異世界で彼女を探して何千里?
28.契約
「フランもフリューレと似たようなもの……ですか?」
俺は噛み付くのをやめて俺を見てくるフランを見る。一体どういう事なんだ……とは言わない。ある程度予想はついていた。オーガを圧倒するような力、人語を理解出来る知能。かなりランクの高い魔獣では無いかと。
「うむ。その狼はの、獣人大陸に生息する狼で、種族は『雷餓狼』という種族じゃ。その子も成長すればランクA+になるじゃろう」
俺の膝の上に前足を乗せて首を傾げて見上げてくるフラン。そんな強い奴が俺の相棒かぁ。俺はフランを抱き上げる。突然抱き上げられたフランは、びくっと驚くが、大人しく俺の方を見ている。
「お前の種族は今更関係ない。これからもよろしく頼むよ、フラン」
「ワウゥッ!」
俺の言葉に嬉しそうに鳴くと俺の顔をぺろんぺろん舐めてくる。ちょっ、擽ったいぞ! そんな風に俺とフランがじゃれ合っていると、足元にいたフリューレが
「コン!」
と、一鳴きして体を輝かせた。これは、フランの時と同じ!? 光が収まると同時に俺に流れてくる暖かい感覚。それと「私も」「いっしょ」「戦う」という感情が流れてくる。
「ほほぉっ! これは何と! 初めて会ったばかりというのに」
「ギルアンさんは何か知っているのですか?」
「今のは契約じゃよ」
「契約?」
「うむ。お主もモンスターテイマーを見た事は無いかの? 魔物と契約して戦う者たちのことじゃ」
実際に見た事は無いけど、話には聞いた事があるな。確か、魔獣と何らかの絆が出来てなれる職業だと聞いたが。
「魔獣は、自分が認めた相手と契約を結ぶ事が出来る。契約をすると、契約者と魔獣の間に繋がりが出来、簡単な意思疎通が出来るようになり、契約相手も魔獣自身も強くなるのじゃ。ただ、これは1生の内に1度しか使えないため、契約しない魔獣もおるが……まさかのう」
……これってそんな凄い事だったのか。普通に強くなったと簡単に考えていたけど、この子たちからしたらかなり重要な事じゃ無いか。
「今更だけど、俺と契約してよかったのか?」
「ワウ!」「コン!」
2匹は同時に元気に返事するとともに、感情が流れてくる。フランは「当たり前」「一緒に戦う」とフリューレは「大好き」「側にいる」と。そんな感情を受け取った俺は
「もう、お前たち、可愛いなぁ〜!!!」
「クゥ〜ン!」「キューン!」
2匹を抱き上げて、頰をスリスリとする。2匹とも嬉しそうにスリスリぺろぺろしてくるので、本当に嬉しいのだろう。
そんな2匹をもふもふとしていたら、玄関の扉が開く。そこから剣を腰に携えた褐色の女性が入って来た。彼女は俺を殺そうとした奴。
「おいじじい、魔獣を狩って来たぞ……って、チッ、目覚ましやがったか」
俺の方を見て舌打ちをする褐色の女性……なんか仲良く出来そうに無いのだが。何でこんな敵意むき出しなの? 不思議すぎる。
「うむ、クリアよ、こっちに来なさい。ゼスト、この子はわしの孫娘でクリア・ファンド・レティスティンじゃ。クリア、ほれ、挨拶せい」
「チッ……クリアだ。俺に勝てたら名前で呼んでやるよ」
褐色の女性……クリアさんはそれだけ言うと台所の方へと向かってしまった。何であんな敵意むき出しなんだろうか? わからん。
「……悪いの。クリアはダークエルフと人間とのハーフなのじゃが、人間嫌いで、ワシ以外には基本あのような感じなのじゃ。許してくれ」
へぇ、ダークエルフとのハーフなのか? エルフ自体初めて見たけど。人間嫌いには何か事情があるのだろう。あまり聞かないでおこう。
「それで、修行なのですが」
「うむ、お主は固有魔術が使えるのじゃったな?」
「はい」
「なら、それをいつでも使えるようにするのがお主がここでする修行じゃ。いつ、いかなる時でも使えるように」
「それって、魔力を上げるって事ですか?」
「そうじゃ。お主は魔力を気にしてここぞという時にしか使おうとせぬが、それが初めから使えたらもっと楽に戦えたのではないかの?」
確かにそれはある。オーガの時も初めからアレを使えたら、そして持続時間を気にする事がなかったらあんな大怪我をしなくても、倒せたかもしれない。
今更たらればなんて考えるのはあまり好きではないが、俺に必要なものではある。
「お主には、常に発動した状態を保ってもらいながら、この山の魔獣を全種類倒してもらう。魔力の事は考えなくて良い。わし直伝のマナポーションを作っておるからの」
マジか。全種類って事は、フランが倒せなかった魔獣も含まれるって事だよな?
「まあ、目が覚めたばかりの今日は休むといい。修行は明日からじゃ。あっ、そうじゃ。お主が目覚めた部屋はお主用にしてあるから好きに使って構わぬぞ」
ギルアンさんはそう言って薬を作り始めた。今日はゆっくりしろか。さてどうしたものか。そう思っていたら、ズボンを引っ張る感覚がある。足元を見たら、フランが左側、フリューレが右側のズボンを噛んでいた。
そして流れる感情は2匹とも「遊ぼう」「外」「走る」だった。そうだな。中でゆっくりとしているのもいいけど、2匹と仲を深めるために外で遊ぶか。
「行くか、2匹とも」
「ワウッ!」「キュンッ!」
俺は2匹を伴って家を出る。明日からは修行の事を色々と考えないといけないけど、今日ぐらい羽根を伸ばすか。
俺は噛み付くのをやめて俺を見てくるフランを見る。一体どういう事なんだ……とは言わない。ある程度予想はついていた。オーガを圧倒するような力、人語を理解出来る知能。かなりランクの高い魔獣では無いかと。
「うむ。その狼はの、獣人大陸に生息する狼で、種族は『雷餓狼』という種族じゃ。その子も成長すればランクA+になるじゃろう」
俺の膝の上に前足を乗せて首を傾げて見上げてくるフラン。そんな強い奴が俺の相棒かぁ。俺はフランを抱き上げる。突然抱き上げられたフランは、びくっと驚くが、大人しく俺の方を見ている。
「お前の種族は今更関係ない。これからもよろしく頼むよ、フラン」
「ワウゥッ!」
俺の言葉に嬉しそうに鳴くと俺の顔をぺろんぺろん舐めてくる。ちょっ、擽ったいぞ! そんな風に俺とフランがじゃれ合っていると、足元にいたフリューレが
「コン!」
と、一鳴きして体を輝かせた。これは、フランの時と同じ!? 光が収まると同時に俺に流れてくる暖かい感覚。それと「私も」「いっしょ」「戦う」という感情が流れてくる。
「ほほぉっ! これは何と! 初めて会ったばかりというのに」
「ギルアンさんは何か知っているのですか?」
「今のは契約じゃよ」
「契約?」
「うむ。お主もモンスターテイマーを見た事は無いかの? 魔物と契約して戦う者たちのことじゃ」
実際に見た事は無いけど、話には聞いた事があるな。確か、魔獣と何らかの絆が出来てなれる職業だと聞いたが。
「魔獣は、自分が認めた相手と契約を結ぶ事が出来る。契約をすると、契約者と魔獣の間に繋がりが出来、簡単な意思疎通が出来るようになり、契約相手も魔獣自身も強くなるのじゃ。ただ、これは1生の内に1度しか使えないため、契約しない魔獣もおるが……まさかのう」
……これってそんな凄い事だったのか。普通に強くなったと簡単に考えていたけど、この子たちからしたらかなり重要な事じゃ無いか。
「今更だけど、俺と契約してよかったのか?」
「ワウ!」「コン!」
2匹は同時に元気に返事するとともに、感情が流れてくる。フランは「当たり前」「一緒に戦う」とフリューレは「大好き」「側にいる」と。そんな感情を受け取った俺は
「もう、お前たち、可愛いなぁ〜!!!」
「クゥ〜ン!」「キューン!」
2匹を抱き上げて、頰をスリスリとする。2匹とも嬉しそうにスリスリぺろぺろしてくるので、本当に嬉しいのだろう。
そんな2匹をもふもふとしていたら、玄関の扉が開く。そこから剣を腰に携えた褐色の女性が入って来た。彼女は俺を殺そうとした奴。
「おいじじい、魔獣を狩って来たぞ……って、チッ、目覚ましやがったか」
俺の方を見て舌打ちをする褐色の女性……なんか仲良く出来そうに無いのだが。何でこんな敵意むき出しなの? 不思議すぎる。
「うむ、クリアよ、こっちに来なさい。ゼスト、この子はわしの孫娘でクリア・ファンド・レティスティンじゃ。クリア、ほれ、挨拶せい」
「チッ……クリアだ。俺に勝てたら名前で呼んでやるよ」
褐色の女性……クリアさんはそれだけ言うと台所の方へと向かってしまった。何であんな敵意むき出しなんだろうか? わからん。
「……悪いの。クリアはダークエルフと人間とのハーフなのじゃが、人間嫌いで、ワシ以外には基本あのような感じなのじゃ。許してくれ」
へぇ、ダークエルフとのハーフなのか? エルフ自体初めて見たけど。人間嫌いには何か事情があるのだろう。あまり聞かないでおこう。
「それで、修行なのですが」
「うむ、お主は固有魔術が使えるのじゃったな?」
「はい」
「なら、それをいつでも使えるようにするのがお主がここでする修行じゃ。いつ、いかなる時でも使えるように」
「それって、魔力を上げるって事ですか?」
「そうじゃ。お主は魔力を気にしてここぞという時にしか使おうとせぬが、それが初めから使えたらもっと楽に戦えたのではないかの?」
確かにそれはある。オーガの時も初めからアレを使えたら、そして持続時間を気にする事がなかったらあんな大怪我をしなくても、倒せたかもしれない。
今更たらればなんて考えるのはあまり好きではないが、俺に必要なものではある。
「お主には、常に発動した状態を保ってもらいながら、この山の魔獣を全種類倒してもらう。魔力の事は考えなくて良い。わし直伝のマナポーションを作っておるからの」
マジか。全種類って事は、フランが倒せなかった魔獣も含まれるって事だよな?
「まあ、目が覚めたばかりの今日は休むといい。修行は明日からじゃ。あっ、そうじゃ。お主が目覚めた部屋はお主用にしてあるから好きに使って構わぬぞ」
ギルアンさんはそう言って薬を作り始めた。今日はゆっくりしろか。さてどうしたものか。そう思っていたら、ズボンを引っ張る感覚がある。足元を見たら、フランが左側、フリューレが右側のズボンを噛んでいた。
そして流れる感情は2匹とも「遊ぼう」「外」「走る」だった。そうだな。中でゆっくりとしているのもいいけど、2匹と仲を深めるために外で遊ぶか。
「行くか、2匹とも」
「ワウッ!」「キュンッ!」
俺は2匹を伴って家を出る。明日からは修行の事を色々と考えないといけないけど、今日ぐらい羽根を伸ばすか。
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