異世界で彼女を探して何千里?

やま

52.戦争介入

「……ゼ……スト?」


「ごめんな、遅くなって。間に合って良かったよ」


 俺が腕に抱きしめるティリアに謝ると、ティリアは顔を伏せてしまった。やはり、どこか痛むのだろうか? 気にして顔を見ようと思った瞬間……腹に衝撃が走る。


 悶えながら下を見ると、ティリアの拳が俺の腹にめり込んでいた。な、なんで?


「もうっ、来るのが遅いわよ! どれだけ心配したと思っているのよ! 何の連絡もなく、どれだけ待ったと……」


 ティリアは途中で言葉にする事が出来ないほど泣き出してしまった……それほど、心配させてしまったんだな。それもそうか。ティリアと別れてからは一度も会う事も、手紙を送る事もせずに俺は修行に明け暮れて……。


「悪かった、ティリア。でも、そのおかげで君を守る事が出来る。それで許してくれないか?」


「……絶対に許さないわ。これからもずっと守ってくれるって誓ってくれない限り、絶対……」


 ティリアはそう言って俺の胸元に顔を押し付ける。これからもずっと……か。その言葉で思い出すのはみなみの顔だった。


 ……はぁ、俺は本当に馬鹿だ。一回死んでもこの馬鹿さは治らないんだな。身近な大切な人を悲しませている癖に、どこにいるかわからない彼女を見つける事が出来るかよ。


「戦場でイチャついてるんじゃねえよ!」


 俺がティリアを抱き締めていると、魔族の男が手に炎を纏わせながら殴りかかって来た。俺は土精ノ籠手を右腕だけに発動し、ティリアを左腕に抱きかかえて、炎を纏った拳へと、土精ノ籠手を発動した右腕をぶつける。


 衝撃が辺りに吹き荒れせめぎ合うが、魔族の男が押し負け吹き飛んで行く。俺は両足に風精ノ蓮脚を発動し、ティリアを抱きかかえてその場から飛びのく。すると、離れた瞬間、さっきまで俺がいた場所に魔術が降り注いだ。


 他の魔族たちが放った魔術だった。他の奴らより俺の方が危険だと思ったのか、俺を囲んで武器を構えて向かって来る。腕の中でティリアが叫ぶが、俺は慌てる事なく魔力を練る。


 俺目掛けて放たれた魔術の数々。俺も向かって来る魔術を防ぐために発動する。


「闇精ノ魔手」


 俺の背に翼のように大きな悪魔の手が現れ、迫る魔術を手で振り払うように掻き消して行く。魔術では駄目だと思ったのか、今度は武器を振りかざして来る魔族たち。


 魔族たちの武器を魔手で受け止めて、力任せに薙ぎ払う。吹き飛ばされる魔族たちを見ながら、俺はティリアをメイリーンたちのところへと連れて行く。


 メイリーンたちの他に同じクラスの奴らもいるけど、全員がいるわけじゃないのか。ディッシュもいないようだし。それに怪我人が多い。


 何とかして治療できるところへと連れて行きたいところだが、魔族に囲まれた現状動く事が出来ない。流石に俺1人ではこいつら全員を倒す事は出来ないしな。


 そう思って魔族たちを警戒していると、1人の若い魔族が空から降りて来た。手にはマントを着た女性を掴んで……それを見た瞬間、俺は飛び出していた。


「テメェ! クリアさんを離しやがれ!」


 俺は怒りに任せて土精ノ籠手を装備した右腕で殴りかかる。魔族の男は手に掴むクリアさんを適当に放り投げ、俺の籠手を左腕で軽々と受け止めやがった。


 俺は魔手で男へと殴りかかり、男が魔手を受け止めている間にクリアさんを抱きしめその場から離れる。奴は他の魔族たちとは違う。さっきの一撃でそれが嫌という程わかってしまったため距離を取ってしまった。この感覚は父上やギルアンさんと対峙した時に近い感覚だ。


「後続の中にも腕の立つ者がいるようだな。まさか、マルグが殺されるとは。悪いが今の俺は手加減出来そうにない」


 魔族の男がそう言った瞬間、あたりを潰すほどの重圧が俺たちを襲う。帝都の時のレイアスとは比べ物にならない程の魔力だ。だけど、ここで引くわけにはいかない。みんなを、大切な人を守る為には。

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