異世界で彼女を探して何千里?
35.2人目のクラスメイト
「……え、ええっと、ちょ、ちょっと待ってね……すぅ〜、はぁ〜……良し」
俺の突然の言葉に最初は驚いたが、さすがは商会長、一瞬で平静を取り戻した。そして、自分の後ろに立つ副商会長へ
「フェルシー、少し席を外してくれるかしら?」
と、伝えた。フェルシーさんは俺とチェルシュさんを交互に見るが、チェルシュさんに一礼してから部屋を出る。
この部屋には俺とチェルシュさんだけになった。チェルシュさんは少し周りを気にしてから、コホンッと一呼吸を置いて、再び俺を見てくる。
「ごめんなさいね、ゼスト君。懐かしい名前が出てきたものだから、少し慌ててしまって」
「と言う事はあなたは」
「ええ、あなたの想像通り転生者よ。あなたもそうなのでしょう?」
俺はチェルシュさんの言葉に頷く。
「そう……あなたも私と同じ。これで3人目ね。あなたは?」
「俺は2人目ですね。それで前世の名前を聞いても?」
「ええ、私は前世では桜木 舞花って名前だったわ。よろしく!」
桜木 舞花……ああっ!
「あのエセギャルか!」
「エセギャルって何よ! エセギャルって!」
俺の目の前で怒るチェルシュさん。いや、まさか桜木が商会長をしているとはな。
桜木 舞花
当然俺やみなみと同じクラスで、染めているのか地毛なのかわからない桃色の髪をしており、顔は化粧をして、制服は改造しており、俺たちのような青少年の目には毒な程だった。
詳しく話せば胸元はぱっかりと開いて谷間が見え、スカートは膝上で少しでも屈めばパンツが見えるほど。良くクラス委員長と服装や髪型について喧嘩していたな、
確か読者モデルとかしているんだったけな。どんな安い服でも可愛く着こなす今時ギャルとかで。みなみに何度か見せられた事がある。
誰に対して人当たりの良いみなみは、桜木とも仲が良く、たまに俺も混ぜられて遊びに行った事もある。2人で服の買い物をしている時ほど辛いものは無かったけど。
そんな桜木だけど、ギャルみたいな容姿をしながらも実態は違う。実際には弟が4人、妹が2人の計7人兄弟の長女で、既に他界しているという母親の代わりに、家族の母親として面倒を見ていたという、とても家族愛の強い女性なのだ。
そのため、洗濯、片付け、料理など家庭的な事は何でも出来るらしい。得意料理は筑前煮だったか。そんな話がクラスで広まった時は、学園のお嫁にしたいランキングに急上昇していたな。
「全く、誰かわかんないけど、エセギャルとか酷いじゃん!」
そんな桜木が俺の顔を見ながら頰を膨らませて怒っている。俺は苦笑いしながらも桜木を見る。
「俺の前世の名前は、神木 誠也だ。久し振り桜木」
「うそっ! まさかカミッキーに会えるなんて!」
カミッキーって、懐かしい呼び方だなおい。俺はそんな懐かしさに覚えながらも、桜木に微笑むと、桜木は目にブワッと涙を溜めて抱きしめて来た。
「うわぁ〜! カミッキー!!!」
「お、おい、商会長がこんな泣き虫で良いのかよ?」
「今だけは桜木 舞花だもん! でもよかったよぉ〜!」
俺は戸惑いながらも桜木の背中をさする。ったく、子供みたいに泣きじゃくって。しばらく背中をさするとようやく落ち着いて来たのか桜木は照れ臭そうに元の席に戻る。
「へへっ、恥ずかしいの見られちゃったね」
「別に構わないさ……構わないですよ」
「あっ、別に良いよ、この部屋とか2人の時は前みたいな感じで」
「そうか? それじゃあそうさせてもらうよ」
それから桜木と色々と情報交換をする。桜木が前世の事を思い出したのは、自身が9歳の時で、自分より年下の子供たちと遊んでいた時だと言う。多分、その子供たちを見て、家族の事を思い出したのだろう。
「あの時は一杯泣いたなぁ〜。もう2度とあの子たちに会う事が出来ないって思ったら涙が止まらなくてさ。その上、体に引っ張られて泣き止もうにも止まらなくて」
そう言いながら微笑む桜木だが、それは誰でもそうなるだろう。自分の大切なものに会う事や触れる事が出来なくなるなんて。
「あっ、それで他には誰に会ったの?」
「俺か? 俺は小林に出会った」
「……ああ、小林君ね〜」
……なんだ今の間は。絶対に忘れていただろう。忘れていたなら忘れていたって言えばいいのに。
「それで、小林君は今は何しているの?」
「……あいつは俺たちを殺そうとして、ミストラル王国に捕まった」
「……そう。この世界では不思議な事では無いわね。私はね、山岡君と天童院君に出会ったわ」
「山岡って柔道部の山岡で、天童院ってあの天童院か?」
「ええ、その天童院君よ。山岡君は私が交易に行った獣人大陸で獣人の子供たちに柔道を教えていたわ。山岡君自身も獣人だった。もうこの世界に来て50年が経つんだって」
そんな昔からいる奴もいるのか。確かに小林も目の前にいる桜木も俺とはバラバラの年齢で、記憶が戻ったのもバラバラだった。
もしかしたら、未だに記憶を取り戻していない奴もいるかもしれないし、まだ生まれて来ていない奴もいるかもしれない。下手すれば大昔に生まれて、もう亡くなっている奴も……いや、それよりも
「山岡は優しい奴だったからな。会ってみたいとは思うが、天童院は? あいつはどうなったんだ?」
俺が桜木に尋ねると、桜木は顔を曇らせる。なんかやばい事でもあったのか? そして
「天童院君はね……この国の皇太子に生まれたわ」
桜木の口から出たのは、想像以上に最悪な事だった。
俺の突然の言葉に最初は驚いたが、さすがは商会長、一瞬で平静を取り戻した。そして、自分の後ろに立つ副商会長へ
「フェルシー、少し席を外してくれるかしら?」
と、伝えた。フェルシーさんは俺とチェルシュさんを交互に見るが、チェルシュさんに一礼してから部屋を出る。
この部屋には俺とチェルシュさんだけになった。チェルシュさんは少し周りを気にしてから、コホンッと一呼吸を置いて、再び俺を見てくる。
「ごめんなさいね、ゼスト君。懐かしい名前が出てきたものだから、少し慌ててしまって」
「と言う事はあなたは」
「ええ、あなたの想像通り転生者よ。あなたもそうなのでしょう?」
俺はチェルシュさんの言葉に頷く。
「そう……あなたも私と同じ。これで3人目ね。あなたは?」
「俺は2人目ですね。それで前世の名前を聞いても?」
「ええ、私は前世では桜木 舞花って名前だったわ。よろしく!」
桜木 舞花……ああっ!
「あのエセギャルか!」
「エセギャルって何よ! エセギャルって!」
俺の目の前で怒るチェルシュさん。いや、まさか桜木が商会長をしているとはな。
桜木 舞花
当然俺やみなみと同じクラスで、染めているのか地毛なのかわからない桃色の髪をしており、顔は化粧をして、制服は改造しており、俺たちのような青少年の目には毒な程だった。
詳しく話せば胸元はぱっかりと開いて谷間が見え、スカートは膝上で少しでも屈めばパンツが見えるほど。良くクラス委員長と服装や髪型について喧嘩していたな、
確か読者モデルとかしているんだったけな。どんな安い服でも可愛く着こなす今時ギャルとかで。みなみに何度か見せられた事がある。
誰に対して人当たりの良いみなみは、桜木とも仲が良く、たまに俺も混ぜられて遊びに行った事もある。2人で服の買い物をしている時ほど辛いものは無かったけど。
そんな桜木だけど、ギャルみたいな容姿をしながらも実態は違う。実際には弟が4人、妹が2人の計7人兄弟の長女で、既に他界しているという母親の代わりに、家族の母親として面倒を見ていたという、とても家族愛の強い女性なのだ。
そのため、洗濯、片付け、料理など家庭的な事は何でも出来るらしい。得意料理は筑前煮だったか。そんな話がクラスで広まった時は、学園のお嫁にしたいランキングに急上昇していたな。
「全く、誰かわかんないけど、エセギャルとか酷いじゃん!」
そんな桜木が俺の顔を見ながら頰を膨らませて怒っている。俺は苦笑いしながらも桜木を見る。
「俺の前世の名前は、神木 誠也だ。久し振り桜木」
「うそっ! まさかカミッキーに会えるなんて!」
カミッキーって、懐かしい呼び方だなおい。俺はそんな懐かしさに覚えながらも、桜木に微笑むと、桜木は目にブワッと涙を溜めて抱きしめて来た。
「うわぁ〜! カミッキー!!!」
「お、おい、商会長がこんな泣き虫で良いのかよ?」
「今だけは桜木 舞花だもん! でもよかったよぉ〜!」
俺は戸惑いながらも桜木の背中をさする。ったく、子供みたいに泣きじゃくって。しばらく背中をさするとようやく落ち着いて来たのか桜木は照れ臭そうに元の席に戻る。
「へへっ、恥ずかしいの見られちゃったね」
「別に構わないさ……構わないですよ」
「あっ、別に良いよ、この部屋とか2人の時は前みたいな感じで」
「そうか? それじゃあそうさせてもらうよ」
それから桜木と色々と情報交換をする。桜木が前世の事を思い出したのは、自身が9歳の時で、自分より年下の子供たちと遊んでいた時だと言う。多分、その子供たちを見て、家族の事を思い出したのだろう。
「あの時は一杯泣いたなぁ〜。もう2度とあの子たちに会う事が出来ないって思ったら涙が止まらなくてさ。その上、体に引っ張られて泣き止もうにも止まらなくて」
そう言いながら微笑む桜木だが、それは誰でもそうなるだろう。自分の大切なものに会う事や触れる事が出来なくなるなんて。
「あっ、それで他には誰に会ったの?」
「俺か? 俺は小林に出会った」
「……ああ、小林君ね〜」
……なんだ今の間は。絶対に忘れていただろう。忘れていたなら忘れていたって言えばいいのに。
「それで、小林君は今は何しているの?」
「……あいつは俺たちを殺そうとして、ミストラル王国に捕まった」
「……そう。この世界では不思議な事では無いわね。私はね、山岡君と天童院君に出会ったわ」
「山岡って柔道部の山岡で、天童院ってあの天童院か?」
「ええ、その天童院君よ。山岡君は私が交易に行った獣人大陸で獣人の子供たちに柔道を教えていたわ。山岡君自身も獣人だった。もうこの世界に来て50年が経つんだって」
そんな昔からいる奴もいるのか。確かに小林も目の前にいる桜木も俺とはバラバラの年齢で、記憶が戻ったのもバラバラだった。
もしかしたら、未だに記憶を取り戻していない奴もいるかもしれないし、まだ生まれて来ていない奴もいるかもしれない。下手すれば大昔に生まれて、もう亡くなっている奴も……いや、それよりも
「山岡は優しい奴だったからな。会ってみたいとは思うが、天童院は? あいつはどうなったんだ?」
俺が桜木に尋ねると、桜木は顔を曇らせる。なんかやばい事でもあったのか? そして
「天童院君はね……この国の皇太子に生まれたわ」
桜木の口から出たのは、想像以上に最悪な事だった。
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