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落とされた勇者 悪霊たちと最強になる

やま

15話 裏切り

 陽奈たちと別れた俺は、足下を光魔法のライトで照らしながら、音のした方へと向かって森の中を走っていた。

 今も断続的に聞こえてくる音と揺れに、他のチームが無事なのか不安になりながらも走っていた。しばらく走り続けると、木々の向こうで叫ぶ声と、魔法を放つ光が見えて来た。

 森を抜けると、そこには

「……木の犬……だと?」

 俺が辿り着いたところには、木で作られた犬の模型のようなものが暴れていた。大きさは4メートルほど。かなりの巨体の木の犬が暴れていたのだ。その近くには翔輝がボロボロになりながらも剣を構えていた。

「翔輝!」

「……っ! 真也! 来るな!」

 木の犬と対峙していた翔輝だが、俺が叫ぶと俺を近づかせないように叫ぶ。だが、親友が危険な状況を見過ごせるか!

 俺は聖剣に魔力を流し木の犬へと切り掛かる。魔力を流した聖剣は容易く木の犬の左後ろ足を切り裂いた。余りにも呆気なく切れたので、思わず固まってしまい、咄嗟に動く事が出来なかった。そして……気が付けば景色が変わっていた。

 先ほどまで森に囲まれていたのが夢のような、周りは茶色く地面がむき出しの渓谷だった。いきなり何が起きたのかわからずに固まっていると、首筋にゾワっと寒気が走る。咄嗟に聖剣を後ろに振るうと、カキンッと何かを弾いた。

 弾いたものを見ると、それは短剣だった。それも、魔力を帯びて毒の塗られた。短剣の飛んできた方を見ると、そこには黒装束を着た男が立っていた。俺は一瞬理解が出来なかった。どうして彼がここにいて、そして、俺に毒の塗られた短剣を投げてきたのか。

 どうしてそう思ったのか。それは……俺と同じようにこの世界に転移して来たクラスメイトの1人だったからだ。

 黒亀くろかめ 影矢かげや。それが、彼の名前だ。あまり、クラスの中で目立つタイプではなく、職業が確か『暗殺者』だったはず。その彼が何故?

 俺がどうしてこんな事をするのか、黒亀に尋ねようとした時、周りの地面から泥の人形が立ち上がった。そして、一斉に俺に襲いかかってきた。

「ははっ! まんまと僕のウッドゴーレムに騙されたな、藤里ぉ!」

 その泥の人形……マッドゴーレムの向こう側には小太りで身長の低い男、丸野 則祐のりすけが笑みを浮かべながら、俺に指を指していた。

 人形を作るのが好きで、特に二次元の美少女を作るのが好きで、模型部に入っている男だ。職業は《ゴーレムマイスター》。

 その丸野が操るマッドゴーレムを俺は切り裂いていく。しかし、元が泥のため、いくら切っても丸野が魔力を流して元の形へと戻っていく。

「くそっ! ホーリーバースト!」

 いくら切っても意味が無いので、俺はマッドゴーレムを吹き飛ばすために光魔法を発動する。俺の思った通り光の衝撃に吹き飛ばされるマッドゴーレム。俺はその隙にまずは丸野へと迫る。

 どうしてこんな事をするのか尋ねたいが、丸野たちがこのまま話を聞くとは思えないため、まずは捕らえようと思ったからだ。

 身体強化を使い、丸野に迫るため走る俺。丸野は慌ててマッドゴーレムを作ろうとするが、既に丸野は俺の目の前だ。丸野には悪いが少し痛い目にあって貰うぞ。そう思い、聖剣ではなく、空いている左腕で殴ろうとした瞬間、丸野が目の前から消えて、同時に腹部に熱いものを感じた。

 そして、その熱いものは腹を突き抜けて、背中から飛び出した。口の中に鉄の味が広がる中、下を見るとそこには、下卑た笑みを浮かべる寝屋川が槍を突き出していた。その槍は俺の腹を貫き、背中からとびだしていたのだ。

 寝屋川 透。俺がいたクラスの中では問題児の1人で、今突然目の前に現れた佐山 寿人ひさととつるんで問題を起こしていた奴らだ。

 寝屋川は無理矢理俺の体に突き刺さった槍を引き抜き、同時に佐山が蹴りを放ってきた。咄嗟に腕を交差させて防ごうとするが、突き刺された腹と背中の痛みが体を走り、力が抜けてしまう。そして、その蹴りに吹き飛ばされてしまった。

 吹き飛ばされて、何とか体勢を立て直そうかとするが、寝屋川たちが魔法を次々と放ってくる。飛んでくる魔法を転がるようにしながら避けるが、痛みのせいか動きが鈍い。やっぱり、体を槍に貫かれたのが効いているようだ。

 回復系の魔法を使おうにも寝屋川たちが詰めてきて、魔法を使わせてくれない。痛みに耐えながら聖剣を振るうが、万全の時なら兎も角、大怪我をしている今は、そこまでステータスに差が無い寝屋川たちに追い込まれてしまった。

 気が付けば、後ろは崖の側まで追いやられていた。目の前には寝屋川たちが立ち塞がり武器を構えている。俺は避け切れなかった魔法などが当たり、寝屋川に突き刺された槍のせいで血を流し過ぎたのか、軽く視界がぼやけていた。

「ようやく追い詰めた」

 どうにかしてここを突破しなければ……そう考えていたところに、周りの奴らと同じように笑みを浮かべた翔輝が現れた。

 俺は一瞬訳がわからずに頭の中が真っ白になってしまった。どうして、こいつらと一緒に翔輝が? 何回も同じような問答を頭の中で繰り返していたが、答えが浮かび上がる前に、答えが目の前で起きた。

 俺はゆっくりと視線を下に降ろすとそこには、俺の胸に剣を突き刺す翔輝の姿があった。そして、それに合わせるように寝屋川たちも槍や短剣を突き刺し、丸野が放った矢が俺の肩や腕へと刺さる。

「……がぁっ……げぇっ……はぁ……はぁ……お……まえ……ら……なん……で……?」

 俺は口に広がる鉄の味と腹に剣や槍、矢など様々な武器に刺された焼けるような痛みに歯を食いしばりながらも、たどたどしく尋ねた。そんな俺の言葉に帰って来たのは嫉妬に駆られた視線だった。

「お前ばっかりずりぃんだよ。早川さんにミーリア王女に……色々な女たちに勇者ってだけでよぉ、チヤホヤされやがって!」

「そうだ! 勇者だからって、聖女や賢者とパーティーを組まないといけないなんておかしいだろ! それが俺らと同じ普通のお前がよ!」

 そんな事を言ってくる寝屋川に佐山。この場にいるクラスメイトの奴らの殆どが、2人と同じように俺に妬んだ目で睨んできた。本当にそんな程度の事で俺は殺されるのか?

「しょ……うき……お……まえ……も?」

「……悪いな、真也。お前の代わりに陽奈は俺が守ってやるよ」

 他の奴らと同じように下卑た笑みを浮かべる翔輝しょうき……こいつもなのか。ずっと親友だと思っていたのに。

 翔輝は、手に持つ禍々しく光る球体を俺に押し付けて来た。その瞬間、頭が割れるほどの痛みが俺を襲う。同時に力が抜けていくのを感じる。

「これで勇者の力は俺の物だ。お前はただの異世界人。もう、勇者としての力は無い。ただでさえ大怪我を負っているお前が、ここから落ちたらどうなるだろうな?」

 翔輝の言葉に続けるように、それぞれが俺の体に突き刺していた武器を引き抜く。俺は様々な痛みと血の流しすぎに意識が朦朧として来た。

「じゃあな、真也」

 そして、翔輝に体を押されて俺は崖から落ちていく。体全身に浮遊感を感じながら意識が薄れていく中、最後に目の前に浮かんだのは、一緒に頑張ろうね、と微笑む陽奈の笑顔と、ありがとうございます、と照れるミーリアの顔だった。

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