異世界で彼女を探して何千里?
51.
「ヘッヘッヘッ」
突然表れてマルグを吹き飛ばした狼は、ゆったりと尻尾を動かしながら後ろ足で頭をかいている。こんな状況でなければゆっくりと見ていたいのだけど、吹き飛ばされたマルグが崩れた建物から出て来た。
所々雷で焼けた箇所はあるにしても、あまり聞いてない様子だ。さっきのでもあの程度の傷なのかよ……。
「……まさかこんなところで雷餓狼を見る事が出来るとはな。だが、まだまだ子供だな。成体の雷はこんなものでは無いぞ!」
瓦礫から出て来たマルグが一瞬にして狼の目の前に移動して拳を振り上げる。振り下ろされた拳はそのまま狼を殴り潰すかと思われたが、狼も一瞬で体に雷を纏わせて、マルグの拳を避ける。
その振り下ろされた腕を狼は足場にして、雷を纏わせた尻尾をマルグの顔をめがけて振るう。パリッ! と、マルグの頰に当たると音を轟かせ、マルグを地面に叩きつけた。
しかし、マルグは何も無かったかのようにすぐさま立ち上がり殴りかかる。俺たちでは間に入る事のできないほどの速度で。
しかし、次第に押されていく狼。自分の体の周りに雷の壁を作り、マルグの拳を防ぐが、その1発1発を防ぐのに精一杯になっている。何か俺に手伝える事は無いのか、そう思った瞬間、マルグの足下から氷が飛び出して来て、マルグを包み込んだ。
余りにも突然の事で驚いていると、氷に包まれたマルグの目の前に突然人が現れた。マントを被っていて顔などは見えないが、体格からして女性だろう。
突然現れたマントを被った女性は、腰に下げていた剣を一気に引き抜いた。鞘から抜かれた瞬間、とてつもない魔力を纏った剣が斜めに切り上げられた。そして、剣の走った道の空間が歪む……あの人、空間ごと切りやがった。
歪んだ空間が戻ろうとする衝撃で、体を切り裂かれたマルグは消滅してしまった。
その光景を呆気なく見ていたおれたち。近くで見ていた魔族ですら動きをやめてマルグが消えた場所を眺めているだけだった。
あまりにも突然な光景に固まっていると、また別のところで途轍もない魔力のぶつかり合いが起きた。あっちの方は……ティリアたちが逃げた方だ!
グレル先生が気になったけど、グレル先生の側にはゼリックや他の兵士たちもいるから大丈夫なはずだ。ローブの女性の方は……っと、既に魔力のぶつかり合いが起きた方に向かって走り出していた。側には狼と初めて見る銀色に輝く狐が一緒に走っている。さっきの氷はあの狐なのか。
わからないが、今はそんな事を考えている場合じゃないな。みんなの元に行かないと!
◇◇◇
「くっ! メイリーン、大丈夫かしら!?」
「わ、私は大丈夫よ! それよりも、カインズが!」
私は魔族の攻撃をハルバートで受けながらも、少し視線をメイリーンの方へと向けると、そこには血が流れるお腹を抑えて倒れるカインズの姿があった。
メアリーやエマ、レリックが何とか魔術で牽制してくれるけど、前衛が私しかいないため、かなり厳しい。連合軍の兵士が周りにいるけど、次々と倒されていく。
血生臭い臭いが、辺りを覆って行って涙が出そうになり、吐き気をもよおすけど、何とか歯を食いしばって我慢する。こんなところで泣いてなんかいられない。吐いてなんかいられない。そんな事よりも、みんなを守るために頑張らなきゃ。
「少しはやるようだが、所詮この程度か」
魔族の男は淡々と切りかかって来たけど、私は防ぐのに精一杯。何とかしないと。何とか……
「ふんっ!」
「ぐぅっ!?」
しまった。少し気をそらしちゃったせいで、お腹を思いっきり蹴られてしまった。ベキベキっと脇腹の骨が折れる音がして、吹き飛ばされてしまう。
あまりの痛さにお腹を抱えてうずくまる事しか出来なかった。離れたところから私を呼ぶ声が聞こえてくるけど、動けない。そして、ドスっと頭を踏みつけられた。
「死ね」
魔族の男のその言葉と同時にヒュッとする音。これは……何度も聞いたことがある剣が振り下ろされる音だ。覚悟をする暇もなく殺されるんだ……そう思い諦めていたら
「その汚い足をどけやがれ!」
という怒鳴り声とともに、頭を踏みつけていた足の重みが無くなった。そして、私を抱き上げる力強い腕。私は恐る恐る目を開けるとそこには
「遅くなってごめん」
と、辛そうな表情を浮かべるゼストが立っていた。
突然表れてマルグを吹き飛ばした狼は、ゆったりと尻尾を動かしながら後ろ足で頭をかいている。こんな状況でなければゆっくりと見ていたいのだけど、吹き飛ばされたマルグが崩れた建物から出て来た。
所々雷で焼けた箇所はあるにしても、あまり聞いてない様子だ。さっきのでもあの程度の傷なのかよ……。
「……まさかこんなところで雷餓狼を見る事が出来るとはな。だが、まだまだ子供だな。成体の雷はこんなものでは無いぞ!」
瓦礫から出て来たマルグが一瞬にして狼の目の前に移動して拳を振り上げる。振り下ろされた拳はそのまま狼を殴り潰すかと思われたが、狼も一瞬で体に雷を纏わせて、マルグの拳を避ける。
その振り下ろされた腕を狼は足場にして、雷を纏わせた尻尾をマルグの顔をめがけて振るう。パリッ! と、マルグの頰に当たると音を轟かせ、マルグを地面に叩きつけた。
しかし、マルグは何も無かったかのようにすぐさま立ち上がり殴りかかる。俺たちでは間に入る事のできないほどの速度で。
しかし、次第に押されていく狼。自分の体の周りに雷の壁を作り、マルグの拳を防ぐが、その1発1発を防ぐのに精一杯になっている。何か俺に手伝える事は無いのか、そう思った瞬間、マルグの足下から氷が飛び出して来て、マルグを包み込んだ。
余りにも突然の事で驚いていると、氷に包まれたマルグの目の前に突然人が現れた。マントを被っていて顔などは見えないが、体格からして女性だろう。
突然現れたマントを被った女性は、腰に下げていた剣を一気に引き抜いた。鞘から抜かれた瞬間、とてつもない魔力を纏った剣が斜めに切り上げられた。そして、剣の走った道の空間が歪む……あの人、空間ごと切りやがった。
歪んだ空間が戻ろうとする衝撃で、体を切り裂かれたマルグは消滅してしまった。
その光景を呆気なく見ていたおれたち。近くで見ていた魔族ですら動きをやめてマルグが消えた場所を眺めているだけだった。
あまりにも突然な光景に固まっていると、また別のところで途轍もない魔力のぶつかり合いが起きた。あっちの方は……ティリアたちが逃げた方だ!
グレル先生が気になったけど、グレル先生の側にはゼリックや他の兵士たちもいるから大丈夫なはずだ。ローブの女性の方は……っと、既に魔力のぶつかり合いが起きた方に向かって走り出していた。側には狼と初めて見る銀色に輝く狐が一緒に走っている。さっきの氷はあの狐なのか。
わからないが、今はそんな事を考えている場合じゃないな。みんなの元に行かないと!
◇◇◇
「くっ! メイリーン、大丈夫かしら!?」
「わ、私は大丈夫よ! それよりも、カインズが!」
私は魔族の攻撃をハルバートで受けながらも、少し視線をメイリーンの方へと向けると、そこには血が流れるお腹を抑えて倒れるカインズの姿があった。
メアリーやエマ、レリックが何とか魔術で牽制してくれるけど、前衛が私しかいないため、かなり厳しい。連合軍の兵士が周りにいるけど、次々と倒されていく。
血生臭い臭いが、辺りを覆って行って涙が出そうになり、吐き気をもよおすけど、何とか歯を食いしばって我慢する。こんなところで泣いてなんかいられない。吐いてなんかいられない。そんな事よりも、みんなを守るために頑張らなきゃ。
「少しはやるようだが、所詮この程度か」
魔族の男は淡々と切りかかって来たけど、私は防ぐのに精一杯。何とかしないと。何とか……
「ふんっ!」
「ぐぅっ!?」
しまった。少し気をそらしちゃったせいで、お腹を思いっきり蹴られてしまった。ベキベキっと脇腹の骨が折れる音がして、吹き飛ばされてしまう。
あまりの痛さにお腹を抱えてうずくまる事しか出来なかった。離れたところから私を呼ぶ声が聞こえてくるけど、動けない。そして、ドスっと頭を踏みつけられた。
「死ね」
魔族の男のその言葉と同時にヒュッとする音。これは……何度も聞いたことがある剣が振り下ろされる音だ。覚悟をする暇もなく殺されるんだ……そう思い諦めていたら
「その汚い足をどけやがれ!」
という怒鳴り声とともに、頭を踏みつけていた足の重みが無くなった。そして、私を抱き上げる力強い腕。私は恐る恐る目を開けるとそこには
「遅くなってごめん」
と、辛そうな表情を浮かべるゼストが立っていた。
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