊を操り、遺体を操り、暗黒魔術師は死者の軍勢で攻めて来る。こちらは倒されれば、倒された者は暗黒魔術師の手下となり襲って来るという、残忍極まり無い方法で攻めて来たそうだ」
訳のわからないまま話を進める神官。だけど、村のみんなは本当かどうかわからない神官の話を信じて、敵意の視線を僕に向けて来る。
「その悪魔を早めに根絶やすために、我々は女神フィストリア様より、天啓の力を授かったのだ。その結果この通り見つける事が出来た」
仰々しく叫ぶ神官。天啓をするのにそんな理由があったなんて。村人達も驚きの声を上げている。だけどそれ以上に彼らが驚いたのは
「当然この悪魔は生かしては置けぬが、この者を匿っていたこの村にも同罪の容疑がかけられている!」
と言う神官の言葉だった。その言葉を聞いた村人たちは、自分は関係ないと叫び始める。だけど、村人たちが叫ぶと同時に神官について来た兵士たちが皆剣を抜き始めた。
「ま、待ってくだされ! 私どもはそいつがそんな悪魔だとは知らなかったんだ! 信じてくれ!」
その事に恐れた村長は神官に地面に頭をつけるようにして命乞いを始めた。周りの村人たちも同じようにする。神官はその光景を見て、ニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、腰のナイフを地面に放った。
「では、こやつと仲間では無い証拠を見せろ! 1人1回こやつのどこでもいい。このナイフを刺せば命は助けてやる!」
……な、何を言っているんだこの人は? 僕は信じられなかった。ただ、それ以上に信じられない事が起きた。それは、村長が地面に落ちているナイフを拾ったのだ。
そして、ぶつぶつと言いながらふらふらと僕の方へと向かって来る。
「……う、嘘だよね。そ、村長、ま、まさか、刺したりしないよね!?」
「悪いな、ハルト。俺たちは死にたく無いんだ。だからお前が犠牲になってくれ。別に良いだろ? お前は死んでも良い悪魔なのだから」
……僕には何を言っているのかわからなかった。いや、言葉はしっかりと聞こえていたのだけど、心が、脳が理解してくれなかった。
自分は悪くない。悪魔だから刺しても大丈夫だとぶつぶつと呟く村長。僕からすれば村長たちの方が悪魔に見えた。
そして、振り下ろされるナイフ。戸惑う事なく振り下ろされたナイフは僕の左足へと突き刺さる。脳まで一気に激痛が走り、声にならない叫びが口から出る。本当に自分の声なのか疑うほどだ。
僕の叫び声に驚いた村長は慌ててナイフを抜く。ナイフが抜かれた瞬間、神官について来た1人が刺さった箇所を治療していく。
ああ、また、死なないように治されるのか。どうせなら一思いに殺してくれたら良いのに。
村長が刺すと、村人たちも次第に躊躇いがなくなっていく。大人や子供なんて関係無い。この村に住んでいる人全員が僕にナイフを突きつけてくる。
もう何回刺されたかもわからない。刺される度に僕は叫び、閉じ込められた時と同じようにいくら叫んで助けを呼んでも誰もやめてくれないし、助けてくれない。
指は切り落とされ、耳は削がれ、何度も同じ場所を刺されたり、もう切られていない場所といえば目と舌ぐらいだろう。
目を潰さなかったのは己の罪を自覚させるためだそうだ。ただ、天啓を受けて職業を受けただけで、一体僕に何の罪があるというんだ。
地面は僕の血で赤く染まり、血溜まりが出来るほどだった。何百人と刺されると、もう痛みも感じない。よくこれで死なないなと考える余裕が出来るほどだ。
それに、もう目の前の奴らは人間には見えなかった。悪魔より悪魔に見えた。
「これで、大方は終わりましたかな? それではあなた達もです」
神官が何かを言うと、誰かを連れて来る。当然見覚えのある顔。僕の幼馴染だった顔だ。片方は僕を指差して何か叫んでいるけど、両耳を削がれた僕には何も聞こえない。
その間に落ちていたナイフを拾った男、リーグは僕の前に立つ。そして、僕と目が合うと今までのリーグからは想像が出来ないほど気色の悪い笑みを浮かべていた。まるで、この時を待ち望んでいたかのように。
リーグはその笑みを浮かべたままナイフを振り下ろしてくる。振り下ろされたナイフは、僕の右目に突き刺さった。
今までの比ではないほどの痛みが顔全体に走る。だけど、それよりもリーグに対する怒りの方が、憎しみの方が強かった。そんなに僕が死ぬのが嬉しいのか! そんなに、そんなにも!
僕のそんな怒りや憎しみが伝わったのか、リーグはビクッと震えて勢いよくナイフを抜いた。右目から血が溢れるけど、気にならないぐらい僕はリーグを睨む。
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コメント
べりあすた
殺られたら、殺り返す。倍返しだ!